ドローン開発のVFR株式会社(東京)、リゾート開発の藤和那須リゾート株式会社(栃木県那須町)、ドローン制御技術のブルーイノベーション株式会社(東京)は11月17日、那須高原の大規模分譲別荘地、藤和那須ハイランドでコテージの利用者などにドローンで食材を運ぶなどのサービスを提供する事業の実証実験を始めた。Z世代と呼ばれる若年層が主なターゲット層で、プロポーズの演出プランなどの提供を見込む。この日は那須ハイランドパークで事業概要の発表とドローン配送のデモンストレーションが行われた。取り組みは10月26日に発足した「Hello DRONE Project」の第二弾。また那須地域一帯を「リビングラボ」と位置づけて、価値創造の実験エリアに見立てた「ナスコンバレープロジェクト」の主要事業のひとつにも位置付けられ、那須エリアの再生と魅力発信が、ドローンをからめて大掛かりに動き出すことになる。
ドローン配送は、広大な敷地を持つ別荘地の課題解決を担う。大規模分譲別荘地として知られる藤和那須ハイランドは東京ドーム171個分にあたる約800万平方メートルの敷地を誇る。北関東最大級の遊園地、那須ハイランドパーク、温泉をそなえたコテージもあり、富裕層の象徴としての一面も持ち、あこがれのリゾートの色彩を持つ。その一方で、課題もかかえている。敷地が広大での配送の手間と維持が難しく、運用も非効率だ。最寄りに買い物拠点がないことや、社会的な高齢化に伴い免許返上者が増え別荘利用者が減少しているなども特有の課題だ。
今回の取り組みではドローンの利用で、強みを増幅させ、課題の解決することを目指す。消費意欲が高いとされるミレニアル世代、Z世代などの若者層に向けて利用拡大を目指した取り組みにするため、「ハピネス体験」「ドローンでサプライズ」などをキーワードに「Z世代の心にぶっ刺さる」(湯浅浩一郎VFR代表)サービスを練りあげた。そのひとつが、コテージを利用するカップルに、指輪をドローンで運ぶプロポーズの演出や、バーバキューの食材がドローンで運ばれるサプライズ演出だ。
発表会ではVFRの湯浅代表が「若い方たちに那須を訪れて頂き、新しい体験をしてほしいと考えています」と趣旨を説明。那須ハイランドを管理、運営する藤和那須リゾートの五十嵐弘樹常務が「グループが理念に掲げるハッピートライアングルを大事にしており、自然を活用し、お客様に喜んで頂き、地域に貢献することに取り組んでいます。一方で敷地が広く、標高550mから1050mまでと高低差も500mあり、配送が難しくなっています。ベテラン配送業者さんが配送先まで行くことができない、などの話も出てきています。Hello DRONE Project第一弾で、若い世代に関心を持ってもらうことに取り組みました。そこで第二弾では、こうした悩みを解決すべく、デリバリーに取り組みます」と解決への期待を説明した。
またドローンの運航や、離発着場所の管理についてブルーイノベーションの熊田雅之専務が、同社の制御プラットフォーム「Blue Earth Platform(BEP)」について言及。「BEPには大きく分けて、飛行計画作成、離発着場のリアルタイム監視、ドローンのリアルタイム動態管理の三つの特徴を持ちます。画面に出ているのは右下が離陸場所、左側が着陸場所。紺色のマーカーがドローンの場所です。ドローンの離発着場所の管理はとても大切でISOでも議論が進んでいます。ドローンが身近になりにつれますます重要になる安全性の確保に役立ちたいと考えています」と説明した。
賛同企業として那須ハイランドにも宿泊施設を建設した株式会社スウェーデンハウス(東京)の木村鉄郎主任があいさつにたち、大川保彦執行役員の「暮らしの維持、快適な生活の実現などを考える立場で、今回のプロジェクトは問題解決に発展すると感じ賛同しました。豊かな生活を安全に安心に続ける大きな挑戦だと感じています」という談話を代読した。
またVFRを投資先に抱え、社外取締役として同社の経営陣にも名を連ねるDRONE FUND代表パートナーの千葉功太郎さんは「DRONE FUNDはドローンやエアモビリティの会社に幅広く投資をして、ドローン前提社会を実現させようと取り組んでいます。生活の中にドローンが飛び回る社会を作りたいし、空を飛んで移動する社会を作りたい。まんがの中で終わらせるのではなく、技術や法律など実現に必要なものをみなさんとともにつくっていきたいと思っています。今回の取り組みには技術系の会社、ソリューションの会社、リアルな場を持っている会社、住宅をつくる会社が参加しています。これはまさに、テクノロジーと社会が合体して別荘地向けサービスをスタートさせる取り組みです」とこの日の取り組みの意義を強調。
そのうえで「きょうはその記念すべき日だと思っています。若い世代にドローンを楽しく使って頂くことが、ドローン前提社会の実現にはとても重要です。ドローンがお肉を運んだり、ワインを運んだり、ピザを持ってきてくれたりする体験が誰でも味わえることは画期的です。こうしたサービスが、ここ那須から全国に広がることを願っています」と期待を寄せた。
