自動制御技術のブルーイノベーション株式会社(東京)は5月20日、一宮町(いちのみやまち、千葉県長生郡)で、津波避難広報システムの運用を始めた。津波警報などの発令を受けてドローンが自動で離陸して海岸に飛び、海岸にいるサーファーらに高台への避難を呼びかける。一宮町役場で完成記念式典が行われ、馬淵昌也町長は「サーフタウンとしてみなさまに安心して頂けるレベルがはるかに上昇すると大変うれしく思っています」などとシステムの運用開始を歓迎した。この日はドローンのデモ飛行も行われ、海上を飛びながら避難を呼びかける様子が公開された。
運用が始まった津波避難広報システムは、ブルーイノベーションが独自開発した制御システム、Blue Earth Plarform(ブルーアースプラットフォーム、BEP)をドローンポートの自動運用に適用した「BEPポート|防災システム」を一宮町向けに調整したシステムだ。同じ仕組みを使ったシステムが仙台市に導入されていて、一宮町での導入は津波避難広報システムとして2例目となる。
システムは国が緊急事態を知らせる「全国瞬時警報システム(Jアラート)」と連動していることが特徴だ。Jアラートのうち、大津波警報、津波警報、津波注意報の3種類の津波関連情報を受信すると、自動制御システムであるBEPが自動でドローンポートにドローンの飛行を指示し、ポートに待機していたドローンが自動で離陸する。
離陸したドローンは海岸に向かって飛行し、海岸線から10~20m程度の海上上空にたどりつくと、水面から25mほどの高さにまで飛行高度をさげて、機体に搭載しているスピーカーから「ただちに高台に避難を」などと海上のサーファーや周辺の人々に呼びかける。スピーカーのメッセージの種類はJアラートが受け取った津波情報によってBEPが使い分けを指示する。
システムは頭脳であるBEPと、ドローンポート、ドローン本体がセットになっている。採用されたドローンポートは「DJI DOCK」、ドローンは「DJI Matrice30T」。ポートと機体は一宮町役場の屋上と、町役場から直線で2.7㎞離れた一宮町立東浪見小学校にそれぞれ1組ずつ設置された。機体は視認しやすいように白い機体がオレンジ色で塗装されている。
BEPがJアラートを受信すると、ふたつのドローンポートを同時に制御し、それぞれのポートから自動でドローンが離陸する。一宮町の海岸は約7.5㎞あり、2機のドローンが呼びかけエリアを分担する。飛行時間に限りがあるドローンのバッテリー環境を健全に保ち、沿岸での呼びかけを終えるまでの時間を短縮する。
ドローンの飛行経路や、ドローンのカメラからとらえた映像はBEPでリアルタイム管理され、本部(町役場や災害対策本部、消防など)にいながらに確認できるため、職員が現場に向かう危険を回避することにもつながる。
システム導入までは、一宮町では防災無線が避難広報の中心的な役割を担ってきた。サーファーたちの心強い味方だが、固定された無線では呼びかけ効果に濃淡ができることや、建物の影になった場所への呼びかけなどが課題として指摘され、防災体制の強化が検討されてきた経緯がある。一宮町の馬淵昌也町長は「高台から光を照らして知らせるなどの方法も検討したが網羅性に課題があった」という。
完成記念式典で馬淵町長は「防災では災害情報を瞬時に正確にすべてにもれなくお知らせすることが大事です。今回のシステムはその一歩として期待していますし、サーフタウンとしてみなさまに安心して頂けるレベルがはるかに上昇すると大変うれしく思っています」と述べた。
式典では小関義明一宮町議会議長が「わが町の防災体制の向上に大きく寄与すると期待しています」とあいさつしたほか、一宮町サーフィン業組合長の鵜澤清永組合長の「今回のシステムはまさに命を守るための仕組みです。情報をいちはやく正確に必要な人にしっかり届けることは、早めの避難行動に直結し、被害を最小限に抑える力になります」と期待を寄せるメッセージや、プロサーファー岩見天獅さんの「海の上で危険をどう伝えるかは本当に大切。今回導入されるシステムは聞こえない、と必ず届く、に返す取り組みだと思います」というメッセージが紹介された。
この日行われたデモフライトでは、一宮町役場の屋上に設置されたドローンポートから離陸したドローンが、一宮海岸の上空からスピーカーで呼び掛ける様子が披露された。
一宮町は昨年(2024年)11月に、ブルーイノベーションのシステム導入を発表し、その後、調整を続けてきた。この日の発表から実運用に入る。原則としてJアラートの発表がないとドローンは出動しないが、防災訓練などのさいに飛行を公開する可能性があるという。
