自律ドローン開発の株式会社ACSL (東京都江戸川区)は、国連の専門機関、万国郵便連合(UPU)の諮問委員会(CC)にドローン企業として世界で初めて参加することになったと発表した。UPUもACSLをCCのゴールドメンバーになるための申請を承認したと発表した。UPUは世界192か国の郵便当局が加盟する、国連で2番目に歴史のある専門機関で、ACSLは今後、CCのミーティング参加などを通じて、UPUに対して提言することになる。UPUCCはUPUの共通の利益のために提言する民間企業など非政府組織で構成され、日本の参加者は現時点ではACSLが唯一だ。またドローン開発の企業もACSLだけで、今後、世界の郵便行政に対するACSLのプレゼンス拡大が期待される。
ACSLがゴールドメンバーとして参加が認められたのは、UPUが民間の見解を募るために組織したCCと呼ばれる諮問委員会だ。現在、世界で16の民間企業や団体の参加が認められている。承認の要件には各国の郵便当局や事業者の推薦が含まれ、ACSLは日本郵便株式会社とのドローン配送など連携した取り組みが豊富なことから、要件を満たしたとみられる。UPUの公式サイトは現時点で、CCの新メンバーを紹介する「New Member announcement」欄の筆頭でACSLを紹介している。なお日本郵便は民間企業だが、郵便当局としてUPUの本体に加盟している。
CCメンバーは、①政策・規制②貨物・輸送③税関と製品安全④宛名書きとダイレクトマーケティング⑤電子商取引⑥郵便金融サービスなどのテーマに沿って、郵便セクターの利益に貢献する提言が期待される。ACSLは日本郵便株式会社(東京)と連携して配送サービスの実証実験や実装を推進しており、今後はこうした経験や成果をふまえた提言が期待される。
CCメンバーはゴールド、シルバー、ブロンズの3クラスがあり、ゴールドメンバーには全メンバーに認められるCC総会(CC General Assembly)への参加に加え、UPUの文書、出版物、データベースへのアクセスや、大会イベントやレセプションのスポンサーになる権利が認められている。なお次のCC総会は、2023年5月1日から12日に開催が予定されている。
ACSLの発表は以下の通りだ。
■ 万国郵便連合は192カ国の加盟国を持つ国際機関で、ACSLはドローン関連企業としては世界で初めて加盟
■ 世界各国における郵便・物流サービスのシステムやガイドラインなどの標準化や、ラストワンマイル配送などの課題解決に、唯一のドローン企業として貢献していくことを目指す
国産ドローンメーカーの株式会社ACSL (本社:東京都江戸川区、代表取締役社長:鷲谷聡之、以下、ACSL)は、本日、国連専門機関である万国郵便連合(Universal Postal Union、以下、UPU)の諮問委員会(Consultative Committee)に、ドローン関連企業として世界で初めて加盟しました※ので、お知らせします。
UPUは192カ国の加盟国を持ち、郵便業務の効果的運営によって諸国民の通信連絡を増進し、文化、社会及び経済の分野における国際協力に寄与することを目的とする国連専門機関です。ACSLは、2018年に航空法が改正された際に、日本郵便株式会社と一緒に日本で初めてレベル3飛行(補助者なし目視外飛行)を実現し、2022年12月にはレベル4での運用を前提とした新たな物流専用ドローンを発表するなど、ドローンを活用した郵便・物流の課題解決に積極的に取り組んできました。
そうした取り組みが評価され、この度、UPUにドローン関連企業としては世界で初めて加盟を認められました。本加盟により、世界各国におけるドローンを活用した郵便・物流サービスに関するシステムやガイドラインなどの標準化、日本がこれまで実施してきたドローンを活用した郵便・物流サービスに関する実証を、連携しながら各国へと展開していくこと、そして、世界各国での郵便・物流サービスの動向に関する情報収集や日本での活動に関する情報発信が可能となります。
今後、共通で抱える課題であるラストワンマイル配送へのドローンの活用など、ACSLが持つ技術や経験を活かして課題解決に貢献できるよう、目指してまいります。
※UPU Consultative Committee
https://www.upu.int/en/Universal-Postal-Union/About-UPU/Bodies/Consultative-Committee
UPU事務局長 目時 政彦氏 コメント
