横田淳 の記事一覧:5件
  • 2023.11.6

    Japan Mobility ShowでAAMやドローンが表舞台に トヨタ、ホンダ、SUBARU、米Joby、ドローンエンタメも

    account_circle村山 繁
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     東京・臨海部の大規模展示会場、東京ビッグサイトで10月26日から11月5日まで開催されたJapan Mobility Show2023は、AAM(次世代エアモビリティ、いわゆる空飛ぶクルマ)の、社会受容性を格段に引き上げた催事として記憶される可能性が高い。トヨタ、ホンダ、SUBARU、スズキなど大手自動車メーカーは空の移動を表舞台に載せ、今後の展望を来場者に印象付けた。米Joby Aviation、日本のSkyDriveはAAMの知名度や認知度を愛好家やマニアの水準から市民、生活者、消費者に拡大し、期待を引き上げた。期待先行の印象が強いAAM開発はまもなく、米アドバイザリ大手、ガートナー社が提唱する「ハイプサイクル」で指摘される「幻滅期」への準備も併行させる時期にさしかかる。

    トヨタ社長背後のスクリーンに出資先米Jobyの映像、Joby実機も  SUBARUはサプライズでコンセプト機体

    トヨタ佐藤恒治社長のプレゼンテーションではスクリーンに投影された映像の中でトヨタが出資するJobyS-4の映像が投影されトヨタの空への意気込みを印象付けた(10月25日)

     Japan Mobility Show2023は公開前日の10月25日に行われたメディア公開以降、メディアの報道、SNSでの拡散などで多くの市民の「行きたい展示会」に躍り出た。東京モーターショーの刷新で展示範囲を自動車関連から乗り物に拡大し、主役の自動車に加え、AAM関連のプロダクト、技術にも光が当たることになった。自動車産業そのものもAAM関連への関与や展望を打ち出し、来場者に近未来を強烈に印象付けた。

     トヨタ自動車の佐藤恒治社長は10月25日午前8時半、同社が設置した巨大ブースにステージに立ち、国内外からつめかけた人垣ができるほど大勢の報道陣を前に、「トヨタのブースで伝えたいのは多様性あふれるモビリティの未来です」と、バッテリーEV、IMV 0(アイエムブイ ゼロ)、KAYOIBAKOの3つを中心にプレゼンテーションをした。AAMへの直接の言及はなかったが、佐藤社長の背後の大型スクリーンに映し出されたコンセプト映像に、同社の出資先、米Joby AviationのeVTOLエアクラフト「S-4」の映像が投影される場面があり、トヨタのエアモビリティ分野への関心を印象付けた。

     JobyのS-4は、原寸大のモックアップが、トヨタのブースとは別の会場内のブースに展示され、来場者がスマホで撮影するなど存在感を放った。JobyはANAホールディングス株式会社とチームを組み、2025年4月に開幕する大阪・関西万博で、利用者を載せて飛行する4つの事業者グループのひとつに決定している。「S-4」はトヨタが駆動系の開発に参加しているほか、型式証明の交付を日本の航空局に申請がされていて、日本での飛行を待ちわびる視線を集めた。

     日本発AAMの現時点での代表格のひとつ、株式会社SkyDrive(豊田市<愛知県>)も型式証明を申請している「SD-05」の5分の1サイズモデルを展示し、来場者の足を止めた。展示された場所はスズキ株式会社(浜松市<静岡県>)が展開しているブースの一角だ。SkyDriveは6月にスズキとの協力関係について基本合意書を交わしていて、スズキグループの工場を活用して2024年春ごろに機体の製造に着手したい意向だ。SkyDriveは代表の福澤知浩氏の出身企業であり、SkyDriveへのスポンサーでもあるトヨタと縁が深いが、Japan Mobility Showではスズキとの連携を印象付けたことで、自動車業界をあげたエアモビリティ支援体制構築の進展が期待される。

     メディアの間で当初、最大の話題のひとつとなったのが、株式会社SUBARU(東京)のエアモビリティ発表だ。トヨタから1時間後の10月25日、午前9時30分にスバルのブースのステージに登壇した大崎篤社長CEOは「自動車業界は100年に一度の大変革期を迎えていると言われ数年がたちます。本日は次世代モビリティとしてふたつのコンセプトモデルを披露します」と宣言。軽快な音楽とともに最初のコンセプトモデル「SUBARU SPORT MOBILITY Concept」が紹介された後、音楽が切り替わると、背後のパネルが中央からふたつに開き、奥からリフトアップされた機体がせり出した。メディアがいっせいにフラッシュをたくなか、せり出した機体はステージでファッションショーのモデルのように右左に動いたり、正面を向いたりして、洗練されたデザインをアピールした。

     大崎CEOはこの機体を「SUBARU AIR MOBILITY Concept」と紹介。「電動化、自動化技術が進歩し航空機の世界でも空の移動革命を実現する新たなエアモビリティへの期待が高まっている中、スバルが目指すより自由な移動の未来を示したコンセプトモデル。現在、自動車部門と航空宇宙カンパニーが協力し飛行実証を進めています」と紹介した。6つのローターを持つ電動機だが、スペックは今後詰めるという。

    公開前日の10月25日に開催されたプレスデーの午前8時半、トヨタのブースにはこれだけの人垣ができた。全員メディア関係者だ。注目度の高さがうかがえる(10月25日)
    ステージ奥のパネルがわれ、中からせり出すように登場したSUBARUのエアモビリティコンセプト(10月25日)
    SUBARUのブースは一般公開日にも多くの来場者がカメラを向けた(11月2日)
    エアモビリティにも言及したSUBARUの大崎篤CEO(10月25日)
    トヨタのプレゼンテーション中の動画に登場したJobyのS-4はトヨタとは別のブースで実物大のモックアップが公開された。ANAホールディングスと連携し大阪・関西万博での飛行が期待されている
    スズキブースの一角に展示されたSkyDriveの「SD-05」の5分の1スケールモデル。米JobyのS-4とともに、大阪・関西万博での飛行が期待されるモデルのひとつ
    SkyDriveブースを訪れた同社の福澤知浩代表(10月25日)
    来場者の期待感を刺激する装飾も効果的だった(10月25日午前8時)
    一般公開後は入口前からスタッフが来場者の往来整理にあたった(11月2日午前11時)
    一般公開期間の午前中は入口にたどり着くまでに行列ができ、入場前に人気ぶりを実感できる(11月2日)

