京都、大阪、奈良の京阪奈地域でドローンの普及を目指す有志団体「京阪奈ドローンプロジェクト実行委員会」(事務局・奈良市)は5月24日、奈良県庁で会見し、プロジェクトの具体的な活動の第一弾として「第一回京阪奈ドローンフォーラム」を7月22日に、奈良市の大型ホール、奈良県コンベンションセンターで開催すると発表した。ドローンや空飛ぶクルマの実装をめぐっては、大阪を中心に関西圏で催事、事業、実証実験など利用拡大や社会実装に向けた取組が急増している。奈良でも大型フォーラムが開催されることで、関西圏でのドローン実装論議に足並みをそろえることになり、活躍が展望される大阪・関西万博の機運醸成も進みそうだ。
京阪奈ドローンフォーラムはドローンや空飛ぶクルマ、エアモビリティに詳しい有識者の講演やパネルディスカッションと、技術、機体、取組の展示などで構成する。実行委員会の増尾朗実行委員長(マスオグループ代表)は「ドローンや空飛ぶクルマは、大阪・関西万博が開催される2025年をマイルストーンとして本格的な展開が期待されています。私たちもこのフォーラムをキックオフとして、万博開催の時期をめどに、京阪奈エリアでのドローン前提社会、デジタル田園都市の構築に向けて、意識の醸成と社会実装の進展を目指します」と抱負を述べた。
フォーラムの後援には5月24日現在、奈良県、奈良市のほか、一般社団法人奈良県ビジターズビューロー、公益財団法人大阪産業局、一般社団法人DPCA(ドローン撮影クリエイターズ協会)、JR西日本イノベーションズなどが名を連ねている。今後さらに加わる見込みという。フォーラム後に展開するプロジェクトを通じ、京阪奈エリアでのドローン産業の振興や社会課題解決を目指す。
フォーラムの講演には内閣官房の小熊弘明参事官、一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)の鈴木真二理事長、慶應義塾大学の古谷知之教授(SFC研究所ドローン社会共創コンソーシアム代表)、空撮を通じた地方創生事業を展開する株式会社ドローンエモーションの田口厚代表取締役、ドローンを含め幅広い技術を活用するスマート物流で牛丼やラーメンを運ぶ実証で知られる株式会社エアロネクストの田路圭輔CEOらが登壇する。「いまのドローン、空飛ぶクルマの流れをリードする“主役級”」(実行委員)の顔ぶれだ。
展示では、VTOL機や有線給電型回転翼機をはじめとする国産ドローン開発を手がけるエアロセンス株式会社(東京)、AIドローン開発の米Skydioと提携し運用や認定講習を手がけるほか、ドローンの飛行、撮影、データ解析、レポート作成をWEB上で一元管理するクラウドサービス「docomo sky」を展開する株式会社NTTドコモ、ドローン研究に力を入れる慶應義塾大学SFC研究所ドローン社会共創コンソーシアムがブースを構える。
このほか、スイスsenseFly社の固定翼機eBeeシリーズを運用するジオサーフ株式会社(東京)、おコメ、ワイン用ブドウなど農業のスマート化を推進するドローン・ジャパン株式会社(東京)、壁面にピタっと吸着して作業を助けるドローンなど用途に適した産業用ドローンを製造する菱田技研工業株式会社(大阪府堺市)、業務用ドローンの研究開発や製造を手掛ける株式会社D-wings(大阪府再開し)、陸海空のドローン制御技術開発を手掛けるDig-it works(ディジットワークス)株式会社(千葉市)などが機体、技術、取組を持ち寄るなど、あわせて20件のブースが出展される見込みだ。中にはこのフォーラムで新型機を披露することを計画している事業者もある。
フォーラムが開催される7月22日は、万博開幕1000日前の7月18日に近いことから、事務局は万博機運を京阪奈エリアでの醸成も意識していると説明。空飛ぶクルマ、エアモビリティの社会受容性の浸透を通じ、「2025年には奈良をはじめ京阪奈でドローン前提社会といえるような実装が進んでいる」(増尾実行委員長)ような未来を展望している。
