近い将来、ドローンが街じゅうを飛び回り、荷物の運搬、工事現場や屋根裏の点検、更には気象や交通状況の観測、災害対応などあらゆる場面で活躍するようになるとき、既存の有人航空機と同様、人びとの安全と安心を守るための仕組みが必要となります。具体的には、全ての航空機およびドローンが迅速かつ確実にお互いを認識できる必要があります。そのためにFAA(米国連邦航空局)によって発表されたものが「リモートID」制度です。この制度により、ドローンメーカーやオペレーターだけでなく、誰にとっても透明性の高いドローンのオペレーションが可能になります。今回は、FAAのWebサイトなどに公開されている「リモートID」制度の概要をまとめました。(筆者:Tavis Sartin=DRONE FUNDグローバル・マーケティング・マネージャー )
リモートID制度は、既存のドローン登録制度などとは異なり、オペレーターのもつ全てのドローンのID情報(詳細は以下)を付与することを必須としています。これにより、飛行中のドローンの飛行情報や位置情報などを、安全な空域管理のために地上から識別することができます。
リモートID情報は、ドローンが活用するほとんどの電波帯を用いて送信されます。業務用電波帯のみならず、Wi-FiやBluetoothなどでも送受信されるよう検討されています。そして、送信される情報には、UA ID(機器のシリアル番号またはセッションID)、フライト情報(GPS情報、高度、速度など)、コントロールステーションまたは離陸場所の位置、タイムスマーク、そして緊急事態の状況などが含まれます。
しかし、パイロットの個人情報やその他の情報は、パイロットの身元を保護するために、送信データには含まれません。これらの情報へのアクセスはFAAに限定され、必要に応じて権限のある法執行機関に提供されます。
リモートIDはFAA、その他行政機関、および私たち一般市民が、ドローンとその操縦場所または離着陸地点に関する情報を特定するのに役立つ重要なツールとなります。道路や水上の乗り物にナンバープレートや所有者の情報が紐づいているのと同様に、当然空中の機体にも、機体の識別等のためデータを管理者に送信する方法が必要です。
2021年1月15日、FAAはリモートIDに関する新しい制度の最終版を公開しました。これらの制度は2021年4月21日から適用される予定です(当初は3月16日から適用される予定でしたが、3月10日にその延期が発表されていました)。
ドローンメーカーは、4月21日から18か月以内に、新制度への適合を確認する必要があります。オペレーターはさらに1年間をかけて、下記の3つの方法のいずれかで運用要件を満たす必要があります。
リモートID制度では、FAAへの登録を必要とする全てのドローンが、リモートIDに関する情報を地上に送信できるようにすることが求められます。ドローンオペレーターは、以下3つのうち、どれか1つの方法を満たすことで、新しいリモートID制度のもとでドローンを飛行させることができます。
1つ目は、リモートIDの送信機能を内蔵したドローンを飛ばすという方法です。ドローンから直接リモートID情報の送信を行います。離陸から着陸までの間、ドローンは以下の情報を送信します。
・ドローンID(UA ID) ・ドローンの位置と高度 ・速度 ・コントロールステーションの位置と高度 ・タイムスタンプ ・緊急時の状況
2つ目は、リモートIDモジュールを後付けで装着したドローンを運用するという方法です。これによってオペレーターは、リモートID機能を内蔵しないドローンを、今回の新しいリモートID制度に準拠させることができます。
ただしオペレーターは、リモートIDモジュールのシリアル番号を機体の登録情報に追加する必要があります。また、リモートIDモジュールを使用して飛行する際には、目視内飛行(VLOS)に制限されます。
離陸から着陸までの間、リモートIDモジュールは以下の情報について送信を行います。
・ドローンID(UA ID) ・ドローンの位置と高度 ・速度 ・離陸地点の位置と高度 ・タイムスタンプ
パイロットはリモートIDを搭載していないドローンを、FAAが認めた特定の指定地域内でオペレーションすることができます。地域に根ざした組織、初等・中等教育機関、その他FAAが認めた組織がFRIAの設立を申請することができます。
・ドローンのセルフテストをし、リモートIDが機能していない場合はドローンを離陸させることはできません。
・リモートIDはオペレーターが無効にすることはできません。
・リモートIDは免許の不要な無線周波数帯(例:Wi-FiまたはBluetooth)でも送信しなければなりません。
・リモートIDドローンおよびリモートIDモジュールは、送信したIDを受信できる範囲が最大になるようメーカーが設計する必要があります。
最後に