    ホンダ東氏「時短価値提供に向けターゲットレンジ400㎞へ」

    空モノへの力の入れようが伝わるホンダのブース(11月2日)

     本田技研工業株式会社(ホンダ、東京)のブースは、見る角度によっては自動車より飛ぶ乗り物が目立つほどに空への展開をアピールした。小型ビジネスジェット「HondaJet Elite II」の搭乗体験モデルの隣に、8つの揚力用ローター、2つの推進用ローターを搭載する開発中のAAM、「Honda eVTOL」の縮小モデルを展示した。

     Honda eVTOLは名称に電動を示す「e」が入るが、ガスタービンを搭載している。シリーズ式ハイブリッドと呼ばれる方式で、ガスタービンは電力の生産に使われ、その電力はバッテリーに溜めて機体を動かす。ガスタービンで得られた力を推進力には使われない。機体が電気で動くのでガスタービンを搭載していても「e」がつく。

      ホンダはHonda eVTOLの安全性、快適性、静粛性を前提としていて、利用者が感じる価値はその先にあると考えている。重視しているのは時短価値だ。

     開発プロジェクトリーダーを務める株式会社本田技術研究所(和光市<埼玉県>)先進技術研究所新モビリティ領域チーフエンジニアの東弘英氏は、DroneTribuneの取材に、「空港に行かなくてもより身近に空を体験して頂けることが新しい価値だと思っています。身近であるためには安全や静粛性は前提です。利用者が『いいね』と感じる価値はさまざまあると思いますが、われわれはその中でもまずは、時短価値が大事だと考えています。そのためにはショートレンジでは価値が出しにくい。たとえばクルマを使えば10分で行けるところにHonda eVTOLでは5分で行けたとしても時短価値は少ないと考えられます。ひょっとすると降りてから乗り換えるとさらに時間がかかる可能性すらある。ある程度のレンジがないと時短価値が出せない。ガスタービンの搭載もそのためです。ターゲットレンジは400㎞です」と話し、出発点から目的地までの移動時間の短縮に挑む。 

    縮小スケールで展示されたHONDA eVTOL。ガスタービンの搭載で400㎞航続を目指す(10月25日)
    HONDA eVTOLについてDroneTribuneの取材に応じる本田技術研究所の東弘英シニアチーフエンジニア(10月25日)
    HONDA JETも呼び物展示のひとつ。「東京モーターショー」から「Japan Mobility Show」への衣替えを象徴していた
    HondaJet Elite IIは内部の快適性やステイタス感がウリのひとつ。搭乗体験モデルには行列ができた

    「ドローンツアー」のFPVの臨場感体験に感激の声続出

    ドローンの操縦席に乗ることができたらどんな体験ができるか。そんな願いを叶えるために登場したドローンエンタテインメントとトムスのブースはFPVの臨場感に満足の声が続出した

     Japan Mobility Showの「飛ぶもの」はAAMにとどまらない。株式会社エアロセンス(東京)やブルーイノベーション株式会社(東京)などドローンに力を入れている企業や、気球で宇宙旅行を企画しているか株式会社岩谷(いわや)技研(札幌市<北海道>)、自律航行技術で知られ、ストレッチャーロボットが海外メディアでも取り上げられた株式会社アトラックラボ(三芳町<埼玉県>)なども数多く登場している。ブルーイノベーションはトヨタが開発したドローンポートシステムをUCCホールディングス株式会社(神戸市<兵庫県>)などのスペースで実演。ドローンから届いたコーヒーをポートに降ろしたのち自動走行のAGVに乗せ換えて届け先まで走行する様子を再現している。

     連日行列を作っていたのは、マイクロドローン関連事業を展開する株式会社ドローンエンタテインメントが株式会社トムスと連携して展開していた体験型ブース、「ドローンツアー」だ。球体型スクリーンの手前にシートが用意され、そこに座ると同社代表でドローンレーサー元日本代表の第一人者で横田淳氏が撮影した全国の名所の映像が流れる。映像にあわせてシートが振動したり傾いたりして、まるで映像の中を自分が飛ぶ感覚を味わえる。よりリアルな体験を楽しむ方法として、横田代表がその場で飛ばすFPVドローンのとらえた映像を浴びることもできる。球面スクリーンの隣に設置された特設フライトスペース内をドローンが飛ぶと、シートに座った来場者はそのドローンの操縦席にでもいるかのような臨場感が味わえる。

     一般公開期間中は連日、午前の予約開始直後に埋まる盛況ぶり。会場にはキャンセル待ちのレーンも用意され、そこにも連日、来場者がつめかけていた。

     一般公開日に3人組で参加した女性の一人は「報道で見て、知人から聞いて参加しました。期待していたよりも、ずっと楽しかったです。なにより、よく言われる臨場感ってこういうものか、と感じました」と感激した様子で話した。いっしょにいた女性も「有料でも乗ります。ほかで味わえないから。あの映像を味わえるようにドローンを操縦したくなりました」と話していた。

     Japan Mobility Show2023はAAMへの期待を高め話題性を作ることに成功した。社会実装にむけて実用局面に移行する。米ガートナー社が提唱する期待の増減を示すハイプサイクルによると、新しいテクノロジーは話題性とともに登場すると、一気に期待値があがるが、その後、期待と現実との落差を目の当たりにすることで一時的に急降下することになる。その後、真価の適切な評価を経て社会システムに採用され、実装に至る。AAMも急上昇した期待の社会実装への道筋を構築する局面に入ることになる。

    行列ができたドローンツアーの前で説明する株式会社ドローンエンタテインメントの横田淳代表
    連日、予約開始とともに席が埋まったドローンツアー。キャンセル待ちレーンも設けられた
    ドローンレースの元日本代表でもある横田淳さんがその場で操縦(右端)。横田さんのドローンにまるで乗っているかのような体験も満喫できる。
    UCCのコーヒーが無人で運ばれてくる体験。ドローンがポートにおり、荷物がAGVに渡され、AGVが運んでくる。ポートはトヨタが開発しブルーイノベーションが開発を支援した
    岩谷(いわや)技研が展示した宇宙旅行体験のできる気球のモデル
    雷からドローンで電気をとる実験の様子も再現