増尾委員長は会見で「ドローンや空飛ぶクルマ、エアモビリィには限りない可能性があります。観光にも物流にも人の輸送にも密接にかかわりますし、機体だけでなく周辺技術であるITやAIの普及、DXの促進ももたらします。地域を形作る行政、価値を生み出す企業、未来を切り開く学生など多くの層にフォーラムにお越し頂き、プロジェクトを盛り上げて頂きたいと思っております」と述べた。
主催する京阪奈ドローンプロジェクト実行委員会は、増尾実行委員長が代表を務めるマスオグループのほか地元企業、アクセラレーターら有志が集う。この日の会見には、増尾氏のほか、足立靖氏、石見亜紀子氏、中島秀豊氏が同席した。
ドローンや空飛ぶクルマ、エアモビリティをめぐっては、万博をきっかけに導入機運が高まる大阪を中心に、関西圏は周辺エリアで実装に向けた活動が広がっている。兵庫県では地元発祥の兼松株式会社などと連携し「HYOGO 空飛ぶクルマ研究室」を創設した。9月1日には内閣官房小型無人機等対策推進室と兵庫県とが主催する普及促進イベント「第一回ドローンサミット」を神戸市で開催する。空飛ぶクルマ開発で注目度が高まる株式会社SkyDriveは大阪府、大阪市とすでに連携しているが、近鉄グループホールディングス株式会社(大阪市)が出資を決めるなど活躍の舞台を広げている。近鉄沿線の観光都市、三重県の伊勢・志摩での運用も視野に入る。同様に南海電気鉄道株式会社もSkyDriveとの連携協定を締結し、和歌山県を含む南海沿線での空飛ぶクルマの運用を目指す。奈良でのフォーラム開催はドローンや空飛ぶクルマ、エアモビリティの関西圏での機運の底上げにつながることになる。
■催事:第一回京阪奈ドローンフォーラム
■日時:7月22日(金)、12:00~17:00(講演:13:00~16:00予定)
■内容:講演、パネルティスカッション、展示
■参加:無料
■申し込み:公式サイトの申し込みフォームから
一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)は、JUIDAに加盟する認定スク-ル向けに、操縦ライセンスの国家資格化に伴う制度変更の説明会を開く。協議を重ねている「小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会」が4月20日、協議内容の最終的なとりまとめを公表する予定で、JUIDAはそれを受けてとりまとめの内容や経緯を説明する。説明会は4月25日に2回、27日にオンラインで開催される。JUIDAが説明会を開催することで。レベル4解禁後に向けた動きがスクールでも活発化することになりそうだ。
JUIDAが説明するのは、4月20日に開催される「小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会」で公表される見込みの国家資格化に伴い制度変更が中心となる。制度概要についてはすでに公表されているものの、既存資格保有者の取り扱いなど、昨年6月の公表時に継続案件となっていたポイントが最大の焦点で、今後とりまとめられる政省令の土台となる。
ドローン操縦ライセンスの国家資格化は、難易度の高い「レベル4」と呼ばれる飛行が解禁されるのに伴って導入される制度変更のひとつだ。国家資格は「1等」、「2等」の2種類が設けられる予定で、資格取得者は取得した等級に応じて、該当する飛行が認められたり、事前の航空局への申請が不要になったりする。
国家資格を取得するには、決められた講習を受け、試験に合格する必要がある。国家資格の講習は、「登録講習機関」と呼ばれるドローンスクールで受けられる。
ドローンスクールが国家資格に対応した講習を提供する場合に「登録講習機関」になる必要がある。ドローンスクールは、国家資格に対応する「登録講習機関」になるかどうかの選択が迫られる。ドローンスクールが判断するには、登録講習機関に求められる要件、国家資格に対応した講習に必要なカリキュラムなど、国家資格化に伴う制度変更に関わる情報が必要だ。一方で、ドローンスクールが現在発行している既存の技能認証の取り扱いや、技能認証取得者の新制度移行後の取り扱いについても正式な見解が示されておらず、ドローンスクールは受講希望者から寄せられる問い合わせに、踏み込んだ回答がしにくい状況だ。
