ドローン開発のイームズロボティクス株式会社(南相馬市<福島県>)は、レベル4飛行定着に向けた新型機の開発や、VTOLやUGVを含む自律システムの技術開発をさらに推進させる成長戦略を公表した。「事業の成長と業務拡大を目指し、新たなステージへ進む」ため、、南相馬市の本社工場の生産ラインを拡充し、ふじみ野市(埼玉県)にあるR&Dセンターでの技術者を増員する。海外進出も視野に入れる。これに伴い幅広い分野で人材を募る。
イームズが成長戦略を発表したのは8月16日。これに伴う人材募集について、公式サイトでは「当社は、今後ドローンの「レベル4」実現に向けて新型機体の開発および事業展開を進めてまいります。今回はその立ち上げメンバーの募集です。世界中で注目を集めるドローンに携わる社会貢献性の高さだけでなく、成長企業の一員として成長実感も得られる。そんな環境があなたを待っています」とアピールしている。
またイームズの発表は以下の通り。
イームズロボティクス株式会社(以下、「当社」)は、このたび事業の成長と業務拡大を目指し、新たなステージへ進むための戦略的な取り組みを発表いたします。近年の事業拡大を背景に、当社はより多くのお客様に高品質なサービスを提供するため、各部門での人員増強を図るとともに、先端技術の開発と新規プロジェクトへの参入を積極的に進めてまいります。
■業務拡大の背景と目的
当社は、自律行動する安全なロボットやシステムの開発を基本理念としており、これまでに数々のプロジェクトを成功させてきました。現在の事業は、販売、ソリューションサービス、システム提供サービスの3つの柱で構成されており、自社開発力がその根幹を支えています。今回の業務拡大は、UAV(無人航空機)やUGV(無人走行車両)、などの自律システムの技術開発をさらに推進し、新しい市場への参入を目指すものです。
■新規技術開発とプロジェクト拡充
当社は今後、ドローンやVTOL(垂直離着陸機)やUGVの分野での技術開発に注力しています。これにより、物流、農業、災害対策など多岐にわたる分野での新たなソリューションを提供することを目指しています。特に、近年の航空法改正に伴う国内基盤整備の進展により、無人航空機の市場は大きな成長が見込まれており、当社はこの分野でのリーダーシップを強化してまいります。
■生産拠点の増強
福島県南相馬市にある本社工場の生産ラインを拡充し、より多くの製品を迅速に市場に投入できる体制を整えます。また、埼玉県ふじみ野市のR&Dセンターでは、先端技術の研究開発を推進するため、技術者の増員を行います。
■グローバル市場への展開
当社は、国内市場のみならず、海外市場への展開も視野に入れています。事業拡大を目指し、パートナー企業との連携を強化し、新しいビジネスチャンスを創出します。
■新規技術開発と人員募集
当社の取り組む分野、技術開発に関心があり、当社とともに新しい事業を進めていく意欲のある方を幅広く募集いたします。
当社は、これまでの実績を基に、さらに多くの分野で革新的なソリューションを提供し続けます。ドローン技術を活用して、物流、農業、インフラ点検、災害支援など、さまざまな社会課題の解決に貢献することを目指してまいります。
求人の詳細については以下イームズロボティクスサイトよりご確認ください
ドローン事業者、開発者、愛好家などが組織する一般社団法人オールジャパンUAVフェスティバル実行委員会(代表、橋本健株式会社D-eyes代表取締役)が11月3日から5日にかけて、君津市(千葉県)の約14万平方メートルのドローン専用フィールド「DDFF」(ドリーム・ドローン・フライング・フィールド)やJR君津駅に近いホテルを会場に開催された「オールジャパンUAVフェスティバル2023」は、全国から愛好家、学生、研究者が集まる盛況ぶりだった。フィールドでは数々の機体が模擬飛行を行った。地元を中心とした評判の高い屋台が来場者をもてなし会場を盛り上げた。
