一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)は11月13日、福島ロボットテストフィールド(福島県南相馬市)で、ドローンの用途別運用ガイドラインを作成するための実証実験を行った。この日は、救急医療輸送の一環としてAEDを(自動体外式除細動器)をドローンで届ける実験などを実施した。14日も一般財団法人総合研究奨励会・日本無人機運行管理コンソーシアム(JUTM)が参画し、警備やセキュリティーの実験を行う。
実験は公益財団法人福島イノベーション・コースト構想推進機構の委託事業として、オリンピックなどの大規模イベントでドローンを活用するさいのガイドラインを作成するために必要な知見、データを取得する目的で行われた。作成されるガイドラインは来年3月ごろ公表される見通しだ。
この日の実験では、東京・お台場でのトライアスロン競技に参加中の選手が倒れ、心肺停止になったというシナリオで行われた。近くに居合わせた人が大会本部に連絡しAEDの搬送を要請。そのさい、ドローンの飛行支援サービスSORAPASSで、自己位置の緯度・経度も伝える。連絡をうけた本部が、AEDをドローンに取り付けて、要請者から連絡のあった位置まで飛行し、ウインチでAEDを下ろす。要請者が、AEDを受け取り、倒れた選手に手当を施す。
検証では、要請から手当てまでを3分以内で納めることを目指し、実際にAEDが届けられた2回のケースでは、2分36秒、2分40秒と目標を達成した。ただし1回は、ウインチのモーターが動かなくなるトラブルがおこり、ウインチでAEDをおろすことができなかった。関係者によると、モーターが冷えたためにおきたトラブルで、こうしたことの対策もガイドラインに反映させる考えだ。
この日はこのほか、カヌーやサーフィンなど海上で競技する選手を、ドローンで撮影することを想定した検証も実施。陸上にいるパイロットが、目視外でドローンを会場で飛行させ、FPVゴーグルで競技者を追うことを想定した。検証では、ロボットテストフィールドにある500メートルのドローン用滑走路を使い、自動車を海上の競技者に見立てて走らせ、それをドローンで追いながら空撮した。主催者は「風の中でも被写体を修めるためのポジションや、安全管理の方法などの知見を得られた」という。
実験には綜合警備保障株式会社(ALSOK)、ブルーイノベーション株式会社、Team ArduPilot JAPAN、イームズロボティクス株式会社が参画。福島県、福島県南相馬市が協力した。
公益財団法人福島イノベーション・コースト構想推進機構理事で、福島ロボットテストフィールド所長の鈴木真二所長は「ロボットテストフィールドはさまざまな現場を再現していて、空のドローンだけでなく、水上、水中ロボットも活用できる。運用のガイドライン策定の検証には役立つと思う」とテストフィールドの活用を歓迎した。
JUIDAの千田泰弘副理事長は「今回の検証内容はかなり意欲的。典型的な難しい事例をガイドラインにまとめるので期待してほしい」と意義を強調した。
検証は14日も開催され、住居への侵入者を検知するセンサーなどを使った機械警備とドローンの連携などが行われる。