国土交通省は3月7日、物資輸送にドローンを活用する実証を、東京・荒川下流の臨海緊急用船着場(東京都江戸川区)などで実施した。行政用途向けドローンの標準的性能を規定化する国交省の取り組みの一環で、民間のドローン2機がそれぞれ、首都高速道路の高架下をくぐるルートを自動飛行し、近隣の中学校の校庭に飲料水を運んだ。実証の様子は渡辺猛之国土交通副大臣も視察した。渡辺副大臣は、国交省幹部が「国交省は港湾、道路など多くのインフラがありますので総動員して参ります」と説明したのに対し、「これからも大いにやりましょう」などと応じた。
実証の会場となった臨海緊急用船着場は、災害が発生した時に周辺地域の復旧活動に必要な資機材や救援物資の積み下ろしなどの活動拠点とするために国交省が整備している緊急用船着場のひとつ。荒川の下流の中洲の南端にある。関東地方整備局荒川下流河川事務所が管理している。
実証は災害の発生を想定し、緊急船着場に船で届けられた飲料水を、直線距離で530m離れた江戸川区立清新第一中学校まで届けるシナリオで実施された。清新第一中学校は江戸川区の一次避難所に位置付けられている。周辺は、東京メトロ西葛西駅から直線距離580mの場所にあり、集合住宅が立ち並び賑わいのある商店街もあり、人通りも住民も多い地域。江戸川区も防災に力を入れている。
実証の現場には、渡辺国土交通副大臣が視察に訪れた。渡辺副大臣は臨海緊急用船着場に到着すると、江戸川区の担当者から地元の防災の取り組みやドローンの活用状況などについて説明を受けたほか、この日の運用を取り仕切る民間事業者の代表から、ドローンの運用計画や、ドローンの防災や物資輸送での活用の可能性、ドローンの安全な自動飛行を支えるドローンポートシステムの概要などについて説明を受けた。その後、この日の実証に使われる機体を間近で確認し、1機目のドローンが、2リットルの飲料水6本を詰めた収納容器を積んで離陸する様子を見届けた。国交省の髙田昌行技術総括審議官、伊藤真澄技術政策課長、斎藤輝彦技術基準企画調整室長が同席したほか、地元江戸川区の担当者や関係機関も参加した。
臨海緊急用船着場を離陸したドローンは、川をまたぎ、首都高中央環状線の高架下をくぐり、送電線、鉄塔、変電設備の影響を受けないルートをたどって、届け先となる中学校の校舎の上空を超え、校庭に設置されたドローンポートに着陸した。飛行ルートは約800m。離陸から着陸まで、オペレーターが手動操作をしない自動飛行で運用された。
渡辺国土交通副大臣は、物資の届け先である中学校の校庭でもドローンが着陸する様子を視察した。渡辺副大臣は同席していた国交省幹部に「災害活動が自動で運用できることは、人手をほかの活動にあてられる意味でも、活動に従事する作業員の安全確保の意味でもとても心強いです。精度の高い自動飛行はさらに重要になると思います。ドローンの防災利用は、陸路が寸断されたり、一帯が水没したりした場合の救命、救難活動に重要だと考えます」などと話した。
実際、緊急船着場から自動車で届け先まで向かう場合は、交通量の多い道路を含めて約2㎞を走行する必要がある。またこの間、いくつかの右折や信号があり、混雑状況次第ではひとつの右折のために、信号の切り替わりを何度かやり過ごす必要が生じる。災害時には混雑が予想されるほか、災害により道路が寸断したり、水没したりすると、陸路が機能不全に陥るリスクがある。陸路以外の選択肢を持つことが防災活動の成果を高める方法として検討されており、ドローンは有効な選択肢となる可能性がある。
また渡辺副大臣は、隣りの髙田技術総括審議官が「ドローンの物資輸送では料金設定も課題になります」と話したのに対し、「民間事業者にとってきちんとビジネスとして成立する仕組みを作ることが大事です。技術開発だけでは民間事業者が事業を継続することができない」と応じ、採算がとれる環境づくりへの問題意識を示した。さらに髙田技術総括審議官が「国交省は港湾、道路など多くのインフラがありますのでドローンの実証に、これらを総動員して参ります」と説明すると、渡辺副大臣は「これからも大いにやりましょう」などと応じた。