ブルーのドローン津波避難広報システム、一宮町が導入 仙台市の導入を教訓に決定
公表されたプレスリリースは以下の通り
~Jアラートと連動、避難広報と状況把握を完全自動化。千葉県一宮町で2例目の社会実装~
ブルーイノベーション株式会社(本社:東京都文京区、代表取締役社長:熊田 貴之、以下 ブルーイノベーション)は、自治体向けに開発した「BEPポート|防災システム」(以下 本システム)の本格提供を、2025年5月20日より開始しました。
同日、千葉県一宮町にて本システムを活用した津波避難広報システムの完成記念式典が開催され、津波対策としては2022年に導入された宮城県仙台市に続く2例目の社会実装となります。
本システムは、Jアラート(全国瞬時警報システム)と連動し、災害発生時の避難広報および現場の状況把握を自動化することで、迅速かつ的確な初動対応を可能にする次世代型の防災ソリューションです。ブルーイノベーションは今後、人に依存しない無人防災の実現を目指し、全国自治体への展開を進めてまいります。
■災害対応に求められる「初動対応」・「迅速な状況把握」・「確実な伝達」
地震・津波・豪雨・森林火災など、頻発する自然災害が懸念される中、自治体には迅速な「避難広報」と「被災状況の可視化」が求められます。しかし、実際の現場では「人手不足」や「安全確保」が課題となり、迅速な初動対応が困難なケースも少なくありません。
そこでブルーイノベーションは、自治体が抱える防災対応の課題に対し、「避難広報」と「状況把握」を自動化する次世代型防災ソリューションとして、「BEPポート|防災システム」を開発しました。
■「BEPポート|防災システム」の3つの特長
本システムは、ブルーイノベーションが開発したドローンポート情報管理システム「VIS(Vertiport Information System)」※1を基盤とし、Jアラートと連携することで、災害発生時にドローンが自動で発進。広域への避難広報とリアルタイム状況把握を実現し、自治体の防災力向上に大きく貢献します。
1.Jアラートと連動した自動避難広報
Jアラートを受信すると、ドローンポートからドローンが自動発進。上空からスピーカーで避難を呼びかけ、人手を介さず、迅速な避難指示を行います。
2.被災状況のリアルタイム把握
あらかじめ設定された飛行ルートを自動飛行しながらドローンが被災地の映像を取得。複数機の同時運航で広域をカバーし、映像はBEPポートサーバー(国内クラウド)へ自動保存。現場の状況を安全・確実に把握・共有できます。
3.職員の負担軽減と安全確保
遠隔からの状況確認により、職員の現地出動を最小限に抑えます。専用アプリによる簡単操作で自動運航できるため、ドローンの操縦スキルに依存せず、安全な初動対応が可能です。
■サーフィンの聖地、千葉県一宮町への導入
全国有数のサーフスポットとして知られる千葉県一宮町は、年間約60万人のサーファーや観光客が訪れ、海岸エリアには常に多くの人が集まる地域です。一方で、約7.5kmにわたる広域な海岸線を有する同町では、津波などの災害発生時における避難指示の迅速かつ確実な伝達が大きな課題となっていました。
この課題を解決すべく、一宮町では当社が開発支援を行った宮城県仙台市での津波避難広報ドローン事業の事例に着目し、本システムの導入を決定し、4月から稼働開始しました。津波注意報以上が発令された際には、一宮町役場と東浪見小学校の屋上に設置されたドローンポートからドローンが自動で発進。上空からの避難広報と現場映像の取得を同時に実施します。
これにより、サーファーや観光客、地域住民を問わず、広域かつ迅速な避難支援と状況把握が可能となり、一宮町はより強固な災害対応体制を実現しています。
■「BEPポート|防災システム」の全国展開へ
本システムは、津波災害に限らず、地震・洪水・火山災害・森林火災など、多様な災害への対応を想定した汎用性の高いソリューションです。
今後、全国の自治体や公共団体への導入を積極的に推進し、特に人手不足や高齢化が進行する地域において、人に依存しない「無人防災インフラ」の構築と社会実装を目指してまいります。
東京株式市場で6月11日、ドローン関連銘柄が物色された。ブルーイノベーション株式会社(東京)の株価は一時ストップ高の2023円をつけ、2023年12月に上場して以来の2000円台を回復した。同社株のストップ高は2日連続。株式会社Liberaware(リベラウェア、千葉市)、株式会社ACSL(東京)、Terra Drone株式会社(テラドローン、東京)も買われた。ドローン4銘柄はグロース市場の午前の売買高ランキング上位10銘柄にそろって登場した。
