岡山県和気町、レイヤーズ・コンサルティング、ファミリーマート、コニカミノルタ、エアロジーラボは9月30日、都内で記者会見し、総務省の「IoTの安心・安全かつ適正な利用環境の構築(IoT利用環境の適正な運用及び整備等に資するガイドライン等策定)」の事業として、和気町内でドローンによる配送実験を実施すると発表した。住民が隣接する自治体のコンビニに注文を出すと、ドローンが翌日に運ぶ。使われるドローンはハイブリッド型で、最長30.3キロ、標高差が380メートルの区間を補助者無し、目視外で航行する計画だ。
事業を取り仕切るレイヤーズ・コンサルティングは、一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)認定スクールの運営のほか、いくつかのドローン関連事業を運営している。草加好弘事業戦略事業部統括マネージングディレクターは、実証実験を実施する和気町が、高齢化、過疎化、人口減少、産業衰退、インフラ老朽化など地域の課題を抱える典型的な中山間地であり実験地に適していると指摘した。
実験では和気町の中心部から離れた3地区(合計65世帯、146人が定住)を対象に、買い物支援の有効性を確認する。
住民は電話やFAXなどで隣接自治体にあるファミリーマートなどに注文を出し、それを受けてドローンで配送する。配送は11月の火、木、金の週3回実施。和気町の中心部にある和気ドームから、1日1便を運行する。代金は2週間に1度、別途集金する。ファミリーマートの青木実執行役員は「加盟店の収益に寄与するかどうかも検証したい」と話した。
実験に使うドローンは、エアロジーラボが開発したハイブリッドドローン「エアロレンジ」。国内で約40キロをノンストップで飛行させた経験を持ち、今回も全自動、補助者なし、目視外で飛ばす。ドローンに常時映像伝送装置を搭載し、管制センターで遠隔監視する。谷紳一代表は「普通のドローンなら20分しか飛べないが、ハイブリッドなら最大180分の飛行ができる。これは一般的なドローンが8キロ程度の距離しか飛べないところを、場合によっては100キロメートルの飛行も可能な性能を持ってる」と指摘。
実際、中国・北京のハイブリッドドローンメーカー、RICHEN POWERは7時間連続飛行(このときはホバリング)や、山東省煙台市から渤海湾をはさんで対岸の遼寧省大連市まで100キロ超のフライトを成功させている。谷社長は「大きなチャレンジだが成功させたい」と意欲を示した。
買い物以外の時間では、コニカミノルタとヤンマーが出資するファームアイのソリューションを活用し、田畑や森林の生育状況を診断する精密農業や、スマート林業の可能性や、赤外線センサーの搭載で、害獣検知や駆除施策の支援も模索する。実験は、10月1日から2020年1月31日まで。
和気町の草加信義町長は「年間220人から250人逝去され、生まれるのは年間平均60人。自然減が著しいが、都心から移住が増えてもいる。その中にはドローンの取り組みがすばらしいから住みたい、という方もいる。女性の一人暮らしがおおく。行商で生活をたてている。たちゆかなくなったらどうするか。ドローンが勝負。災害発生時の情報収集などの防災や、鳥獣害対策にも活用したい」とドローンへの高い期待を表明した。