新しいリモートIDの制度は、ドローン・エアモビリティ前提社会の実現に向けた重要な一歩となります。有人機と無人機が空を共有する未来のためには、空域の状況を明確に把握する事が重要です。また、これらの規則は、ドローンやその他の新しいエアモビリティ技術に対する社会的な信頼を積み上げていくことに役立ちます。
このリモートID制度の最も重要な意義は、行政、専門家、メーカー、そして私たち一般市民が一体となって、安全で確実なドローンの運用を実現するため、適切な規則を作り上げられることを示している点にあります。
FAAは、2019年12月31日から60日間にわたって「リモートIDに関する提案型制度メイキング(NPRM)」のパブリックコメントを実施しました。これにより、業界の専門家、一般の人々からリモートIDに関する具体的な内容について、53,000件以上のコメントが寄せられました。最終案には、それら多くのコメントが反映されることとなりました。
このように様々なステークホルダーによって実現した制度メイキングの事例は、ドローン・エアモビリティ前提社会実現に向けて、大きな一歩だと考えます。
リモートIDに関するFAAの資料(英語)は以下をご覧ください。
建設設備大手の三機工業株式会社(東京)は7月11日、グループ会社、有限会社キャド・ケンドロ(仙台市)と共同で狭小空間ドローン開発の株式会社リベラウェア(Liberaware、千葉市)のドローンとレーザースキャナを併用した既存設備の3Dモデル化するデジタル化手法を確立したと発表した。Liberawareも同日、三機工業に「IBIS2」を「導入した」と発表した。
三機工業は設備更新や模様替えなどのさいに、現場を3Dモデリングし、現状を把握してから取り組む。完成後の更新や追加工事で現状が図面通りになっていないことが多く、作業の妨げになるおそれがあるためだ。しかし天井裏などでダクトや配管が込み入っている場合に、すべての設備にはレーザーが届き切らずに十分な3Dモデルができあがらない場合がある。こうした課題を乗り越える手法の開発を進めているところ、今回、ドローンとレーザースキャナを併用してデジタル化する手法を開発した。
同社が実施した実用化検証では、IBIS2とレーザースキャナを併用した場合、従来の3Dスキャン手法と比べ、機械室などの天井の無い空間の場合、認識できた建築部材が約135%、天井の一部が解体された天井裏空間で約400%向上したという。
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丸紅株式会社(東京)は7月8日、大阪・関西万博でデモフライトを披露する計画を公表している英ヴァーティカルエアロスペース社(Vertical Aerospace Group Ltd.)開発の5人乗りAAM「VX4」について実施を「見送る」と発表した。英国で行われているVX4試験機での有人飛行試験で判断したという。
丸紅は発表の中で「現在英国で行われているVertical社製VX4試験機による有人飛行試験の進捗状況から、大阪・関西万博でのデモフライトへの対応を見送ることとなりました」と伝えた。VX4のキャビンを再現したモデル空間は予定通り万博会場に出展し、8月から搭乗体験を実施する予定という。
また丸紅が万博で飛ばすもうひとつの機体、米LIFT AIRCRAFT社(以下、「LIFT社」)製の1人乗り機「HEXA」については、デモフライトを近く再開させる方向で調整中だ。HEXAは4月26日のデモフライト中に部品が落下したためデモフライトを中断して原因究明を続けている。
その結果「モーター搭載箇所の部品について、サプライヤーが仕様と異なる素材の部品を誤って供給していたことが判明」したと説明し、「当該部品の交換およびその他重要部品の再点検を完了した上で、再発防止策として、LIFT社において部品の受領・品質管理について包括的な監査を実施し、必要な工程について改善したことを確認しました。関係機関の許可を以て、今後大阪・関西万博でテストフライトを実施し、十分に最終確認を行った後、安全を最優先として関係機関および関係各社と協議・判断し、デモフライトの再開に関しては改めてお知らせいたします」と伝えている。
丸紅は大阪・関西万博でのAAM運航事業者4グループのひとつだ。
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英ロックバンド、オアシスの再結成後初のコンサート会場となるウェールズの首都カーディフのプリンシパリティ・スタジアムで現地時間7月2日、ドローンで形作られた「OASIS」のロゴが浮かび上がった。ツアーは7月4日に始まり、11月まで世界各国をまわる。ツアー初日を翌々日に控えたドローンの演出はオアシスの公式アカウントで公開されている。
ドローンのロゴは公演開始前に上空に描かれ、オアシスの再結成ツアー開催を祝福し、喜ぶファンの気分の高揚に貢献した。