ブルーイノベーション株は寄り付き前から買い注文を集め、前日終値の1623円より316円高い1939円で寄り付いたあと午前9時24分に、前日終値比400円高いストップ高となる2023円をつけ、上場日以来の2000円超えとなった。なお前日も獲りき時間中に、その日の値幅制限である300円高のストップ高をつけていた。
そのほかのドローン関連株も買われていて、リベラウェアは一時、前日終値113円高の1870円、ACSLも一時、前日終値比79円高い1359円、テラドローンも一時、前日終値の6240円から600円高い6940円を付けた。
ドローン関連株はトランプ米大統領が6月6日に署名した“Unleashing American Drone Dominance” と“Restoring American Airspace Sovereignty,”の2つの米国内でのドローン開発やビジネス活性化に関わる大統領令を受けて買われやすくなっていた。6月10日にはロンドンで開催されていた米中閣僚級協議で、ラトニック米商務長官が中国によるレアアース輸出規制を「解決されるだろう」と見通した発言が伝わるなど協議の進展が経済の活性化を展望させたことでハイテク株を中心に投資を呼び込み、ドローン株への物色を後押ししたとみられる。
また日本国内では、政府による道路陥没対策やコメ不足対策に関連するスマート農業対策推進などの期待から、関連技術としてドローン関連が買われやすくなっていた。
米国でもトランプ大統領令に連動する形でAAM開発のジョビー・アビエーション、アーチャー・アビエーションなどが急騰した。
日本UAS産業振興協議会(JUIDA)と株式会社コングレは、6月4~6日に千葉・幕張メッセで開催したドローンの大規模展示会「第10回Japan Drone2025/第4回次世代エアモビリティEXPO2025」の来場者は3日間合計で、2万3049人と前年の2万1273人から1776人(8.3%)増えて閉幕したと発表した。
次回の開催は2026年6月3~5日に、千葉・幕張メッセで「第11回Japan Drone2026/第5回次世代エアモビリティEXPO2026」として開催する。また本開催とは別に地方版として、2025年11月26、27日に大阪で「Japan Drone/次世代エアモビリティEXPO 2025 in 関西」の開催も決まっている。
今回の「第10回」の来場者数は、6月4日が7491人(前年初日の6961人から530人、7.6%増)、6月5日が7669人(前年2日目の7062人から607人、8.6%増)、6月6日が7889人(前年3日目の7250人から639人、8.8%増)だった。
出展は285組(社・団体)で、国内が221組、海外64組(9か国・地域)だった。
期間中に開催した「Japan Drone & AAM Awards 2025」の結果は以下の通り。
<ハードウェア部門>
最優秀賞:エバーブルーテクノロジーズ株式会社「除雪ドローン®」
<ソフトウェア・アプリケーション部門>
最優秀賞:株式会社ROBOZ「インドアドローンショー」
<Advanced Air Mobility部門>
最優秀賞:AeroVXR合同会社「①認証コンサルティング事業、②テストパイロット育成事業(JTPS)」
<海外部門>
最優秀賞:上海中研宏科ソフトウェア株式会社「車両とドローンの協調システム」
<オーディエンスアワード>
株式会社ROBOZ「インドアドローンショー」
<10周年記念特別賞>
株式会社Liberaware「IBIS2」
<審査員特別賞>
DIC株式会社「全方位マルチコプター HAGAMOSphere」
また「Drone Movie Contest 2025」の結果は以下の通り。(敬称略)
<一般映像部門 グランプリ>
「厳冬の果て、流氷のまち羅臼」(LOVE.PHANTOM 宮川和之)
<縦ショート動画部門 グランプリ>
「【ホームビデオ】妖精のもりへ」(矢尾板亨)
<審査員特別賞(SEKIDO賞)>
「~四季が彩る安達太良山~福島」(武藤貴之)
<審査員特別賞(ごっこ倶楽部賞)>
「【ドローン撮影】イトーキ本社オフィスを飛行(2025ver.)」(株式会社イトーキ)
作品は以下のサイトで
https://ra-drone.dhw.co.jp/contest/