国際郵便の可能性を広げる手段として、ドローンには非常に期待をしています。そして、日本においてドローンデリバリーを日本郵便社と連携しながら実装に向け取り組むACSLには、実証実験による知見が多く蓄積されており、これから国際郵便における各種課題の早期発見や対策の検討などに一緒に取り組んでいける存在としてとらえております。事務局長として、今回のACSLの加入を大いに歓迎いたします。
代表取締役社長 鷲谷 聡之 コメント
ACSLが国際的な機関であるUPUへの加盟できたこと、目時事務局長をはじめ、関係各位に感謝申し上げます。
加盟にあたり、スイスのベルンにあるUPU本部に訪問させていただきました。昨今のeコマースの発達と普及により、世界各国が抱えるラストワンマイル配送の課題は、決してそれぞれの国だけの課題ではなく、国際的な課題として捉えて、解決に取り組んでいかなければいけないと感じました。そして、ドローンを活用することによって、そうした課題の解決に貢献できるのではないかという手ごたえも感じることができました。ACSLは、UPUに加盟する世界初のドローン関連企業として協力体制を構築し、公正で開かれた国際的な郵便・物流サービスへの貢献はもちろんのこと、日本国内の技術・サービスの発展にも貢献したいと考えております。
【株式会社ACSLについて】 https://www.acsl.co.jp/
ACSLは、産業分野における既存業務の省人化・無人化を実現すべく、 国産の産業用ドローンの開発を行っており、特に、画像処理・AI のエッジコンピューティング技術を搭載した最先端の自律制御技術と、同技術が搭載された産業用ドローンを提供しています。既にインフラ点検や郵便・ 物流、防災などの様々な分野で採用されています
自律航行ドローン開発の株式会社ACSL(東京)は1月20日、第三者に割り当てる新株、無担保転換社債型新株予約権付社債、新株予約権の発行による資金調達を決めたと発表した。割当先は投資ファンドCVI Investments, Inc.(ケイマン諸島)で、1月20日付で買取契約を結んだ。ACSLの調達額は権利が行使された場合で約35億6000万円(費用をのぞくと34億円強)になる。調達した資金は研究開発などに充て戦略実現を加速する。
資金調達についてACSLは研究開発に従来水準の投資をする方針である一方、現金と現預金の合計額が前年度に比べて14億円減っていて、「戦略の実現を加速させるための資金調達が必要である」と判断したと説明している。新株は1株あたり1539円で、ACSLは東京証券取引所での2022年12月20日から2023年1月19日の終値の単純平均の10%割り引いた価格にあたり、発表直前である2023年1月19日の同社株の終値(1654円)の93%にあたると説明している。
調達資金の使い道は①用途特化型機体及びプラットフォーム機体の開発・評価などの研究開発(約19億円)②海外事業拡大のための研究開発費を含めた運転資金(10億円)③ドローンの自律飛行のための地上局向けTAKEOFFソフトウェアの開発(5億円)で、それぞれ2023年2月から2024年12月までを支出予定時期としている。新株予約権が支出予定時期までに行使されず、調達額が予定に届かなかった場合には、使い道の優先順位に応じて活用する一方、自己資金の充当、別の資金調達を模索したうえで、支出額を調整する。
新株発行を伴う資金調達は既存株主の財産価値を希薄化する効果を持つことから、ACSLは、株式への転換が分散化される可能性のある方法を選択しており、希薄化の影響を抑制することを念頭に置いている。調達した資金が業績向上をもたらせば、株価上昇を通じて株主価値向上につながる。
またACSLは1月13日、約4億880万円の特別損失を計上したことを発表した。投資先企業の収益力低下にともなう評価損を計上することにしたためで、集計中の2022年12月31日で締めた決算について、2022年11月に公表していた業績予想の当期純利益を、21億5000万円の赤字から、25億5800万円の赤字に下方修正した。
