ホバーバイク開発で知られ、運航管理システム開発を手がけるA.L.I.Technologies(東京)は、2022年12月、ドローン2機の同時遠隔管理を、千葉・幕張新都心と千葉・船橋沿岸の物流拠点の間で実験した。株式会社エアロジーラボ(大阪府)の2時間超の航続飛行が可能なハイブリッド機「Aero Range Quad(エアロレンジクアッド)」を、A.L.I.の運航管理システム「C.O.S.M.O.S.(コスモス)」と連携させ、C.O.S.M.O.S.の監視のもとで安全に飛行させることができるかどうかを確かめた。ルートには往来のある道路にかかる橋やJR京葉線があり、飛行中に安全確認のために上空で一時停止をさせた。また、互いに距離をとったすれ違いをする場面も組み込まれ、安全を確保して飛行できることを確認した。A.L.Iとエアロジーラボは正式に業務提携も発表し、今後、レベル4飛行を安定して安全に可能にする方法をさらに検証する。
飛行実験は2022年12月に行われた。ルートは船橋市の沿海部にあるSBSロジコム株式会社⻄船橋⽀店の屋上と、千葉市の幕張新都心にある若葉3丁⽬公園を、海岸線や河川をつたって結ぶ約13㎞。ルートの途中には、千葉市美浜区の花見川河口に架かる道路橋、美浜大橋や、JR京葉線を縦断する場所がある。
飛行実験では、船橋側と幕張側とそれぞれからAero Range Quadが同時に離陸し、もう一方を目指して飛行させた。上下線は安全な距離を保ち平行して設定された。このため海岸線を飛行中に、両機がすれ違う場面ができた。また、美浜大橋、JR京葉線の上空を通過するさいには、安全確認をするため上空で一時停止し、若葉3丁目公園に設置された管理センターに待機しているオペレーターが、C.O.S.M.O.S.のリアルタイム画像で、往来を確認した。人の往来や電車の通行がないことを確認して上空を通過することが可能なことを確認した。
またA.L.I.は実験のさいに、上空LTEの電波干渉や電源の入らないブラインドスポットを把握するため、航路を設定する予定の空域で電波を実測している。今後、人の往来のあるエリアでの上空についても実測をすすめ、物流などのためにドローンを活用できるネットワークの構築を目指す。
今回の飛行に使われたAeroRangeQuadは、ハイブリッドドローン開発のエアロジーラボの主力機で、混合ガソリンを燃料とする空冷2サイクルエンジンを発電機として電力を供給する、4ローターのマルチコプターだ。積み荷がない場合で140分の長時間航行ができる。また5㎏までの荷物の搭載も可能で、その場合も120分の飛行ができる。国内で組み立てられた国産機であるという特徴も持つ。ローター間の長さは1280mmで、折りたたむと810mmになる。同社はハイブリッド機を「AeroRange」ブランドでシリーズ展開しており、より重い積み荷の搭載が可能なAeroRangeProも注目されている。
今回の実験ではAeroRangeQuadを活用。飛行中に安全確認のため空中で一時停止をしても、航続時間に余裕がある状態で目的地に到達できた。
エアロジーラボの谷紳一代表取締役CEOは「遠隔制御を実現させるために、今後は運航管理システムとの連携が必要になると考えていて、今後進めていきます。この実験では、社会実装をするうえで機体に求められる能力として、上空でどれぐらい待機できるかが重要であると再認識しました。地上、通信など上空待機が要求される場面は織り込まなければなりません。長い航続時間は社会実装に重要になると思います」と話している。
機体と連携させたC.O.S.M.O.S.はA.L.I.の独自開発したシステムだ。登録済みの機体について、機体所有者や⾶⾏位置の情報をリアルタイムでチェックできる。将来的には遠隔操作でドローン⾶⾏を制御できる機能の搭載も目指し、今後の⽬視外⾶⾏を前提としたドローンの社会実装を⽀えるシステムとなることを目指している。
A.L.I.の片野大輔代表取締役社長は、「事故なく終えることができ、都心で当たり前に飛ぶ姿を打ち出せたことが成果だと感じています。今後、社会受容性を高めるうえでのマイルストーンになると思います。今回は川の上空だけでなく、内陸にまで飛ばしたこともあり、地元からも実際に意味のあるルートで飛行させるところまで来た、という評価を聞くことができました。JR上空を飛行させるさいに、リアルで電車が通っているかどうか確認することもでき、今後の開発や実装に貴重な経験になったと考えています」と話した。
またA.L.I.とエアロジーラボは2022年12月28日、業務提携を正式に発表した。配送利用について当面の主戦場になるとみられる中山間地域や離島間などの過疎地域での社会実装を促進するため、長時間飛行の強みを持つエアロジーラボの機体と、遠隔管理が可能なA.L.I.のC.O.S.M.O.S.との連携を強化する方針だ。