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    村山 繁
    DroneTribune代表兼編集長。2016年8月に産経新聞社が運営するDroneTimesの副編集長を務め、取材、執筆、編集のほか、イベントの企画、講演、司会、オーガナイザーなどを手掛ける。産経新聞がDroneTimesを休止した2019年4月末の翌日である2019年5月1日(「令和」の初日)にドローン専門の新たな情報配信サイトDroneTribuneを創刊し代表兼編集長に就任した。現在、媒体運営、取材、執筆、編集を手掛けながら、企画提案、活字コミュニケーションコンサルティングなども請け負う。慶應義塾大学SFC研究所ドローン社会共創コンソーシアム研究所員、あおもりドローン利活用推進会議顧問など兼務。元産経新聞社副編集長。青森県弘前市生まれ、埼玉県育ち。
  • 2021.3.6

    「オンライン花見」開催は3月27日 ドローンエンタメが桜の空撮映像など生配信

    account_circle村山 繁
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     株式会社ドローンエンタテインメント(東京)は、オフィスやお茶の間で桜のライブ配信動画を楽しめる「オンライン花見」の開催日を3月27日にすると発表した。雨天の場合は順延となる。動画投稿サイトYouTubeで配信する。新型コロナウイルス対策の一環で、閣僚、政府、自治体首長からお花見の自粛を求める発言が相次ぐ中、自宅で花見を満喫する動きが活発化しそうだ。

    「桜ドローンプロジェクト2021」が空から眺める桜をお茶の間に 自粛生活を盛り上げ

     「オンライン花見」は、配信当日の桜をリアルタイムで生配信する企画。主催するドローンエンタテインメントの横田淳代表が、ドローンレーサーとしての腕や技術を応用して空撮した桜の映像が目玉となる。テレビ番組など多くのメディアで取り上げられた「桜ドローンプロジェクト2020」の4K空撮映像も織り交ぜる。当日の撮影場所は現在調整中で、桜の名所と呼ばれる場所の中から選定される。地元の自治体とコラボし、地域の名物や地酒などその土地の魅力も映像を通して紹介する方針だ。

     横田代表は「ドローン、FPVマイクロドローンを使った“鳥の視点”を取り入れつつ、複数台の高画質カメラ、360度カメラなども用いて、ここでしか見られない美しい桜映像をご覧いただけます。当日は夜桜も含め様々なコンテンツをご用意していますので、ぜひご自宅からお楽しみください」とコメントしている。

     同社は2月10日から「全国のお花見映像1000時間連続ライブ配信」を進行中だ。「オンライン花見」当日の3月27日に向けたカウントダウン期間も桜で盛り上げている。ドローンエンタテインメントは3月27日を「オンライン花見の日」に制定すべく、現在申請中。また状況次第で4月、5月にも配信企画を検討している。

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    村山 繁
    DroneTribune代表兼編集長。2016年8月に産経新聞社が運営するDroneTimesの副編集長を務め、取材、執筆、編集のほか、イベントの企画、講演、司会、オーガナイザーなどを手掛ける。産経新聞がDroneTimesを休止した2019年4月末の翌日である2019年5月1日(「令和」の初日)にドローン専門の新たな情報配信サイトDroneTribuneを創刊し代表兼編集長に就任した。現在、媒体運営、取材、執筆、編集を手掛けながら、企画提案、活字コミュニケーションコンサルティングなども請け負う。慶應義塾大学SFC研究所ドローン社会共創コンソーシアム研究所員、あおもりドローン利活用推進会議顧問など兼務。元産経新聞社副編集長。青森県弘前市生まれ、埼玉県育ち。
  • 2021.2.3

    桜を4K配信! 横田淳氏率いるドローンエンタテインメント、「オンラインお花見大会」開催へ

    account_circle村山 繁
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     株式会社ドローンエンタテインメント(東京、横田淳代表取締役)はこの春のお花見シーズンにあわせ、桜の名所からの4K空撮映像を盛り込み、動画投稿サイトYouTube上で「オンラインお花見大会」を開催する。開催時期は3月下旬で開花状況などを見定めながら今後、日程を決定する。「お花見大会」に先立ち2月ごろから「桜の開花カウントダウン」のライブ配信も行う予定で、自宅にいながら桜を満喫できるコンテンツ提供に力を入れる。

    自宅にいながら満喫 世界に配信しインバウンド市場の再始動も視野

     3月下旬の開催を予定している「オンラインお花見大会」は、日本屈指の桜の名所からリアルタイムで生配信を行うことを計画している。生配信は5か所程度の予定で、4Kドローン、FPVマイクロドローン、複数台の定点カメラ、8K360度カメラなどの機材を駆使し、「まるでそこでお花見をしているような体験を映像を通じて提供します」(同社)と意気込んでいる。大会当日はそのほか、さまざまなコンテンツの提供を検討している。

     また「桜の開花カウントダウン」のライブ配信は、2月から4月中旬にかけて実施。桜映像を朝から晩まで 1000時間以上の連続配信を予定しているという。 2020年に40都道府県50カ所で撮影した日本各地の美しい桜の映像のほか、 2021年の早咲きの桜もリアルタイムで届けるという。

     お花見大会を開催する株式会社ドローンエンタテインメントは、日本を代表するドローンレーサー横田淳さんが代表を務め、空撮映像コンテンツの制作、提供などを手掛けている。2020年春には、日本全国の桜を4Kドローンで撮影し世界に発信する「桜ドローンプロジェクト2020」を展開した。「桜を鑑賞する」という日本の独自文化をドローンの活用でそれまでにない視点で表現することで地方の美しさを発信することに注力した。

     特に新型コロナウイルスの流行による歓声対策の一環で渡航制限を受ける中、世界の人々に桜の魅力を届ける役割を強く意識している。同社は「コロナ禍における海外渡航制限で世界の人々に日本が誇る美しい桜を楽しんでいただくことが難しい状況にあります。そんな今こそ、オンライン配信により日本各地の桜の素晴らしさを世界に届けます。この試みがインバウンド産業の「再出発」に貢献できること我々は考えています」と話している。