「オールジャパンUAVフェスティバル2023」は、屋内展示会場で目を引く機体に対する旺盛な飛行シーン需要にこたえるため、技術紹介、交流促進、情報交換を含めた娯楽性の高い催事として開催した。君津市に拠点を構えるDアカデミー株式会社ほかドローンの事業者や研究者、開発者などの研究交流体「フィールドサイエンスのためのドローン活用研究会(ド研)」との合同開催で、幅広いネットワークを活用して多くの出展と来場を集めた。
開催初日には主催者側から橋本健氏Dアカデミー株式会社の依田健一代表、京都大学東南アジア地域研究研究所連携准教授で合同会社ソラビジョン(京都市)代表の渡辺一生氏らがあいさつしたほか、来賓として会場入りした君津市の石井浩子市長が「君津市では地元で活躍する依田さん(依田健一Dアカデミー代表)の指導で、ドローンによる橋梁点検がさかんに行われるようになりました。これをきっかけでドローンをはじめる動きも活発化しています。オールジャパンUAVフェスティバルの開催でいっそう盛り上げ、ドローンの普及に貢献する君津市となると期待しています」などとあいさつした。君津市のマスコットキャラクター、きみぴょんもいろどりをそえた。
フィールドでは初日のあいさつ直後に、五百部商事有限会社が独自開発した輸送用の機体「AC-0404X」の飛行を披露。その後、Tohasen Robotics株式会社による中国HEQ UAV社のテールシッター型VTOL機「SWAN VOYAGER」の飛行、Autel Robotics社によるVTOL機「Dragonfish lite」が飛行すると、見学者は同じVTOLでありながら鼻先を空にむけるSWAN VOYAGERと、地面に腹を見せたままの姿勢で浮き上がるDragonfish liteとの違いを話題にしたり、より簡単になった操作の進化に驚きの声をあげたりしていた。
株式会社ジャパン・インフラ・ウェイマークはSkydio2+、SkydioX2の運用デモンストレーション、株式会社システムファイブはDJIの高精度空撮LiDARシステムZENMUSE L2 の運用デモを披露。Japan Mobility Showに自律走行ストレッチャーを出展して話題となった株式会社アトラックラボは、18インチのヘキサコプター「HIYOKO−18」の飛行を公開した。株式会社イデオモータロボテックスは米Freefly Systems社の大型カメラを搭載したALTA Xを飛行させた。
「たおれん棒」「ドローンスパイダー」で知られる株式会社空撮技研、大型のYOROIシリーズが名高いサイトテック株式会社、オランダAcecore Technologies社の機体を扱っている株式会社ACE-1、株式会社ジーウイング、東京工芸大学ドローン・サイエンス研究会、株式会社D-wings、ケイプラス株式会社などが出展事業者に名を連ねた。
会場には全国から愛好家らが来場。福島県の高校生も教員に引率されて来場し、関心のある機体を展示しているブースに立ち寄ってはスタッフに声をかけていた。また一角には広島お好み焼き、スリランカカレー、小籠包、海鮮だしをきかせたから揚げ、深圳ではなく新鮮なミルクを使ったソフトクリームなどの屋台が並び、店のスタッフが晴天にのぼりをはためかせて笑顔もふりまき、味と香りで会場を盛り上げた。
独自技術「無振動エンジン」の特許を持つ株式会社石川エナジーリサーチ(群馬県太田市)は8月9日、無振動エンジンを活用したハイブリッド式のヘキサコプター型ドローン「ハイブリッドフライヤー」の試作機で連続50㎞の飛行実験を実施に挑み、目標を達成させた。風速8m/秒の向かい風の中の飛行を強いられる場面もありながら、1時間10分ほどで50㎞を完走した。石川満社長は着陸後、「風が強かったので、ほっとしました。技術的には熟成してきたと思います。これを軸に商品開発を進めます」と述べた。1年後をめどに今回の飛行を支えたエンジン発電機の商品化を、2年後をめどに機体としての「ハイブリッドフライヤー」の商品化を目指す。
