中国・深圳で開催中のドローンの大規模展示会「Shenzhen International UAV Expo2019」に参加中の株式会社エアロネクスト(東京)は6月20日、中国の有力企業2社との提携を相次いで発表した。産業機大手のMMCと、物流スタートアップのSMDとの提携で、どちらの提携でも機体開発などを共同で進め世界市場を目指す。
MMC(深圳市科比特航空科技有限公司、MicroMultiCopter Aero Technology)は、産業用ドローンの大手で高い機体開発力を備える。今後、世界進出を目指すうえで有益な連携関係を模索していて、重心制御技術4D gravityを持つエアロネクストとの提携は同社の戦略に有益だと判断、今回の提携が実現した。
エアロネクストの田路圭輔CEOはMMCとの提携発表の中で、「素晴らしいハードウェアシステムがMMCの強み。お互いの技術を持ち寄るなど手を携えることで世界市場にアピールしたい」と話した。
MMCの卢致辉(Zhihui Lu)董事長も、「技術力の強いエアロネクストと連携することにより連携して一緒に海外市場に進出していきたい。深圳はドローンの聖地と言われ、世界中のドローンの約90%を生産している。エアロネクストと連携することで、その深圳でも代表となれるレベルとなると確信している」と応じた。
具体的な開発計画は今後検討するが、橋梁点検分野での活用を視野に、開発を進めることになる見込み。中国国内にも日本国内と同様、点検作業が必要な橋梁が多く、技術、精度、速度、費用などの面でドローンに対する期待が高い。しかし実用には至っておらず、共同開発でドローンによる橋梁点検の実装に結び付けたい考えだ。
また、物流スタートアップSMD(深圳智航无人机)は物流へのドローン活用で知られるスタートアップで、中国の民間物流大手、SF Express(順豊速運)と提携するなど、業績を拡大している。垂直離着陸が可能な固定翼のVTOLに強みを持ち、経験も多い。今後、世界に進出を目指すうえでドローンによる運送が可能な対象荷物の拡大などを目指していていて、エアロネクストの4D Gravityに着目、同社との提携が実現した。
田路CEOは「4D Gravityは物流に特徴を発揮する技術。とりわけ積み荷の重さが変化しても、機体の安定性が求められる場合などに相性がいい。SMDは物流で実績のある企業で、提携して世界にアピールさせたい」と述べた。
SMDの 金良( Edward Jin)董事長も、「SMDは物流向けのドローンの開発で豊富な経験を持つ。エアロネクストは、物流において荷物の安定性の維持で非常に高い技術を持っている。例えば液体を輸送するには、こぼれたり漏れたりしないために積み荷の安定性が必要で、エアロネクストの技術は有効だと考える。今後、我々のVTOLへの4D Gravityの搭載をともに考えたい。物流でのシェア拡大を目指し、安定性が必要な災害時の荷物搬送にも活用したい。今後、両者それぞれの特徴を生かしながら世界のドローン産業の発展に貢献したい」と述べた。
エアロネクストは世界市場を目指すため5月に、深圳に現地法人、天次科技(深圳)を設立し、事業の具体化させる準備を進めていた。今回、中国の有力企業2社との提携が実現したことで、共同開発の道筋が整ったことになり、今後、世界市場を目指す事業が本格化する。
この日の2件の発表はいずれもEXPO会場内の一角に設けられた専用のスペースで行われた。2件とも発表時間があらかじめ、割り当てられていて、エアロネクストの発表時間前になると来場者が集まりはじめ、発表がはじまると用意された席が埋まり、スペース周辺に足を止めて聞き入る姿がみられるなど、話題性の高さを示した。
会場内のエアロネクストのブースにはこの日、2件の発表が行われたこともあって、多くの来場者が立ち寄り、展示された機体を興味深そうに見入る姿が多くみられた。立ち寄った来場者からは「どのぐらいの重さの荷物が運べるのか」といった具体的な質問が寄せられることが増え、関心の高さがうかがえた。登壇を終えた田路CEOや川ノ上総経理も、ブースに戻ると、来場者の質問に答えたり、メディアの取材に応じたりと、来場者のたえないにぎわいとなった。