ドローンの運航サービス、人材育成などを手掛ける株式会社ダイヤサービス(千葉市)が、応急手当講習の普及を目指し協賛パートナー制度を導入した。現在、協賛パートナーの募集を進めている。同社はドローン運航中にけがをしたりさせたりしたさいに、医療機関にかかるまでの間にすべき応急手当の方法を身に付ける講座を6年前から提供している。協賛制度を通じて講習や応急手当の必要性の普及を加速させ、講習の受講料抑制につなげることを目指す。
ダイヤサービスが協賛制度を通じて普及を目指す「ドローン応急⼿当講習」は、ドローンを使っているときにけがをしたりさせたりした場合の応急手当のノウハウを学ぶ講習で、安全を重視するダイヤサービスが、看護師、救急救命士、民間航空機の客室乗務員経験者らとともに開発に着手、2019年3月にカリキュラム化した。「一次救命措置」と呼ばれる措置の手順やそれぞれの方法から具体的な方法、CPRと呼ばれる措置の方法、AEDの使い方、バイタルサイン、PRICES 処置、止血対応などをテキスト、実技を通して体系的に学ぶ。止血方法が含まれるのは珍しい。
受講者には学んだことを証明する認定証「ドローン応急⼿当資格認定者」を発⾏する。「ドローン応急⼿当資格認定者」が在籍する法人は、「ドローン応急⼿当資格取得者在籍事業者」を名乗ることが認められる。また学んだスキルを維持するための3年毎の更新講習もある。
受講者は、ドローンを使う現場が都心部でないことが多いことから、緊急通報をしてもすぐにかけつけてもらえる場所でないことが多いことに伴う不安の解消を求める人が多く、「体系的に効率的に学べる講座として有益」と評価が高い。
同社がカリキュラム化したあとの2021年に成立し、2022年12⽉に施行された改正航空法では、ドローン運用中に事故でけが人が出た場合、操縦者には負傷者の救護義務が課されることが明記された。具体的には航空法第132条90第1項に「無⼈航空機の⾶⾏により⼈が負傷した場合、操縦者は直ちに負傷者の救護等、危険を防⽌するために必要な措置を講じなければならない」とあり、義務を怠った場合、2年以下の懲役または100万円以下の罰⾦が科される可能性があることが盛り込まれた。
また2022年11月に制定された報告要領(無人航空機の事故及び重大インシデントの報告要領)には、救護義務についてさらに詳しく記されている。まず、「法第132条の90第1項に規定する事故が発生した場合に、『負傷者を救護することその他の危険を防止するために必要な措置』として、操縦者が直ちに無人航空機の飛行を中止し、講じる必要のある措置をいい、具体的には次の事項をいう。なお、事故に該当する場合に限らず、必要と認められる場合には、所要の救護活動を行うべきである」と「次の事項」を必要な措置と定めている。
具体的には「a)負傷者を救護すること 事故が起きたときは、操縦者及びその関係者は次のような措置を講じなければならない。ア)負傷者がいる場合は、医師、救急車等が到着するまでの間のガーゼや清潔なハンカチ等での止血等、可能な応急救護処置を行う。この場合、むやみに負傷者を動かさない(特に頭部に傷を受けているときは動かさない)ようにする。ただし、二次的な事故等のおそれがある場合は、速やかに負傷者を安全な場所に移動させる。(以下略)」などと記され、「止血」が含まれている。ダイヤサービスの「応急⼿当講習」にはこの止血の方法が含まれる。
一方、義務となった救護の方法を身に付ける方法が限られていたり、学習者には身に付ける場を探すことが難しかったりと、応急⼿当の方法を学ぶ場は依然、増えていない。
このためダイヤサービスは協賛パートナーとともに、応急手当の啓蒙、講習の普及拡大、講習内容の随時更新、受講料金の抑制につなげたい考えだ。ダイヤサービスは社団法人を設立したのちに、協賛パートナーを含めた普及・啓蒙活動の主体を社団法人に移管する方針だ。
ダイヤサービスの戸出智祐代表取締役社長は「万が一の事故時に現場で応急対応できる人材は、いまもほとんど育っていません。われわれは6年前から応急手当講習を地道に展開して参りましたが、協賛パートナー制度で万が一の備えを業界の常識にすることに挑戦したいと思っています」と話している。
株式会社ダイヤサービス:https://daiyaservice.com/
協賛パートナー説明と問い合わせ:https://daiyaservice.com/sponsorship/