オアシスは1991年にマンチェスターで結成され、7000万枚以上のアルバムを売ったロックバンドだ。2009年に解散したが昨年2024年に再結成した。再結成後初のコンサートツアーが7月4日にはじまり、北米、南米、オーストラリア、韓国など各地をまわる。2025年は11月23日のサンパウロ公演で幕を閉じる予定だ。日本公演も10月に予定されている。チケットはいったん予定枚数の販売を完了したが、機材席の解放による追加販売が決定し、7月12日正午に抽選の受付を開始する予定だという。
音楽シーンとドローンとは、MV撮影、ライブ映像撮影、演出としての屋内ドローンショーなどの例があるなど縁があり、今後も活用の幅が広がる可能性がある。
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AAM開発の米ジョビー・アビエーションは6月30日、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイでパイロットが搭乗し、垂直離着陸の固定翼飛行を実施した。ジョビーは「2026年に最初の乗客を運ぶ」と2026年のサービス開始を目指している。ジョビーは開催中の大阪関西万博で「運航事業者」にもなっている。
ジョビーによるドバイでの飛行は、「piloted, vertical-takeoff-and-landing wingborne flights」で、パイロットが乗り、垂直離着陸をしたうえで、機体の固定翼で移動した飛行で、「eVTOL分野では初めての取り組み」としている。ジョビーはこの飛行を通じて、ドバイ地域での商用市場準備の取り組みを開始したことも明らかにした。ジョビーは直接運航、航空機販売、地域パートナーシップを商業化戦略の3本柱と位置付けていて、今回の試験飛行が「重要な一歩」と話している。
試験飛行はドバイ道路交通局、ドバイ民間航空局、UAE民間航空総局と連携して実施された。またドバイ道路交通局長官兼理事会会長のマタール・アル・タイヤー会長が立ち会った。
ジョビーは、ドバイ国際空港(DXB)、ペルシア湾の人工島であるパーム・ジュメイラ、現在建設が進められている世界第2の面積の人工のマリーナであるドバイ・マリーナ、超高層ビルブルジュハリファで知られるドバイ・ダウンタウンでの商業サービス導入を目指している。バーティポートはすでに建設が進められている。
ジョビーはDXBからパーム・ジュメイラまでをエアタクシーサービスで移動した場合、移動時間は12分で、45分かかる車での移動時間が大幅に短縮されると見込んでいる。
ジョビーがエアタクシーサービスで使う機体は電動で、パイロット1人と最大4人の乗客を乗せ、最高時速200マイル(約320km)で輸送できる設計と説明していて、ジョビーは「短時間の通勤、小旅行、地域間のシームレスな移動のために、より速く、より静かで、より便利な空の旅を提供します」と話している。
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東京株式市場グロース市場で7月2日、ACSL株がストップ安となった。午前9時29分にいったん1187円で寄り付いたがその後も売りが殺到し、再び取引の成立したない売り気配で推移した。ACSLは前日の7月1日、前CEOによる不適切取引判明を発表していて嫌気を誘ったとみられる。
ACSL株は取引き開始前から売り注文を集めていて、取引開始がはじまったしばらく値が付かないまま推移した。午前9時29分に値幅制限いっぱいいの、前日終値比300円安のストップ安となる1187円で取引が成立したが、その後も売りは止まらず、再び取引が成立しない展開が続いた。
ACSLが7月1日に発表した「お知らせ」はこちら
株式会社ACSLは7月1日、今年4月30日に退任した鷲谷聡之前代表取締役CEOが不適切な取引を行っていたとして、全容解明のため外部の弁護士と社外取締役の4人で構成する特別調査委員会を設置したと発表した。ACSLは業績に与える影響は精査中で、過年度業績への影響はないと見込んでいる。特別調査委員会7月中旬をめどに最終報告書をまとめる見込みだ。
ACSLによると前CEOによる「個人的な経済状況に関する懸念」が3月に浮上し、4月に社内調査に着手した。調査で「(前CEOが)代表取締役の立場を個人的に悪用して、2025 年3月から、一部業者との間で実態のない不適切な取引を行っていた事実が判明」したという。ACSLは全容解明、厳正な対処、再発防止策構築を目的に7月1日の取締役会で特別調査委員会設置を決議した。
ACSLは「特別調査委員会による調査に全面的に協力し、早急に調査を進めてまいります。また、特別調査委員会による調査の結果、明らかとなった事実関係等につきましても、受領次第速やかに開示いたします」とコメントしている。
ACSLの発表はこちら。