DJIは5月22日に米ワシントンDCでイベントを開催し、有人と無人を問わず、DJI製ドローンの動きと空中での安全性のさらなる改善を提案した。この席でDJIのPolicy&Legal Affairs担当副社長のBrendan Schulman氏は、DJIが2020年1月1日から250グラムを超えるすべてのDJIドローンにADS-B(自動従属監視放送)受信機を設置すると発表した。
Brendan Schulman氏は、ADS-B受信機の搭載はDJIだけではなく他のドローンメーカーや世界各国の政府が、空の安全を確保させるためにできることであると指摘。公開したホワイトペーパーで10項目の安全策を提案している。
10項目は以下の通りだ。
1.DJIは250グラム以上のすべての新しい無人機にADS-B受信機をインストールします。
2.DJIは長距離を飛行するドローンパイロットのための新しい自動警告を開発します。
3.DJIは規制および顧客の期待に応えるために内部安全基準グループを設立します。
4.航空業界のグループは、無人機の事件のための報告基準を開発する必要があります。
5.すべてのドローン製造業者はジオフェンシングとリモート識別をインストールします。
6.政府は遠隔身分証明書を要求しなければなりません。
7.政府は新しい無人機パイロットのためのユーザーフレンドリーな知識テストを要求しなければなりません。
8.政府は慎重に制限区域を指定しなければなりません。
9.地方自治体は、明白かつ深刻な無人機の脅威への対応を許可しなければなりません。
10.政府は危険な無人機操作に対する法の執行を強化する必要があります。
プレゼンテーション:https://youtu.be/YTHVFgESMuo
またDJIは、信頼できるドローンプラットフォームを提供するビジネスを展開していると主張。ユーザーのデータを収集して課金したり、広告のために顧客データを販売したりすることには関心がない、とも明言した。
DJIの目的は、エンドユーザーがより効率的かつ安全に目的を達成できるように、強力なドローンプラットフォームソリューションを革新することだという。DJIの指針となる原則は、データを収集、管理、転送する方法をユーザーに完全に管理させること。DJIは、ドローン技術の世界的リーダーとしての責任を真剣に考え、最も安全で安心できる無人機技術を提供することで、データ管理に関して業界のリーダーであり続けることを約束し、ユーザー自身がデータを管理し、セキュリティを確保できるという。
以下は、DJIが定めたベストプラクティスをDJIがどのように実施するかについての詳細と、ユーザーにさらなる保証を提供するための追加のセキュリティ対策だ。業界全体でこれらを採用し、エンドユーザーにデータ保護の強化を継続的に支援するのに役立たせる。今後の推奨事項については、引き続きオープンにしていくという。
ドローン業界のデータセキュリティに関する推奨事項
UASを操作するために使用されるデバイスからのインターネット接続を無効にする。DJIの無人機は、直接インターネットに接続するのではなく、代わりにユーザーのモバイルデバイスまたは内蔵スクリーン付きのホットスポット対応コントローラーを使用できる。その後、これらのデバイスはインターネットに接続してアプリやファームウェアを更新したり、DJIのジオフェンシング安全システムの更新をしたり、その他の重要な機能を処理できる。また、DJI Pilotのフライトコントロールアプリにローカルデータモードも組み込んでいる。これにより、ユーザーはDJIのモバイルアプリとインターネットの間の接続を停止することでセキュリティをさらに保証できる。そして、DJI GOファミリーのアプリを使用しているユーザーは、飛行中にモバイルデバイスの機内モードを有効にすることで同じレベルのセキュリティを得られる。
アップデートされたソフトウェアまたはファームウェアをインストールする前に、予防措置を講じる。DJIの無人機およびその付属品のすべてのファームウェアアップデートは、同社の厳格なソフトウェア品質保証プロセスを経て行われている。大規模なドローンを展開している組織のために、DJI FlightHub Enterpriseフリート管理ソフトウェアは、顧客のドローンフリートへのすべてのソフトウェアとファームウェアアップデートのインストールを完全にコントロールできる。つまり、IT管理者の承認がない限り、モバイルアプリやファームウェアのアップデートは実行されない。
