ブルーイノベーション株式会社(東京都文京区)は3月8日、能登半島地震で被災した輪島市(石川県)で、スイスFlyability社が開発した球体ドローンELIOS3で橋梁点検を実施したと報告した。1月31日に市街地5か所、2月20日に山間部の橋梁を点検した。1月に発売したばかりの新型の高性能LiDAR「測量ペイロード」を使い高精度の点群データを取得したり、肉眼で確認できない桁下や橋脚などの損傷を確認したりして、復旧に不可欠な修繕経計画作成を下支えした。
ブルーイノベーションが活用したELIOS3は、球体ガードに覆われ周辺への接触による損傷不安を解消した点検用ドローン、ELIOSシリーズの2023年5月に導入された最新機だ。輪島市での橋梁点検ではaccuracy0.1%、precision±6mmの性能を持つ専用デバイス「測量ペイロード(ELIOS 3 SURVEYING PAYLOAD)」を搭載するなどして高精度な点群データを取得したり、180度チルトする機体特性をいかし、作業員の目の届かない個所の損傷の有無などの確認を行った。
同社の発表以下の通り
球体ドローン「ELIOS 3」を活用ライフラインの早期復旧に向け、点検員の安全を確保しつつ各種データを取得
この度の能登半島地震の影響により、被災された方々やご家族の皆様に、心よりお見舞い申し上げると共に、皆様の安全と一日も早い復興を心よりお祈り申し上げます。
ブルーイノベーション株式会社(本社:東京都文京区、代表取締役社長:熊田 貴之、以下 ブルーイノベーション)は、ドローンの業界団体である一般社団法人日本 UAS 産業振興協議会(JUIDA) の指揮の元、石川県輪島市からの要請を受け、球体ドローン「ELIOS 3」による輪島市内の橋梁点検および、山間部での橋梁点検を実施しました。
本取り組みは、地震に伴う道路や橋梁の地盤隆起で生じた段差や亀裂など、目視確認が難しい箇所をドローンで撮影・確認することで、点検員の安全を確保しつつ、橋梁使用の危険性確認および復旧・修繕計画立案に必要なデータの早期収集を目的としています。
■活動内容
1 輪島市街地の5箇所での橋梁点検
・実施日:2024 年 1 月 31 日(水)
・場所:石川県輪島市街地の橋梁5箇所
・内容:輪島市街地の 5 箇所の橋梁において、球体ドローン「ELIOS 3」 を使用して橋梁細部の状況を撮影しました。
<球体ドローン『ELIOS 3』 高性能 LiDAR 「測量ペイロード」で撮影した点群データ>
高精度な点群データを活用することにより、災害復旧のための修繕計画において、3Dモデルによる修繕コストの早期算出や、構造の安全性を向上することが可能になります。
2 輪島市 上和田橋(まがき線)の橋梁点検
・実施日:2024 年 2 月 20 日(火)
・場所:石川県輪島市門前町上和田橋
・内容:橋の安全性を確認するため、球体ドローン「ELIOS 3」を使用して、目視では確認できない箇所を撮影し、橋梁の桁下の部分や橋脚部分にひび割れがないかなどを確認しました。
■使用機材:「ELIOS 3」
・桁下や箱桁など GPS の効かない環境でも安定して飛行可能
・球体ガードと衝突耐性があるため、狭隘部に入り込んでの撮影が可能
・上下 180°チルト可能なカメラにより、床版の天面等の撮影が可能
・LED ライトにより暗所での撮影が可能
・LiDAR によるリアルタイム 3D マッピングと専用のソフトウェアにより不具合箇所の位置特定が可能
■参考
ELIOS 3 は、ドローンを活用した橋梁点検技術として、国土交通省「点検支援技術性能カタログ」に
掲載されています。
https://www.blue-i.co.jp/news/info/20230406.html
球体ドローンELIOSシリーズを取り扱うブルーイノベーション株式会社(東京)は、ELIOS 3に搭載する専用の高性能LiDAR「測量ペイロード」(ELIOS 3 SURVEYING PAYLOAD)の販売を始めた。地下鉱山など人が立ち入れない場所の点群データを素早く取得できる。点群データは測量ペイロードとともに提供する米FARO社の解析ソフト「FARO connect」を使うことで正確性が格段に高まる。
ブルーイノベーションが1月18日に発表した内容は以下の通りだ。
ブルーイノベーション株式会社(本社:東京都文京区、代表取締役社長:熊田貴之)は、屋内点検用球体ドローン「ELIOS3」(https://blue-i.co.jp/elios3/)に搭載するペイロードの新製品 、高性能 LiDAR「測量ペイロード」の販売を1月18日より開始します。
測量ペイロードはELIOS3に後付けで装脱着できる測量デバイスで、正確度0.1%※2、精度±6mm(標準偏差)、照射距離最大100mの性能をもち、高精度な点群データを短時間で取得します。取得した点群データは 、「測量ペイロード」とあわせて提供する点群処理ソフト「FARO connect」(https://www.faro.com/)で解析することで、より正確な点群データの取得が可能となります。