国家資格化に伴う制度変更について協議を重ねてきた「小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会」は4月20日に開催する協議会で、こうした点も含めたとりまとめを公表する予定で、JUIDAはそれを踏まえ、変更内容の説明とJUIDAの対応を説明する。
とりまとめの内容はホームページなどでも公表される見込みだ。また、ドローンスクールを管理する「管理団体」に対しては、国交省が制度の概要について説明会を開く方針だ。一方で、個別のドローンスクールが、不明点、疑問点を確認する機会は現時点ではなく、公表された資料を読み解くか、個別に問い合わせるなどの対応をすることになる。このためJUIDAは加盟するドローンスクールに対する説明を開き、とりまとめの概要や経緯、JUIDAの解釈や対応を説明し、スクールが抱える疑問に回答したり、不明点を吸い上げたりする。
今後、スクールや民間企業のレベル4対応がさらに活発化しそうだ。
ドローンの大型展示会「Japan Drone」を主催する一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)と株式会社コングレは1月28日、「Japan Drone 2022」「第1回次世代エアモビリティEXPO」の概要を発表した。千葉・海浜幕張の大型コンベンションセンター幕張メッセを会場に、6月21日から23日までの3日間に、250社・団体の出展と、18,000人の来場登録を見込む。開催にあたり万全な感染対策で臨む意向も表明した。
開催のテーマは「実現間近、ドローンのレベル4飛行と有人飛行」に設定した。
会場は幕張メッセのホール4とホール5。旺盛な出展需要にこたえるため2ホールに拡大した。講演会、パネルディスカッション、セミナーなどの登壇イベントの主会場もホール内に設ける。これにより来場者の移動が少なく済むようになる。登壇イベントは昨年同様にインターネットで中継する予定だ。
初開催となる「第1回次世代エアモビリティEXPO」は、空飛ぶクルマを主な対象に、機体メーカー、部品、素材、電源、通信、ポートなど関連産業、周辺産業、研究機関などの出展を見込む。この日の説明会ではコングレの担当者が「世界的、国際的なエアモビリティ産業のサプライチェーン創出のための本格的な専門展示会&コンファレンス」と説明した。Japan Droneの会場内に専用エリアを割り当てて開催する。
説明では「eVTOL」を「エアモビリティ」とともにエアモビEXPOの主対象に並べていたが、VLOLには言及がなかったり、垂直離陸機向けの離発着設備であるバーティポートを展示対象に含めた一方、滑走路関連事業や、垂直離陸型でない機体に触れられなかったりと、出展基準の輪郭にあいまいさが残るものの、従来、出展相談には柔軟に対応しており、今回も出展側の希望を尊重しつつ柔軟に対応するとみられる。
すでに出展の受け付けが進んでいて1月31日に第一次の申し込みを締め切る。その後、第二次の申し込みを3月末に締め切り、4月に出展者向け説明会を開く。
説明会ではJUIDAの鈴木真二理事長が「業種ごとの展示会でのドローンの出展が増える中、Japan Droneは産業横断的な展示会として、技術の発見の機会などを提供していると考えております。今後、異なる分野との連携の重要性が高まると考えられ、産業横断的なJapan Droneを連携の場としてご活用頂ければ幸いです」とあいさつした。
一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)は1月25日、記者会見を開き、2022年の活動方針などを発表した。ドローンの展示会「第7回JapanDrone」の開催に合わせ、空飛ぶクルマなどを念頭に置いて新たに「第1回次世代エアモビリティEXPO」を併催することを正式に発表した。主催するJUIDAと株式会社コングレは、両展示会の概要説明会を1月28日にオンラインで開く。またJUIDAは日本に関心を寄せる海外事業者に、日本の事業者を紹介する「グローバルビジネスマッチング」事業を4月に始めることも公表した。現在、準備を進めている。このほか、2022年に解禁が予定されている「レベル4」実現への支援や、国際標準化への取り組みに尽力する考えを表明した。JUIDAの鈴木真二理事長は活動スローガンについて「ドローン社会実装元年」を掲げた。