メインのフライトコントローラーとドローンからセキュアデジタルカードを取り外す。ほとんどの場合、DJIの無人機およびリモートコントローラーとデータには、ユーザーのみがアクセスできる、取り外し可能なセキュアデジタル(SD)メモリーカード用のスロットがあるDJIドローンは、インターネットに直接接続されていない。また、DJIドローンやコントローラーは、携帯モデムを搭載していない。データ接続がなければ、ユーザーがキャプチャする写真やビデオは本質的に安全で、SDカードに保存されたままとなる。無人機またはRCを紛失した場合に、データ漏洩の危険性がないようユーザーは無人機が使用されていないときは常にデータを削除しておく必要がある。
無人機を飛行するためにSDカードが必要な場合は、フライトのたびにカードからすべてのデータを削除する。ドローンを操作するためにSDカードを取り付ける必要のあるDJIのドローン製品はない。各フライトの後にカードを取り出し、そのデータを取得し、そして次のフライトの前にSDカードを消去することは、良い習慣と考えられている。
DJIのMavic 2シリーズドローンは、画像データを保存するための取り外し不可能な内蔵メモリを備えている。このような場合は、内蔵ストレージドライブからキャプチャしたすべての映像をダウンロードしてから、保存したデータを削除して、フライトのたびにドライブをフォーマットする。
データを保護する暗号化とパスワードの追加データのセキュリティ保証を提供するために、DJIはデータの暗号化とパスワード保護に関する追加を示唆している。DJIの最新のエンタープライズドローンは、OcuSync 2.0プロトコルを使用してコントローラーに接続し、最先端のAES-256規格を使用して暗号化され、無人機とそのリモートコントローラーの間で交換される重要な情報を保護する。
Mavic 2 EnterpriseおよびMavic 2 Enterpriseデュアルドローンは、パスワード保護を特徴としている。無人機およびデータのセキュリティを強化するために、ユーザーは無人機を起動するたびにパスワードを入力するか、リモコンを無人機にリンクするか、または無人機の搭載ストレージにアクセスする必要がある。これにより、無人機が紛失したり物理的に危険にさらされたりした場合でも、無人機とその機内データへの安全なアクセスが可能になると同時に、そのデータを保護できる。
データの安全性に対する主張を公開すると同時に、米国DJIではLinkedInなどで米国の規制当局に対応するための人材のリクルーティングも推進している。公開された募集要項によれば、連邦規制政策に関連するDJI内の他の国際的、連邦、州、および地方自治体の取り組みをサポートし、管理するのにも役立つ人材を求めている。その詳細は以下になる。
■責任
・米国で効果的な連邦規制戦略を実施および管理します。これは、DJIの国際、州、および地方の政策目標も補完します。
・主要な規制関係者とともに、DJIテクノロジの積極的なユースケースの認知度を高め、認識を広げ、米国の政策目標を支援します。
・会社の事業目的を推進するために、米国の規制当局、同業者、および業界団体との強い関係を築き、維持します。
・世界の政策の展開と目的に沿って、さまざまな政策問題にわたって長期的な戦略的成果を生み出すために、DJI政策および法務担当副社長と緊密に協力してください。
・DJIの米国の政策イニシアチブを強化することができる伝統的な、そして「伝統的でない」パートナーとの関係と提携を築きましょう。
FAAとDOTにおける主要なイニシアチブに対応する会社のプロジェクトを開始し、管理します。
・連合および業界団体に助言し、(必要に応じて)参加します。
北米のDJIコーポレートコミュニケーションディレクターと協力して、米国のポリシーナラティブを管理するために企業のメッセージングを調整および活用します。
■必要条件
・学士号(BAまたはBS)が必要です。
・合法、規制、または立法上の擁護、ロビー活動、連合、政府奉仕など、米国の公共政策および政府問題に関する8年以上の経験。
・特に航空宇宙、輸送、または技術における国際的な足跡を持つ民間部門の経験など。
・トップレベルの立法者および規制当局との関係を構築する能力を実証。
輸送、無人航空機システム、および防衛規則に精通していることを推奨。
