兵庫県と大阪市立大学は3月10日、多自然地域等でのドローン利活用の可能性を探る共同研究の第一弾として、兵庫県猪名川町大島地区でドローンを使って医療品を運ぶ実証実験を行った。ドローンは小学校と交流施設の区間の往復で4キロを自動航行で飛行し、約1㎏の荷物を運んだ。実験の様子は、地域の関係者や実験会場となった小学校の児童が見守った。
実験は、兵庫県地域創生戦略の地域プロジェクトの一つ、「多自然地域一日生活圏維持プロジェクト」の取り組みの一環。兵庫県が大阪市立大学都市防災教育研究センター(CERD)と連携し、多自然地域などでの積載率の低い非効率な輸配送や、買い物弱者などの課題解決、住民サービスの向上のための方法をドローン利活用で模索する。
実験には猪名川町、日本コンピューターネット株式会社(NCN)、ドローン・テクノサポート株式会社、エアロセンス株式会社、一般社団法人ドローン撮影クリエイターズ協会(DPCA)が協力した。エアロセンスの自律航行が可能なマルチコプター「AS-MC03-T」を、LTEで飛行させた。積み荷は560グラムの医療用の点滴2袋だった。
実験会場となったのは、猪名川町立大島小学校の校庭と、町の交流施設である猪名川町猪名川町環境交流館。ドローンは2地点をつなぐように流れる猪名川の上空を飛行ルートとして自動航行で往復した。当日の風の強さ、向きなどから当初予定していたルートを反対にし、小学校を離陸し交流館に立ち寄ったのち小学校に帰還させた。
ドローンが飛行した猪名川町大島地区一帯は緑が豊かな一方、20年で人口が31%減少するなど過疎化が進む。日常の買い物を支える核となる店舗が域内になく、買い物の利便性を含めて日常生活の利便性を向上させることが課題となっている。買い物弱者対策のひとつとして、ドローンの活用の可能性を探ることになった。
ドローンの離陸前には、小学校の全校生徒約40人が見学。ドローンを間近で取り囲んだり、担当者に質問をしたりと関心の高さを示した。離陸の瞬間には「飛んだ」と歓声があがった。
ドローンの運用を指揮した大阪市立大学都市防災教育研究センター(CERD)の吉田大介准教授(大阪市立大学大学院工学研究科准教授)は、「ドローンで荷物を運ぶことの可能性を探るとともに、飛行中の機体カメラ映像をリアルタイムで中継するなど地域の見守りに使えないか、などの可能性を模索できる可能性があります。今回の実験で蓄積した知見を還元していきたいと思っています」と実験の意義を述べた。兵庫県企画県民部地域創生局の高橋健二企画官も「住み続けたい町であり続けるための取り組みだと思っています」とまちづくりに生かす抱負を語った。
兵庫県と大阪市立大学は3月18日に兵庫県宍粟市波賀地区で第2弾の実証実験を行う予定だ。