米シカゴで開催された航空宇宙産業の大規模展示会、XPONENTIAL2019で現地視察したトライポッドワークス代表、佐々木賢一さんのレポートは今回が完結編です。VTOLの存在感がどれだけ大きかったかを感じ取ることができる臨場感たっぷりの渾身のレポートをどうぞ。あ、佐々木さんが撮影、編集したシカゴの街のスペシャル動画もあります!(DroneTribune 村山繁)
今年は数々のVTOL機が展示されていました
前回、DAY2でレポートをしたBell NEXUSのほかにも、今年はかなり多くのVTOL(垂直離発着)機が展示されていました。
スイスのベンチャーAutoFlight社のWhite Shark V40。
ペイロード8Kg含む総重量45Kg、最高速140Km/h、航続距離1300Km、放送用のCOFDM技術を利用して200Kmのフライトコントロールと1080p/30pの映像の伝送ができるとのことです。
ボーイング社のCargo Air Vehicleのモックアップ。
ペイロード500ポンド(227Kg)!
6つのデュアルローターシステムと12のプロペラを備え、長さ17.5feet(5.3m)、幅20feet(6.1m)、高さ5feet(1.5m)、総重量は500Kgと巨大な機体で都市間の物流を実現すべく開発が進んでいるようです。
同じくボーイング社のPassenger Air Vehicleのモックアップ。
このプロトタイプの今年1月に行われた初飛行テスト様子を収めた動画があります。
https://www.boeing.com/features/2019/01/pav-first-flight-01-19.page
アメリカのベンチャーELECTRAFLY社のPERSONAL FLIGHT VEHICLES。
4つのプロペラと小型ジェットタービンエンジンのハイブリッド機なんですが、スターウォーズ好きの私にはスピーダー・バイクが実現するのか!とワクワクしてしまいます。
これで森の中をハイスピードで飛び、「エピソード6/ジェダイの帰還」ごっこをしたいと思うのは私だけでは無いでしょう(笑)
NASAのUrban Air Mobilityのテスト機、「Langley Aerodrome #8」。
宅配車や6-8人乗りのコミュニティバス的な運用を目指しているとのことです。
NASAのラングレー研究所と言えばNASA最古の研究所で、航空機や宇宙探査機の研究で有名ですね。
BellとNASAが共同で開発している輸送機。
30Kgの積載量と160Km/hの飛行速度。
離発着時は縦に、飛行時は横になって飛び、通称Xwingと呼ばれているようなのですが、Xwingと言えばこれまたスターウォーズですね(笑)
Northwest UAVのVTOL機。
なんだか複雑な機体ですが、UAVエンジンのメーカーなのでとにかくモーター部を強調するデザインになっているようです。
最近、DJI MAVICによく似た小型機EVOの販売を開始したアメリカAUTEL RoboticsのVTOL機。
THREOD SYSTEMSは軍や警察、国境警備向けのSTREAM C VTOL UASを展示。
2000m以上の高度を最高速130Km/hで5時間以上の飛行が可能とのこと。
30倍ズームカメラ、赤外線カメラ、レーザーレンジファインダー搭載で100Km以上の距離で通信できるようです。
アメリカPAE ISRのResolute Eagle。
このメーカーも米国政府機関、NATOなどが顧客で、情報監視や偵察が主な役割とのことで、最高高度4500m、飛行時間12時間が可能なようです。
KARI(韓国航空宇宙研究院)のVTOLプロトタイプ。
名前の通り、日本で言うところのJAXAに当たる研究機関で、宇宙開発に関する研究開発と並んで、UAVの研究にも力を入れているようです。
以上のように、今年のXPONENTIALはVTOL機が展示の中心でした。
離発着に滑走路が要らず、航続距離や速度やペイロードが稼げて、何より長時間の飛行が可能なVTOL。
軍事を含む産業用のUAVとして、ヒトやモノを運ぶFlying VehicleとしてのVTOLは、これからドローンの主流の一つになって行く予感がしました。
3回に分けてお届けしたXPONENTIAL 2019のレポートは如何でしたでしょうか。
まだまだお伝えしたい内容もあるのですが、それはまたの機会とさせて頂きます。
最後に、今回のシカゴにはMAVIC2 ProとOSMO Pocketを持って行き、シカゴの街を撮ってきましたので是非ご覧下さい。
私の勝手なシカゴのイメージは、新旧の建物が入り混じった歴史あるミシガン湖畔の街で、街中を走る鉄道と摩天楼、映画でギャングまたは警察から主人公が逃げる時に使う古い建物の非常階段と暗く狭い路地、そこから車で逃げる時のカーチェイスは鉄道のガード下の道路でって感じでしたので、そのイメージに合う場所をチョイスして撮影しています(笑)
なお、渡米前にFAA(連邦航空局)に機体を登録、飛行場所はClass G空域(届出無しで飛行して良いエリア)かつNo Droneになっていないところを120m以下で飛行、つまりUSの法令を遵守して撮影しています。
来年のXPONENTIALはボストン。
2020年5月4〜7日です!(完)