飛行させたドローンは同社が開発中の「ハイブリッドフライヤー」の試作機。6つのローターを備えるヘキサコプターで、バッテリーのかわりに同社の独自開発技術である無振動エンジンで発電するエンジン発電機を搭載している。また軽量で剛性と強度を持つマグネシウム合金を使っていることも同社のドローンの特徴だ。ハイブリッドにはいくかの方式があるが、「ハイブリッドフライヤー」は、ガソリンで動かしたエンジンはプロペラをまわすためには使わず、発電に使う「シリーズ方式」だ。この日は3.5ℓの燃料タンクに約3ℓの燃料をつんで飛行に挑んだ。伝送にはLTEを使った。
飛行ルートは福島県福島県双葉郡浪江町の福島ロボットテストフィールド浪江滑走路・滑走路附属格納庫を起点にした。機体は午前8時5分に離陸し、上空80mまで上昇したのち、400m飛行して海岸に出て方向を変えた。そこからは海岸にそって約10㎞を北上、その後折り返して南下するなどほぼ2往復強で50㎞の飛行コースをつくった。
機体は「ハイブリッドフライヤー」が搭載するフライトコントローラー、アルデュパイロットの地上管制局ミッションプランナーで組んだ飛行ルートの通りに飛行した。安全確保と機体の状況確認のため、飛行ルート上に数人の監視員を配置した。起点に設置した管制局と監視員とはたえず連絡を取り合った。風が強めだったが監視員から「黒煙などの異常は見られません」などと連絡が入ると、安堵の表情が見える。向かい風のときには「機体の速度はだいぶおそめです。向かい風にむかって機体がすごくがんばってくれているようにみえます」と連絡が入り、担当者が応援する表情になる様子がみられた。
約1時間後の午前9時10分ごろ、離陸地点上空に機体が姿を表し、社員ら担当者、見学者が見守る中、予定した地点に着陸するといっせいに拍手があがった。
同社はすでに22㎞の連続飛行を果たしており、昨年30㎞の連続飛行に挑戦したが断念。今年6月には目標を引き上げ40㎞に挑んだが悪天候に阻まれた。今回の再挑戦は前回の目標をさらに引き上げて行われ、前日の8月8日のリハーサルで50㎞飛行を達成していた。試験飛行本番の8月9日は風が強い予想があり、担当者は「前日は着陸時にガソリンが1ℓあまっていたので大丈夫です」と自信を示しながら、制御しきれない天候の行方に気をもみながらの実験となった。
着陸後、石川満社長は「なんとか飛びました」と胸をなでおろしながら「風が強かったので、ほっとしました。技術的には熟成してきたと思います。これを軸に商品開発を進めます」と述べた。同社は今後も改善を加え、1年後をめどに今回の飛行を支えたエンジン発電機の商品化を、2年後をめどに機体としての「ハイブリッドフライヤー」の商品化を目指す。エンジン発電機について石川社長は、「多くの可能性を秘めていると思います。一例ですがたとえばVTOL機に搭載すれば、いまでも長い飛行距離がさらに伸びる可能性があります。数百キロ飛ぶ機体なら1000㎞の飛行も視野に入るので選択肢として有力だと思います」と展望を見せていた。
ドローンに対しては、国や地方自治体などを中心に、長距離、長時間飛行への機体が高まっている。災害対応や広域測量などの需要が高まっているためだ。細かな動きが得意なマルチコプターが長時間、長距離飛行の可能性を身に着ける方法としてハイブリッド技術が注目されていて、国土交通省が5月20、21日に埼玉県さいたま市で実施した長時間飛行実験では株式会社アミューズワンセルフ(大阪府大阪市)のハイブリッドクアッドコプター「GLOW.H」で3時間の連続飛行を確認した。ハイブリッドドローン開発の株式会社エアロジーラボ(大阪府箕面市)は6月、200分飛行できるハイブリッドのクアッドコプター「AeroRangeG4-S」を開発したと発表した。ハイブリッドがVTOLに転用される可能性も含め、今後ハイブリッドへの関心はさらに高まりそうだ。
空の利活用を推進する兼松株式会社(東京)は3月15日、オーストラリアのドローンメーカーSwoop Aero(スウゥープエアロ、メルボルン)の固定翼と回転翼を併用したVTOLドローン、Kookaburra MKⅢ(クッカバラ・マークスリー)を使った実証実験を公開した。兼松が包括連携協定を結んでいる加賀市(石川県)とともに実施した輸送実験の一環で、運用は兼松が資本業務提携を交わしている英Skyportsが担った。日本国内でSwoop機の飛行が公開されたのは初めてだ。機体はときおり強い風が吹く中で安定した飛行を見せ、立ち会った関係者からは「緊急時の医療用に使えそう」などの声が聞かれた。
