ドローン技術の発明、開発と実装を手掛ける株式会社エアロネクスト(東京都、田路圭輔代表取締役CEO)は、千葉・幕張メッセで開催中のIoTの祭典「CEATEC 2019」で、人が乗るドローン「Next MOBILITY®」の3分の1サイズの試作機を公表し、コンセプトを発表した。人々が手軽にドローンによるフライトを娯楽感覚で味わう『空飛ぶゴンドラ』で、田路CEOは「移動などの利便性を主目的とする従来のエアモビリティの概念とは一線を画し、空を飛ぶ楽しさや解放感などの飛行体験を提供する機体」と説明した。10月15日に展示ブースで行われた発表会には来場者や報道陣など約30人が訪れ説明に耳を傾けた。
Next MOBILITY®は、回転翼と固定翼の特徴をあわせもつハイブリッド型の VTOL(垂直離着陸機)で、同社独自の重心制御技術「4D GRAVITY®」と、新開発のVTOL向け重心制御技術「ティルトボディ®」を搭載したことが特徴。人が乗り込むキャビン部分に、機体の傾きが伝わらないように「分離結合」してあり、ボディが傾いても、キャビンは水平を維持する。
公表された3分の1サイズのモデルは、全幅1,380mm×全長1,400mm×全高700mm、重量8,200g 定員は1名。ドアは2面両開き。実運用機は複数人が乗ることを想定しているという。
発表会で田路代表は、「従来のエアモビリティや空飛ぶクルマのコンセプトは、やや遠い未来を議論している印象があり、移動革命の手前に実際の運用の回答があるのではないかと考えてきました。実際、エアモビリティには機体の基本性能のほか、バッテリー、飛行時間、規制などの難題があり、中でも一番の難関が一般の人々が、『クルマが空を飛ぶ』という概念を受け入れられるかだと感じています」と述べ、従来コンセプトと異なるアプローチの必要性を指摘した。
そのうえで「私は、利便の前に、空を飛ぶ体験が必要。観覧車のゴンドラが空を飛ぶという拡張体験が移動革命の最初の一歩と考えました。『分離結合』構造があれば、キャビンが傾かず、飛行機とも違う快適なゴンドラで空の旅を実現できます」と、飛行体験を主目的にした機体の意義を説明した。
実運用については「2023年がターゲット。政府が閣議決定をしたエアモビリティの社会実装の年度。多くの人が空を飛ぶ体験を果たし、その次に空での移動の夢が結実するのが移動革命だと思っています」と述べた。
同社の展示ブースでは、6月に提携を発表した中国の産業ドローン大手MMCと共同開発した「Next INDUSTRY®」の最新機、日本国内で量産体制を作り製造した物流用途の産業用ドローン「Next DELIVERY®」の最新機体も初公開。田路CEOは「物流機は最速でマーケットへの投入を考えています」と話し、来場者の関心を集めた。