小、中、高校生に遊びと学びを提供するオンラインのワークショップ「ズームイン!!アカキャン!May 2020」がゴールデンウイークに開催された。5月4日に開催されたドローンのセッションには、日本を代表するドローンレーサー、横田淳さんがゲストとして登壇し、運営者の「まぼさん(慶応義塾大学SFC研究所ドローン社会共創コンソーシアム副代表の南政樹さん)」の案内でドローンの可能性や展望を自身の活動をふまえて紹介した。これに対し参加した小中高生が旺盛な好奇心から続々と発言。数々の斬新な発想にゲストの横田さんが「すごいですね」とコメントするなど、参加者世代の潜在力の高さを証明した。
アカデミーキャンプは今回が初めてのオンラインでの開催となった。
ドローンのセッションでは、案内役のまぼさんが、自分の仕事を「科学者」と自己紹介。科学者についてまぼさんは「いろんなことをつきつめる人のこと」と説明し、参加者にも科学者になったつもりで考えることを提案した。まぼさんは、ドローンの活用場面 について、公開されている映像をまじえて紹介したり、「空の使い方」「ドローンの飛ぶ仕組み」を説明したりしたうえで、参加者にドローンの使い道を考えてみることを呼びかけた。
まぼさんに招かれて登壇したゲストの横田さんは、まず自身の活動について映像をまじえて紹介。海にせり出した崖の上から岸壁伝いにドローンで急降下させた迫力ある映像や、レースに参加したとき疾走感あふれる映像のほか、日本各地の桜を空撮しすばらしさを世界に発信する「桜ドローンプロジェクト」の映像を流すと、参加者から「下から見るのと全然違う!」「きれい」「すごい」「いつもは見れない視点!」などの感動コメントが集まった。
横田さんは「自分はドローンが好きなので、好きなことで遊んでいただけなんです。気づいたら一日に13時間やっていた、などということもありました。そのうちに日本代表になったり、災害現場での活用に呼ばれるようになったりしました。いま、いろんな場面でドローンを活用する取り組みがありますが、レースをやっている人のドローンの技術はめちゃくちゃ高いということが改めてわかります。その高い技術をふだんは遊びに使っているわけです」と、楽しむことや好きなことに打ち込むことの重要性を伝えた。
まぼさんはこのあと、参加者に二つのテーマを提示。ひとつは「コロナ対策としてドローンで役立てられそうなことを考えよう」。もうひとつが「コロナが終わったあとドローンを使ったらいいと思うことを考えよう」。まぼさんはテーマを考えるときには「できるかできないか、は気にしないでいい」とアイディアにブレーキをかけないでいいことを説明し、参加者を数人ずつの班に分けたうえで、テーマごとに発言を促した。
ここでも参加者からは積極発言が相次いだ。
「コロナ対策」では、遠隔で体温検知や危険な外出への呼びかけ、自宅にいながら遊園地に出かけてジェットコースターを体験、自分の代わりに登校してもらう、散髪してもらう、ドローンでライブに参加、などコロナ影響下での健康確保や、生活管理から娯楽に関係するアイディアまで幅広い意見が出された。
コロナ後の使い方についても、VR散歩、買い物、打ち水などの意見披露が続き、中には(汚染対策として)「空気清浄機を飛ばす」、(空から情報収集をして)「他国の闇を暴く」といった大胆な意見もあがるなど、セッションは大いににぎわった。
アカデミーキャンプは2011年の東日本大震災と福島第一原発事故をきっかけに、慶応義塾大学湘南藤沢キャンパスで講師をしていた斉藤賢爾(けんじ)さん(=早稲田大学 大学院経営管理研究科教授)の呼びかけで、福島の子供たちのために学びと遊びを提供する宿泊型ワークショップとして発足、順調に回を重ねてきた。今回は、新型コロナウイルスの影響で宿泊型をオンライン型に変更したものの、「世界を変える力を、子どもたちに」の趣旨をそのままに、期間中、研究者・ビジネスパーソン・アスリート・アーティストらがプログラムを繰り広げてきた。参加者も積極発言で主催者の思いにこたえた。
参加者からの意見発表後に感想を求められたゲストの横田さんは「すごい。大人も思いつかないような意見もありました」と感心した様子で講評した。最後にまぼさんが、「この中にはすでに似たようなことを取り組んでいる、というものもあるし、まだ社会に送り出していないサービスもある。まだないものは、生み出すチャンス。これをきっかけにして世の中を変えることをめざしてくれたらうれしい」と結んだ。