改正航空法の施行を受けて「レベル4」飛行を可能にする制度が解禁された12月5日、多くのドローン関係者、関係機関が多岐にわたる反応を見せた。一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)の鈴木真二理事長は「世界でも画期的な出来事」と談話を発表した。KDDIスマートドローン株式会社(東京)は、レベル4解禁にあわせて創設された国家資格にも対応するドローンスクール「KDDIスマートドローンアカデミー」をスタートさせると発表した。株式会社ACSLはこの日始まった型式認証制度に、同社のレベル4対応ドローンを第一種認証として申請した。同社の鷲谷聡之代表取締役は「まさに『ドローン元年』と言える大きな変革」と歓迎した。株式会社FLIGHTSは、改正航空法で義務化が盛り込まれた飛行日誌の自動出力に対応した飛行管理システム「Flight Report Cloud(フライトレポートクラウド)」の提供を発表した。天候情報の株式会社ウェザーニュースもドローンパイロット向けサービスの無料トライアルを開始しており、レベル4解禁をふまえた動きは加速しそうだ。
JUIDAの鈴木理事長はこの日、改正航空法施行にあわせて談話を発表。その中で、「日本でのレベル4飛行を可能とする制度の本格的な施行は、世界でも画期的な出来事であると認識」と表現。「空の利活用において日本が世界を牽引することを改めて自覚する機会であると考えております」と決意を新たにした。
KDDIスマートドローンはこの日、「ドローン事業に関する説明会」を開催し二つの新しい取り組みを発表した。ひとつは、親会社であるKDDI株式会社が業務提携したSpaceX社の衛星ブロードバンド「Starlink」を活用だ。モバイル通信の提供が困難な山間部、離島などで、ドローンの飛行に道を開き、配送サービスなどでのレベル4飛行を支える。
もうひとつは、ドローンスクール「KDDIスマートドローン」の創設だ。国家資格の操縦ランセンス1等、2等の取得者を育成する国家資格取得コース、鉄塔点検や 外壁点検、太陽光パネルなど領域専門コースを備える。パートナーとなるスクールと連携するほか、直営スクールも開設する。1月には栃木県小山市、千葉県君津市で開講する計画だ。現在申請している登録講習機関への登録が済んだら申し込みを受け付ける方針だ。
ACSLはレベル4に対応したドローンの第一種型式認証申請を実施したと発表した。同社の鷲谷聡之代表取締役は、レベル4制度の整備について、「本当の意味で生活者がドローンを身近に利活用できる規制が整備されました。これは、まさに『ドローン元年』と言える大きな変革であり、この規制整備により、ドローンは物流、インフラ点検、災害対応など、あらゆる分野でさらに普及していくものと考えております」と期待を表明した。
FLIGHTSは、東洋テック株式会社(三重県)が開発した飛行管理システム「Flight Report Cloud(フライトレポートクラウド)」の提供を発表した。飛行日誌の管理のほか、予め定めた飛行時間を超えたらアラートを発する飛行時間管理、飛行した場所を広域図、詳細図で管理する飛行場所管理のほか、レポート作成、飛行ログなどからの集計機能、許可承認期限の連絡、機体整備時期連絡などの機能も備える。
ウェザーニュースはドローンパイロットを対象に「ウェザーニュース for Business」の2か月間無償トライアルを開始した。スマホで「ウェザーニュース」アプリを開くと、ドローンポートの天気予報、上空150mまでの風向・風速・気温がチェックでき、ドローンポートの風速が設定値を超えるとプッシュ通知を受け取ることもできる。高性能気象 IoT センサー「ソラテナ」を設置すれば、現地の観測データをスマホからリアルタイムで確認できる。年明け1月末までに申し込めば2か月間使える。
今後もレベル4をふまえたサービスや取り組みが活発化する見込みだ。
株式会社ACSL(東京都江戸川区)が11月11日、2022年1~9月期決算(第三四半期)を発表した。売上高は11億6165万円で、通期売上高である16億5000万円(業績予想修正後)をあと約5億円の上積みで達成する。期中に1000万円強の為替差益が発生し営業外収益に計上したことも発表した。インドでは8000万ルピー(1.4億円、1ルピー=1.75円として計算)、日本国内では1.39億円の大型受注をしたとも発表しており、それぞれ2022年12月期か2023年12月期か、いずれかの業績に反映させる見込みだ。
ACSLの1~9月期決算によると、売上高は11憶6150万円、営業損益は13億2901万円の赤字、経常損益は12億5684万円の赤字、最終損益は12億7745万円の赤字だった。前年度の実績については記されておらず比較はできない。その理由を「2021年12月期より決算日を3月31日から12月31日に変更し」「2021年度第三四半期連携財務諸表を作成していないため」と説明している。実際、変更前の決算では、2021年9月期は4~9月期(第二四半期)にあたり、比較対象にならない。
