マレーシアに本社を構えるドローンサービスのエアロダイングループは5月10日、日本国内3社を引受先に第三者割当増資を実施したと発表した。調達したのはエアロダイングループのAerodyne Ventures Sdn Bhdで、引受先3社はリアルテックホールディングス株式会社(東京都)が運営するリアルテックグローバルファンド、KOBASHI HOLDINGS株式会社(岡山市)、株式会社自律制御システム研究所(東京都)。資金は農業進出の加速などに活用する。エアロダイングループが日本勢に限った資金調達を実施するのは今回が初めてで、今後日本との関係強化も加速するとみられ、日本の株式市場への上場も視野に入れる。
今回の資金調達は、エアロダイングループの農業への事業領域拡大を目指す戦略に伴う調達だ。エアロダイングループは東南アジアでの精密農業サービスの構築を目指し、現在、マレーシアで大規模農場を保有する大手を含む企業と実証実験を始めている。2022年以降には範囲をインド、インドネシア、タイに広げる予定で、事業化を進めている。調達した資金は農業領域への事業拡大に活用する見込みだ。。
東南アジアの農業は、コメ、パーム、パイナップルなどを広大な農地で栽培するプランテーション型農業が定着しているものの、環境負荷が高いなどの課題を抱えている。ドローンを使った精密農業にはこうした課題の解決に高い期待が寄せられており、高い市場性も見込まれる。
エアロダイングループは東南アジア一帯でドローンを活用した石油、電力などインフラの点検、モニタリングサービスなどを手がける企業として、日本を含め広く知られている。2018年には日本法人、エアロダインジャパン株式会社(東京)を設立して、日本での事業拡大を開始。点検事業を中心に、国内企業との連携も深めてきた。
今回の資金調達の引受先とは、日本国内での連携が進んでいる。ACSLとはエアロダインジャパンが2020年11月、有人地帯上空の目視外飛行(Level 4)を見据えた連続飛行試験の実施体制をASEANで構築する連携を開始している。この連携に基づき、12月以降、ACSLの主力機体、「PF2」と「Mini」をマレーシアで、1000時間におよぶ連続飛行試験を実施し、リスクレベル評価や安全性、信頼性を示す基礎データの取得を進めている。
またACSLも開発した機体の販路拡大として海外市場を見据えており、今回の出資がACSLの方針にも合致する。
エアロダインは今回の資金調達相手となった3社を「戦略的パートナー」と位置付けている。日本での事業拡大を見据える中、より幅広く資金を調達するため上場を目指すことになりそうだ。
この日の発表の中で、エアロダイングループのカマルル・A・ムハメドCEOは「新たな戦略的パートナーを歓迎するとともに、これから一緒に歩みを進めることを楽しみにしております。リアルテックファンド、KOBASHI HOLDINGS、そしてACSLの3社との連携により、現在我々が新たに注力している農業分野でのサービスの成長や、日本市場での更なる事業拡大に弾みをつけることが出来ると信じております。また、保連携を通じて、弊社が所有するドローンやソフトウェア、AIのテクノロジー領域の発展を、更に次のステップへと導いてくれると考えております。リアルテックファンドが掲げる、地球や人類の課題解決が出来るイノベーションをサポートするという経営哲学は、弊社の理念と同様であり、これからの協業を楽しみにしております」と話している。
<引受先談話>
■リアルテックホールディングス 藤井昭剛ヴィルヘルム氏
エアロダインはKamarul A. Muhamed CEOの強いビジョンとリーダーシップの下、僅か数年間で業界のリーディングカンパニーまで昇り詰めている、マレーシア期待の星です。同社のドローンソリューションは、より多くの人々に強靭で安価な社会インフラを提供する他、持続可能な農業の普及に寄与するなど、SDGsの目標達成に大きく貢献することを期待しております。また、当社の関係会社であるリバネス社と多方面のプロジェクトにおいて連携するなど、エアロダインはかねてから日本市場への強い興味関心を示しておりました。今回の資金調達は、日本市場進出および将来的な東京証券取引所での上場を検討するための戦略的な調達となっており、当社としてもマレーシアと日本のベンチャーエコシステムを接続する象徴例として、全力で支援して参ります。
■ACSL代表取締役社長 兼 COO鷲谷 聡之氏
エアロダインが築いてきたドローンサービスプロバイダーとしてのグローバルでの確固たる地位は、当社としても大変魅力的です。当社は2020年11月より、エアロダインの日本法人であるエアロダインジャパン社と連携してドローンの飛行試験を実施しており、当社ドローンの開発になくてはならない存在となっております。今回の出資を通して両社の連携をさらに強化することで、ドローンの社会実装がますます進んでいくことを期待します。
■KOBASHI HOLDINGS代表取締役社長 小橋正次郎氏
エアロダインのドローンソリューションが、農作物の収量および品質の向上を図り、環境負荷と農作業者の負担を軽減することで、サステナブルな農業の普及に大きく貢献することを期待しております。当社の農業機械メーカーとして培ってきたリソースによって、同社の新たな農業分野・日本市場への進出を支援することで、アグリテックの次なる未来を牽引し、日本の農業の進化に寄与して参ります。