狭小空間点検用小型ドローンIBIS2Assistを使ったレース、「JR東日本グループドローンDX CHAMPIONSHIP」が6月7日、JR高輪ゲートウェイシティ駅と一体化した一帯に構える大型複合ビルで開幕した。初日の7日はJR東日本の設備点検、工事設計業務などでドローンを活用する部署4チームがIBIS2でタイムを競い合う「JR 東日本グループ Challenge Cup」が行われた。駅そっくりで観客からドローンが見えるよう工夫されたコース、選手の表情が分かるステージ、手に汗握る実況、ドローンの操縦席にのっているような迫力ある映像など、本格的なレース仕様の演出が特徴で、白熱したレースと各チームの熱のこもった応援で来場者も大きな拍手を送った。8日には企業対抗戦が行われる。
ドローンDX CHAMPIONSHIPはJR東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本、東京)、デジタルツインのCaLta株式会社(東京)、Liberawareが開催した。レース演出はプロチームの運営、イベント企画を手がけ、国際レースへの出場や優勝の経験も豊富なDRONE SPORTS株式会社(東京)が担った。
会場はJR高輪ゲートウェイシティ駅改札からすぐのTAKANAWA GATEWAY CITY THE LINKPILLAR 1の地下2階にあるTAKANAWA GATEWAY Convention Center LINKPILLAR Hallだ。
ホール内にJR高輪ゲートウェイシティ駅そっくりのミニチュアコースが設置された。駅の天井をくぐるコース、ホーム床下の配管をもぐるコースのほか、二次元コードを読み取る仕掛けや、SUICA改札にタッチする仕掛けなどJR東日本らしさを取り込んだ。飛行コースは観客の目の高さが中心で、観客が間近でドローンの動きをみられる工夫も凝らされている。
選手は会場内に設置されたステージの上の所定のシートに座り、ゴーグルを装着して、コントローラーを操作してドローンを動かす。ステージの背景の大型スクリーンには、選手の表情や飛行中のドローンの操縦席に座っているかのような映像が映し出される。
レースは2チームの対戦で、勝ちあがる形式で行われた。各チームは3選手で構成され、3つの対戦の総合ポイントで勝者を決め、勝ち上がる。レースがスタートするとスクリーンに経過時間や、ミッションをクリアするたびに加算されるポイントなどが表示される。ドローンが上手にコースを抜けると、チームの応援団から大きな拍手があがるなど白熱した展開が続き、わかりやすいルールに一般公開された身に来た観客も拍手を送っていた。
この日は決勝で最速タイムをたたき出したチーム「E-Wings」(電気ネットワーク部門)が優勝した。2位が「Z3C」( エネルギー企画部)、3位が「チームKENKOU」(建設工事部)、4位が「Kenchiku Smart Maintenance」( 設備部門=東京建築建設技術センター)だった。
2日目の6月8日には、IBIS2を活用する8つの企業チームによる「JR 東日本グループ presents『IBIS2 Master Cup』」が開催される。ソフトバンク株式会社、東京電力ホールディングス株式会社、新潟工科大学フィールドロボティクス研究室/株式会社アグリノーム研究所/九電ドローンサービス株式会社合同チーム、KDDI スマートドローン株式会社、セントラル警備保障株式会社、株式会社えきまちエナジークリエイト、JR東日本コンサルタンツ株式会社、JR東日本ビルテック株式会社がレースに挑み、「通信キャリア対決や、電力大手対決が楽しみ」などの声があがっている。
7日のレース後に取材に応じたJR東日本マーケティング本部まちづくり部門品川ユニット(次世代まちづくり創造)の出川智之マネージャーは、「TAKANAWA GATEWAY CITY は『100年先の心豊かなくらしのための実験場』として新たなビジネス・文化が生まれ続けるまちづくりに取り組んでいますので、ドローン、ロボットの取り組みをお示しすることでその一端をお示しできたと考えています。初日は保守点検、設計など各部署でドローンを使っていることをお客様にも知って頂く機会にしたいとの思いを込めて、社内の取り組みを一般公開することにしました。レースというエンタメ要素を取り込みつつ、これらを通じて安全性や生産性を高めようとしている姿勢を伝えられたのではないかと感じています。また会場内に掲示してあるJR東日本グループのドローンの取り組み、たとえば山間部での使い方や災害時の使い方などを読んでくださっている姿を目にし、JR東日本グループのDXの取り組みを広く知って頂く機会になったと感じています」と述べた。
