ドローン配送をトラックや鉄道など既存交通手段と組み合わせて、効率性、利便性の向上と環境負荷の低減を図る「新スマート物流」の実証実験が、群馬県安中市で行われた。市内の3カ所にドローンの離着陸地点を設置し、ドローンが3地点を巡回し、荷物を届けては受け取り、次の目的地に届けた。野菜を届けた先では医薬品を積み込むなど空荷にならない配送の効果を検証した。あわせて群馬県外の漁港で水揚げされたアンコウをタクシー、新幹線とリレーして、調理施設のある拠点に運び、調理した弁当をドローンで届ける配送も試した。ひとつの実験としては多くの要素をぎゅっと詰め込んでおり、関係者は「目標としていたことをすべて遂行できた」と話した。今後、成果や課題を洗い出す。
実験は安中市、セイノーホールディングス株式会社(岐阜県大垣市)、株式会社エアロネクスト(東京)が実施。実験の拠点会場となった旧九十九小学校の講堂には「安中市ドローン配送実証実験出発式~10 年後、 20 年後の未来の為に」と書かれた横断幕が掲げられ、あいさつに立った安中市の岩井均市長らが実験の趣旨を強調した。3者は2022年 10 月 4 日にドローンを含む次世代高度技術活用で地域課題の解決に貢献する新スマート物流の構築に向けた包括連携協定を結んでいる。この実験は協定に基づく取り組みの第一弾だ。国土交通省の「CO2 削減に資する無人航空機等を活用した配送実用化推進調査事業」を活用した。
地域自主組織や地元事業者と連携し、地元の課題を解決することが特徴で、採算性の検討を軸に、貨客混載、オンライン診療の有効性を検証した。
実施したのは2月8日、安中市内の廃校となった旧・九十九(つくも)小学校、碓氷病院、ゴルフ場THE RAYSUMを結ぶルートを設定して行われた。旧九十九小学校を配送拠点みたて、周辺で収穫された野菜を積み、ゴルフ場に配送。野菜を届けて空いた荷物室にゴルフ場のクラブハウスにあるキッチンで調理した弁当を積んで、碓氷病院に届けた。碓氷病院では届けられた弁当を自転車で近所のスーパーに運んだ。また碓氷病院で弁当をおろして空いた荷室に、病院が院内薬局で処方した医薬品を乗せ、遠隔診療をした患者の待つ旧九十九小まで届けた。
なお、ゴルフ場THE RAISUMには、九十九小学校から運ばれた野菜とは別に、新潟県糸魚川市から、地元特産のアンコウも届いた。アンコウは糸魚川で水揚げされ鮮魚店で並んでいたもので、スタッフが地元のタクシーを使ってJR糸魚川駅までお運び、そこから安中榛名駅まで新幹線で運び、駅からゴルフ場まではセイノーグループが運んだ。ゴルフ場に届いたアンコウは、ゴルフ場内のクラブハウスのシェフがキッチンで調理して唐揚げにして、弁当おかずに加わった。
また、ゴルフ場では、クラブハウス前から、場内のあずまやまでできたてのラーメンを運ぶ実験も実施した。ラーメンはラップをかけて容器にいれて、ドローンに納められた。あずまやに届けられたラーメンは安中市の岩井均市長が試食し、「ラーメンはあんかけのサンマーメンで、あたたかくできたてそのものでした」と感想を述べた。
エアロネクストの田路圭輔CEOは「住民の利便性向上にどの程度貢献できるのかをこれからも注視していきたい。また地域の活性化には、CO2削減など環境負荷の低減を伴うことが重要だと思っていて、こちらも地道に取り組みたい」と話した。
セイノーホールディングスの河合秀治執行役員は、ドローンが到着する様子を幼稚園児たちが見物していたときの様子について「あの子たちが大きくなったときに、ドローン配送が職業として成り立っている可能性があり、それを選ぶ子もいるかもしれないと想像していた。実際に見ることも、実証実験を行う意味のひとつだと思う」と目を細めた。
ドローンを取り入れた配送サービスを展開する株式会社NEXT DELIVERY(山梨県小菅村)が茨城県境町で住民向けに配送のデモンストレーションを実施した。デモンストレーションでは町内の飲食店のラーメンや弁当を配達車両とNEXT DELIVERYの親会社、株式会社エアロネクストが主に開発した物流専用ドローンAirTruckとでリレー配送をして注文者に届けた。境町は自動運転バスの運航や、2023年度中に運用開始を見込む「境町ドローンラボ・ドローンフィールド」(仮称)の設置など、住民の利便性向上にテクノロジーを生かす取り組みに積極的で、NEXT DELIVERYは、地元の利便性向上を図りながら、物流業界の課題解決やCO2削減を目指す。発表は以下の通りだ。
株式会社NEXT DELIVERY(本社:山梨県小菅村、代表取締役:田路圭輔、以下 NEXT DELIVERY)は、2023 年 2 月 28 日に、茨城県境町にてドローンを活用した新スマート物流「SkyHub」 始動に向けた取組みとして、住民向けのドローン配送サービスのデモンストレーションを実施しました。
2022 年 10 月 3 日に、境町、セイノーHD、エアロネクスト、BOLDLY 株式会社、株式会社セネックが締結した「ドローン、自動運転バスを含む次世代高度技術の活用に関する協定」を基に、セイノーホールディングス株式会社(以下 セイノーHD)と株式会社エアロネクスト(以下 エアロネクスト)が開発推進するドローン配送と陸上輸送を融合した新スマート物流SkyHubの拠点となる『ドローンデポ境町』を、2023 年 2 月 3 日に開所しており、今回のデモンストレーションはその具体的な活動の一環となります。
NEXT DELIVERY は、エアロネクストの子会社で、ドローン運航や『ドローンデポ境町』運営を含む、新スマート物流SkyHubの実質的な実施推進をしています。
【実証実験概要】
1.背景と目的
日本では、過疎化が進む地方における、公共交通の維持、物流業界の人手不足、高齢者を含む買い物難民の問題が深刻化しています。このような状況を踏まえ、地上輸送とドローン配送を連結させた新スマート物流システムである SkyHubの導入により、物流人手不足の問題を解消し、高齢者や買い物難民などの利便性向上や地域経済の活性化を図ることを目的としています。また、従来の物流手段に比べてCO2 の排出量が少なく、環境負荷の軽減にもつながります。
2.実施内容
今回の実証実験は、市街地から地上輸送とドローン配送を連結させ、境町金岡地区の住民に、『ドローンデポ境町』の並びにある山田屋のラーメンと地元の食事処 割烹ひさしの牛サーロイン弁当をドローンデポから車で約5分の旧ゲートボール場まで軽バンで運び、ドローンに搭載し、約3kmの距離をエアロネクストが開発した物流専用ドローン AirTruck で約5分飛行し、注文者の元に届けられました。
出来立てのラーメンやお弁当を受け取った稲垣さんは「ラーメンは湯気が出ていて熱々で、お店の味が畑で食べられて嬉しい。畑にも出前をしてくれるといいな」と今後への期待も込めたコメントをしています。
今後もNEXT DELIVERYは、境町において、ドローンや自動運転バスを活用した効率的な物流システムをベースに、境町の課題や市民のニーズに沿ったサービスを展開することで、物流業界の課題解決や CO2 削減を図るとともに住民の利便性向上や地域経済の活性化を目指します。