このあとのデモンストレーションでは、ふもとから直線距離で800m離れた、標高が100m高い見晴らしのいい場所のコテージまでドローンで、ピザや食材などを運ぶ様子をお披露目した。着陸地点のコテージには、モニター画面が設置され、ブルーイノベーションのBEPを活用した管理画面や、KDDIのスマートドローン運行管理システムの画面で、離陸点の状況や、機体の位置を確認しながら、ドローンの到着を待った。
使用機体はACSLの「PF2」とプロドローンの「PD6B-Type3」。機体の特性に応じて使い分けた。運用はほぼ自動。管理者の合図でドローンが離陸すると、間もなくプロペラの音が聞こえ、機体が姿を見せると見守っていた参加者が一斉に指をさした。
この日はデモンストレーションのために、俳優が演じるカップルが登場。コテージ前をウェディング会場のように装飾し、ドローンが運んできたバーベキューの食材を、カップルのお友達が持って祝福に訪れ、いっしょにバーベキューに取り掛かるという設定で、その様子が再現されると、見ている関係者の間から「絵にかいたようなあこがれのウェディング」「これは楽しいよね」などの声があがった。
ドローンによる配送サービスの具体的な内容はこれから詰めていく。当面は今後、モニターを募ってさまざまな角度から検証を重ねる。将来的には利用者がコテージにいながら、ドローンサービスをリクエストする仕組みを構築することを展望している。サービスは来春の導入を予定している。モニターは12月23日から募集をはじめる。
「Hello DRONE Project」の発表に続き、一般社団法人ナスコンバレー協議会も同じ会場で発足の発表会を開いた。ナスコンバレーはテクノロジーで価値創出する企業が集積する米シリコンバレーになぞらえ、那須地域を価値創出の実験エリアにすることを目指す取り組みで、10月1日に発足した。この日の欲祖発表会では、趣旨や運営方法のほか、具体的なプロジェクトについても言及があった。具体的なプロジェクトのひとつが、ドローンだ。
ナスコンバレー協議会の代表理事に就任した株式会社LIFULLの井上高志代表取締役は、「那須エリアをリビングラボと位置付けてイノベーションを進めたいと考えています。そのひとつがドローンで、私有地だからこそ使える利点をいかして実験を重ねたい。また将来的には那須塩原の駅からこの別荘地のエリアまで、ドローンで利用者を運びたいと思っています」と話した。
協議会には発起人の起業家や、舞台となる栃木県の福田富一知事、那須エリアの那須町、那須塩原市、大田原市の各首長らも参加。それぞれがあいさつをした。栃木県の福田知事は、井上代表理事のドローンタクシー構想について、「ぜひ実現させてほしい。那須は空から見ると美しいんです。それを多くの人に堪能してほしい」と展望した。
株式会社SkyDrive(豊田市<愛知県>)は、山口県山口市で重ねてきたリハーサル飛行を収めた動画を公開した。
リハーサル飛行は、山口県山口市の「山口きらら博記念公園」内に設けた飛行試験場で春から行われていて、動画には大阪・関西万博のデモフライトに使われるSD-05が離陸し、移動し、向きを変えて飛行するなどの様子が納められている。
大阪・関西万博では7月31日から8月24日まで、火、水曜以外の原則週5日の予定で、来場者の前で飛行する様子を公開する。
建設設備大手の三機工業株式会社(東京)は7月11日、グループ会社、有限会社キャド・ケンドロ(仙台市)と共同で狭小空間ドローン開発の株式会社リベラウェア(Liberaware、千葉市)のドローンとレーザースキャナを併用した既存設備の3Dモデル化するデジタル化手法を確立したと発表した。Liberawareも同日、三機工業に「IBIS2」を「導入した」と発表した。
三機工業は設備更新や模様替えなどのさいに、現場を3Dモデリングし、現状を把握してから取り組む。完成後の更新や追加工事で現状が図面通りになっていないことが多く、作業の妨げになるおそれがあるためだ。しかし天井裏などでダクトや配管が込み入っている場合に、すべての設備にはレーザーが届き切らずに十分な3Dモデルができあがらない場合がある。こうした課題を乗り越える手法の開発を進めているところ、今回、ドローンとレーザースキャナを併用してデジタル化する手法を開発した。
同社が実施した実用化検証では、IBIS2とレーザースキャナを併用した場合、従来の3Dスキャン手法と比べ、機械室などの天井の無い空間の場合、認識できた建築部材が約135%、天井の一部が解体された天井裏空間で約400%向上したという。
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丸紅株式会社(東京)は7月8日、大阪・関西万博でデモフライトを披露する計画を公表している英ヴァーティカルエアロスペース社(Vertical Aerospace Group Ltd.)開発の5人乗りAAM「VX4」について実施を「見送る」と発表した。英国で行われているVX4試験機での有人飛行試験で判断したという。
丸紅は発表の中で「現在英国で行われているVertical社製VX4試験機による有人飛行試験の進捗状況から、大阪・関西万博でのデモフライトへの対応を見送ることとなりました」と伝えた。VX4のキャビンを再現したモデル空間は予定通り万博会場に出展し、8月から搭乗体験を実施する予定という。