またこの日、選手としても出場したJR東日本建設工事部基盤戦略ユニット(技術戦略・DX)主務の石田将貴さんは「維持管理などの部署はなかなか表に出る機会が少ないので、このような機会にDXで生産性向上に励んでいる姿勢をお示しできたとも思います。働きやすい環境、職場を目指していることをお示しすることで企業の魅力向上にもつながればいい、とも思っています」などと捕捉した。
さらに大会の今後の開催について出川マネージャーは「お客様を含めて内外の反響などを確認したうえで検討することになります。ただ、JR東日本管内は青森、新潟にも職場がありますので、各地から気軽に参加できる機会はこれからもつくりたいと考えています。個人としては各地でで地方大会を開き、ここ(TGWC)で決勝ができたらおもしろいかな、とは思いますが、これはまだ私個人のアイディアです」と述べた。
ブルーイノベーション株式会社(東京)、VFR株式会社(ブイエフアール、名古屋市)など4社のコンソーシアムは6月4日、千葉・幕張メッセで開催中のドローンの大規模展示会Japan Drone 2025で、試作した国産ドローンポートを公開した。複数のメーカーによる使用が可能な汎用性や、日本主導で発行にこぎつけたドローンポートの国際標準規格ISO 5491に準拠し、外部システムとの連携を可能にしている。発表ではプロジェクトの責任者をつとめるVFRの戸國(とくに)英器取締役が「2027年の社会実装と量産化を目指しています」と展望を表明した。
開発にはブルーイノベーション、VFRとCube Earth株式会社(キューブアース、大阪市)、株式会社Prodrone(プロドローン、名古屋市)の4社がコンソーシアムを組み「4社の強みをいかして開発している」(VFRの戸國氏)という。
開発の背景については「ドローン運用の全自動化、長距離長時間化、インフラ点検活用拡大、緊急武士輸送ニーズ拡大などから対応するドローンポートの需要が高まっている一方、海外製が多く、国際情勢のうえでも、関連する経済安保の観点からも国産ポートが必要との声が高まっている」と説明した。
事業は経済産業省「中小企業イノベーション創出推進事業(SBIRフェーズ3)」に採択されている。
事前に公開された発表内容は以下の通り
~VFR、Cube Earth、Prodrone、ブルーイノベーションの4社コンソーシアムが 国産ドローンポートの社会実装に向けた試作機を初公開~
VFR株式会社(本社:愛知県名古屋市 代表取締役社長:蓬田 和平 以下 VFR)と、Cube Earth株式会社(本社:大阪府大阪市 代表取締役社長:武田 全史 以下 Cube Earth)、株式会社Prodrone(本社:愛知県名古屋市 代表取締役社長 : 戸谷 俊介 以下 Prodrone)、ブルーイノベーション株式会社(本社:東京都文京区 代表取締役社長 最高執行役員 : 熊田 貴之 以下 ブルーイノベーション)の4社は、2023年10月に採択された経済産業省「中小企業イノベーション創出推進事業(SBIRフェーズ3)」において共同開発を進めている「国産ドローンポート」の試作機を、2025年6月4日より開催の『Japan Drone / 次世代エアモビリティEXPO 2025』にて初公開します。
■背景|ドローンの社会実装に必要な“空の拠点”
近年、災害対応やインフラ維持管理をはじめ、様々な分野でドローンの活用が広がっています。その中で、安全な離着陸、充電、保守を担う「ドローンポート」の整備は、今後の省人化を進める上で不可欠です。
しかし、現在開発されているドローンポートは海外製が多く、安全保障の観点からセキュリティ対策の必要性が高まっています。また、日本の災害環境やインフラ構造に最適化された、安全な国産ドローンポートの開発が急務となっています。
こうした社会的なニーズに応えるため、VFR、Cube Earth、Prodrone、ブルーイノベーションの4社は連携し、国産ドローンポートの実用化に向けて共同開発を開始しました。この共同開発は、2023年より経済産業省の「中小企業イノベーション創出推進事業(SBIRフェーズ3)」の支援を受けています。
■国産ドローンポートの社会実装に向けた本格展開
本コンソーシアムでは、ドローンポートの社会実装を加速するため、より高い「安全性」「汎用性」「拡張性」を備えた、国産ドローンポートの開発に取り組みます。
