ドローンの機体開発や運用、導入支援を手掛けるセブントゥーファイブ株式会社(東京)は9月27日、神奈川県横浜市内で同社初の自社ブランドのドローン「AIR HOP」Eのデモフライトを関係者や報道陣などに向けて初めて披露した。点検や物流などの利用を想定しており、2つのプロポで機体操作とカメラ操作を操作し分けることができる。同社は11月にも注文を始める予定で、最終的な調整や仕様の確認などを進めている。
AIR HOPEは、セブントゥーファイブ初の自社ブランドの機体で、6月に千葉・幕張メッセで開催された大型展示会「JapanaDrone2022」で機体を初公開した。飛行する様子を公開するのはこの日のデモフライトが初めてだ。この日行われたのはデモフライトと機体説明で、態勢が整い次第注文を受け付ける。11月ごろを予定しているという。
機体は体とアームにマグネシウム合金を採用して軽量化の工夫をした4本アームのマルチコプターだ。大きさは外形930mm×930mm×680mm、ジンバル、バッテリー込みの重量が約14㎏。最大飛行時間は離陸重量が11.6㎏の場合に45分。現在、バッテリー、ジンバル搭載時の飛行時間の確認も進めている。
この機体は、ドローン開発を手掛ける株式会社石川エナジーリサーチ(群馬県太田市)の産業機、「ビルドフライヤー」がベースで、セブントゥーファイブがこれまでの運用実績の中で利用者から要望の多い機能などを追加する形で、石川エナジーと共同開発して誕生した。追加機能のひとつが、点検などカメラ操作に集中しやすくするための2プロポ対応で、デモフライト当日も、セブントゥーファイブの女性オペレーター2人が、機体操作、カメラ操作を分担する様子を披露した。事前に組んだミッションをこなす自動航行も実演した。物流用途を想定した収納箱もアタッチメントとして紹介した。ジンバルには市販のカメラの搭載が可能で、この日もソニーのαを搭載して飛行させた。ビルドフライヤーの特徴である跳ね上げ式の脚や、折り畳み式のアームはAIR HOPEも受け継いだ。
同社はこれまで、点検、空撮などドローンを活用する事業を展開し、DJIのMatriceシリーズや、FlyabilityのELIOS 2などを活用しており、その運用実績を開発にいかした。6月の「JapanDrone2022」や7月に奈良市で開催された「京阪奈ドローンフォーラム」では、AIR HOPEとは別に、狭小空間用機体も出展しており、今後も同社ブランドの機体が市場に投入される見通しだ。
ドローン開発の株式会社ACSL(東京都江戸川区)は3月30日、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の事業として開発した情報漏洩対策ドローンに搭載したフライトコントローラーなどの技術を、株式会社石川エナジ―リサーチ(群馬県太田市)が開発した点検ドローン「ビルドフライヤー」に統合することに成功したと発表した。両者の共同事業で、ACSLがNEDO事業で開発した技術を転用した事例の第一号になる。今後、NEDO事業で開発した高セキュリティー技術の普及にはずみがつきそうだ。
石川エナジーリサーチの「ビルドフライヤー」に統合が成功した技術は、NEDOの「安全安心なドローン基盤技術開発」事業のもとで開発が進められた高セキュリティードローンに採用されたフライトコントローラーとGCSだ。データの漏洩、抜き取りの防止、機体の乗っ取りへの耐性強化を実現させた高性能小型ドローン「SOTEN(蒼天)」に搭載された。
ACSLはNEDO事業で、フライトコントローラーなどの標準基盤設計と開発を担った。開発の成果として「SOTEN」を発表したのは2021年12月で、あわせてフライトコントローラーのAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)や、主要部品の接続仕様もコーポレートサイトで公開した。
石川エナジ―リサーチとACSLは、公開されたAPIをもとに、「ビルドフライヤー」にフライトコントローラーとGCSの統合に取り掛かり、実証を重ねた末に成功させた。
石川エナジーのビルドフライヤーは、5㎏までのカメラ、測量機器などの搭載が可能な空撮、点検、測量対応の4本アームのマルチコプターで、5㎏の機材を積載し30分の飛行可能な、本体にマグネシウムを使った超軽量、高剛性の機体だ。NEDO開発事業の技術が統合された機体の現場投入が期待される。
NEDO事業技術の転用第1号を足掛かりに、今後、高セキュリティードローンへの採用が加速する可能性がある。ACSLも今後、公開したフライトコントローラーのAPIの周知、普及に力を入れる方針だ。