IT大手Amazon.com, Inc.(アマゾン、ワシントン州)は6月26日、自動運転技術開発のスタートアップ米Zoox(ズークス、カリフォルニア州)を買収すると発表した。目的はZooxが目指す「自動運転配車のビジョンの実現」を支援すること。将来的にはAmazonの自動運転車両開発への応用、転用も視野に入る。ZooxのAicha Evans(アイシャ・エバンス)CEO、Jesse Levinson(ジェシー・レビンソン)CTOら幹部や、テスラ、グーグル、アップル出身者の多い技術陣は引き続き事業に取り組むことになり、アマゾンの無人配送実現に向けた強力な人材確保の側面もある。
Zooxは2014年に自動運転技術開発を手掛けている企業。Waymo(ウェイモ、アルファベット系)、Cruise(クルーズ、ゼネラルモーターズ系)など自動運転技術を開発する企業が既存車両にセンサーや演算能力を組み込む調整型のアプローチを見せる中、Zooxはゼロから完「ロボットカー」を設計し、オンデマンドのライドサービスの提供を目指すなど、独自色を備えることで注目されている。
オーストラリア出身のアーティストで起業家のティム・ケントリークレイ氏とコンピュータ科学者のジェシー・レビンソン氏が創業したが、ケントリークレイ氏が会社を離れ、その後2019年2月にインテル出身のエバンス氏がCEOに就任。その後昨年秋には2億ドルの調達を実施していた。
Zooxはオンデマンドのライドサービスを提供する、という用途に適した自動運転機能を提供するため、ソフトウェア、AIとともに、専用車両を独自に設計、開発に取り組んでおり、これは、既存技術の応用、転用と比較してはるかに高コストになる。このため資金力のあるAmazonによる買収は、同社の開発の狭量な後ろ盾になるとみられる。
アマゾンも自動配送を実現するため、独自の自動運転車両技術プロジェクトに取り組んできた。小さな荷物を配達先の居宅まで運ぶラストワンマイル用にデザインされた6輪歩道走行ロボットもある。アマゾンは今回のZoox買収を、アマゾンの荷物配送事業と関連付けた説明はしていないが、Zooxの技術をアマゾンの業務への転用は展望が可能だ。
AmazonのJeff WilkeCEOは「ZooxはAmazonと同様、イノベーションと顧客に情熱を注いでいます。才能あるZooxチームが将来のビジョンを実現できるよう支援できることを嬉しく思います」とコメントし大きな期待を寄せている。
ZooxのエバンスCEOも「この買収により、自動運転業界へのZooxの影響が強固になります。私たちは、安全で自律的なモビリティへの専用のアプローチと、そのビジョンを実現するために日々活動している非常に才能のあるチームによって、大きな進歩を遂げました。今、完全に自律的な未来を実現するさらに大きな機会があります」と展望を描いている。