国土交通省は行政が使うドローンの標準的性能を規定化するための実証の取り組みを始めた。2月25日には操縦講習会を川崎港にある国土交通省関東地方整備局首都圏臨海防災センター(神奈川県川崎市)で、国内の民間事業者の機体を使った操縦講習会を実施した。国交省の高田昌行技術総括審議官ら国交省職員、自治体職員、測量会社など関係業務を担う民間企業従業員らが参加し、飛行の様子、操縦の特徴などを確認した。今後、施設点検、業務、物資輸送業務について現場での運用の実証を進める。ドローンの政府調達を視野に、行政ニーズに適した機体の仕様をまとめる。
国交省による現場実証は2月24日のドローンの仕組みを解説する講習で始まり、25日に実機を使った実技講習が行われた。講習を担ったのは国内の民間機関や事業者で、ドローンの経験の有無で内容を分け、初学者向けに関連法規の説明や手動操縦の方法などが行われ、経験者には自動操縦の方法の確認などが行われた。
25日の実技講習では、講習を担当した3機関がそれぞれに開発した機体をデモ飛行が行われた。会場となった川崎港の護岸で現場運用を想定した講習も行われた。飛行中に国交省の職員から飛行時間やその制御の方法、安定飛行を阻害する要因などについて質問が出されると、対応した民間事業者のスタッフが回答していた。
国交省は道路や橋梁、港湾など管轄する構造物の点検業務にドローンの活用を進めている。防波堤点検のためのドローンで取得した画像を解析する技術も開発中だ。
政府や行政がドローンを活用するにあたっては、民間事業者の機体の仕様を見比べて導入することがある。国交省は、行政が発注者としてドローンを調達することを想定し、行政用途に適した仕様を規定化することで、国や自治体など行政の選択の判断を容易にする。あわせてメーカーなど事業者側が行政用途向けの開発を進める場合、開発の方向を明確化させておくことで、開発につきまといがちな無駄の削減を図ることも目指す。
国交省総合政策局技術政策課の斎藤輝彦技術基準企画調整室長は「たとえばクルマを買うときには、カタログだけで買わず、試乗して乗り心地もみて買うことが多いと思います。この講習会はその体験の場としての意味があったと思います。希望者には機体を貸し出します。この業務に使うにはこの仕様があるといい、ここが足りない、といった要望も、アンケートを回収するなどして集めたいと考えています。こうした取り組みを通じて規定化、標準化を進め、示したいと思っています」と話している。
国交省は2021年10月29日、「行政ニーズに対応した汎用性の高いドローンの利活用等に係る技術検討会」を開催し、2022年2月7日には第二回の会合を開催した。今回の実証はこうした議論を踏まえて行われた。3月2日に川崎港で施設点検業務を想定した実証を予定している。このほか、3月中に各地で施設点検業務や物資輸送業務を想定した実証が行われる。