スウェーデン航空ベンチャーJetsonは、同社が開発した1人乗り用のパーソナルeVTOL型AAM「Jetson ONE」を米カリフォルニア州で購入者に初めて納入したと公表した。引き渡しを受けたのは経験豊富な航空愛好家パーマー・ラッキー氏で、50分ほどの地上訓練を受けたのちその場で飛行に挑み、低高度での飛行を楽しんだ。同社が公開した動画にその様子が納められている。納品時にはJetson創業者兼CTOのトマシュ・パタン氏(Tomasz Patan)とCEOのステファン・デアン氏(Stephan D’haene)が開封と飛行前点検を手伝った。
Jetson ONEは機体重量が86㎏で、飛行そのものについて航空当局のライセンスの有無の制約を受けず、機体のトレーニングを受ければ引き渡しを受けられるウルトラライトクラスに当たる。同クラスのパーソナルAAMには、米LIFT Aircraft社の「HEXA」や米Pivotal社の「Helix」がある。
日本ではこのうちHEXAが2年半前の2023年3月に、大阪城公園でデモフライトを行っている。このさいAAMの普及に力を入れているGMOインターターネットグループ株式会社(東京)の熊谷正寿代表が、日本国内で日本の民間人とし初めて搭乗し、披露の様子を公開した。現在開催中の大阪・関西万博では「空飛ぶクルマ」のひとつとして飛行が披露された。
なお日本でのAAMの議論の中心は操縦士が搭乗して旅客運航する「商用運航」などが中心で、個人用AAMの導入環境に関する議論は大きな進展を見せていない。一方で米国で飛行経験を積むことはいまでも可能だ。
今回、米国で購入者に納品されたJetson ONEは、アルミとカーボンファイバーのフレームに8つのローターを備え、ジョイスティックで操作するタイプの機体で、最高速度102㎞で20分まで飛行できる性能が公表されている。主に個人利用向けの機体だが、救助訓練に参加した経験も持つ。ポーランドとスロバキアの国境にまたがるタトラ山脈では、ポーランド山岳救助隊(GOPR)と連携して緊急時を想定した訓練に2機のJetson ONEが2機用いられたことが今年7月に公表されている。ルバニ山(標高1211m)頂上など遠隔地への迅速対応ミッションを含む訓練で、目的地まで4分未満で到着するなど、現場に迅速に到着し、応急対応を実施したり、状況を把握したりする「ファーストレスポンダー」としての役割を果たす可能性を示した。
Jetson ONEは税抜きで12万8000ドルで注文を受け付けているが、2025年、2026年分の注文はすでにいっぱいになっている。
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参考:米Pivotal、パーソナルAAM発売開始