ACSLが力を入れている機体販売について、小型空撮ドローン「SOTEN」は9月末までに488台を出荷済みで、これも含めた受注は初期ロット600台を上回ると言及した。同社は年度末にかけて追加生産を進める方針だ。また株式会社エアロネクストやセイノーホールディングス株式会社が中心となって全国で進めているドローンを組み込んだ物流事業、「新スマート物流」に使われている物流専用ドローン「AirTruck」も9月末までに15台を出荷したという。
なお、2022年7~9月期に生じた為替差益1020万円を営業外収益に計上していることを報告している。インドで受注した8000万ルピーの大型案件も個別に発表していて、それによると受注したのは「プラットフォーム機体」。インドが2022年2月から外国製ドローンの輸入を禁止していることから、ACSLは現地資本との合弁企業、ACSL India Private Limtedに生産を委託するという。2023年5月までに納品する。SOTENも国内で1.39億円を受注していて、納期は12月。業績の上積み要素として、運航支援事業で7700万円の受注(納期は2023年3月)をしたことも発表している。
株式会社ACSL(東京都江戸川区)は11月11日、株主、取引先、従業員、顧客などのすべての関係先に向けた報告書「Integrated Report 2022」を公開した。先行投資が必要な研究開発型の製造業として、目標と現在地を端的な言葉、図表などを活用して示していて、目標達成に向け年間成長率50%以上などを掲げている。ACSLがすべてのステークホルダー向けの報告書を発行するのは今回が初めて。
「Integrated Report 2022」を発表したのは、「包括的・定性的な強みやステークホルダーに知っていただきたい情報の発信を抜本的に強化すべきと考え」たため。「A World 30 Years from Now~世界を“平ら”にするために」「Cutting-edge Technology~制御技術のテックカンパニー」「Clients and Us~強力な顧客バックボーン」「A Global Culture and Workstyle~グローバルな企業文化と働き方」「Financial Results and ESG」の5つの局面から同社の考え方や強みをまとめた。
ACSLは今年(2022年)1月28日に公表した中期経営計画「ACSL Accelerate 2022」で、2025年度について売上高100億円、純利益10億円の達成を掲げている。2022年度の売上高は修正後で16億5000万円を予想しており、2025年度の目標達成には「年間50%以上の成長率が必要」と盛り込んだ。
具体策の一つとして売上高に占める機体販売比率を取り上げ、「2025年度には6割に高めたい」と見据える。2022年度9月末(第三四半期)時点では、約11億6千万円の売上高のうち、「プラットフォーム機体販売」、「用途特化型機体販売」で約7億7千万円と6割超えを達成しており、2025年度までの売上高の拡大と期待販売比率の推移が目標達成のカギになる。
Integrated Report 2022では、企業としての社風にも言及している。社会的に対応が要請されている多様性に関連し、Diversity & Inclusivrも「重要アジェンダ」と説明し、2021年度の女性従業員比率が29%、女性管理職比率が17%であることや、外国籍従業員比率が24%であることを数字で紹介している。該当する社員の声もインタビューで掲載している。Integrated Report 2022では、「国籍や性別、家庭の状況を問わず誰もが活躍し成長できるフェアな環境づくりを目指します」と表明している。
このほか企業価値向上のための取り組みをCxOのインタビューで伝えている。
Integrated Report 2022は、ここからダウンロードできる。
https://ssl4.eir-parts.net/doc/6232/ir_material2/194949/00.pdf