国交省は実証で得られた知見を、行政用途向けのドローンの仕様の規定化に役立てる。今後も実証を重ねる方針だ。
株式会社SkyDrive(豊田市<愛知県>)は、山口県山口市で重ねてきたリハーサル飛行を収めた動画を公開した。
リハーサル飛行は、山口県山口市の「山口きらら博記念公園」内に設けた飛行試験場で春から行われていて、動画には大阪・関西万博のデモフライトに使われるSD-05が離陸し、移動し、向きを変えて飛行するなどの様子が納められている。
大阪・関西万博では7月31日から8月24日まで、火、水曜以外の原則週5日の予定で、来場者の前で飛行する様子を公開する。
建設設備大手の三機工業株式会社(東京)は7月11日、グループ会社、有限会社キャド・ケンドロ(仙台市)と共同で狭小空間ドローン開発の株式会社リベラウェア(Liberaware、千葉市)のドローンとレーザースキャナを併用した既存設備の3Dモデル化するデジタル化手法を確立したと発表した。Liberawareも同日、三機工業に「IBIS2」を「導入した」と発表した。
三機工業は設備更新や模様替えなどのさいに、現場を3Dモデリングし、現状を把握してから取り組む。完成後の更新や追加工事で現状が図面通りになっていないことが多く、作業の妨げになるおそれがあるためだ。しかし天井裏などでダクトや配管が込み入っている場合に、すべての設備にはレーザーが届き切らずに十分な3Dモデルができあがらない場合がある。こうした課題を乗り越える手法の開発を進めているところ、今回、ドローンとレーザースキャナを併用してデジタル化する手法を開発した。
同社が実施した実用化検証では、IBIS2とレーザースキャナを併用した場合、従来の3Dスキャン手法と比べ、機械室などの天井の無い空間の場合、認識できた建築部材が約135%、天井の一部が解体された天井裏空間で約400%向上したという。
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丸紅株式会社(東京)は7月8日、大阪・関西万博でデモフライトを披露する計画を公表している英ヴァーティカルエアロスペース社(Vertical Aerospace Group Ltd.)開発の5人乗りAAM「VX4」について実施を「見送る」と発表した。英国で行われているVX4試験機での有人飛行試験で判断したという。
丸紅は発表の中で「現在英国で行われているVertical社製VX4試験機による有人飛行試験の進捗状況から、大阪・関西万博でのデモフライトへの対応を見送ることとなりました」と伝えた。VX4のキャビンを再現したモデル空間は予定通り万博会場に出展し、8月から搭乗体験を実施する予定という。
また丸紅が万博で飛ばすもうひとつの機体、米LIFT AIRCRAFT社(以下、「LIFT社」)製の1人乗り機「HEXA」については、デモフライトを近く再開させる方向で調整中だ。HEXAは4月26日のデモフライト中に部品が落下したためデモフライトを中断して原因究明を続けている。
その結果「モーター搭載箇所の部品について、サプライヤーが仕様と異なる素材の部品を誤って供給していたことが判明」したと説明し、「当該部品の交換およびその他重要部品の再点検を完了した上で、再発防止策として、LIFT社において部品の受領・品質管理について包括的な監査を実施し、必要な工程について改善したことを確認しました。関係機関の許可を以て、今後大阪・関西万博でテストフライトを実施し、十分に最終確認を行った後、安全を最優先として関係機関および関係各社と協議・判断し、デモフライトの再開に関しては改めてお知らせいたします」と伝えている。
丸紅は大阪・関西万博でのAAM運航事業者4グループのひとつだ。
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英ロックバンド、オアシスの再結成後初のコンサート会場となるウェールズの首都カーディフのプリンシパリティ・スタジアムで現地時間7月2日、ドローンで形作られた「OASIS」のロゴが浮かび上がった。ツアーは7月4日に始まり、11月まで世界各国をまわる。ツアー初日を翌々日に控えたドローンの演出はオアシスの公式アカウントで公開されている。