     桜自慢の自治体からの応募も受け付けており、当日は選りすぐりの映像が配信される期待が高まる。同社は「本番では、みんなで乾杯しましょう」と今から盛り上げている。

    同社への問い合わせ、協賛、取材などはこちら

     

    「桜ドローンプロジェクト2020」はテレビ番組でも多く取り上げられるなど反響を呼んだ
    ■「桜ドローンプロジェクト2020」とは?
     桜前線とともに日本の美しい文化を記録する「桜ドローンプロジェクト」。沖縄から桜前線とともに47都道府県を縦断し、 各地の桜を自社で特別制作したマイクロドローンで撮影。 福島県まで撮影したところで緊急事態宣言の発令をうけ撮影継続を断念。しかし40都府県50箇所以上の桜映像を収めたBlu-rayは制作完了。映像はTVでも多数取り上げられました。多くの自治体様・管理団体の皆様にご協力いただき無事終えることができました。 本当にありがとうございました。プロジェクトのクラウドファンディングでは、 目標支援額の665%を達成し、 200名を超える方に支援いただきました。 コロナ初期に多くの方が外出制限を余儀なくされる中、 TVやオンラインで桜を見る機会を提供することができました。
    ■株式会社ドローンエンタテインメント
     代表取締役:横田 淳
     東京事業所:東京都渋谷区神南1丁目7−7渋谷公園通りNnビル 渋谷公園通り2F
     「遊び」が「仕事」に。ドローンに特化した総合エンタテインメントカンパニー。「楽しい」をきっかけに、 今後社会インフラとして必須となるドローンをもっと身近にし、 この最新テクノロジーを活用した遊びや映像表現を通じて社会を元気にします。 ドローンは教育や産業にも貢献できる21世紀の遊びであり仕事です。

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    村山 繁
    DroneTribune代表兼編集長。2016年8月に産経新聞社が運営するDroneTimesの副編集長を務め、取材、執筆、編集のほか、イベントの企画、講演、司会、オーガナイザーなどを手掛ける。産経新聞がDroneTimesを休止した2019年4月末の翌日である2019年5月1日(「令和」の初日)にドローン専門の新たな情報配信サイトDroneTribuneを創刊し代表兼編集長に就任した。現在、媒体運営、取材、執筆、編集を手掛けながら、企画提案、活字コミュニケーションコンサルティングなども請け負う。慶應義塾大学SFC研究所ドローン社会共創コンソーシアム研究所員、あおもりドローン利活用推進会議顧問など兼務。元産経新聞社副編集長。青森県弘前市生まれ、埼玉県育ち。
  • 2020.5.7

    小中高生向けワークショップ「アカデミーキャンプ」にドローンの横田さん登壇 旺盛な好奇心が爆発!

    account_circle村山 繁
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     小、中、高校生に遊びと学びを提供するオンラインのワークショップ「ズームイン!!アカキャン!May 2020」がゴールデンウイークに開催された。5月4日に開催されたドローンのセッションには、日本を代表するドローンレーサー、横田淳さんがゲストとして登壇し、運営者の「まぼさん(慶応義塾大学SFC研究所ドローン社会共創コンソーシアム副代表の南政樹さん)」の案内でドローンの可能性や展望を自身の活動をふまえて紹介した。これに対し参加した小中高生が旺盛な好奇心から続々と発言。数々の斬新な発想にゲストの横田さんが「すごいですね」とコメントするなど、参加者世代の潜在力の高さを証明した。

    「ドローンを使ったらいいことは?」に「空気清浄機を飛ばす」「打ち水」「ライブに参加」…

    アカデミーキャンプに登壇し、ドローンのおもしろさを伝えた横田淳さん。参加者から次々とコメントが寄せられた。

     アカデミーキャンプは今回が初めてのオンラインでの開催となった。

     ドローンのセッションでは、案内役のまぼさんが、自分の仕事を「科学者」と自己紹介。科学者についてまぼさんは「いろんなことをつきつめる人のこと」と説明し、参加者にも科学者になったつもりで考えることを提案した。まぼさんは、ドローンの活用場面 について、公開されている映像をまじえて紹介したり、「空の使い方」「ドローンの飛ぶ仕組み」を説明したりしたうえで、参加者にドローンの使い道を考えてみることを呼びかけた。

     まぼさんに招かれて登壇したゲストの横田さんは、まず自身の活動について映像をまじえて紹介。海にせり出した崖の上から岸壁伝いにドローンで急降下させた迫力ある映像や、レースに参加したとき疾走感あふれる映像のほか、日本各地の桜を空撮しすばらしさを世界に発信する「桜ドローンプロジェクト」の映像を流すと、参加者から「下から見るのと全然違う!」「きれい」「すごい」「いつもは見れない視点!」などの感動コメントが集まった。

     横田さんは「自分はドローンが好きなので、好きなことで遊んでいただけなんです。気づいたら一日に13時間やっていた、などということもありました。そのうちに日本代表になったり、災害現場での活用に呼ばれるようになったりしました。いま、いろんな場面でドローンを活用する取り組みがありますが、レースをやっている人のドローンの技術はめちゃくちゃ高いということが改めてわかります。その高い技術をふだんは遊びに使っているわけです」と、楽しむことや好きなことに打ち込むことの重要性を伝えた。

     まぼさんはこのあと、参加者に二つのテーマを提示。ひとつは「コロナ対策としてドローンで役立てられそうなことを考えよう」。もうひとつが「コロナが終わったあとドローンを使ったらいいと思うことを考えよう」。まぼさんはテーマを考えるときには「できるかできないか、は気にしないでいい」とアイディアにブレーキをかけないでいいことを説明し、参加者を数人ずつの班に分けたうえで、テーマごとに発言を促した。

     ここでも参加者からは積極発言が相次いだ。
     「コロナ対策」では、遠隔で体温検知や危険な外出への呼びかけ、自宅にいながら遊園地に出かけてジェットコースターを体験、自分の代わりに登校してもらう、散髪してもらう、ドローンでライブに参加、などコロナ影響下での健康確保や、生活管理から娯楽に関係するアイディアまで幅広い意見が出された。