また丸紅が万博で飛ばすもうひとつの機体、米LIFT AIRCRAFT社(以下、「LIFT社」)製の1人乗り機「HEXA」については、デモフライトを近く再開させる方向で調整中だ。HEXAは4月26日のデモフライト中に部品が落下したためデモフライトを中断して原因究明を続けている。
その結果「モーター搭載箇所の部品について、サプライヤーが仕様と異なる素材の部品を誤って供給していたことが判明」したと説明し、「当該部品の交換およびその他重要部品の再点検を完了した上で、再発防止策として、LIFT社において部品の受領・品質管理について包括的な監査を実施し、必要な工程について改善したことを確認しました。関係機関の許可を以て、今後大阪・関西万博でテストフライトを実施し、十分に最終確認を行った後、安全を最優先として関係機関および関係各社と協議・判断し、デモフライトの再開に関しては改めてお知らせいたします」と伝えている。
丸紅は大阪・関西万博でのAAM運航事業者4グループのひとつだ。
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英ロックバンド、オアシスの再結成後初のコンサート会場となるウェールズの首都カーディフのプリンシパリティ・スタジアムで現地時間7月2日、ドローンで形作られた「OASIS」のロゴが浮かび上がった。ツアーは7月4日に始まり、11月まで世界各国をまわる。ツアー初日を翌々日に控えたドローンの演出はオアシスの公式アカウントで公開されている。
ドローンのロゴは公演開始前に上空に描かれ、オアシスの再結成ツアー開催を祝福し、喜ぶファンの気分の高揚に貢献した。
オアシスは1991年にマンチェスターで結成され、7000万枚以上のアルバムを売ったロックバンドだ。2009年に解散したが昨年2024年に再結成した。再結成後初のコンサートツアーが7月4日にはじまり、北米、南米、オーストラリア、韓国など各地をまわる。2025年は11月23日のサンパウロ公演で幕を閉じる予定だ。日本公演も10月に予定されている。チケットはいったん予定枚数の販売を完了したが、機材席の解放による追加販売が決定し、7月12日正午に抽選の受付を開始する予定だという。
音楽シーンとドローンとは、MV撮影、ライブ映像撮影、演出としての屋内ドローンショーなどの例があるなど縁があり、今後も活用の幅が広がる可能性がある。
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AAM開発の米ジョビー・アビエーションは6月30日、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイでパイロットが搭乗し、垂直離着陸の固定翼飛行を実施した。ジョビーは「2026年に最初の乗客を運ぶ」と2026年のサービス開始を目指している。ジョビーは開催中の大阪関西万博で「運航事業者」にもなっている。
ジョビーによるドバイでの飛行は、「piloted, vertical-takeoff-and-landing wingborne flights」で、パイロットが乗り、垂直離着陸をしたうえで、機体の固定翼で移動した飛行で、「eVTOL分野では初めての取り組み」としている。ジョビーはこの飛行を通じて、ドバイ地域での商用市場準備の取り組みを開始したことも明らかにした。ジョビーは直接運航、航空機販売、地域パートナーシップを商業化戦略の3本柱と位置付けていて、今回の試験飛行が「重要な一歩」と話している。
試験飛行はドバイ道路交通局、ドバイ民間航空局、UAE民間航空総局と連携して実施された。またドバイ道路交通局長官兼理事会会長のマタール・アル・タイヤー会長が立ち会った。
ジョビーは、ドバイ国際空港(DXB)、ペルシア湾の人工島であるパーム・ジュメイラ、現在建設が進められている世界第2の面積の人工のマリーナであるドバイ・マリーナ、超高層ビルブルジュハリファで知られるドバイ・ダウンタウンでの商業サービス導入を目指している。バーティポートはすでに建設が進められている。
ジョビーはDXBからパーム・ジュメイラまでをエアタクシーサービスで移動した場合、移動時間は12分で、45分かかる車での移動時間が大幅に短縮されると見込んでいる。
ジョビーがエアタクシーサービスで使う機体は電動で、パイロット1人と最大4人の乗客を乗せ、最高時速200マイル(約320km)で輸送できる設計と説明していて、ジョビーは「短時間の通勤、小旅行、地域間のシームレスな移動のために、より速く、より静かで、より便利な空の旅を提供します」と話している。
ジョビーの発表はこちら
東京株式市場グロース市場で7月2日、ACSL株がストップ安となった。午前9時29分にいったん1187円で寄り付いたがその後も売りが殺到し、再び取引の成立したない売り気配で推移した。ACSLは前日の7月1日、前CEOによる不適切取引判明を発表していて嫌気を誘ったとみられる。
ACSL株は取引き開始前から売り注文を集めていて、取引開始がはじまったしばらく値が付かないまま推移した。午前9時29分に値幅制限いっぱいいの、前日終値比300円安のストップ安となる1187円で取引が成立したが、その後も売りは止まらず、再び取引が成立しない展開が続いた。
ACSLが7月1日に発表した「お知らせ」はこちら