ドローンを活用した障害者向けサービスの研究開発などを行う株式会社シアン(東京都千代田区)と、障害者向けのPC入力支援技術開発を手がけるテクノツール株式会社(東京都稲城市)は、目の動きによる入力をドローン操作に応用する視線入力技術を開発し、5月19日、サイエンスパーク「湘南ヘルスイノベーションパーク」(湘南アイパーク、神奈川県藤沢市)で、筋ジストロフィー患者で身体機能に大きな制限を抱える梶山紘平さんが、この技術を使って視線入力でドローンを飛行する様子を公開した。ドローンは梶山さんが視線を動かして入力した通りに飛行し、障害者によるドローンの操縦の可能性を実証した。梶山さんは操縦後、「自分にとってこれは脱寝たきりプロジェクト」と述べた。2024年の実用化を目指し、今後も開発を進める。
実演は、テクノツール、シアン、梶山氏の3者が進める「ドローンアクセシビリティプロジェクト」の一環。重度肢体不自由者がドローンの操作による業務参加を目指す取り組みで、昨年(2021年)10月以降、技術開発を進めてきた。
この日使われたシステムは、PC、モニター、タブレット、カメラなど既存技術に入力のソフトウェアを組み合わせてある。モニター画面に、「上昇」「前進」などが明示されたコkマンドパネルが配置されていて、操縦者は希望するコマンドの記されたパネルに視線を送ると、システムが視線を検知し、検知した動作がドローンに伝わる。
実演では梶山さんが電動車イスに乗った状態でPC、モニター、タブレット、カメラなどを組み合わせた入力システムの前に待機。梶山さんの場所から50mほど離れた場所に、テザー(ドローンスパイダー)につながれたPhantom4pro V2.0が置かれた。梶山さんが入力システムのコマンドに視線を送ると、ドローンは梶山さんの指示通りに上空10mまで上昇し、その後前後、左右、回転の動きを見せた。
実演終了後、梶山さんは今回のデモンストレーションについて「ゲームに夢中になっているうちに、ドローンも操作できるのではないか、と思い立ち(テクノツールの)島田さんに話をしたことがきっかけです。このプロジェクトを多くの人に知ってもらう機会が作れてよかったと思います。傍から見ればぼくは寝たきりで、何もできないと思われがちですが、テクノロジーと技術を提供する方がいれば、寝たきりとは言えなくなります。ぼくとしては寝たきりであることより、どんなテクノロジーを使っているのかが注目される社会になってほしいと思っています。ぼく個人にとってこれは脱・寝たきりプロジェクトだと思っています」とコメントした。また視線入力について「目が乾燥して、開け続けるのが大変でした」と指摘した。今後、ドローンなどの入力技術が発達した場合にしてみたいこととしては、「人間の視線を感じてみたいです。自分は歩いたことがないので、歩く視線を知りません。たとえば歩行ロボットを動かしてみたいということがあります」と話した。
ドローン運用の面から技術開発に関わってきたシアンの岩井隆浩代表取締役CEOは「産業利用までの道はまだ遠いですが、墜落することもなく飛行ができたことは大きな意味があったと思っています」と感想を述べた。同社の社会貢献担当でこの日も飛行をサポートした、中野政勝さんは「今回の実証で梶山さんはプロペラの起動、離陸、前後、左右、回転など基本の動作はすべてクリアすることができました。その意味では大成功だと思います」と述べた。
視線入力技術の開発について、テクノツールの島田真太郎代表取締役は「プロポでの入力に対応するドローンの挙動を、どのように視線入力のソフトウェアに落とし込むかが難しかった。現在も改善し続けている状態です。さらに入力の多様性もキーになると思っていますし、拡張性や汎用性も大事になってきます」と述べた。入力技術の開発に中心的に関わったテクノツールソフト開発部の本間一秀さんは、「プロポ操作の微調整を視線入力に反映させることが今後の課題です」と抱負を述べた。
「ドローンアクセシビリティプロジェクト」は今後も、身体機能に大きな制限を抱える人々の楽しみや就労機会の創出を目指す取り組みを続ける方針だ。梶山さんも視線入力のスキルを使い就労することを目指す。
株式会社SkyDrive(豊田市<愛知県>)は、山口県山口市で重ねてきたリハーサル飛行を収めた動画を公開した。
リハーサル飛行は、山口県山口市の「山口きらら博記念公園」内に設けた飛行試験場で春から行われていて、動画には大阪・関西万博のデモフライトに使われるSD-05が離陸し、移動し、向きを変えて飛行するなどの様子が納められている。
大阪・関西万博では7月31日から8月24日まで、火、水曜以外の原則週5日の予定で、来場者の前で飛行する様子を公開する。
建設設備大手の三機工業株式会社(東京)は7月11日、グループ会社、有限会社キャド・ケンドロ(仙台市)と共同で狭小空間ドローン開発の株式会社リベラウェア(Liberaware、千葉市)のドローンとレーザースキャナを併用した既存設備の3Dモデル化するデジタル化手法を確立したと発表した。Liberawareも同日、三機工業に「IBIS2」を「導入した」と発表した。
三機工業は設備更新や模様替えなどのさいに、現場を3Dモデリングし、現状を把握してから取り組む。完成後の更新や追加工事で現状が図面通りになっていないことが多く、作業の妨げになるおそれがあるためだ。しかし天井裏などでダクトや配管が込み入っている場合に、すべての設備にはレーザーが届き切らずに十分な3Dモデルができあがらない場合がある。こうした課題を乗り越える手法の開発を進めているところ、今回、ドローンとレーザースキャナを併用してデジタル化する手法を開発した。
同社が実施した実用化検証では、IBIS2とレーザースキャナを併用した場合、従来の3Dスキャン手法と比べ、機械室などの天井の無い空間の場合、認識できた建築部材が約135%、天井の一部が解体された天井裏空間で約400%向上したという。