・メディアエンゲージメントに関する以前の経験が非常に望ましい。
DJIは、中国の大手通信機器メーカーのような米国商圏からの排除を避けるために、あらゆる対策を講じてきている。活動の中心は、DJIが米国で登用した人材が中心となっている。今後も、人的な強化や人脈を利用した交渉力に、中国本社と連携した技術的な対策によって、ドローンソリューションを提供する企業への製品供給を維持していく考えのようだ。
建設設備大手の三機工業株式会社(東京)は7月11日、グループ会社、有限会社キャド・ケンドロ(仙台市)と共同で狭小空間ドローン開発の株式会社リベラウェア(Liberaware、千葉市)のドローンとレーザースキャナを併用した既存設備の3Dモデル化するデジタル化手法を確立したと発表した。Liberawareも同日、三機工業に「IBIS2」を「導入した」と発表した。
三機工業は設備更新や模様替えなどのさいに、現場を3Dモデリングし、現状を把握してから取り組む。完成後の更新や追加工事で現状が図面通りになっていないことが多く、作業の妨げになるおそれがあるためだ。しかし天井裏などでダクトや配管が込み入っている場合に、すべての設備にはレーザーが届き切らずに十分な3Dモデルができあがらない場合がある。こうした課題を乗り越える手法の開発を進めているところ、今回、ドローンとレーザースキャナを併用してデジタル化する手法を開発した。
同社が実施した実用化検証では、IBIS2とレーザースキャナを併用した場合、従来の3Dスキャン手法と比べ、機械室などの天井の無い空間の場合、認識できた建築部材が約135%、天井の一部が解体された天井裏空間で約400%向上したという。
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丸紅株式会社(東京)は7月8日、大阪・関西万博でデモフライトを披露する計画を公表している英ヴァーティカルエアロスペース社(Vertical Aerospace Group Ltd.)開発の5人乗りAAM「VX4」について実施を「見送る」と発表した。英国で行われているVX4試験機での有人飛行試験で判断したという。
丸紅は発表の中で「現在英国で行われているVertical社製VX4試験機による有人飛行試験の進捗状況から、大阪・関西万博でのデモフライトへの対応を見送ることとなりました」と伝えた。VX4のキャビンを再現したモデル空間は予定通り万博会場に出展し、8月から搭乗体験を実施する予定という。
また丸紅が万博で飛ばすもうひとつの機体、米LIFT AIRCRAFT社(以下、「LIFT社」)製の1人乗り機「HEXA」については、デモフライトを近く再開させる方向で調整中だ。HEXAは4月26日のデモフライト中に部品が落下したためデモフライトを中断して原因究明を続けている。
その結果「モーター搭載箇所の部品について、サプライヤーが仕様と異なる素材の部品を誤って供給していたことが判明」したと説明し、「当該部品の交換およびその他重要部品の再点検を完了した上で、再発防止策として、LIFT社において部品の受領・品質管理について包括的な監査を実施し、必要な工程について改善したことを確認しました。関係機関の許可を以て、今後大阪・関西万博でテストフライトを実施し、十分に最終確認を行った後、安全を最優先として関係機関および関係各社と協議・判断し、デモフライトの再開に関しては改めてお知らせいたします」と伝えている。
丸紅は大阪・関西万博でのAAM運航事業者4グループのひとつだ。
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英ロックバンド、オアシスの再結成後初のコンサート会場となるウェールズの首都カーディフのプリンシパリティ・スタジアムで現地時間7月2日、ドローンで形作られた「OASIS」のロゴが浮かび上がった。ツアーは7月4日に始まり、11月まで世界各国をまわる。ツアー初日を翌々日に控えたドローンの演出はオアシスの公式アカウントで公開されている。
ドローンのロゴは公演開始前に上空に描かれ、オアシスの再結成ツアー開催を祝福し、喜ぶファンの気分の高揚に貢献した。