JR加賀温泉駅に近い加賀市医療センター6階のルーフバルコニーで公開された。直線距離で3キロ、陸路で6キロ離れた加賀温泉ケアセンターを離陸したドローンが医療センターのルーフバルコニーまで血液を運び、待機していた加賀市の宮元陸市長が受け取るというシナリオだ。この日は保冷バッグなどを血液のかわりに運ぶことにし、会場に用意されたパネルにも「Advanced Air Mobirityプロジェクト VTOLドローンによる血液輸送実証実験」と掲げられた。
実験には加賀市の宮元陸市長、兼松航空事業部長の津山幹規氏、NTTコミュニケーションズ株式会社北陸支社ソリューション営為業部門・部門長の川上浩生氏、Skyportsの日本法人、Skyports株式会社(東京)の代表取締役、岡田惇史氏と、それぞれの担当者が参加したほか、加賀市医療センターなど医療関係者、自治体関係者、報道陣らが見守った。
実験では宮元市長が出発地に離陸の合図を出すと、Kookaburra MKⅢが垂直に離陸した。離陸の様子は設置されたモニターで映し出された。上昇した機体は上空で水平飛行に切り替わり、その後はグライダーのように空中を自動航行した。医療センターで待機する関係者たちは、機体が離陸から2分を過ぎたところで上空に機影を確認し、口々に「もう来た」、「早い」と、声をあげた。医療関係者からは「災害時や緊急時によいのではないか」と期待の声があがった。飛んできた機体は医療センターの上空で着陸態勢に入り、バルコニーにあらかじめ設置してあったマーカーのはいったランディングパッドの上に垂直に着陸した。所要時間は約4分だった。機体が着陸すると、見守っていた関係者からいっせいに拍手があがった。
Kookaburra MKⅢの機体中央は、バッテリーと荷物室がパッケージになっている。運航を担ったSkyportsのスタッフが着陸した機体中央の天井部を開いて荷物を取り出し、宮元市長に手渡し、関係者への公開は終了した。
公開終了後、機体中央のバッテリーはとりはずされ、バルコニー側で充電していた別のバッテリーが装着された。充電済みのバッテリーを装着した機体は、再び離陸地の加賀温泉ケアセンターに向けて飛んで行った。
Kookaburra MKⅢはオセアニア、アフリカなどで、数多くのフライトをこなしていて、Skyports社も運用実績を持つ。最高速度は124㎞/hでペイロードは3㎏、航続距離は90㎞だ。2023年度に導入予定の新モデルは航続距離が最大175㎞とさらに延びる。
公開終了後に報道陣の取材に応じた宮元陸市長は「スピードと迫力に感動した。生産性、効率性を高めるためには自動化、機械化が必須だ。積み残している課題は残るが、ドローンには期待している。我々は空の産業集積を進め、移動革命の先駆けとして名乗りを上げていく」と述べた。
加賀市はドローンやいわゆる空飛ぶクルマを含むエアモビリティの普及、利活用にIoT普及とともに力を入れていて、市内全域の3Dマッピングに取り組むなど、ドローンの飛行環境を先進的に整備している自治体として知られている。
米大型輸送用UAV開発のセイバーウィング(Sabrewing Aircraft)と米国貨物航空サービスのアメリフライト(Ameriflight)は2月14日、アメリフライトが、セイバーの「2000ポンド(約907㎏)以上」の積載が可能なVTOL型の大型UAV「レイガルアルファ(Rhaegal-A)」を35基購入する合意書を締結したと発表した。アルファは既存輸送手段では着陸が困難だった場所への配送などを含め、従来手段を補完する役割を担う。両社の発表は以下の通りだ