JUIDAは毎年1月、ドローン産業に関わる関係者の賀詞交歓の場として「新春パーティ」を開催している。今年は新型コロナウイルスの蔓延を受けて「新春パーティ」の開催を見送り、かわりに記者会見を開催した。記者会見では、鈴木真二理事長が事業方針や現状について報告し、参加者からの質問に答えた。
現状については、定款の変更、会員数、国際連携などについて報告した。定款変更は昨年7月に行われ、空飛ぶクルマなどを念頭に「次世代移動体システム(AMS)」を活動対象に書き加えた。会員は2022年1月時点で個人、法人、公共団体をあわせて20238件と2万を突破した。国際連携は広がっていて、MOU(覚え書き)の締結先は22か国・地域の32団体に及ぶ。
また2022年度の方針としては、第1回次世代エアモビリティEXPO開催、レベル4実現支援、社会実装、国際標準化支援などを表明した。第1回次世代エアモビリティEXPOは、従来「JapanDrone」の特別企画として設けていた大型ドローンゾーンを拡大、独立させた展示会。28日に概要を説明する予定だ。レベル4実現支援では、国が導入する国家資格について、運用の仕組みや試験などで検討に協力する。
このほか国際標準化支援でも、活動を拡大する。JUIDAは標準化を検討する国際標準化機構(ISO)内でドローンについて検討する委員会「ISO/TC20/SC16」の中で積極的に関与した。特に操縦者、運行管理者の技能確保について話し合う「ワーキンググループ3」では日本を代表する立場で主導的な役割を果たし、国際標準「ISO23665」の発効に導いた。ISOでは現在も標準化の議論が進められており、今後も衝突回避の標準化を検討する「ISO/TC16/AG5」に審議団体として参画し国内の意見調整などに取り組む。
鈴木理事長は2022年のスローガンとして「ドローン社会実装元年」を掲げ「レベル4の制度が整い実装が進むことが展望できる。災害対応での利用についても、平時での実装が拡大することで効果的な対応が可能になることが期待される」と述べた。
コンサートホールを備えるJR中野駅前の複合施設、中野サンプラザ(東京都中野区)で1月17日、ドローンを活用した外壁調査のデモンストレーションが関係者や報道陣に公開された。係留すれば一定の条件下で航空法上の許可・承認なしで飛行を認める昨年(2021年)10月施行の航空法改正を活用した。デモンストレーションでは建物の屋上から地面にポリエチレン製のフィッシングラインを張り、屋上、地面のそれぞれで固定した。機体には、予め糸を通してあるストロー状のアタッチメントを取り付け、離陸すると釣り糸をつたうように浮上した。中野区でのドローン飛行実現に取り組む加藤拓磨中野区議会議員は「ドローン活用が広がるには住民感情への配慮が大事です。今回の取り組みはその第一歩。今後も検証が進むことを期待したい」と話した。
デモンストレーションを実施したのは中野区、国立研究開発法人建築研究所、一般社団法人日本建築ドローン協会(JADA)、一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)。各団体の担当者と、開催に尽力した加藤区議会議員が飛行前の説明会で趣旨やデモ内容、用いる技術などについて説明した。また、釣り糸を張る技術は西武建設株式会社の「ラインドローンシステム」を利用した。
今回のデモンストレーションは、昨年改正された航空法が、一定条件下の係留飛行を許可・承認の適用除外とすることを盛り込んだことを受けて実施された。点検対象は中野サンプラザ西側壁面。西武建設の「ラインドローンシステム」で、屋上から地面までドローンの通り道となるフィッシングラインを張った。
屋上には、フィッシングラインのせり出し具合を調整するブラケット、フィッシングラインの張り具合を調整するリール、ブラケットが落下しないようにするための安全装置などが取り付けられた。また地面側ではフィッシングラインの取り付けられた離発着場(セイフティポート)が設置された。墜落したさいにフィッシングラインをたどって落下した機体の受け止める役割を果たす。この技術は、ドローンをつなぎとめるものではないが、JADAが「2点係留装置」として「墜落時にリスクを軽減できる」などとする評価書を交付している。なおこの日は汎用機を飛行させた。