自動運転バスを運航させている茨城県境町が、自動運転バス、自動航行の性能を備えるドローン、トラックなど既存の物流手段を組み合わせて、使い勝手のいい物流サービスを実現する取り組みが11月にも始まることになった。取り組みを進める境町、株式会社エアロネクスト(東京)、セイノーホールディングス株式会社(岐阜県大垣市)、BOLDLY株式会社(東京)、株式会社セネック(東京)は10月3日、境町役場で連携協定を結んだ。境町の橋本正裕町長は締結式の中で、「公共交通が脆弱でも住み続けられる町をつくりたい」と意気込みを語った。式典後は焼き立てパンを自動運転バスとドローンでリレー輸送して役場まで運んだり、小学生の待つ学校に町の名産のせんべいを運んだりするなど配送を実演した。今後、実証を重ね、11月にサービスを開始する。サービス開始にあたっては、対象エリアの住民から希望者を募り、利用体験のフィードバックをサービスの品質向上に生かす。2023年度中にもいわゆる「レベル4」の飛行を含めた配送サービスの実現を目指す。
境町では2020年以降、自動運転バスの定時運行を導入し町民の移動手段として定着している。この自動運転バスを支えている遠隔管理システム「Dispatcher」に、ドローンの管理も加えることで、無人運転バス、ドローンの両方の遠隔管理を可能にする。さらにトラックなど既存の物流手段も有効に組み合わせて最適化し、無人バス、ドローン、トラックの連携させた境町版の新スマート物流構築を目指す。
利用の対象は町内全域の住民で、複数の町内の商店が参加を表明している。利用者はスマートフォンなどで対象の食料、日用品などを注文をすると早ければ30分以内で届くことも可能になる。政府の進める「デジタル田園都市国家構想」対象事業だ。
連携協定は、次世代高度技術の活用を通じて、観光や産業振興、物流課題の解決、地域防災への貢献、地域の雇用拡大の実現を図ることにしている。荷物を集積し、ドローンが集荷する「ドローンデポ」は整備をはじめている。
境町に導入している自動運転バスは貨客混載を実施し、町内の住民向けの商品を2か所の連携拠点まで運ぶ。ドローンは、自動運転バスから積み替えられた荷物を載せて届け先まで飛行する。なお市街地への届け出は従来通りトラックが担い、市街地の周辺の農村部への配送をドローンが担うなどの役割分担を想定している。
連携協定の締結式で境町の橋本正裕町長は、「境町は公共交通が脆弱なため、動けるうちに嫁いだ娘の近くに引っ越す、といった人口減少が起きています。そんな困りごとをなくしたいというのがこの連携協定の目的です。一人暮らしでも生活に困らない町にしたい。困っている人を助けて、住み続けられる町にしたい。好きな町に住み続け環境を提供したい」と述べた。
ドローンはエアロネクストが株式会社ACSL(東京)などと共同開発した物流専用ドローン「AirTruck(エアトラック)」を使う。荷物を機体内部に格納するため飛行時に荷物が空気抵抗の障害にならない設計を採用するなど、物流に特化した工夫や機構を搭載している。ドローンと自動運転バスの運行管理はBOLDLYが開発したシステム「Dispatcher(ディスパッチャー)」を使う。自動運転バス用の遠隔管理システムとしてスタートしたシステムで、9月にドローンの監視もする「Dispatcher for Drone」を開発したことで一元管理が可能になった。
またサービス開始にあたって、利用を想定している農村部の住民に参加してもらう会員制度をつくる。利用体験をフィードバックしてもらい、より利便性の高いサービスに品質を向上させていく仕組みにする計画だ。
締結式後には、デモンストレーションを実施。役場に近い町立境町小学校では、全校児童が見守る中、ドローンが飛来。自動は上空にドローンが姿を表すと、立ち上がって指をさすなど「すごい、すごい」と笑顔で歓迎した。また、自動運転バスとドローンとの連携の実演も実施。自動運転バスとドローンとが荷物をリレーするランデブーポイントとなる「道の駅さかい」で、自動運転バスが運んできたパンを、係員がドローンに搭載した。ドローンは道の駅から境町役場に隣接する水害避難タワーまで届けると、待機していた橋本町長がそれを受け取り、味を満喫した。
同日発表されたプレスリリースは次の通り
茨城県の境町(町長:橋本正裕)、株式会社エアロネクスト(本社:東京都渋谷区、代表取締役 CEO:田路圭輔、以下「エアロネクスト」)、セイノーホールディングス株式会社(本社:岐阜県大垣市、代表取締役社長:田口義隆、以下「セイノーHD」)、BOLDLY 株式会社(ボードリー、本社:東京都港区、代表取締役社⻑兼CEO:佐治友基、以下「BOLDLY」)および株式会社セネック(本社:東京都新宿区、代表取締役:三浦義幸、以下「セネック」)は、2022 年 10 月に、ドローンや境町で定常運行する自動運転バスを、トラックなどの既存物流と組み合わせて物流を最適化する「新スマート物流」の実用化に向けた実証を開始し、2023 年度中をめどに、日本初となる市街地でのレベル4のドローン配送サービスの実装を目指します。5者は、この取り組みを進めるため、2022年10月3日に連携協定を締結しました。
