北信越エリア5つのドローンスクールは7月27日、北信越ドローンセミナーを開催し、慶応義塾大学ドローン社会共創コンソーシアムの南政樹副代表、DRONE CONCIERGE CAPTAIN330 山村寛代表が講演した。南氏はステージからドローンで客席を記念撮影するなどして盛り上げながら、「ドローンは空を自由に活用するデジタルツール。ビジネスを考えるさいに重要なのはそれを使うアイデアだ」と、地方からアイデアを積極的に生み出すよう呼びかけた。
セミナーは「ドローン市場のビジネス像とこれからの制度」をテーマに据え、山村氏が「有人機の世界から見たドローン事故防止のヒントとこれからの制度」、南氏が「ドローン前提社会の近未来像〜近未来のドローンビジネス像と今何をすべきか〜」を演題に講演した。富山ドローンスクール、富山南砺ドローンスクール、石川ドローンスクール、能登七尾ドローンスクール、新潟上越ドローンスクールが主催し、富山産官学ドローン推進協議会、一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)、一般社団法人全国自動車学校ドローンコンソーシアム(ジドコン)が後援した。
南氏は「ヒトは昔から空をパーソナルに使うことに憧れてきた。空を自由に活用できるドローンの登場で、いよいよそれが実現しつつある」と分析したうえで、「パーソナルに使うテクノロジーを持つ時代になったからこそ、それを適切に運用できる技能を保証するライセンスが重要になるともいえる」と述べた。
ドローンの歴史を振り返り、南氏はiPhoneが発売された2007年ごろが転換期だったと分析した。その理由を「それまでアナログで人が制御していたラジコンが、これを機にデジタル化し、コンピューターの力を借りることができるようになった。安価、容易にテクノロジーを使えるようになった」と説明した。
そのうえでテクノロジー雑誌『WIRED』の編集長から米3D Robotics社のCEOに転じたクリス・アンダーソン氏の「ドローンは、飛行機から操縦士を取り除いたものなどではなく、プロペラのついたスマートフォンだ」という言葉を紹介し、ドローンが飛ぶだけの道具とは異なるという認識を強調した。
演題に盛り込まれた「ビジネス」については、ハードウェア、ソフトウェア、サービスと3つに大別したうえで、それぞれに含まれる業種、業態を概観。たとえばハードウェアには、本体の組み立て製造をするメーカー、部品製造、メンテナンス、検査などが含まれ、ソフトウェアでは、運用、オペレーター、UTM、3次元地図などがあると紹介した。そのうえでハードウェアでは、VTOL、カウンタードローン、パッセンジャードローン、基地局などに大きな可能性があることを紹介。サービスでも、人材育成、建設医療、ドローンレース、救助など多様なサービスが数多くあることを解説し、とくに主催者や関連する出席者を念頭に、人材育成のひとつとして自動車の免許制度を取り上げ、「もともとはある地方の制度だが、交通量が増えたことからこれをベースに全国に広がった」と地方の取り組みが、大きな可能性を秘めていることを説明した。出席者に向けて「富山の地でたくさんのイノベーションが起こることを祈念する」と結び、大きな喝さいを浴びた。
またDRONE CONCIERGE CAPTAIN330の山村代表は、ドローンの飛行ルールの背景を、飛行機など有人機との関係でわかりやすく説明。「事故のほとんどは人的ミス。無人機のパイロットも有人機の知識が必要だ。ドローンのインストラクターや講師には、有人機の機長としての心構えと知識も受講生に教えてほしい」と訴えた。
セミナーでは主催者を代表して富山ドローンスクールを運営する北日本自動車学校の中条充康理事長が、地元での産学官の取り組み事例をまじえてあいさつした。この日は約150人が聴講し、それぞれにメモをとったりうなずいたりしていた。終了後には講演者にあいさつを求める列ができた。