建設現場DXのARAV株式会社(東京都文京区)は、遠隔システム開発を手掛ける合同会社ビスペル(静岡県富士市)と共同で、油圧ショベル作業の自動化システムを開発、事業化を開始した発表した。このシステムを使うことで、油圧ショベルが掘削からダンプトラックなどへの積み込みを自律的に行うことができる。ARAVは2021年中にこのシステムの建設現場への実証導入を目指す。
ARAVは東京大学発の建設現場のDX・自動化支援を手掛けるスタートアップ。昨年6月にはビスペルと共同で油圧ショベルのインターネットを経由したリアルタイムの遠隔操作に成功している。今回開発したシステムでは、油圧ショベルが掘削からダンプトラックへの積み込みまで一連の作業を自律的に行うことができる。システムはメーカー、機種を問わずいずれにも対応する。既存の建機に後付けが可能だ。
事業化にあたり行った実証実験では、自動運転機能を搭載した無人油圧ショベルが、有人操作の油圧ショベルから受け取った残土を、有人操作のダンプトラックに自律的に繰り返し載せることができることを確認した。
この実証事業は内閣府と準天頂衛星システムの運用等事業を行う準天頂衛星システムサービス株式会社(東京都府中市)の「2020年度みちびきを利用した実証事業」に採択された事業で 準天頂衛星みちびきのセンチメータ級測位補強サービスを活用し評価試験を実施した。
油圧ショベルによる自律的な掘削・積み込みは、「建機・周辺環境の状態認識」と「掘削・積み込み動作の生成と実行」を繰り返すことで可能になっている。「建機・周辺環境の状態認識」は、姿勢センサやGNSS, 3D LiDARなど複数のセンサで、有人操作のダンプトラックの動作も含めて状況を観測し、ARAVの技術で統合することで実現させた。また「掘削・積み込み動作の生成と実行」にはARAVのモーションプランニング技術で、掘削すべきポイントから積み込みポイントへの動きを自律的に計算して動作が生成・実行されるという。
ARAVは、2021年中に本システムの建設現場への実証導入を目指す。特に繰り返し動作が過酷な残土積み込みタスクを対象に自動積み込み油圧ショベルのサービス展開を図る方針だ。同社はこのシステムが、より少ない人数で今までの作業を行うことを可能にすることを通じ、安全確保やオペレーター不足などの課題解消に貢献したいと意気込む。あわせて建設機械の自動化・遠隔化の共同実証実験パートナーを募集している。