株式会社ACSL(東京)の株価が2月15日、取引開始からストップ安売り気配のまま値が付かずに推移し、そのまま午前の取引を終えた。前日の2月14日に2023年12月期決算、希望退職の募集による事業改革などを発表しており、市場参加者が嫌気した。決算発表では売上高が45%の大幅減収だった。純損益の赤字幅は縮小した。また希望退職は2月中に40人程度と同社の正社員の半分程度を減らし、事業の再構築を図る。
東証グロース市場では2月15日、午前午前9時に取引が始まった中、ACSL株には成り行きでの売り注文が殺到し、売り越し状況が続いた。株価も値段がつかないまま、値幅制限いっぱいの前日終値比150円安の726円のストップ安売り気配で推移し、午前の取引を終えた。前日の2月14日は607社が決算を発表するなど発表が集中し、株式市場はそれを受けて明暗が分かれ方向感のつかない展開となった。グロース市場には赤字決算の企業を中心に、売り気配のまま値が付かない銘柄が多い展開となった。
ACSLが2月14日に発表した23年12月期連結決算では、売上高が前期比45.2%減の8億円9600万円と大幅に減少した。業績のけん引役と期待された高セキュリティ型の小型空撮ドローン「SOTEN」の販売台数が伸び悩んだことが響いた。23年12月期はSOTENの販売台数は国内で51台と、前22年12月期の645台から92%減った。一方、研究開発費を35%抑制したことなどから、純損益は25億4300万円の赤字と、前22年12月期の25億9100万円の赤字から赤字幅を縮小させた。また20.7億円の受注残があると明らかにしており、翌期以降の売上高に計上される可能性もある。2024年12月期の連結業績は、売上高について23年12月期の2.7倍にあたる33億4000万円を見込んでいる。
売上高の減少について、ACSLは新型コロナウイルス感染症の流行に伴う経済活動の停滞、半導体価格の高騰、外国為替市場での急激な円安進行、インフレなどの外部環境が、同社の想定より厳しかったと分析。これをふまえ「大幅な売り上げ増加を前提としない黒字化を実現できるコスト構造へ転換」すると表明した。「選択と集中」を明確化し、国内の人員最適化と関連間接費削減、注力事業以外の研究開発の中止、高セキュリティ型ドローンへの潜在需要が大きい米国・台湾市場への再投資を進める。
国内の人員最適化の一環として、同社は希望退職の募集を発表した。募集対象は正社員で人数は40人程度。「程度」の幅次第では、同社の2023年12月期の従業員86人の半数にあたる。募集期間は2月16日から29日までで、3月31日を退職日とする。応募者には特別退職金を支給する。希望退職の実施に伴って発生する費用は2024年12月期に特別損失として計上する予定で、人数などが確定した時点で金額が確定する見込みだ。
また2月14日に開いた取締役会で、資本金、資本剰余金などの取り扱い方針を決議し、3月27日に開催予定の株主総会に付議することを決めた。繰越利益剰余金の欠損補填、財務体質改善、資本政策上の柔軟性、機動性確保が目的だ。資本金は9億8642万1997円のうち、9億7642万1997円減額して1000万円とし、資本剰余金も54億9218万482円のうち、40億6807万5032円を減額し、14億2410万5450円とする。減額分はその他資本剰余金に振り替える。発行済株式総数は変更させない。勘定科目間の振り替え処理でACSLは「業績に与える影響はない」と説明している。
あわせて鷲谷聡之代表取締役、早川研介取締役が月額報酬の15%を3カ月自主返納することも発表した。「経営責任を明確にするため」を理由としている。
ACSLはドローン市場の急成長を見込む姿勢を変えていない。主力機SOTENについては、国内10カ所で体験会を開いたほか、米国子会社ACSL Inc.の設立で全米代理店網を整備したほか、輸出許可も取得し海外展開も進めた。このほか米、台湾、インド市場でMOU(覚え書き)を交わすなど販売につながる対応を進めており今後の業績の上積みへの寄与が期待される。
<以下はACSLの発表>
ACSLの2023年12月期決算短信
ACSLの2023年12月期決算説明資料
役員報酬一部返上
希望退職募集と事業改革
資本金減少など
特損計上
前期実績との差異