ドローンのロゴは公演開始前に上空に描かれ、オアシスの再結成ツアー開催を祝福し、喜ぶファンの気分の高揚に貢献した。
オアシスは1991年にマンチェスターで結成され、7000万枚以上のアルバムを売ったロックバンドだ。2009年に解散したが昨年2024年に再結成した。再結成後初のコンサートツアーが7月4日にはじまり、北米、南米、オーストラリア、韓国など各地をまわる。2025年は11月23日のサンパウロ公演で幕を閉じる予定だ。日本公演も10月に予定されている。チケットはいったん予定枚数の販売を完了したが、機材席の解放による追加販売が決定し、7月12日正午に抽選の受付を開始する予定だという。
音楽シーンとドローンとは、MV撮影、ライブ映像撮影、演出としての屋内ドローンショーなどの例があるなど縁があり、今後も活用の幅が広がる可能性がある。
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AAM開発の米ジョビー・アビエーションは6月30日、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイでパイロットが搭乗し、垂直離着陸の固定翼飛行を実施した。ジョビーは「2026年に最初の乗客を運ぶ」と2026年のサービス開始を目指している。ジョビーは開催中の大阪関西万博で「運航事業者」にもなっている。
ジョビーによるドバイでの飛行は、「piloted, vertical-takeoff-and-landing wingborne flights」で、パイロットが乗り、垂直離着陸をしたうえで、機体の固定翼で移動した飛行で、「eVTOL分野では初めての取り組み」としている。ジョビーはこの飛行を通じて、ドバイ地域での商用市場準備の取り組みを開始したことも明らかにした。ジョビーは直接運航、航空機販売、地域パートナーシップを商業化戦略の3本柱と位置付けていて、今回の試験飛行が「重要な一歩」と話している。
試験飛行はドバイ道路交通局、ドバイ民間航空局、UAE民間航空総局と連携して実施された。またドバイ道路交通局長官兼理事会会長のマタール・アル・タイヤー会長が立ち会った。
ジョビーは、ドバイ国際空港(DXB)、ペルシア湾の人工島であるパーム・ジュメイラ、現在建設が進められている世界第2の面積の人工のマリーナであるドバイ・マリーナ、超高層ビルブルジュハリファで知られるドバイ・ダウンタウンでの商業サービス導入を目指している。バーティポートはすでに建設が進められている。
ジョビーはDXBからパーム・ジュメイラまでをエアタクシーサービスで移動した場合、移動時間は12分で、45分かかる車での移動時間が大幅に短縮されると見込んでいる。
ジョビーがエアタクシーサービスで使う機体は電動で、パイロット1人と最大4人の乗客を乗せ、最高時速200マイル(約320km)で輸送できる設計と説明していて、ジョビーは「短時間の通勤、小旅行、地域間のシームレスな移動のために、より速く、より静かで、より便利な空の旅を提供します」と話している。
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東京株式市場グロース市場で7月2日、ACSL株がストップ安となった。午前9時29分にいったん1187円で寄り付いたがその後も売りが殺到し、再び取引の成立したない売り気配で推移した。ACSLは前日の7月1日、前CEOによる不適切取引判明を発表していて嫌気を誘ったとみられる。
ACSL株は取引き開始前から売り注文を集めていて、取引開始がはじまったしばらく値が付かないまま推移した。午前9時29分に値幅制限いっぱいいの、前日終値比300円安のストップ安となる1187円で取引が成立したが、その後も売りは止まらず、再び取引が成立しない展開が続いた。
ACSLが7月1日に発表した「お知らせ」はこちら