一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)は、産業向け専門ライセンスの第2弾として林業従事者向けに「JUIDA森林測量スペシャリスト」を創設すると表明した。森林整備業務を担う林業従事者を対象に想定し、実務や申請など一連の作業で負担の大きい測量実務や提出書類作成用のデータ管理を、ドローンとクラウドで処理する技能を身に着けていることを証明する。すでにモニタリングを進めており4月から本格的に提供を始める。ライセンス導入を林業へのドローン普及につなげ、林業の効率化を進めたい考えだ。
「森林測量スペシャリスト」はJUIDAが監修し、一般社団法人日本森林技術協会、ブルーイノベーション株式会社がカリキュラムを組み立てた。林野庁の「先進的造林技術推進事業」のうち「低コスト造林モデル普及促進事業」を、JUIDAと日本森林技術協会の提案が採択された。2021年3月まで森林整備事業へのドローン講習の試行と、全国を対象とした研修にあたっている。4月以降、本格的に運用する。
森林測量スペシャリストを取得するための講習は2日間で、JUIDA操縦技能証明証、JUIDA安全運航管理者証明証の基盤となる2つのライセンスを持っていることを前提として行われる。2日間の間に、自動飛行による航空写真測量、オルソ画像の作成、SfM解析、GIS活用などを身に着ける内容だ。
森林整備事業は現在、1ヘクタールの整備に1日あたり6.5人がかりで当たっている。ドローンを活用することで1日あたり4人に、クラウド管理も取り入れると2.5人にまで減らせると試算されている。今後、JUIDA認定校を対象にブルーイノベーションなどが講習方法やカリキュラムを広め、4月以降、全国の認定校が森林組合、自治体担当者向けに講習を本格的に進める計画だ。
森林整備は、植付、下刈り、保育間伐など森林内で複数の作業が必要となる。整備により災害対策、貯水、鳥獣害対策になることから、林野庁が補助事業にしている。一方林業事業者は、実務のあとに補助金の申請書類の作成と都道府県の担当窓口への提出が必要となるため、実務から書類作成、提出までの一連の作業が必要となる。
林業事業者に必要な作業のうち、申請書類は書面で作成が求められている。その中に、作業を実施した形が分かる施業図、施行位置が分かる位置図、完了を証明する写真などの提出が含まれ、作業効率を高めるうえで阻害要因のひとつとなっていた。林野庁は2020年4月、ドローンの活用し、形や面積などの申請に活用できるよう通知を変更。ファイルを提出すれば申請できるよう改めた。今後、ドローンやクラウド管理の普及が林業を効率化させることに期待が高まっている。
JUIDAは認定校を対象に動画配信した「スクールフェスタ」の中で森林測量スペシャリストの創設を表明した。「スクールフェスタ」には林野庁森林整備部整備課造林間伐対策室の諏訪実室長が登壇し、森林整備事業でのドローン活用について説明したほか、ブルーイノベーション株式会社経営戦略室の酒井和也氏が講習内容などについて説明した。林野庁の諏訪室長は、林業事業者の課題として、ドローンの傾斜地の飛行の難しさ、ORSO化ソフトの購入費、ソフトでの処理時間、苗木の判別、レーザーなど先端機材価格の購入費などをあげ「ドローンの価格もあり現在はまだごく一部で運用されている状況ですが。今後増えてくると期待しています」と新ライセンスの効果に期待を寄せた。
なお「スクールフェスタ」ではブルーイノベーションの熊田貴之社長が昨年12月に創設された「JUIDAプラント点検スペシャリスト」について概要や講習内容を説明した。