デモでは、地面のポートを離陸したドローンが、フィッシングラインをつたって屋上まで浮上し、その後フィッシングラインをつたって離陸地点まで戻った。フィッシングラインがあるため、通信障害などで操縦不能な状況になっても、暴走する不安を与える状況は起こらなかった。この日の操縦は手動だが、「斜めにラインをはった場合は、ラインをつたうとはいえ、斜めに上昇させる操縦が必要」という。
加藤区議会議員は「技術はあるのに実装がされないという状況を数多く見てきた。ドローンがそうなってはいけないと思っている。今回の取り組みであればドローンは建物の周囲しか飛ばない。試金石になるのではないかと思う」と今後に期待した。
建築研究所の宮内博之主任研究員は「都市部における高層建築物の外壁点検の需要が高まっている。そのさい安全対策が不可欠で、2点係留はリスク軽減に役立つ」と評価した。
JUIDAの岩田拡也常務理事は「導入の要望が増えた場合に対応できるだけの人材を育てておく必要がある」と対策を講じる必要性に言及した。
中野区は、今回のデモンストレーションで会場提供や関連する道路の通行止めなどの調整を担った。今回の会場となった中野サンプラザも、運営会社の全株を中野区が保有しており調整が他の民間設備に比べ容易だった面がある。今後、区内でドローン飛行の要望があれば、会場提供などの調整を含めた対応を検討することになる。
ロボット技術の集積を進める福島県で製品や技術を集めた毎年恒例の技術展、「ロボット・航空宇宙フェスタふくしま」2021が11月19、20日に、福島県郡山市にある複合コンベンション施設、福島県産業交流館「ビッグパレットふくしま」(福島県郡山市)で開催された。会場には出展者が話題の新製品、新技術を展示していた。中にはこれから社会に出る新製品や、隠れた新品もあり、関心層が次々とブースをのぞき込んでいた。
会場はJR郡山駅から南に約4㎞の場所に広がる、複合コンベンション施設、福島県産業交流館「ビッグパレットふくしま」で、会期の2日間は郡山駅との間でシャトルバスが運行された。新型コロナウイルス対策のため、入場者は事前登録者に限定され、過密にならない工夫がされた。
ロボットの技術の中でも目立ったのはドローン。機体そのものや、その個性を引き出す技術、飛行を支えるシステム、ドローンを使うための研究開発、ドローンを安全に飛行させるための運航管理を支える技術の研究成果、地域を活性化させる取り組みなどが展示された。また、飛行するドローンに限らず、地面を走る機体、水の中で活動する機体も展示された。会場内には大きな水槽が設置されてあり、子供たちが水中ドローンの操作体験ができるようになっていて、子供たちが周囲をとりかこむ場面もあった。
株式会社東日本計算センターと株式会社福島三技協の共同出店ブースにあったドローンは、機体の頭上にZ型のアームがついていた。隣に風力発電用の風車の模型もある。尋ねるとこれは、大型風力発電用ブレード(風車の羽のこと)を安全、確実、効率的に点検するためのソリューションという。ブレードは雷対策用接地線の断線確認が必須。一般的には特殊な資格を持つ作業員が、フルハーネスでロープに体をくくりつけてブレードの先端を見回り確認するという。危険が伴うが、必要な作業だ。この作業をドローンで行うためのソリューションが展示機だ。ブレードまで浮上し、機体のアームをのばし、先端についている装置で確認するという。頭上のZ型アームは折り畳み式で持ち運びを考慮した。実用化までもうすぐだ。