     コロナ後の使い方についても、VR散歩、買い物、打ち水などの意見披露が続き、中には(汚染対策として)「空気清浄機を飛ばす」、(空から情報収集をして)「他国の闇を暴く」といった大胆な意見もあがるなど、セッションは大いににぎわった。

     アカデミーキャンプは2011年の東日本大震災と福島第一原発事故をきっかけに、慶応義塾大学湘南藤沢キャンパスで講師をしていた斉藤賢爾(けんじ)さん(=早稲田大学 大学院経営管理研究科教授)の呼びかけで、福島の子供たちのために学びと遊びを提供する宿泊型ワークショップとして発足、順調に回を重ねてきた。今回は、新型コロナウイルスの影響で宿泊型をオンライン型に変更したものの、「世界を変える力を、子どもたちに」の趣旨をそのままに、期間中、研究者・ビジネスパーソン・アスリート・アーティストらがプログラムを繰り広げてきた。参加者も積極発言で主催者の思いにこたえた。

      参加者からの意見発表後に感想を求められたゲストの横田さんは「すごい。大人も思いつかないような意見もありました」と感心した様子で講評した。最後にまぼさんが、「この中にはすでに似たようなことを取り組んでいる、というものもあるし、まだ社会に送り出していないサービスもある。まだないものは、生み出すチャンス。これをきっかけにして世の中を変えることをめざしてくれたらうれしい」と結んだ。

    参加者が班ごとに分かれて意見を出し合う場面でも、次々と独創的な意見が披露された
    5月4日に開催されたアカデミーキャンプでのドローンのセッションは、「まぼさん」が案内役を務めた

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    村山 繁
    DroneTribune代表兼編集長。2016年8月に産経新聞社が運営するDroneTimesの副編集長を務め、取材、執筆、編集のほか、イベントの企画、講演、司会、オーガナイザーなどを手掛ける。産経新聞がDroneTimesを休止した2019年4月末の翌日である2019年5月1日(「令和」の初日)にドローン専門の新たな情報配信サイトDroneTribuneを創刊し代表兼編集長に就任した。現在、媒体運営、取材、執筆、編集を手掛けながら、企画提案、活字コミュニケーションコンサルティングなども請け負う。慶應義塾大学SFC研究所ドローン社会共創コンソーシアム研究所員、あおもりドローン利活用推進会議顧問など兼務。元産経新聞社副編集長。青森県弘前市生まれ、埼玉県育ち。
  • 2020.4.20

    【みなみの部屋】ゲスト:横田淳さん レース、エンタメの現状と展望としたいこと

    account_circle村山 繁
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     「ドローン前提社会」の実現を目指す慶應義塾大学ドローン社会共創コンソーシアムの副代表として、人材育成、研究、開発、社会実装など幅広い活動をこなす南政樹氏が、いま気になるキーパーソンを迎えて気の向くままに、自粛、忖度ほぼ抜きでしゃべりつくすヒヤヒヤものの企画「みなみの部屋」をスタートさせることにしました。今回のゲストは、ドローンレーサー元日本代表で、株式会社ドローンエンタテインメントの代表、横田淳さん。全国の桜を空撮し日本の素晴らしさを世界に発信する「桜ドローンプロジェクト」の活動にも精力的です。好奇心の塊のような2人による、縦横無尽、自由奔放なエンタメ論議をお届けします。(対談は外出自粛要請前に行われました)。

    ■レースをとりまく環境、実は日本も世界もほぼ同じ

    対談する南政樹氏(左)と横田淳氏

     南氏 本日はよろしくお願いします。ドローンのエンタメとしての可能性を考えるときに、日本のドローンレースをけん引してきた横田さんにお話をしたいと思っておりました。一番知りたいのは、ぶっちゃけ、ドローンレースってどうなんですか?というところです。

     横田氏 こちらこそよろしくお願いします。

     ぼくが感じるのは、世界の事情はほぼ一緒である、ということです。よく日本では収益になっていない、と言われますけど、どの国でもほぼ同じです。日本に限らず世界の多くで収益にはなっていないし、収益を生む市場も形成されていないと思っています。どのレースも開催は協賛頼みで、そこが主催者やオーガイナーザーの悩みです。ぼくはレーサーとしてレースに参加したり、最近までJDRA(一般社団法人日本ドローンレース協会)に参画したりしていて、世界の団体と交流し、ディスカッションをしてきましたが、途中で退場した団体もありますし、課題はどこでも山盛りです。

     南氏 競技人口が増えない要因としては何が考えられますか?

     横田氏 複合的なものだと思います。まずドローンの特性として、物理的に飛ぶ、という点が挙げられます。バーチャルのeスポーツにはない危なさがドローンレースにはあって、それがきっかけとなりにイベントの開催を躊躇する声はよく耳にします。

     何よりも大前提となる遊ぶ人が少ない。時間があればタイニーウープで遊ぶ、とか、聞かないじゃないですか。DRL(The Drone Racing League)や、DCL(Drone Champions League)などの大会はあるんですけど、これはドローンレース競技のピラミッドでいえば頂点です。日本のレーシングチーム「RAIDEN」が海外に進出していますが、それも頂点の話です。頂点が先行しているのです。この頂点の層の活発化と並行して進めるべきなのが一般の層の広がりです。実際に、「このままだと裾野が広がらない。」と、いろんな団体が気づきだして、いま教育に力を入れ始めている状況です。なんとか母数を増やそうと取り組んでいます。

     南氏 裾野という意味でいうと、田村市(福島県の市。慶応義塾大学SFC研究所は同市と2016年12月にドローン活用に関する連携協力協定を結び、ドローン利活用のために大学と自治体が連携協定を締結する先駆けとなった)で高校生や小中学生にドローンを教えていると、レースをやりたいっていう生徒、児童は多いんですよ。でもアマ4(第4級アマチュア無線技士)を取らなきゃいけないという理由で、ここで離脱が起きる。海外の状況とかを考えると、これは由々しき事態だな、と思っていて、どうにかしたいと常々思ってきました。それと、ピラミッドの頂点ができたのちに、アニメで人気に火がついて裾野が広がるという形もあります。段階的なアプローチもあっていいのかもしれない。

    もっとシンプルに! 分かりやすく!

