ブルーイノベーション株式会社(東京)と株式会社エヌ・エス・シー・エンジニアリング(東京、NSC)は3月23日、東京都下水道局が管理する墨田区内の下水道施設を、スイスFlyability社製の球体ドローン「ELIOS2」で点検し、状況を確認したと発表した。点検した下水管は実際に運用中で、作業が困難なために確認できていなかった箇所もあり、下水道点検の有効性を確認した。東京都下水道局によると、稼働中の下水道でドローンが飛行したのは都内では初めてという。
ドローンによる点検が行われたのは墨田区内の雨水管1か所、汚水管1か所の2か所で、いずれも1月下旬に実施された。とくに汚水管は家庭からの台所、トイレなどの生活排水や事業所の排水を排除するために日常的に運用中されていて、流れを止めての点検は事実上不可能だ。複数の管が接続されるなど構造が複雑で点検が必要な個所があるものの、汚水が流れていて、有毒ガスが発生する危険性があり作業員が立ち入ることが難しく、状況の確認ができていない個所がある。このため状況確認対策が課題となっている。
点検は東京都が未確認下水道の状況確認技術を模索するため試験的に実施したもの。BIとNSCが、地上の安全な場所からオペレーションを実施した。地上のマンホールのふたにあたるところから、ELIOS2を施設の最深部まで飛行させた。
雨水管では地下約 26m までもぐらせた。地下での航続距離を確保する技術を活用しながらそこにめぐらされている管路を約30mまで点検できることを確認した。また、搭載したカメラでひび割れがあることを映像で確認した。
汚水管では、下水が常時流れているために管内で空気の流れが生じ、ドローンの安定飛行を妨げるうえ、湿度が高く、湯気も充満していてカメラの視界を遮るため、ドローンでの点検としては難しい環境だ。ただELIOS2では、7つのセンサーを搭載した安定飛行性能が有効に機能し管内を飛行。暗く湿度の高い環境の中、粉塵最適化ライトで鮮明な映像を取得した。この点検で、缶を詰まらせたり悪臭を発生させたりするおそれのあるグリスが一部にこびりついているものの、運用に問題がある状況ではないことを、運用開始以来、初めて確認した。
NSCの奥孝彦代表取締役は、「今回、作業員が安全に入坑できないとされた大規模人孔内に ELIOS2ドローンを使用して坑内の撮影調査を行ったところ、作業員の進入が不可能であった箇所をはじめとして想定以上の作業成果を得たことは、新たな前進といえます。今後、ドローンによる下水道管路施設調査における活用を拡げるには、下水道人孔内 では不可避な環境条件である高湿度、湯煙、高粉塵、上部からの落水(雫)、常時流下する下水、高速下水流 による坑内風速、管路の屈曲などドローンの飛行環境、カメラ撮影障害、電波不達・障害など多くある課題 の解決を図る必要があります。さらには、機器落下時には水没、バッテリー容量から飛行時間の制約などの 解決しなければならない点もあります。下水道管路内のドローン活用は有効であることは今回の調査でも明らかであり、早期に課題解決を図りつつ多くの試行を経て確実な調査技術として確立することが望まれます」とコメントを寄せている。