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  • 2021.7.5

    千葉功太郎氏、共同所有するホンダジェットがバイオ飛行民間機第1号に ユーグレナの「サステオ」で

    account_circle村山 繁
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     DRONE FUNDの代表パートナーで投資家の千葉功太郎氏は6月29日、共同所有するプライベートジェット「HondaJet Elite」に株式会社ユーグレナ(東京)のバイオ燃料「SUSTEO(サステオ)」を給油して鹿児島から東京・羽田まで飛行し、国産バイオ燃料で飛行した民間機の第1号となったことを、飛行直後の発表会で報告した。千葉氏は今秋スタートするチャーターフライトのサービスでも所有機を提供する。利用者は「SUSTEO」の燃料を選べる。操縦士として操縦桿も握る千葉氏は、この日の発表会で「バイオ燃料で飛ぶ人を増やしたい」と述べ、空からの環境改善に強い意欲を示した。

    永田氏「もう“飛び恥”とは言わせない」 “緑の”カズレーザーさんも登場

    発表会に登場したカズレーザーさん、出雲充さん、千葉功太郎さん、永田暁彦さん(左から)。カズレーザーさんは出雲さんから「1日機長」を委嘱され「原付免許しか持ってないですけど、ありがたくお受けします」と応じていた

     千葉氏はユーグレナが開催した「ユーグレナ、民間機によるバイオ燃料によるフライト成功および新事業戦略発表会」に、ユーグレナの出雲充代表取締役、永田暁彦取締役副社長、ユーグレナのCMに出演しているお笑いユニットメイプル超合金のカズレーザーさんとともに登壇した。千葉氏、出雲氏、永田氏は、直前に鹿児島からバイオ燃料を給油したHondaJet Eliteで羽田空港に到着し、そのまま発表会に臨んだ。会見場には到着したばかりのHondaJet Eliteも置かれた。機体には「ユーグレナ」のロゴが描かれ、国産バイオ燃料使用の民間機1号であることを象徴した。

     発表会では、ユーグレナ社が開発したバイオ燃料に従来の呼称「ユーグレナバイオ燃料」から「サステオ」にブランドを刷新すること、サステオによる民間機の初飛行が成功したこと、今秋スタートするチャーターフライトなどが発表され、開発までの経緯やバイオ燃料の持つ意義や重要性、今後の増産計画などの発表が行われた。

     ユーグレナ社長の出雲氏は「バイオ燃料で飛ばすことに成功しました。きょうから“飛び恥”などと言わせません。これからはバイオ燃料でグリーンにエコに飛べるようにします。2050年にはCO2排出をオフセット(埋め合わせ)します。6月29日はそのための第一歩の日です」とこの日の意義を強調した。ユーグレナ副社長の永田氏も、同日以降は同社のバイオ燃料を「SUSTEOディーゼル」、「SUSUTEOジェット」として展開することや、バイオ燃料がCO2排出を埋め合わせる仕組みについて説明した。

    千葉氏「今は高い。でも積極的に使います」

    国産バイオ燃料でのファーストフライトを終え、飛行したときの感動を伝える千葉功太郎さん

     あいさつを求められた千葉氏は「さきほど、夢を追ってきた2人とともに歴史的なファーストフライトができました。感動してしまいました。ミドリムシが空を飛ぶ。8年前にこの話を聞いたときにはさすがに健康食品だろう、と思っていたのですが、飛んだ瞬間にジワっときました」とSUSTEO実用化の嬉しさを表現した。

     千葉氏は日本で操縦士の免許を取得し、その後米国でもパイロットを取得している。現在、近い将来、所有するHondaJet Eliteの機長になることを目指している。説明会でのプレゼンテーションでは千葉氏は「ただし空を飛ぶたびにCO2を排出している後ろめたさがありました。しかしユーグレナがプラスマイナスゼロにできる国産バイオ燃料を作った。値段は高いです。分かっています。でもユーザーとして積極的に使っていくつもりです」と国産バイオ燃料の普及促進に取り組む方針を示した。

     千葉氏はSUSTEO実用化の重要性にも言及。「今回のユーグレナの偉業がどれほど信じられないか。航空機というのは、シート、部品、燃料に至るまですべて厳格なレギュレーションに沿って認証されたものでないと使えないことになっています。つまりバイオジェット燃料を作った、と言ってもそれだけでは使えないのです。ユーグレナは燃料を作ったうえで認証も受けた。これ、とてつもなく大変なことです。創業16年目のぴよぴよ会社が、認証を受けるまでをやり遂げたこと。これは歴史的なことだと思うのです」と強調した。