     南氏 エンタメを考えるときに、これはドローンレースに限らないのですが、どうしても収益につながらないと運営が難しい面がありますよね。産業利用であれば収益と一体なので分かりやすいのですが。横田さんはXFLAG PARK(ゲーム、音楽、スポーツなど幅広いステージやアトラクションを融合させたLIVEエンターテインメント。2019年は千葉・幕張メッセで開催され、ドローンシューティングが初導入された)にも関わりましたが、そういう発想だったのですか?

     横田氏 イベントの関係者とは2015年からレースを一緒に開催してきた間柄です。ドローンレースはどれだけ派手に演出しても、あるいはどれだけ盛り上げるMCを入れても、結局のところ、ルールが理解されないと、オーディエンスは「やりたい」とは思わないし、あの人を応援したい、とも思わないんです。ほかのスポーツのように感情移入しにくいんです。そこでちょっと趣向を変えてみようか、といって、やってみたのがあれです。

     南氏 なるほど

     横田氏 いったんゼロベースで考えることから始めました。みんながドローンを使った遊びで楽しめるものはなんだろう? というところからスタートして、その中で、操縦してもらおう、とか、どう操縦させるのか、みたいなことを考えて、UFOキャッチャーがいいんじゃないか、とかいろいろなアイディアが出た中で、シューティングバトルにたどり着きました。シンプルにドローンを撃ち落とすゲームです。ゲームのシンプルさがとても重要だなと思ったんです。万人が理解できて、多くの人が「これ、おもしろね」って思ってくれて、その中でドローンレースも盛り込んで、「ドローンレース、ヤバい!」ってなる。そんな順番を考えました。

     実際、手ごたえはありました。たとえばバスケットボールは初めて見た人でも、「あのゴールにボールが入れば得点になるんだな」って分かるじゃないですか。ドローンレースにもそのシンプルさがあるといい。はやるものってたいていシンプルですよね。ドローンでも渋谷の道玄坂の上からスクランブル交差点をゴールにして直線だけのスピードレースができたら熱いんじゃないかな、などと考えてます。

     南氏 スピードを単純に競う、みたいな?

     横田氏 そうそう。最後、ゴールでは壁に激しく爆音でぶつかる前提(笑い)。緊張感も高まるし、そのときの風だとか運が左右するという要素もあるし、声援がプレッシャーになるという要素もある。シンプルで深い。

     南氏 エアレースのような最近話題になっているエクストリームスポーツも分かりやすいですよね。

     横田氏 その分かりやすさが、大事なんだと思うんです。ぼくはどっぷりドローンレースにつかっているので偏っているかもしれませんけど、新しく始める人や、それまでにまったく関わったことのない人には、ドローンは相当ハードルが高いもののはずなので。ただ、ホントは調べれば分かるんですけどね。「どこで飛ばせばいいんだろう」とか。

     南氏 それはそれでありますね。おもちゃのドローンを買って「どこで飛ばしていいですか」という質問はよくぼくも受けますね。許可がないことを気にする人も多い。二極化しているかもしれませんね、やってみる人と。やらずに手っ取り早く答えを知りたがる人と。調べれば分かるんだけど。

     横田氏 調べない人、いますよね。一方で彼らは、「おもしろい」とか「いいな」と思えば突き進むんですよ。ということは、ドローンが生み出す魅力は、彼らにとってはまだ小さい、ということかもしれない。ぼく自身は「おもしろい」から突き進んだのですが、ほかの人にはそうでもないということはあり得る。ぼくにはドローンで撮影した映像はすごくおもしろいんですけど、そう思わない人は、その映像をみても「で?」みたいな感じになる(笑)

    「桜ドローンプロジェクト」の経緯

     南氏 「おもしろさ」や「すごさ」の感じ方には差がありますね。

     横田氏 ありますね。ぼくはいま、全国の桜を撮影する「桜ドローンプロジェクト2020」という企画を進めているんです。

     <桜ドローンプロジェクト2020=日本全国の桜を4Kドローンで撮影し世界に発信するプロジェクト。「桜を鑑賞する」という日本の独自文化をドローンの活用でそれまでにない視点で表現することを通じ日本にある地方の美しさを発信する>

     横田氏 幅広い年齢層のクリエイターと一緒に作業をすることがあるのですが、20代前半の方とか15歳の動画クリエイターに動画作ってもらったりするのですが、「桜って別に興味ないっスよ」みたいな(笑)。桜を撮りに「ここ行くよ」って言っても、「ぼくはだいじょぶです」って(笑)。そのギャップを実感しています。

     南氏 桜への思い入れの強さは、卒業の回数が影響するかも。年齢が高くなってから思うことが出てくるかもしれない。

     横田氏 年齢だったり、それまでの経験だったり。

     南氏 そういう層も含めてどうアテンションをとるのか、ですね。たとえば300メートル上空まで一気に上昇させるまでの時間を競うとか。速いと「すごい」と思ってもらいやすくないか。どう測るかは考えないといけませんけど。あと、絶対に自分じゃマネのできない神業を組み合わせないとクリアーできないレースとか。

     横田氏 ぼくはドローンについては、大きくゲームチェンジする必要があると思っています。ふたつ軸がありまして、ひとつは、新しいことをやる。もうひとつが、圧倒的に認知数を増やす。特に認知が不足していると感じます。いま手掛けている「桜ドローンプロジェクト」も、そういう思いの中で企画しました。全国各地に関わって頂いて、それを世界に発信して、話題を作りたい。一方、レースはレースでやります。やっぱり、おもしろいから。ただ、ピラミッドの裾野を広げるのは今のドローンレースではない。

    「見る、する、支える」の「見る」に工夫の余地 目標としてのライセンス化

     南氏 運動会ぐらいシンプルな競技があればいいんですけどね

     横田氏 そうそう。

     南氏 最近の運動会は、危ない、という理由で競技がなくなっているものもあるんですが、たとえば棒倒しとか騎馬戦とか。でもあれ、シンプルですよね。勝ち負けがはっきりすると、見る人も「がんばれ」とか感情移入をしやすくなる。