「測量ペイロード」を採用することで、例えば 340m のトンネルにおいて、従来の人が行う固定点から測量する場合は全体を測量するために6~7回の測量、約2時間が必要なのに対し、「測量ペイロード」を搭載した ELIOS3では、わずか18分の作業で完了します。
これにより、測量・点検作業に係る時間が最低限に抑えられ、安全な業務遂行および全体の工期期間短縮、費用圧縮が可能になります。
■測量ペイロード 特長とメリット
【測量の正確性】
「測量ペイロード」と「FARO connect」を組み合わせることによって、正確度 0.1%、精度±6mm(標準偏差)の高精度な点群データを取得することができ、3D モデル化時の二重壁
等のデータ処理上のゆがみを防ぎます。
【高精度な点群データ】
光感度は従来の10倍。今まで3Dモデル化が困難であった狭くて特徴点の少ない細長い通路内などにおいても、正確に点群データの取得ができ、「FARO connect」により精細な視覚表現を作成できます。
【マッピング効率の向上】
最大 100mの照射距離とスキャン速度約130万ポイント/秒の点密度をもって、1 回の作業(18分)で340mのトンネル(約5,100m2 ※3)の点群データの取得が可能です。数日要していた作業が短時間に縮小することができます。
※3:横幅は画像から判断。ブルーイノベーション調べ。
【解析ソフトの互換性】
解析結果は、汎用的な拡張子(例えば.las形式)で出力が可能※4なため、CADソフトなど、様々なソフト※5 への連携が可能です。
※4:出力可能な拡張子は、.las、.laz、.ply、.txt、.E57 に対応しています。
※5:例えば Auto CAD、Geo SLAM、Revit、Cloud Compare、TREND-POINT など
【地形データの参照】
点群データの取得時、標点となる反射板を現場に設置することにより、解析時にその他の地形データと連携が可能となります。複数回に分けて取得した点群データが、自動で1つの3D モデルとして出力可能です。
■測量ペイロード開発の背景
国内のプラント施設、道路橋、トンネル、下水道等のインフラ施設は、今後20年で建設後 50 年以上経過する施設の割合が加速度的に高まり、点検の需要が増大する一方で、危険を伴う作業がある、少子高齢化などによる点検員が不足しているといった課題があります。こうした課題に対して、ブルーイノベーションは2018 年に日本おける独占販売契約を Flyability 社と締結し、非GNSS環境下の屋内空間などの飛行特性に優れた屋内用ドローンELIOSシリーズを使用した点検ソリューションの提供を開始し、プラントや発電所、下水道などを中心に 250 ヶ所を超える現場への導入を進めてまいりました(https://blue-i.co.jp/elios3/)。
こうした中で、「より精度を高くしたい」など、点検のDX化が進む中で高まる3Dモデル化に対する期待や要望に応えるため、今回の測量ペイロードの開発・提供に至りました。この度の「測量ペイロード」(https://www.flyability.com/elios-3-surveying-payload)の提供により、建設現場や製造業の工場などにおいても、活用の場が拡大することが期待されます。今後も、ブルーイノベーションでは現場の安全確保・業務効率化に貢献してまいります。
■ブルーイノベーションの提供するソリューション
ELIOSシリーズをはじめとした各種ドローンを活用したブルーイノベーションが提供する「BEPインスペクション」は、ドローン点検の現場の運用サポート、機体の提供だけでなく、ドローン導入時の講習やパイロット育成のための教育ソリューションなども提供しております(https://blue-i.co.jp/inspection/)。
また、ドローンを活用したソリューションは点検以外の分野でも幅広く提供しており、2024 年1月1日に発生した令和 6 年能登半島地震では、被災地での捜索や状況確認などの災害時活動で貢献しています(https://www.blue-i.co.jp/news/release/20240111_1.html)。
■補足資料:正確度と精度について
測量機器の品質評価を示す指標として、「正確度(accuracy)」と「精度(precision)」があります。正確度とは、その値が「真値」に近い値であることを示す尺度を示しており、精度とは、その複数回の値のばらつきの小ささの尺度を示しています。日本では、「正確度」はあまり使用されていないようですが、ISO 規定に基づく地理情報基準(JPGIS)の評価尺度として導入されています。正確度が高くても精度が低いこともあれば、逆に精度が高くても正確度が低いこともあります。下図からもわかるように、測量機器は正確度・精度の両方が高い品質であることが重要です。