株式会社SkyDrive(東京都新宿区)は、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(東京都調布市、JAXA)と空力特性の研究を始めたと発表した。JAXAが持つ航空機用の風洞試験設備で空飛ぶクルマの搭載候補であるプロペラについて風洞試験を行った。SkyDriveは従来の社内の研究にJAXAとの研究も加味し、飛行機ともヘリコプターとも異なる「空飛ぶクルマ」の設計の改善などに生かす。プロペラ形状や回転数の最適化などに取り入れ、静音性向上、安定性向上につなげる。
空力特性は、空気中で動くモノに空気の流れが及ぼす力の特性のことをさす。空を飛ぶ航空機に限らず、風の抵抗が性能や安全性に影響する自動車、列車の車両などでも開発や設計を左右する。研究分野としては機械工学のうち特に流体力学などで扱われ、エアロダイナミズムと呼ばれる。
自動車、航空機などが受ける空気の流れとしては、抗力、横力、揚力、ローリングモーメント、ピッチングモーメント、ヨーイングモーメントが代表的で、これらを空力6分力と呼ぶことがある。このほかにも自動車の場合はワイパーが浮き上がらないかどうか、横風を受けて直進を妨げないかどうか、風切り音が大きくないか、など空気の流れが作用する要素を空力特性に含むことがある。代表的な空気抵抗係数の単位はCdで、この計測値が小さいほど、空気の流れが動きや安定性を妨げないとされることが多い。たとえば、自動車ではCd値が小さいほど空気抵抗が少なく、直進性や加速性が高く燃費がいいことが期待でき、鉄道車両では横風の影響が小さいほど脱線の危険性が小さいことが期待できる。車両や機体の安定性や直進性、制動力などに大きな影響を与える。
空気抵抗係数の計測方法は、主に車体に風を吹きかける風洞試験、数値流体シミュレーション、実機試験(航空機の場合はフライト試験)などがある。実際に空気を吹きかける風洞試験には、大掛かりな設備を必要とすることが多い。今回SkyDriveがJAXAの協力を得た背景には、JAXAが日本最大の風洞試験設備を持つ意味が大きい。なお、開発コストの削減につながる数値流体シミュレーションも技術開発に欠かせない技術になっている。
研究対象の空飛ぶクルマでは、プロペラを飛行機やヘリコプターと異なる用い方をしていて、電力活用の高効率化、飛行の安定化、静音化などの性能向上には、空飛ぶクルマ独自の検証データの解析が不可欠となる。
SkyDriveは今後、空飛ぶクルマの開発に、風洞試験と計算流体力学による解析の連携が必要と考えていて、今後は「今回の試験をさらに発展させ、機体を使った風洞試験や計算流体力学による解析、加えて飛行データの解析を合わせ、JAXAと研究開発を進めていきたいと考えています」と話している。そのうえで「空飛ぶクルマの性能、安全性を高めることを通じて、移動の自由が広がる社会の実現を目指してまいります」とコメントしている。(※【DF】SkyDriveはDRONE FUNDの投資先企業です)
■岸信夫・SkyDrive最高技術責任者のコメント
JAXA様の風洞試験施設は、航空機の開発にはなくてはならないもので、日本で開発されたほとんどの航空機が試験をしてきた施設です。今回SkyDriveがこの設備で試験をしたことによって、SkyDriveが開発する「空飛ぶクルマ」が、安全安心な信頼できる航空機へ一歩近づいたと感じています。JAXA様のご協力を得て取得したデータは、社会に求められる機体仕様実現に向けて、ローターの設計開発に役立ててまいります。今回はローター単体の試験でしたが、今後は機体全体の空力設計や解析など、協力の幅が広がることを期待しております。