株式会社東日本計算センターは別の共同出展ブースで、救命具を届けるドローンも展示していた。機体の床下のウインチから延びたロープに救命具を吊り下げて届けることを想定している。注目したのは救命具を取り付けるアタッチメント。これはプラスチック製品開発、株式会社ニックスがドローンの個性を引き出すために開発したプロダクトだ。吊り下げた荷物が、地面に三度ほど触れると、取り付け部分のカギがカチャっと開き、吊り荷が切り離される。すぐに使えるように、機体を着陸させることなく、荷物が下せるよう工夫した。ドローンの周辺や小物に、こうした掘り出し物が見つかることがこの展示会の醍醐味でもある。会場にいたニックスの担当者は「見学者からフィードバックを頂き、よりよいものにブラッシュアップさせたい」と話していた。
会場中央には水槽が設置され、水中ドローンの動きを見せていた。株式会社スペースワンや、同社が事務局をつとめる一般社団法人水中ドローン協会、同社と連携して活動している株式会社SkyBee、福島ドローンスクールなどが、水中ドローンを持ち込み動く様子をデモンストレーションしていた。子供たちが操作を体験する時間もあり、水槽の中の荷物をドローンでつかまえるなどの体験を楽しんでいた。
一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)、一般財団法人総合研究奨励会・日本無人機運行管理コンソーシアム(JUTM)、日本産業用無人航空機工業会(JUAV)のブースでも活動をパネル展示。国内でのドローン活動が普及したことを証明する。
JUIDAのブースでは初日、事務局をサポートするブルーイノベーション株式会社がAGVの走行デモを披露。近く、正式に発表される可能性がある。また、ブースにはJUIDA会員企業であるヒトロボ株式会社が同社の取り扱う製品を展示。その中には、DJIの新しい話題機、Mavic3が、おろしたての1フライトもしていないピカピカな状態で来訪者を歓迎していた。
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)も、手掛けるドローンプロジェクトのこれまでの成果を公開したほか、最近話題のドローンを解説するCGアニメーション『ドローンが活躍するミライ』を使った子供向けクイズ端末を展示。クイズは全3問で、不正解だと同じ問題が再び出題される。3問おわると必ず「全問正解!」と表示される、利用者に超絶やさしい仕様になっている。
イームズロボティクス株式会社は、産業用ドローンE6106FLMP(ASSY)とともに、高精度衛星アンテナ、SLAMを併用し屋内外をシームレスに自動走行する搬送用無人車両(UGV)を展示していた。「これが今回の目玉といえるかもしれません。屋内外自動走行、遠隔操縦、遠隔監視、非対面、非接触の車両で、スーパーシティ対応です」と担当者が話していた。
福島県田村市が慶應義塾大学ドローン社会共創コンソーシアムと連携協定を締結した一連の活動の中で、地元主導で設立された地域のドローン普及組織、「ドローンコンソーシアムたむら」もブースを出展。この5年でドローンの活動が飛躍的に進んだことを印象付けた。
このほか南相馬市で新工場の竣工を済ませたばかりの株式会社テラ・ラボ、南相馬市の株式会社eロボティクス、マグネシウム機体で独自性を発揮する株式会社石川エナジーリサーチ、水陸両用機開発の株式会社スペースエンターテインメントラボラトリー、橋梁点検ソリューションで定評のある株式会社デンソー、福島県いわき市に本拠を構えるメーカー株式会社DroneWorkSystem、有限会社ボーダック、株式会社リビングロボットなども独自機体やロボット、ソリューションを展示した。
会場のステージでは、地元在住のエアレースパイロット、室屋義秀さんの講演や、福島空港ダンスチームFLYERSのパフォーマンスなども行われた。なお、11月19日に福島県南相馬市の福島ロボットテストフィールドで取材をしたJUTMの運航管理に関係する実証実験で、実験の柱となったドラマの中で主役級の活躍をした警備会社の女性が、FLYERSのメンバーの1人と交流があると話していたため、パフォーマンス終了後にチームに話しかけてみたところ該当者と遭遇できた。警備会社女性が活躍されておられたこと、ダンスチームにエールを送っておられたことを伝えると、「とてもうれしいです」と喜んでいた。警備会社の社員と、福島空港のダンスチームメンバーとの縁を、ドローン関連の取材でつなげることができた縁は、ドローンの社会受容性拡大への期待を高めさせてくれた。