雅工房 の記事一覧:1件
  • 2021.8.28

    NEDOのアニメーションが話題 「プロペラの動きが正確」「説明が分かりやすい」 

    account_circle村山 繁
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     国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公開しているドローンを解説するCGアニメーション『ドローンが活躍するミライ』が関係者の間で「分かりやすい」と話題だ。大人向け、子供向けの2本(大人向けの標題は「未来」と漢字で表記)があり、特に子供向は説明の言葉が易しくかみくだかれている。登場するドローンはマルチコプターで、プロペラの回転の向きなど、言葉で説明されていない部分にも目配りが行き届くなどこだわりが凝縮されている。

    くどくなく、わかりやすく 分かりやすさ追求

     子供向けアニメーションでは、主人公の「ミライちゃん」が、ドローンの飛ぶ仕組み、ドローンが活躍するシーン、開発すべき技術などを説明している。ミライちゃんが説明する言葉がわかりやすく、アニメーションそのものにも工夫が凝らされていることが特徴だ。

     たとえばミライちゃんがドローンの飛び方を説明する場面で、ミライちゃんは「プロペラの回るスピードをかえることで、上へいったり下へいったり、前、後ろ、左右と自由に動けるんだよ」と説明する。これにあわせてアニメーションの中で動くドローンは、対角線上にあるプロペラが同じ方向に回転し、隣り合ったプロペラ同士は逆回転となるなど、実物の動きを再現している。プロペラ回転の方向はアニメーション上では矢印で示されていて、飛ぶ仕組みの理解につながる。

     ドローンが前進する場面では、機体を前傾させている。このとき、回転速度が高まる後ろ側2つのプロペラの矢印が太く表示されるなど、回転速度が変化したことを視覚的につかむことができる。いずれも、言葉では説明されておらず、動画の中で工夫されている。

     ドローンの活動場面については、輸送物流、災害調査、インフラ点検、農薬散布、警備が例示されている。たとえば輸送では、「都市と都市の間を大型のドローンが結んで、たくさんの荷物を運び、都市の中では小さなドローンが個別に荷物を届けます」など、長距離大量、短距離少量(あるいは拠点間輸送、ラストマイル配送など)などの役割を織り込んでいる。アニメーションでは、ビル屋上に降りた大型機が、小型機に荷物を小分けする様子が描かれている。離発着場、ディストリビューションセンターなどの考察にもつながる。

    ドローンの動く仕組みが視覚的に理解できる工夫が凝らされている
    物流でのハブ&スポークの考え方も織り込まれている

    製作の樋口氏「位置、角度を緻密に計算」「ズレのない全編ワンカット動画」

     さらにNEDOが取り組んでいる研究課題も取り上げている。アニメーションでは衝突回避の運航管理システム、ヘリコプターなど有人機の探知、機体識別などを取り上げた。

     NEDOでアニメーションを担当した専門調査員の大熊正文さんは、「小学生低学年に分かる動画にするために工夫を重ねました。説明の言葉は、正確でさえあればいいというものでもなく、子供に受け入れられる言葉を、広報の担当者にも参加してもらって練り上げました。主人公のミライちゃんは女の子という人も、男の子という人もいます。そこは見る人の自由です。ミライちゃんの視線の動きでドローンを感じてもらえればいいと思います。アニメーションでもプロペラの回転の向きなど、子供の観察にきちんと耐えられるものにしました。用途ごとにいろいろな回転翼機が出てくるのですが、製作したクリエイターが気を利かせてくれたことも大きかったです」と話す。

     NEDOとロボット関連人材育成などに関する協力協定を提携している福島県南相馬市からNEDOに出向していた南相馬市経済部商工労政課課長の寺島政博さんは「南相馬市はロボット産業に力を入れています。福島ロボットテストフィールドもあり、小学校ではドローンに触れ合う機会をもっています。高学年の児童はほとんど、ドローンに触れているのではないかと思います。動画は、そんなドローンを未来にいかす人材育成の一環として役立つと期待しています」と話す。

     実際に動画の製作を請け負ったクリエイターにもこだわりがある。雅工房(埼玉県草加市)の代表で、デジタルクリエーターの樋口雅克さんは、「こだわった点は、まずはキャラクターです。最終的に親しみを感じてもらえるキャラクターになったのではないかと思います。表現方法も、3DCGをなるべく感じさせない柔らかいテイストにしました。技術的なこだわりもあって、子供向けの動画は実は編集に継ぎ目が全くない『全編ワンカット動画』として制作しました。キャラクターやオブジェクトや背景の位置、プロペラの回転の角度などは、緻密な計算により全編ズレが全くありません。企画段階から、そのようなこだわりを持って作られています。このワンカット処理により注意力が削がれることなく、ドローンの原理や役割や課題などを楽しく見ていただけるのではないかと思います」と説明する。

     アニメーションは7月末に公開され、関係者の間で話題になっている。NEDOの主任、森理人さんは「ドローンに関心を持ってもらい、その必要性、活用法などを考えるきっかけにして頂ければうれしいです。子供たちには夏休みの自由研究に役立てる方法もあると思います。また、大人が見ても、学びがある良いアニメーションに仕上がりましたので、多くの方にご覧頂き、活用頂けるものと期待しています。合わせて、大人向けのアニメーションもありますので参考にして頂ければ幸いです」と話している。

    ◆「ドローンが活躍するミライ」を製作した雅工房のサイトはこちら

    子供向けの動画
    大人向けの動画

    AUTHER

    村山 繁
    DroneTribune代表兼編集長。2016年8月に産経新聞社が運営するDroneTimesの副編集長を務め、取材、執筆、編集のほか、イベントの企画、講演、司会、オーガナイザーなどを手掛ける。産経新聞がDroneTimesを休止した2019年4月末の翌日である2019年5月1日(「令和」の初日)にドローン専門の新たな情報配信サイトDroneTribuneを創刊し代表兼編集長に就任した。現在、媒体運営、取材、執筆、編集を手掛けながら、企画提案、活字コミュニケーションコンサルティングなども請け負う。慶應義塾大学SFC研究所ドローン社会共創コンソーシアム研究所員、あおもりドローン利活用推進会議顧問など兼務。元産経新聞社副編集長。青森県弘前市生まれ、埼玉県育ち。