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丸紅株式会社(東京)は7月8日、大阪・関西万博でデモフライトを披露する計画を公表している英ヴァーティカルエアロスペース社(Vertical Aerospace Group Ltd.)開発の5人乗りAAM「VX4」について実施を「見送る」と発表した。英国で行われているVX4試験機での有人飛行試験で判断したという。
丸紅は発表の中で「現在英国で行われているVertical社製VX4試験機による有人飛行試験の進捗状況から、大阪・関西万博でのデモフライトへの対応を見送ることとなりました」と伝えた。VX4のキャビンを再現したモデル空間は予定通り万博会場に出展し、8月から搭乗体験を実施する予定という。
また丸紅が万博で飛ばすもうひとつの機体、米LIFT AIRCRAFT社(以下、「LIFT社」)製の1人乗り機「HEXA」については、デモフライトを近く再開させる方向で調整中だ。HEXAは4月26日のデモフライト中に部品が落下したためデモフライトを中断して原因究明を続けている。
その結果「モーター搭載箇所の部品について、サプライヤーが仕様と異なる素材の部品を誤って供給していたことが判明」したと説明し、「当該部品の交換およびその他重要部品の再点検を完了した上で、再発防止策として、LIFT社において部品の受領・品質管理について包括的な監査を実施し、必要な工程について改善したことを確認しました。関係機関の許可を以て、今後大阪・関西万博でテストフライトを実施し、十分に最終確認を行った後、安全を最優先として関係機関および関係各社と協議・判断し、デモフライトの再開に関しては改めてお知らせいたします」と伝えている。
丸紅は大阪・関西万博でのAAM運航事業者4グループのひとつだ。
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英ロックバンド、オアシスの再結成後初のコンサート会場となるウェールズの首都カーディフのプリンシパリティ・スタジアムで現地時間7月2日、ドローンで形作られた「OASIS」のロゴが浮かび上がった。ツアーは7月4日に始まり、11月まで世界各国をまわる。ツアー初日を翌々日に控えたドローンの演出はオアシスの公式アカウントで公開されている。
ドローンのロゴは公演開始前に上空に描かれ、オアシスの再結成ツアー開催を祝福し、喜ぶファンの気分の高揚に貢献した。
オアシスは1991年にマンチェスターで結成され、7000万枚以上のアルバムを売ったロックバンドだ。2009年に解散したが昨年2024年に再結成した。再結成後初のコンサートツアーが7月4日にはじまり、北米、南米、オーストラリア、韓国など各地をまわる。2025年は11月23日のサンパウロ公演で幕を閉じる予定だ。日本公演も10月に予定されている。チケットはいったん予定枚数の販売を完了したが、機材席の解放による追加販売が決定し、7月12日正午に抽選の受付を開始する予定だという。
音楽シーンとドローンとは、MV撮影、ライブ映像撮影、演出としての屋内ドローンショーなどの例があるなど縁があり、今後も活用の幅が広がる可能性がある。
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AAM開発の米ジョビー・アビエーションは6月30日、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイでパイロットが搭乗し、垂直離着陸の固定翼飛行を実施した。ジョビーは「2026年に最初の乗客を運ぶ」と2026年のサービス開始を目指している。ジョビーは開催中の大阪関西万博で「運航事業者」にもなっている。
ジョビーによるドバイでの飛行は、「piloted, vertical-takeoff-and-landing wingborne flights」で、パイロットが乗り、垂直離着陸をしたうえで、機体の固定翼で移動した飛行で、「eVTOL分野では初めての取り組み」としている。ジョビーはこの飛行を通じて、ドバイ地域での商用市場準備の取り組みを開始したことも明らかにした。ジョビーは直接運航、航空機販売、地域パートナーシップを商業化戦略の3本柱と位置付けていて、今回の試験飛行が「重要な一歩」と話している。
試験飛行はドバイ道路交通局、ドバイ民間航空局、UAE民間航空総局と連携して実施された。またドバイ道路交通局長官兼理事会会長のマタール・アル・タイヤー会長が立ち会った。
ジョビーは、ドバイ国際空港(DXB)、ペルシア湾の人工島であるパーム・ジュメイラ、現在建設が進められている世界第2の面積の人工のマリーナであるドバイ・マリーナ、超高層ビルブルジュハリファで知られるドバイ・ダウンタウンでの商業サービス導入を目指している。バーティポートはすでに建設が進められている。
ジョビーはDXBからパーム・ジュメイラまでをエアタクシーサービスで移動した場合、移動時間は12分で、45分かかる車での移動時間が大幅に短縮されると見込んでいる。
ジョビーがエアタクシーサービスで使う機体は電動で、パイロット1人と最大4人の乗客を乗せ、最高時速200マイル(約320km)で輸送できる設計と説明していて、ジョビーは「短時間の通勤、小旅行、地域間のシームレスな移動のために、より速く、より静かで、より便利な空の旅を提供します」と話している。
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東京株式市場グロース市場で7月2日、ACSL株がストップ安となった。午前9時29分にいったん1187円で寄り付いたがその後も売りが殺到し、再び取引の成立したない売り気配で推移した。ACSLは前日の7月1日、前CEOによる不適切取引判明を発表していて嫌気を誘ったとみられる。
ACSL株は取引き開始前から売り注文を集めていて、取引開始がはじまったしばらく値が付かないまま推移した。午前9時29分に値幅制限いっぱいいの、前日終値比300円安のストップ安となる1187円で取引が成立したが、その後も売りは止まらず、再び取引が成立しない展開が続いた。
ACSLが7月1日に発表した「お知らせ」はこちら