アメリフライトは、チャーター機運用事業者らのルールなどを定めた「パート135」を満たした貨物航空として米国最大の貨物航空会社で、垂直離着陸(VTOL)機能を備え、高効率で全天候型の新世代の地域貨物無人機を設計・製造する米国企業、セイバーウイングエアクラフト社から、VTOL航空貨物無人機35機を購入する合意書に署名したと発表した。今回の契約は、世界最高水準の燃費と整備性を誇る貨物用UAV「Rhaegal-A」(通称「アルファ」)が対象だ。アメリフライトは、同機の型式証明取得後に引き渡しを受ける予定だ。
アメリフライト社は、セイバー社とのパートナーシップを結んだことと、Rhaegal-Aの購入によって、新しいビジネスチャンスをつかむことになる。1トンほどの貨物を空港外の代替着陸地点まで運ぶことができるVTOL機能を備えたこの新しい貨物機により、顧客がより迅速で効率的な配送ネットワークを構築することを支えることができる。アメリフライトは、現在の飛行業務や航空機、パイロットをやめるつもりはなく、新たな機体を用いる配送は補完的なサービスとなる。多様な航空サービスを構築することが目標であるため、今回の取引はそのビジョンによく合致する。
アメリフライトのアラン・ルシノビッツ(Alan Rusinowitz)社長兼COOは、「この先進的な機体をわれわれのポートフォリオに加えることは、航空機の能力を補い、資産の品揃えを拡大し、倉庫配送業務の開発を通じたサービス領域の拡大を可能にする」と話す。「われわれが購入するRhaegal-Aは2,000ポンド以上の積載量を誇り、ミディアムリフトカテゴリーの運航にぴったりと適合する。セイバーは記録的な技術で、Rhaegal-Aを垂直離陸と通常離陸の両方が可能な世界初の自律型貨物機に導いており、信じられないほどのマイルストーンを打ち立てた。我々はこの新しい機体で彼らと提携することに興奮している」
セイバーのエド・デ・レイエス(Ed De Reyes) CEOは、「我々は、長距離、積載量、持続可能な燃料効率を最大化し、様々な貨物ミッションを成功させるクラス最高のRhaegalで、高度で汎用的で効率的な航空貨物ソリューション開発に取り組んでいます」と説明する。「私たちは、自律航行技術イノベーションの最前線に立つことができること、そして、アメリフライトの協力を得られることにとてもわくわくしている。今回の新しい契約は、アルファとして米国では初めてのローンチの顧客を獲得したことになる」
セイバーのRhaegal-Aは2022年9月に、記録的な積載量829ポンドを達成したうえで、初フライトを実現した。同社は現在、同機の生産ラインを立ち上げており、最初の納入は2024年の第1四半期に行われる予定だ。Rhaegal-Aは、革新的な設計を持ち、持続可能な航空燃料(SAF)を使用することで二酸化炭素排出量を最大80%削減できる。輸送速度は走行速度の4倍で、他の航空機では着陸できない場所に着陸する効率性を持つため、貨物の空港移動に追加コストがなくてすませる。この新機体は、主に迅速なサプライチェーン・サービスを提供するアメリフライトの新たなビジネスチャンスをサポートするために使われる予定だ。
先月(1月)、自律航行航空機開発の米ナティラス社(Natilus)社と締結した、積載量3.8トンの短距離輸送用無人航空機「コナ」の購入に続く、アメリフライトの自律型航空機の購入契約となる。今後、両機種を現在の運航と並行利用する。
ラトビアのドローンメーカー、FIXAR社が開発した「FIXAR 007」の飛行デモンストレーションが8月、滋賀県高島市の琵琶湖畔で行われた。回転翼と固定翼の併用機で、機体タイプはカタログに垂直離着陸をする「VTOL」であることが記されているが、垂直よりもやや角度をつけて軽やかに飛び立つ独特の離陸スタイルを披露した。デモンストレーションのためにラトビア本国から来日した同社デモエンジニア、イルマー・トーリン氏は、「設計でフォーカスした点は、コストパフォーマンスにすぐれ、シンプルで信頼できる機体であること」と紹介した。主催した株式会社World Link&Company(SkyLink Japan、京都市)は、「日本に向いた機体ではないかな、と思っています」と話している。