     本業のひとつであるドローンや空飛ぶクルマに対する投資との兼ね合いについては、ドローンの航続距離との関係から発言。「航続距離を伸ばす工夫のひとつとして、化石燃料を燃やして発電するハイブリッド化の取り組みがあります。短距離短時間の飛行なら電気、長距離ならエンジンなど、バッテリー、ハイブリッド、エンジンの組み合わせが重要になります。その組み合わせのうち燃料を使うところでSUSTEOが使えることは大きい。これで2050年のカーボンニュートラルを空から実現できます。2023年には空飛ぶクルマの商用利用が始まります。空の産業革命をこうした組み合わせで作りたい」と表明した。

    チャーターサービスに機体提供 千葉氏「先進的なユーザーと移動革命の実現を」

     さらに所有するHondaJet Eliteを、一般ユーザー向けのチャーター利用に提供することについて、「2050年を見据えた、未来を先取りした画期的な取り組みです」と説明。「先進的なユーザーに使って頂きたい。新型コロナの影響で海外への渡航は不自由になりましたが、代わりに国内の旅行地が見直されるようになりました。この企画では、たとえば鹿児島にある『天空の森』(鹿児島県霧島市)のような極上のリゾートに、SUSTEOをいれたHondaJet Eliteで行く2泊3日のサステイナブルな空の旅、のようなものを展開したいと考えています。さまざまな日本の発見につながればいい。先進的なユーザーとともに切り開き、移動革命を実現させて頂ければと思っています」と期待を膨らませた。

     発表会ではこのほかユーグレナのCMに出演中のカズレーザーさんがクイズに挑戦し、燃料が認証を受けるために必要な項目の数や、航空機が飛行中に排出するCO2の重量を問う出題に多角的に推理してみせて、登壇者を感心させた。

     なお発表会当日の6月29日は55年前の1966年にビートルズが初来日した日でもあり、当時話題となった、日本航空のドアからメンバー4人が法被姿で現れるシーンに重ね合わせ、3人がそろいの法被で登場した。法被はユーグレナを象徴するグリーンが基調で、襟字は左側に「GREEEN OIL JAPAN」、右側に「日本をバイオ燃料先進国に」とプリントされていた(ヒートルズ来日の法被姿は機内でメンバーの思い付きで実現したもので、襟時は「JAL」だった)。カズレーザーさんもトレードマークの赤の衣装ではなく、CMで着用している全身、緑色のスーツで登場して会場を沸かせた。

    千葉功太郎さんが共同所有するHondaJet ELITEの機体には「ユーグレナ」のロゴが描かれていたkき
    SUSTEOの重要性について千葉さんがプレゼンテーション
    機体も入れて全員で記念撮影
    1日機長の敬礼
    1966年6月29日のビートルズ初来日のシーンを再現するような出雲充ユーグレナ代表の登場シーン。どのメンバーを念頭に置きながら手を挙げたのだろうか。
    「誰でもバイオ燃料で空を飛ぶ時代を目指す」と宣言したユーグレナの永田副社長
    カズレーザーさんがクイズに挑戦。世界で初のバイオ燃料フライトはいつか。カズレーザーさんは「B」を選択し正解した
    千葉功太郎さんが共同所有するHondaJet ELITEの機体には「ユーグレナ」のロゴが描かれていた

    AUTHER

    村山 繁
    DroneTribune代表兼編集長。2016年8月に産経新聞社が運営するDroneTimesの副編集長を務め、取材、執筆、編集のほか、イベントの企画、講演、司会、オーガナイザーなどを手掛ける。産経新聞がDroneTimesを休止した2019年4月末の翌日である2019年5月1日(「令和」の初日)にドローン専門の新たな情報配信サイトDroneTribuneを創刊し代表兼編集長に就任した。現在、媒体運営、取材、執筆、編集を手掛けながら、企画提案、活字コミュニケーションコンサルティングなども請け負う。慶應義塾大学SFC研究所ドローン社会共創コンソーシアム研究所員、あおもりドローン利活用推進会議顧問など兼務。元産経新聞社副編集長。青森県弘前市生まれ、埼玉県育ち。