オアシスは1991年にマンチェスターで結成され、7000万枚以上のアルバムを売ったロックバンドだ。2009年に解散したが昨年2024年に再結成した。再結成後初のコンサートツアーが7月4日にはじまり、北米、南米、オーストラリア、韓国など各地をまわる。2025年は11月23日のサンパウロ公演で幕を閉じる予定だ。日本公演も10月に予定されている。チケットはいったん予定枚数の販売を完了したが、機材席の解放による追加販売が決定し、7月12日正午に抽選の受付を開始する予定だという。
音楽シーンとドローンとは、MV撮影、ライブ映像撮影、演出としての屋内ドローンショーなどの例があるなど縁があり、今後も活用の幅が広がる可能性がある。
公式アカウントが公開した動画はこちら
AAM開発の米ジョビー・アビエーションは6月30日、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイでパイロットが搭乗し、垂直離着陸の固定翼飛行を実施した。ジョビーは「2026年に最初の乗客を運ぶ」と2026年のサービス開始を目指している。ジョビーは開催中の大阪関西万博で「運航事業者」にもなっている。
ジョビーによるドバイでの飛行は、「piloted, vertical-takeoff-and-landing wingborne flights」で、パイロットが乗り、垂直離着陸をしたうえで、機体の固定翼で移動した飛行で、「eVTOL分野では初めての取り組み」としている。ジョビーはこの飛行を通じて、ドバイ地域での商用市場準備の取り組みを開始したことも明らかにした。ジョビーは直接運航、航空機販売、地域パートナーシップを商業化戦略の3本柱と位置付けていて、今回の試験飛行が「重要な一歩」と話している。
試験飛行はドバイ道路交通局、ドバイ民間航空局、UAE民間航空総局と連携して実施された。またドバイ道路交通局長官兼理事会会長のマタール・アル・タイヤー会長が立ち会った。
ジョビーは、ドバイ国際空港(DXB)、ペルシア湾の人工島であるパーム・ジュメイラ、現在建設が進められている世界第2の面積の人工のマリーナであるドバイ・マリーナ、超高層ビルブルジュハリファで知られるドバイ・ダウンタウンでの商業サービス導入を目指している。バーティポートはすでに建設が進められている。
ジョビーはDXBからパーム・ジュメイラまでをエアタクシーサービスで移動した場合、移動時間は12分で、45分かかる車での移動時間が大幅に短縮されると見込んでいる。
ジョビーがエアタクシーサービスで使う機体は電動で、パイロット1人と最大4人の乗客を乗せ、最高時速200マイル(約320km)で輸送できる設計と説明していて、ジョビーは「短時間の通勤、小旅行、地域間のシームレスな移動のために、より速く、より静かで、より便利な空の旅を提供します」と話している。
ジョビーの発表はこちら
東京株式市場グロース市場で7月2日、ACSL株がストップ安となった。午前9時29分にいったん1187円で寄り付いたがその後も売りが殺到し、再び取引の成立したない売り気配で推移した。ACSLは前日の7月1日、前CEOによる不適切取引判明を発表していて嫌気を誘ったとみられる。
ACSL株は取引き開始前から売り注文を集めていて、取引開始がはじまったしばらく値が付かないまま推移した。午前9時29分に値幅制限いっぱいいの、前日終値比300円安のストップ安となる1187円で取引が成立したが、その後も売りは止まらず、再び取引が成立しない展開が続いた。
ACSLが7月1日に発表した「お知らせ」はこちら
株式会社ACSLは7月1日、今年4月30日に退任した鷲谷聡之前代表取締役CEOが不適切な取引を行っていたとして、全容解明のため外部の弁護士と社外取締役の4人で構成する特別調査委員会を設置したと発表した。ACSLは業績に与える影響は精査中で、過年度業績への影響はないと見込んでいる。特別調査委員会7月中旬をめどに最終報告書をまとめる見込みだ。
ACSLによると前CEOによる「個人的な経済状況に関する懸念」が3月に浮上し、4月に社内調査に着手した。調査で「(前CEOが)代表取締役の立場を個人的に悪用して、2025 年3月から、一部業者との間で実態のない不適切な取引を行っていた事実が判明」したという。ACSLは全容解明、厳正な対処、再発防止策構築を目的に7月1日の取締役会で特別調査委員会設置を決議した。
ACSLは「特別調査委員会による調査に全面的に協力し、早急に調査を進めてまいります。また、特別調査委員会による調査の結果、明らかとなった事実関係等につきましても、受領次第速やかに開示いたします」とコメントしている。
ACSLの発表はこちら。