飛行が披露されたのはオリジナルのFIXAR 007に、LTE対応の改良を加えた「FIXAR 007+LTE」。カスタマイズはWorld Link&Companyが担った。
翼長は162㎝で、フレームに4つのモーターが取り付けられ、そこに回転翼がつけられている。4つのモーターの回転軸はいずれも地面に対し斜めに取り付けられている。チルトする機構は備えておらず、斜めのまま角度が固定されたプロペラは大きな特徴だ。飛行中の左右の傾きを制御するエルロンも、進行方向を左向き、右向きに制御するラダーもない。制御はすべてプロペラが担う。このためフラップがあれば必要となるサーボモータが不要だ。稼働部を減らすことを徹底的に追求したシンプルな構造となっている。
「ないもの」はほかにもある。たとえばコンパスがない。機体の飛行方向などの把握には、ピトー管で測定した風速とGPSを使う。
プロポも本来は、ない。同社が独自開発した「FIXAR xGroundControlソフトウェア」を使いパソコン上で飛行ルートなどのミッションを作れば、離陸してミッションをこなす。人での操縦を想定していないためプロポが設定されていない。ただし日本向けには、操縦者が機体制御の責任を持てるようにするため、プロポに対応させている。
ミッションをつくる「FIXAR xGroundControlソフトウェア」は、飛行ルートを設定するさいに、画面上で平面に高さも加えた3次元でつくれることが特徴だ。斜面を含む地形を空撮したり測量したりする場合、対象の地形を地図から選び、飛行の高さなど必要な情報を入力すると、ソフトウェアが3次元でラインを生成する。生成したルートを手入力で修正することも可能だ。
実演では、特別な演出もなく機体が地面に置かれたところからスタートした。見学者が取り囲んで見守る中、「起動します」の合図とともにプロペラが回転しはじめた。と思ったら、数秒で機首を上空に向けて勢いよく、軽やかに飛び上がった。ふわりとゆっくり浮上する様子を予想していたが、それとはまったく違い、直線を斜め上にすっと引くような上昇軌道を描いた。ロケット花火の打ち上げに似ていると話している見学者がいた。
上昇しきると静止することなくそのまま水平飛行の態勢に移行した。上空100mを巡行していても、ややプロペラ音が聞こえるのは、マルチコプターと似ている。飛行音は上空をすべるように飛ぶWingcopterなどとは趣が異なる。
機体は数分後、測量のミッションを終えて、ほぼ元の位置に戻ってきた。着陸時には目標地点上空で、ホバリングをしながら態勢を整える。首を斜め上にもたげた離陸時と同じ姿勢をとり、そのまま斜め上を向いたままゆっくりとおりてくる独特な着陸スタイルだ。着地も手動の補助なしでほぼ離陸場所に降りた。
最大離陸重量は7㎏でこのうち5㎏は本体とバッテリーのため、それ以外に2㎏までの荷物が積める。離陸150gのペイロードなら75㎞飛行でき、400~500gのカメラを使えば45㎞から50㎞の空撮が可能(直線ルートなら55㎞)という。ペイロードめいっぱいの2㎏のLiDARを搭載すると25㎞飛べる。
どこまでもシンプルを追求した機体は、収納もシンプルだ。ふだんは専用の容器に納められていて、容器をあけると、本体と左右の翼が出てくる。それだけだ。組み立ては固定翼を本体に取り付けたら終わる。
FIXARのイルマー氏は、シンプルの追求はラトビアの厳しい寒さに関係があると説明する。「厳しい寒さの中で飛行させようとしても凍結して飛ばせないことがしばしば起こります。このため、凍結して不具合を起こす場所を、そもそも減らすことを考えてできあがったのがこの機体です」と説明する。
WorldLink&Companyの渡辺一生執行役員は、「その結果、取り扱いが簡単になりました。測量需要の旺盛な日本に向いている機体だと思っています」と話した。日本仕様は4GLTEに対応する。価格は「同じクラスのほかのVTOL機の半分ぐらい」という。