今回の取り組みでは、境町の住民がスマホアプリで注文したスーパーの日用品や飲食店の料理などを、自律飛行するドローンや自動運転バス、トラックなどを組み合わせて効率的に配送する物流システムの構築を目指し、法制度に沿ってドローンの飛行区域を段階的に拡大しながら実証を進めます。まずは、2022年10月以降に、境町でドローンを2台導入し、充電などが可能なドローンスタンド®(3カ所・予定)および荷物の集約拠点となるドローンデポ®(1カ所)を整備した上で、無人地帯での目視外飛行や市街地での目視内飛行の実証を行い、住民の理解促進やルートの検討を進めます。
2022 年末に予定されているドローンのレベル 4 飛行解禁以降は、無人地帯と市街地でドローンの目視外飛行の実用化に向けた実証を行います。ドローンが飛行できないエリアでは、自動運転バスやトラックを活用して配送を行います。テクノロジーを活用して物流を最適化することで、将来的には、注文から30分以内に商品を受け取れる物流システムの構築を目指します。
日本では、過疎化や地方における公共交通の維持、物流業界の人手不足などが課題となっています。境町は、地方が抱える社会課題の解決に向けて、住民や観光客が移動手段として活用できる自動運転バスを導入して公共交通の維持や地域経済の活性化を推進するなど、積極的な取り組みを進めており、2022年度の補正予算において、ドローンの研究開発およびオーダーメードを行う拠点施設の建設(約4億円)を決定しました。このたび 5者が連携することで、ドローンや自動運転バスを活用した効率的な物流システムを構築し、物流業界の課題解決やCO2削減を図るとともに住民の利便性向上や地域経済の活性化を目指します。
なお、ドローンおよび自動運転バスの運行管理は、BOLDLYが開発した運行管理プラットフォーム「Dispatcher(ディスパッチャー)」で行います。BOLDLYが2022年9月に開発した「Dispatcher」のドローン向け機能(「Dispatcher for Drone」)により、「Dispatcher」を自動運転バスとドローンの両方に接続して一元的に管理することが可能になります。これにより、運行管理業務の効率化やコスト削減が実現できる他、将来的には、関連するデータ活用なども期待できます。「Dispatcher」は、2020年11月の境町の自動運転バス導入時から利用されており、境町には自動運転バスの運行に必要なシステムおよびオペレーション体制が整っています。これを土台に、スムーズにレベル4のドローン配送サービスを実装することを目指します。また、今後は、全国の他の自治体と連携して、境町以外の地域を飛行するドローンの遠隔監視を行うことも視野に入れ、取り組みを推進します。
この取り組みは、内閣府のデジタル田園都市国家構想推進交付金(デジタル実装タイプ TYPE2)の事業に採択されています。
■各者の役割
・境町:新スマート物流を含むデジタル田園都市国家構想事業の事業主体、企画統括
・エアロネクスト:境町での新スマート物流実装に向けた各種取り組みの全体統括、物流専用ドローン「AirTruck」の提供
・セイノーホールディングス:共同配送モデルの構築、自治体や各事業者との調整、配送ノウハウの提供
・BOLDLY:「Dispatcher」の提供、境町におけるデジタル田園都市国家構想推進交付金(デジタル実装タイプ TYPE2)事業の全体統括
・セネック:境町に設置した遠隔監視センターでの自動運転バスおよびドローンの運行管理
■使用するドローンについて
エアロネクストが物流用途に特化してゼロから開発した可搬重量(ペイロード)5kg、最大飛行距離 20kmの物流専用ドローン「AirTruck」*を使用します。
物流専用ドローン「AirTruck」エアロネクストが株式会社 ACSL と共同開発した日本発の量産型物流専用ドローン。エアロネクスト独自の機体構造設計技術 4D GRAVITY®により安定飛行を実現。荷物を機体の理想重心付近に最適配置し、荷物水平と上入れ下置きの機構で、物流に最適なユーザビリティー、一方向前進特化・長距離飛行に必要な空力特性を備えた物流用途に特化し開発した「より速く より遠く より安定した」物流専用機です。試作機は日本各地の実証実験で飛行し日本 No.1(エアロネクスト調べ、2022 年9月時点)の飛行実績を持ちます。