風のデータを細かく分析するメトロウェザー株式会社(京都府宇治市)と、局所気象データ解析のTruWeather Solutions, Inc. (TWS)は、アメリカ航空宇宙局(NASA)がTWSと進めている研究プロジェクトSBIR(Small Business Innovation Research)をサポートする協働契約を締結したと発表した。これによりメトロウェザーがNASAの研究事業に参画することになる。メトロウェザーは独自に開発した小型ドップラー・ライダーを持ち寄り事業に貢献する。
メトロウェザーはTWSと空飛ぶクルマなど商業用エアモビリティの大規模展開に不可欠な、都市の気象観測インフラの構築を目指す。協業の中でメトロウェザーのドップラー・ライダーとTWSの都市風況シミュレーションシステムを組み合わせる。特に密集した都市部で、配送ドローンや空飛ぶクルマなど先進的な航空輸送サービスを安全、安価での提供を実現するためには次世代気象サービスの開発が必要と言われ、両者の取り組みはその促進に寄与する。
NASAのSBIRプロジェクトで、両社は都市環境におけるUrban Wind Experiment (UWEX) を構築する設計を完成させる役割を担う。当面は現在のPhase1に取り組み、次のPhase2契約獲得を目指す。来年度のPhase2では実際の都市でUWEXを行う計画だ。
この中でメトロウェザーは、対象となる都市部のライダー観測を行うための最適なセンシングアルゴリズムとデータ収集戦略を提供する。メトロウェザーのコンパクトで高性能なドップラー・ライダーを使い、複数のライダデータフュージョンのモデルを開発も担う。いずれも中心的な役割を果たすことになる。あわせて観測データの配信システムやAPIの設計も行う。
メトロウェザーの古本淳一CEOは、自社技術の貢献について、「小型かつ高性能なドップラー・ライダーを安価に実現できたことで、ドローンポート(バーティポート)やドローン航路上に多数のドップラー・ライダーを展開することが現実のものとなり、ドローンの離発着や飛行に影響を与える局所的な突風やウインドシアをリアルタイムに可視化することが可能になります。また、ドローンポートに限らず地方空港などへの展開も見込まれます。その結果、ドローンの安全運航が確保される世界が実現し、空の安全・安心に貢献できるものと考えています」とコメントしている。また、NASA SBIRプロジェクトへの参画について「TWSというパートナーを得て、NASAのプロジェクトに関われることでこうした世界の実現に一層近づくことができると思いますし、大変誇りに思います」と述べている。
TWSは、複数のドップラー・ライダーから得たリアルタイムの風測定データを同社が運用する都市の風況シミュレーションシステム「TWS’s urban wind model」に統合し、UASやAAMの気象ニーズに対して効率的に最適な予測を行うシステムの設計を行う。
TWSのCEO、Don Berchoff氏は、メトロウェザーとの協力について、「TWSは、都市部の危険な風況を把握することに焦点をあてたテストベッドを設計するNASAとの研究で、メトロウェザーと協力できることを光栄に思います。都市部の風環境に対するメトロウェザーの科学的知見に対する評価と都市環境でのライダー・テクノロジーは、安全で信頼性の高い先進的エアモビリティの運用に影響を与え得る風災害の検出機能を実証するテストベッドの重要な要素です」とコメントを寄せた。
2015年に設立したメトロウェザーは測定距離15キロメートル以上の性能を備えながら、65cm四方のサイズのドップラー・ライダーを開発した京都大学発のスタートアップだ。大学での長年の研究をベースに、ノイズの多いデータセットから小さなシグナルを検知することができる革新的技術を持つ。2016年から3年間、米国海軍研究所の基礎研究予算を獲得し、空母搭載用のドップラー・ライダーの基礎開発も行なってきた。高性能であれば高コスト、高スペック、大サイズのコンポーネントが必要との常識を覆したことで知られる。今後もドップラー・ライダーを今後の広範な商業エアモビリティ展開に不可欠なインフラとして位置付け、製品開発と事業開発に積極的に推進する方針だ。
(※【DF】メトロウェザーはDRONE FUNDの投資先企業です)
■会社概要 メトロウェザー株式会社 設立年月:2015年5月13日 所在地 :京都府宇治市大久保町西ノ端1-25 宇治ベンチャー企業育成工場6号 代表者 :代表取締役 古本淳一 事業内容:リモートセンシング技術を応用した大気計測装置の開発・製作・販売 https://www.metroweather.jp