ブルーイノベーション株式会社(東京)と北海道当別町は11月12日、農家が収穫した作物をドローンで販売拠点まで配送する実証実験を実施した。空飛ぶクルマ開発で知られるSkyDrive(東京)が開発した30キロの荷物を運べる物流用のカーゴドローンを使い、農家を悩ませる重量野菜を、農家から地域の販売拠点である「北欧の風 道の駅とうべつ」まで自動航行で運んだ。地元特産の白カボチャなどのいわゆる重量野菜約13㎏を積んだドローンが到着すると、出迎えた見学者から「空飛ぶかぼちゃが実現しそうだ」の声があがった。ブルーイノベーションなどは今後も実験や検討を繰り返し、今後3年をめどに定期運航を含めた実用化を探る。
デモに使われたSkyDriveのカーゴドローンは本来、30キロを詰める性能を備えるが、この日は20キロ搭載仕様でデモに臨んだ。カーゴドローン10キロ仕様として神戸・六甲山で8月に行われた実証実験でお披露目されたている。20キロ仕様機が関係者以外の目の前で飛ぶ姿を披露したのは「今回が初めて」だと紹介された。
離陸地点は、ゴールから1キロ離れた生産農家だ。野菜を積んだドローンが離陸し、道路をまたいで別の農家に立ち寄り一度、着陸する。さらに野菜が追加されて再離陸し、ゴールである道の駅まで運ぶ。ゴールにはブルーイノベーションが開発したドローンポートが設置された。
ほぼ予定の時刻に離陸すると、ゴール地点の道の駅で待機していた数十人の関係者、居合わせた人々が指をさしながら「あそこだ」「よくみえる」などとフライトの様子を見守った。当日の会場の空は青天。一帯は前日まで降った雪で白く染まり、鮮やかな青と白のコントラストの中、機体が抑制のきいた音とともにゆったりとポートに着陸すると、居合わせた関係者から拍手があがった。同僚の停止を確認すると、スタッフが積み荷をはずした。積み荷は、地元産の白かぼちゃ、かぼちゃ、きゃべつ、じゃがいも、にんじんなどいわゆる重量野菜。デモでは便宜上、袋詰めされ値札のついたものを使ったが、収穫した重量野菜の運搬は農家には手間がかかる。高齢化、過疎化、消費縮小のほか、少量配送のコスト負担は長年の課題だ。採算性や安全性を含め、今後、事業化を検討していく方針だ。
今回のデモフライトは、国土交通省、環境省の「過疎地域等における無人航空機を活用した物流実用化事業」の一環で、代表事業主であるブルーイノベーションが当別町と打ち合わせを重ねながら企画した。3年後に成果を導く計画だ。
ブルーイノベーションの熊田貴之社長は、「イメージとしては道の駅を中心とした10キロ圏内でドローンをバスのように定時運行させ、農作物を集荷する想定している。その後範囲を広げていきたい」と述べた。
また宮司正毅当別町長の代理として出席した熊谷康弘企画部長は、当別町が平成29年にドローンの専属係を設置するなど積極的に進めてきた経緯を紹介したうえで、「農業ではスマート農業が進みつつあり、当別町でも自動操舵トラクター、田植え機のほか、農薬散布などでドローンの実装が進みつつある。今回の実証では農作物の輸送がテーマ。さまざまな課題の解決につながることなので、興味深く見守りたい」と町長のメッセージを代読した。
北石狩農業協同組合の川村義宏代表理事組合長も「当別は農業地域であり、(大消費地である)札幌の隣町であるという特徴があり、食材提供は社会的責任でもあると考えている。ハウスの助成をするなど、お金もヒトもかけて努力を重ねてきた。生産者の高齢化、人手不足などもあり、食材の供給に悩みもある。今回がその解決になることを期待している」などと期待を寄せた。