一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)が、ドローンによるマンション外壁点検の仕事を請け負うための力を養う講座「ドローン点検スペシャリスト育成コース<マンション外壁編>」の内容を解説する「講座ご案内ウェビナー」をJUIDAの公式ページ上で公開した。ウェビナーは7月に視聴者を募って行われ、講座は8月に開講した。現在も受講生を募集している。
「ドローン点検スペシャリスト育成コース<マンション外壁編>」は、JUIDA、マンション管理など不動産管理大手の株式会社東急コミュニティー、ドローンスクール運営の株式会社ハミングバードの3者が作った講座で、5月に公表し、6月に開催された展示会「JapanDrone」で3者そろって発表会に臨んでいた。3者は新たな講座のマンション外壁点検の現場で求められる実務を盛り込んだことと位置付けている。
マンション外壁点検でのドローン導入期待は高いものの、外壁点検の現場や実務を知るドローン事業者は多くない。マンションの管理組合などから点検業務を請け負うマンション管理事業者側にとっては、現場知識の乏しいドローン事業者にドローンでの点検を依頼すると、ドローン事業者が担うべき実務を一から伝えなければならず、手間、時間、コストの負担が大きい。これがドローンの導入を阻む要因になっていると言われている。このため講座を通じてマンション外壁点検に求められる実務の知識を習得することで、マンションの外壁点検現場へのドローン導入を後押ししようとする狙いがある。
公開された動画は、全体で50分弱。事務局のあいさつ、カリキュラム概要、受講料、受講会場など講座に関わる説明が27分ごろまで行われる。この中では、点検作業後に作成し、依頼主に納める報告書の重要性が強調されている。ドローン作業者には、報告書の重要性や、報告書に掲載するための画像の要件が講座で解説されることなどが伝えられている。
その後、事務局が設定した想定質問に、担当者が回答する一問一答が行われる。一問一答の中では、講座の修了生には必ず外壁点検の仕事があっせんされるのか、タワーマンションにも対応可能なのか、など受講判断に関わりそうな質問がいくつも盛り込まれていて、担当者の回答は、受講を検討者の参考になりそうだ。
都心型スクールの運営で知られる株式会社ハミングバード(東京)は7月2日、株式会社丸井グループ(東京都中野区)が運営する「新宿マルイ メン」(東京都新宿区)に「ドローンスクール新宿」を開講した。お台場、渋谷に続く3校目の都心型スクールで、都心在勤、在住者に実技、座学のほか独自開発したVRトレーニングを提供し、ドローンの担い手を育成する。スクールの受講生は要件を満たすと、一般社団法人ドローン操縦士協会(DPA)の資格を取得できる。この日行われた開校式には国会議員、管理団体代表ら関係者が多く駆けつけ新スクールの門出を祝った。
ドローンスクール新宿は、東京メトロ「新宿三丁目」駅に近いメンズファッションを発信する新宿マルイ メンの6階に開校した。繁華街に立地するスクールとして都心在勤、在住者の需要に対応する。
フロアには実技のためのネットがはられ、VRトレーニング用のモニターが並び、受講生を迎える準備を整えた。スクール受講生は、認定試験で基準に達するなど要件を満たせば、安全運航管理の講座を受講したうえで、DPAが発行する資格を取得できる。
開校式当日は、関係者や支援者から開店祝い胡蝶蘭など色とりどりの花が並んだ。また開校式では来賓が次々と祝辞を述べた。
ドローン議連(無人航空機普及利用促進議員連盟)会長代理の田中和徳前復興相は、「このスクールは都心のニーズを受け止めて開設されました。ドローン産業の進展に貢献頂けるものと期待しています。ドローンが国民の生活に利便性の面で寄与できる社会を目指すため、これからもますますご指導を頂きたい。本日は雨が降っていますが、日本でも大きな災害が増えました。いつなんどき、どんな災害が起こるか分かりません。ドローンの活躍への期待は高まっています。素晴らしい事業として期待しております」と経緯と祝意を述べた。
渡辺美智雄元副首相を祖父に持つ新宿区議会議員の渡辺美智隆氏は「新宿は高層ビル群が並ぶたてに広い都市。助言を頂きながらドローンの公共利用を考えたいと思います」と述べた。
管理団体であるDPAの吉野次郎代表理事は「いいスクールとは何かとよく聞かれます。よいインストラクターがいることはそのひとつだと思っています。ハミングバードにはDPAのマスターインストラクターが在籍していて、安心しておすすめできます」と充実した講師陣を紹介した。
会場となった新宿マルイ メンの青木亮太店長は「テクノロジーは展開期に入り、百貨店も対応を進めないといけません。そんな中で念願だったドローンスクールを開校でき、とてもうれしく思っています。われわれの事業もモノを売るだけの商売から、価値や体験、楽しみを提供する形に変わってきています。ここに来てよかったと思ってもらえるようにすることがわれわれの使命。新しい体験を提供して参ります」と決意を表明した。
ハミングバードの鈴木伸彦代表取締役は「さまざまな調整を乗り越えて開校することができました」と関係者に謝意を表明。そのうえで「旧態依然としたスクールではなく新しい価値を提供し、受講生の満足度を高めて参ります」と決意を新たにした。
来賓によるあいさつのあと、スクールの講師陣がDJIのMAVIC ENTERPRISEやMATRICE 300のデモフライトを実演した。会場には、独自開発したトレーニング用のVRシステムも準備し、鈴木代表は「まずはベータ版(試作品)として用意しました。ぜひトライしてください」と呼びかけると、来場者が使い勝手を試す姿がみられた。