このドローンポートは、以下の設計要件に基づいています。
■各社の役割と開発体制
VFR、Cube Earth、Prodrone、ブルーイノベーションは、それぞれの強みを活かし、ドローンポート本体の設計、機体連携、遠隔制御、統合管理システム、現場実装に至るまで、4社共同で開発に取り組んでおり、以下にそれぞれの役割を示します。
・安全性 : ドローンは離着陸時に最も事故が多く、確実かつ安全に離着陸できることを目指します。
・汎用性 : 現場の多様なニーズから複数のメーカーのドローンの離着陸を可能にします。
・拡張性 : 外部システムとの連携を可能にし、我が国が主導したISO 5491(ドローンポート国際標準)※2に準拠します。
■試作機の概要(Japan Drone 2025で初公開)
展示された国産ドローンポート試作機は、将来の社会インフラとしての「空の拠点」の実装に向けた第一歩となる設計です。
■今後の展開
本コンソーシアムは、今年度内に複数の地方自治体およびインフラ事業者との連携による実証実験を実施予定です。これを通じて実用化に向けた機能検証と運用設計を進め、2027年の社会実装および量産化を目指しています。
ドローンの大規模展示会「第10回Japan Drone 2025/第4回次世代エアモビリティEXPO」(主催:一般社団法人日本UAS産業振興協議会<JUIDA>、共催:株式会社コングレ)が6月4日、千葉・幕張メッセで開幕した。過去最大の285組が出展し、初日から新モデルの初公開、新サービスの発表が相次いだ。第10回を祝うようなにぎやかなブースが目立ち、ダンサーによるパフォーマンスで盛り上げを図るところもあるなど、はなやかな幕開けとなった。6月6日まで。
開幕を前に開会式が行われ、衆議院無人航空機普及利用促進議員連盟(ドローン議連)、総務省、経済産業省、国土交通省、農林水産省、千葉市、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、株式会社コングレなどの代表が参加し、それぞれ祝辞、最近の取り組み、今後の展望などを述べた。主催者であるJUIDAの鈴木真二理事長は「JapanDroneは記念すべき第10回開催となりました。法改正、規制緩和、ドローンとエアモビリティについて深く議論する場を設けております。みなさまにとって、ビジネスチャンスの創出、知識の深化、ドローンと空のモビリティの未来をともに考える貴重な機会となることを願っています。そしてこの展示会が新たな社会の実現に向けた大きな一歩になると確信しています」などとあいさつした。
会場には仕掛けの凝った大掛かりなブースが目立つ。GMOインターネットグループ、ブルーイノベーション、JUIDA、テララボ、ロボデックス、ソフトバンク、DRONE STAR powered by ORSOトピアドローン技術研究所、Suzakなどが広く面積をとったブースを構えた。DRONE STAR powered by ORSOや、スペースワンと日本水中ドローン協会の共同ブースには大型のLEDモニターが設置され会場に華やかさを添えている。
海外勢も目立つ。台湾が大きなブースを設置するなど18の企業、団体が製品やサービスを紹介しているほか、米国、中国、フランス、デンマーク、韓国、スイス、ベトナムなどからの出展が国際色を豊かにしている。
初公開、新規発表など相次いだ。JUIDAが東急コミュニティー、ハミングバードとともにマンション点検のドローン操縦者を育成する「ドローン点検スペシャリスト」資格の創設を会場で正式に発表した。株式会社ORSOは出展しているブースDRONE STAR powered by ORSOで、ブラウザからすぐに操縦できる無料シミュレーターゲーム「DRONE STAR PILOT(ドローンスター・パイロット)」を先行公開した。株式会社プロドローンは第一種型式認証の取得を目指し現在最終テスト段階の大型ドローン「PD6B-CAT3型」を初公開した。
にぎやかな装いで人目をひく演出もある。水素燃料電池ドローン開発の株式会社ロボデックスは、ブースにカートリッジに高圧で充填できる移動式充填トラックを持ちこみ、プレゼンテーションの冒頭には、ブース内を光、スモーク、ダンス音楽の中をダンサー4人がエネルギッシュなパフォーマンスを披露して客足を止めていた。
初日の4日は開場の午前中から多くの来場者がつめかけ、出展者に話を聞いたり、後援などステージ企画を訪れたりする姿が見られた。JapanDroneは6月6日まで開催。事前予約で入場は無料になる。