     スポーツって、見る、する、支えるのキーワードがあるんですけど、「見る」の部分がもうひとつ欠けていることがあるのではないかな、という気がしています。特にドローンレースではドローンが小っちゃいし速いしで、慣れている人や視力のいい人じゃないと何が起きているのか分からない。画面を用意してたくさん工夫を重ねておられることも存じ上げてはおりますが。それとは別に、シンプルに、「よーい、ドン!」で一斉にバーンっとスタートして、100メートル先のゴールに飛び込んで、勝ち!みたいな、そういうシンプルな種目があると違うんじゃないかと。

     横田氏 そうですね。それに加えるとすると、「努力すればトップになれるんじゃないか」っと思えればなおいいと思います。ぼくももともとは目視でドローンを飛ばしていて、FPVはやっていなかったんです。やりたいな、と思ってシミュレーターをやりまくったんですね。そしたらある日シミュレーターで「世界ランク1位」みたいなのが出たんです。まだ実機で飛ばしたことがないのに。それで実際のレースに出てみたらそこで4位。その次の大会で1位。そこで「あれ? もしかしたらいけるな」って思えたんです。そのとき、ぼくですら、やったらいけるんだ、と思えたんです。動体視力がいいわけでも、ゲームをやっていたわけでもないですし、ラジコンをやっていたわけでもないぼくですら、という意味です。運動会の棒倒しとか玉投げにしても、工夫したら俺うまいことできるんじゃないか、って思えるじゃないですか。

     ――レースには「あこがれが足りない」という話を耳にします。ファンがふえるための戦略ってなんでしょう?

     横田氏 いまぼく「新日本ドローンレース協会」をたちあげようとしているんです。

     南氏 イノキ的な響き・・・(笑)

     横田氏 もともとぼくがやりたかったことのひとつに、「ライセンス化」があります。いまのドローンレースでは、トップを目指そう!と声をかけてみても、初心者にとってはトップまでが果てしなく遠くて、目指しにくいな、って感じちゃうんです。集まってくるとしたら、お金や時間に余裕がある人。子供たちが「ぼくもやりたい」って思える環境じゃない。そこで、目標を作ることが重要だと思って、そのためにライセンスがあればいいと思っているわけです。

     自動車のモータースポーツでも、国内の競技会やレースに出るにも、世界のレースに出るにも必要です。それがいったん目標点になります。まずは国内のB級を取って競技会に出場して、次に国内Aを取ると国内のレースに出られて、となります。そのあと国際を取ろうとなる人もいるし、海外には興味がないから日本でやりたい、という人もいます。そのまま踏襲するつもりはないけど今の時代にフィットさせた環境をドローンレースでも作りたいとぼくは思っています。

     ライセンスは国交省の認定も取れればいいとも考えています。自作機にも、バッテリーの保護カバーや、プロペラガードをつけるなどの安全基準を設ける。自作しようとしても、レギュレーションが任意に設定されているために、特定のパーツや機体を買わないとできないような状況を変えたいんです。マニアにはいいかもしれないですけれど、一般に広げるには国交省認定などを設けたほうが分かりやすい。

     裾野を広げるという意味では、アニメがもたらす波及効果も大きいと思っています。ドローンレースはよくミニ4駆に例えられるんですが、ドローンは社会的、産業的、教育的な価値を考えるとそれ以上だと思っています。それに、ミニ4駆がはやったときと今とでは、拡散させる力もテクノロジーも全く違います。

     南氏 先ほどもちょっと触れましたが、ぼくもアニメによるdeployの可能性にはずっと注目しています。実際にアニメがきっかけではやったものも、スポーツでは多いですよね。野球、サッカー、バスケも。あらゆるスポーツが通ってきた道だと思います。産業にも結び付けやすいし、パイロットのセカンドライフにもつながる可能性があります。その意味でもやっぱり、分かりやすさは大事だと思うんです。

     100メートル競走みたいなものは機会があればぜひいっしょにやりませんか? たとえば、ぼくらが毎年開催している「UAVデモンストレーション」というイベントがあります。屋外で産業機を飛ばすショー仕立てのイベントです。出場チームは、たとえば30分の時間をさしあげて、その時間の使い方について自分たちでシナリオを作ってもらいます。おぼれている人を助ける、というシナリオなら、うち(慶應義塾大学)のライフガードのメンバーの学生を動員して、かれらを水難者にみたてて救命胴衣を適切な場所に落としてみる、といった具合です。そういう場で、やってもらえると本当にありがたい。UAVデモンストレーションの趣旨は「ドローン前提社会に向けた理解と共感」を得ることです。単にビジネスショーとしてメーカーの機体のデモを見るだけじゃなくて、ギネス記録にチャレンジとかメーカーが本気出してスピード競争に挑戦してみるとか、ドローンの可能性を認知してもらうイベントにしたいと思っています。

    ■認知の機会を増やして「ドローン前提社会」を

     南氏 ドローンが危ないものであると思われがちなのも、ドローンをよく知らないからということが大きいと考えています。福島県の南相馬でドローン物流の実験が行われたときには、初日こそ地元のおじいちゃんが指をさしてドローンが来た、みたいな反応をしていたんですが、二日目からは反応を示さなくなってきたというんです。当たり前になるから。そうなってくれればいいなと思うんです。そのためにも飛ばす機会を増やしたい。

     横田氏 ほかの産業に比べてドローンは認知してもらう機会が極端に少ないですね。

     南氏 ドローンで農薬散布をすると今でも毎回、通報されます(笑い)。そのたびに顔なじみのおまわりさんがやってくるので「おれだよ」ってあいさつをさせて頂きます(笑い)。飛ぶ回数が増えれば慣れてくるかな、とは思うんですけど。とにかく目に触れさせるということをやらないといまのまま変わらない。ぼくらは田村市(福島県)ではドローンの体験会をしたり、小学校向けにドローンを使ったプログラムを教えたりしているんですけど、その中では経年変化を追いたいと思っています。今は、「ドローンを見たことがある人?」って言うと、パッと手が挙がる。「触ったことがある人?」って聞くと、それが半分ぐらいになって、「持っている人?」で1人とか2人とかが残る感じです。これがどう変わるのか興味があります。

