ドローンを活用したインフラ点検ソリューションを提供する株式会社ジャパン・インフラ・ ウェイマーク(JIW、大阪市)は5月19日、株式会社エイト日本技術開発(岡山市)、株式会社JR西日本イノベーションズ(大阪市)、九州電力株式会社(福岡市)、八千代エンジニヤリング株式会社(東京)とインフラ関連の4社と資本、業務の両面で提携したと発表した。JIWは提携した4社を引受先として第三者割当増資を実施した。今後JIWは4社と点検業務の定常業務化に向けて力を合わせる。
JIWのこの日オンライン説明会を開催し、柴田巧社長は、「われわれはプロタクトアウトではありません。とはいえマーケットインにとどまってるわけではなく、ユーザーインのビジネスを進めています。4社は日本を代表するインフラ事業者です。4社とともに、インフラ点検業務の定常業務化をすすめ、その先の全自動点検を目指します」と述べた。
この提携により、ドローンによる点検対象を道路橋、鉄道構造物、発電・変電設備に拡大し、提携各社の設備の定常業務に組込むよう取り組む。取り組みで蓄積したデータは、AIによる自動解析のシステム構築に活用する。あわせて「レベル4」の飛行を含めた自動巡視点検技術を確立し、点検現場に派遣される技術者の負担軽減を目指す。
JIWは2020年4月、東京電力パワーグリッド株式会社(東京)、北陸電力株式会社(富山県)、大阪ガス株式会社(大阪府)、西部ガス株式会社(福岡県)の投資ファンドSGインキュベート第1号投資事業有限責任組合、東洋エンジニアリング株式会社(千葉県)、株式会社NTTデータ(東京)、DRONE FUND(東京)による資本参加を発表している。
JIWの柴田社長はこの日の会見で「既存7社との提携で検討を進めてきた技術やサービスを、今回加わった4社をまじえて普及させていく」と決意を表明した。
この日のオンライン説明会で提携4社は動画で談話を寄せた。それぞれの談話は以下の通り
■株式会社エイト日本技術開発
永井泉治常務取締役事業統括
当社は、「価値ある環境を未来に」をテーマに地球環境や国土の保全、地域のインフラ整備に優れた技術の発揮を通して、企業価値の向上を果たすと共に社会的責任を全うし、人類の福祉に貢献することとしています。この度のJIW様との連携により、インフラ点検の先駆者として、高精度の判断技術に加え、省力化による働き方改革を進めながら、明日の時代を担う若手技術者の育成、また、IoT等情報通信技術を活用し、公共インフラのメンテナンス技術の高度化に邁進してまいります。
■株式会社JR西日本イノベーションズ
和田裕至代表取締役社長
当社グループは国鉄採用のベテラン社員が大量に退職する時期を迎えるなか、より少ない人数でも安全に保有する鉄道設備のメンテナンスができるよう様々な取り組みを進めてまいりました。今回のJIWとの提携により、ドローン・AIを活用し、高所、高電圧など特殊な現場作業においても、安全で効率のよい点検が可能となるよう、努めてまいります。
■九州電力株式会社
新開明彦上席執行役員テクニカルソリューション統括本部情報通信本部長
九州電力はこれまでドローンを活用して、災害復旧の迅速化、 電力インフラのメンテナンス効率化を推進してまいりました。そのノウハウやリソースを活用して、「九電ドローンサービス」として2019年7月に事業化し、九州地域のお客さまのニーズに基づく多様なサービスを提供させていただいております。今回、ドローンの機体・AIに関して高い技術力を持つジャパン・インフラ・ウェイマーク様と協力関係を構築することによって、インフラ点検に関する機体開発、サービス開発を共同で行い、社内外におけるドローン活用範囲の拡大と提供するサービスの充実を図り、地域・社会が抱える課題の解決に寄与してまいります。
■八千代エンジニヤリング株式会社
高橋努取締役常務執行役員経営企画本部長
橋梁などの社会インフラの老朽化は大きな社会課題の一つであり、限られた財源の中、効率的・効果的に保全していくためには、ドローンやAIといった先進技術を活用していくことが必要です。当社は建設コンサルタントとして社会資本の整備・維持に携わっていますが、JIWとの提携により、インフラ点検の高度化を実現することで、老朽化に対する課題解決に貢献したいと考えております。
自律飛行ドローン開発を手掛ける株式会社自律制御システム研究所(ACSL、本社:千葉市美浜区) と、業務の完全自動化ソリューション開発を手掛ける株式会社センシンロボティクス(本社:東京都渋谷区)は4月23日、業務提携を締結したと発表した。ハードウェア開発に強いACSLと、ソフトウェア開発に強いセンシンがそれぞれの専門性や知見を持ち寄り、産業向けのドローンソリューション構築や、社会実装に連携して取り組む。
提携により、利用者の求める課題解決のプロセスについてさらに広範な対応が可能になる。用途に適した機体やソフトウェアシステムを組み合わせたソリューションの構築から、効果検証、オペレーション導入、導入後のサポートまでの工程をシームレスに提供できる。すでにACSL の機体とセンシンの自動航行プラットフォーム『SENSYN FLIGHT CORE』との接続を完了しており、屋内点検、物流の自動化、遠隔監視、遠隔管理の定期運用が可能だ。
センシンは、自動航行プラットフォーム『SENSYN FLIGHT CORE』を中心に、ドローンなどのビジネス活用に必要な業務を自動化させるサービスを提供している。送電鉄塔やプラント施設、大型施設屋根などの点検、災害現場の被害状況把握など防災・減災対応、警備や監視に提供中だ。
ACSL は、業務の省人化や無人化に役立つ国産ドローンを開発している。画像処理AI のエッジコンピューティング技術を搭載した自律制御技術や、この技術を搭載したドローンを開発、提供しており、インフラ点検や郵便・物流、防災などで活用されている。1月には国産の小型産業用ドローン『Mini』を発表している。
昨年、四国電力伊方原子力発電所で行われた事故を想定した防災訓練では9機のドローンの編隊飛行を実現し、両者連携の有効性を実証した。こうした経験で得た知見を、発掘したエンドユーザーの課題解決に生かす。
ACSLの鷲谷聡之COOは今回の提携について、「センシンとACSLに共通するのは、プロダクトをプッシュするビジネスを展開していない点。何を欲しているのかを発掘し、その解決策を開発して提供している。今回の提携でさらに踏み込んだことができる。成果は来年、再来年と言わず、示していきたい」と意欲を見せた。
また北村卓也代表取締役も「お客様すら認識していない課題を見つけ、それを提示し、ハっとして頂いて、その課題の解決を実現させることがわれわれのビジネス。お客さまに伴走してBPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング、業務フローや設計の見直し)を実現させる。ソフトで解決できること、ハードで解決できること持ち寄って、ドローンの利活用が“幻滅期”を抜け出し、ドローン前提社会を実現させたい」と話している。