ドイツのAAM(またはIAM)開発大手、ヴォロコプターは8月11日、世界遺産ヴェルサイユ宮殿の敷地内でeVTOLの試験飛行を実施した。同社は8月8日に、サン=シール=レコール飛行場に設けられたバーティポートを使った有人飛行を実施しており、11日のヴェルサイユ宮殿での飛行試験により、数日間にわたる一連のパリ地域での運用ヴァリデーションフェーズの検証活動を終えた。ヴェルサイユ宮殿は2024年パリオリンピックで馬術と近代五種の会場として使用され、日本から出場した佐藤大宗選手が近代五種で銀メダルを、総合馬術の団体で銅メダル獲得した。日本でのいわゆる「空飛ぶクルマ」の話題作りにも貢献しそうだ。
ヴォロコプターは公表文の中で「As dawn broke over Versailles(以下略、原文はこちら)」と伝えていることから、飛行させたのは現地の日の出時刻である午前6時40分ごろとみられる。宮殿内のシャトー、グラン・トリアノンと庭園を背景に飛行したという。ヴォロコプターは2024年内にパリ中心部で飛行させることを目指す。
ヴォロコプターのダーク・ホーク(Dirk Hoke)CEOは「ヴォロコプター・チームの献身的でプロフェッショナルな姿勢に感激しています。新しい場所や飛行のたびに、われわれ自身、パートナー、当局のみなさまの多大な努力が必要です。持続可能な空の移動コミュニティはまだスタートラインに立ったばかりですが、この特別な環境での今日の飛行は、われわれの夏の締めくくりにふさわしいセレモニーとなりました。すぐパリに戻ります。それが楽しみです」とメッセージを寄せた。
ヴォロコプターが完了させた運用ヴァリデーションフェーズは、理論通りに適切に運用できるかどうかを確認するための検証段階のことで、運用方法に関する公式見解が未確立の新技術などの分野で用いられる。医薬品製造、プログラミングなどでも使われる方法で、医薬品では目指す品質に合った製品を常に製造できるかどうかを証明する品質管理の方法として、医薬品製造業者に実施が義務付けられている。
ヴォロコプターは、パートナーを組むフランスの空港運営会社、Groupe ADP(ADPグループ)の協力を得てサン=シール=レコール飛行場にEvtol専用離着陸場を設置してパリ管区内での試験環境を整えていた。また欧州内での飛行に必要なEASA(欧州連合航空安全機関)の型式証明(TC)は未取得ながら、DGAC(フランス民間航空局=La Direction générale de l’Aviation civile)から支援を受けて飛行許可も取得した。これにより、大都市上空での電動飛行を広めるために必要な段階を踏むことを可能にした。
今年6月20日のパリ国際航空ショーでは、ヴォロコプターとGroipeADPは2024年のオリンピック・パラリンピックに合わせてパリでeVTOL飛行させることを目指すと抱負を表明していた。