     田村市ではドローンが当たり前になりつつあります。昨年(2019年)10月に各地に大きな災害をもたらした台風19号がありましたが、市の職員が率先して「ちょっとドローン、持ってくわ」って言って、被災状況の調査に出かけたんです。

     横田氏 いいですね。

     南氏 ぼくも「すごいね、それ」って言ったんですけど、当事者はそのすごさは認識しておられないんです。田村市は「ドローン前提社会」をつくるため、実験的に取り組んでいるところがあるのですけど、そのたむらモデルを大都市、東京とか、神奈川とかでも応用、活用できたらいいな、と思っていまして。

     横田氏 ドローンの遊びって全てにおいて「善」なんですよ。

     映像作品を作るにしても、ドローンレースをするにしても、子供たちがドローン体験をするとかにしても、やってると勝手に良い事につながる。産業にも、教育にも、レースにもつながります。その意味ではセカンドジョブも作りやすい。だから「あとから良いことが勝手についてくるから絶対にやったほうがいい」っていろんな子供や大人に言ってます。

     桜ドローンプロジェクトも最初は「成功したら絶対面白い!」から始まったプロジェクトなのですが、40を超える自治体と協力して魅力を世界に発信しよう!っていつのまにか地方創生・日本文化の世界発信プロジェクトになっているんです。

     ドローンレースにしたって、過去にぼくらが開催するマイクロドローンレースにほぼすべて参加してきた小澤諒祐くんは中学生で米津玄師のPVまで撮っちゃって。こういうことが起きるのは当然本人の努力が一番だけど、「楽しい!が仕事になるっていうこと」を体現しているよい例だと思ってます。

    楽しみ方の開発を ベッティングという発想 パイロットはカッコよく

     ――いろんな話が出ましたね。

     南氏 まとめ、というわけでもないですけど、ぼくはとにかく、子供たちに、たくさん、飛ばしてもらいたい。ドローンが当たり前社会になると言い続けている以上、子供のころから当たり前にしないとダメだと思っています。これをやりたい。今も小学生向けのプロジェクトを進めているのですが、そういったものを横につなげるようなことを、大学というファンクションがせっかくあるので、やれたらいいかな、と改めて強く思いました。それと、イベントごとはひとつ、ぜひ、お手伝いしたい。ドローンレースをやって頂くことも考えられるし、UAVデモンストレーションで会場となる陸上競技場のトラックをひたすらまわるでもいいですし、一定の高さまでビューンっ!と急浮上するのもいいし、シンプルなものを、産業機の航空ショーと組み合わせることができたらいいな、と思います。

     あとエンタメとしては、ドローンレースの楽しみ方には開発余地があることを実感しました。見方、楽しみ方が分かると、愛好者は増えます。ラグビーもそうでした。「ジャッカル」という言葉がこれほど一般に浸透したことは過去にないと思います。ナビゲートをしてくれる優秀な実況役がいるとわかりやすいかもしれませんね。

     横田氏 分かりやすいMCって大切ですね。ぼくがやりたいなと思っているのはスポーツベッティング。従来とは異なる応援のインセンティブを生み出せると思っていますし、ドローンレースはテクノロジーを使っているメリットがうまく生かせます。たとえば、加速度とか、スピードとか、進んだ距離は測れるし、そうしたデータを可視化できます。変換すれば会場のイスをゆらすとか、選手の感覚を体験できたり、一体となって応援できたり、選手の心拍数がリアルタイムで伝わるとか仕掛けがあったり。そういうしかけをやりたいですね。

     子供って、ほんとにきっかけ次第じゃないですか。なのでそれを大事にしたいなと思っています。以前、子供の前でドローンを飛ばしたときに、関係者がぼくのことをトップドローンレーサーであると紹介してくれたみたいで、それに感動した子供たちが「サインください」って言ってきたことがあったんです。子供たちにとっては、それがあこがれになるかもしれないし、今後の自分の夢を考えるきっかけになるかもしれない。少なくともポジティブな思い出をつくることができる。だからレーサーは、あこがれの存在になる努力をもっとしないといけないと思います。もっとカッコをつけていい。というかカッコつけないと。服装もおじさんクサい人、多いし(笑)。ぼくはもう2~3年で、ドローンレースの時代が来るって思っています。おもしろいし、役に立つし、ドローンの遊びはすべてが善だと思っているので、やったほうが良すぎるぐらい。

     南氏 ドローンがインターネットと似てるのは、ひとつきっかけがあるとさっと広がる感覚がある点です。インターネットはWindows95で市民権を得て広がりました。日常的にドローンが使われる場面を見聞きしているとか、操縦機会があるとか、ドローンに置き換えたらこんなに便利になったという体験とか、そういうことが見えてくると、とたんに広がるのではないかと思うんです。デザインの仕方次第かな、とも思っています。タレントが出てくるということかもしれないし、ライセンスの話もありましたけれど、それが話題になることがあってもいいし、そういうことが複合的に効果を発揮すれば、この2年ぐらいで一気に開ける可能性があると感じます。

     きょうはありがとうございました。

     横田氏 ありがとうございました。ぜひ一緒にやりましょう。(完)

    AUTHER

    村山 繁
    DroneTribune代表兼編集長。2016年8月に産経新聞社が運営するDroneTimesの副編集長を務め、取材、執筆、編集のほか、イベントの企画、講演、司会、オーガナイザーなどを手掛ける。産経新聞がDroneTimesを休止した2019年4月末の翌日である2019年5月1日(「令和」の初日)にドローン専門の新たな情報配信サイトDroneTribuneを創刊し代表兼編集長に就任した。現在、媒体運営、取材、執筆、編集を手掛けながら、企画提案、活字コミュニケーションコンサルティングなども請け負う。慶應義塾大学SFC研究所ドローン社会共創コンソーシアム研究所員、あおもりドローン利活用推進会議顧問など兼務。元産経新聞社副編集長。青森県弘前市生まれ、埼玉県育ち。