操縦者なしの乗用eVTOLを開発するテトラ・アビエーション株式会社(東京)は10月7日、個人向けに開発し、予約を受け付けている1人乗りの「MK-5」の飛行シーンの動画をYouTubeで公開した。2021年夏に米国で行った試験飛行を撮影した動画で、着陸場面までが収められている。テトラはMK-5の予約者への引き渡しについて、2022年末ごろから順次、デリバリーを進めるという。また、個人客への販売を通じ、将来の量産機に対する要求を探ることにしている。以下にテトラが同日発表したリリースを掲載する(※【DF】テトラ・アビエーションはDRONE FUND投資先企業です)
福島ロボットテストフィールドで組み立てられた新機種Mk-5が、米国で認証を取得。販売に向け試験飛行を行う様子を動画でYouTubeにて公開。
テトラ・アビエーション株式会社は2021年夏に米国にて行った試験飛行動画をYouTubeにて初公開しました。個人顧客向けeVTOLであるMK-5は2022年末ごろからご予約いただいたお客様より順次デリバリー開始予定です。個人顧客を通じて、将来の量産機における顧客ニーズをリサーチします。
テトラ・アビエーション株式会社(本社:東京都⽂京区、福島⽀社:福島ロボットテストフィールド内、代表取締役 中井佑、以下当社)は日本で開発した新機種Mk-5(読み:マークファイブ)の米国での飛行試験の様子をYouTubeにて公開しました。
当社は米国での世界最大級の航空機イベントAirVenture OSHKOSH 2021においてMk-5実機を初公開し、予約受付を始めました。その後、米国カリフォルニアにてフライトデモを行い、認証を取得しました。今後は有人機開発を続け、すでにご予約いただいたお客様に向けて2022年末ごろから順次デリバリーしていきます。
Mk-5の目標は当社が初期のマーケットとしている、米国の個人顧客への販売です。米国では当社が今回発表したカテゴリである実験航空機向けの市場があります。当社はMk-5を通じてプライベートパイロットライセンスを持ち、自己所有する航空機を用いて個々人で移動する方々に向けて新しい移動手段を提案していきます。
Mk-5はもちろん日本顧客への販売も可能です。
Mk-5の機体詳細については当社ウェブサイトをご参照ください。
テトラ・アビエーション株式会社とは、2018年に設立したいわゆる空飛ぶクルマと呼ばれる垂直離着陸航空機(eVTOL)を開発する東大発スタートアップです。
2020年2月には国際航空機開発コンペGoFlyにおいて、プラットアンドホイットニーからディスラプターアワードを受賞し、大会最終審査で唯一賞金を獲得したチームとなりました。GoFly終了後、資金調達を行いながら販売モデルの開発を行ってきました。
今後、まずは個人利用としてのeVTOLを開発・販売し、購入者からのフィードバックをもとに量産型eVTOLの開発を行い、2025年に行われる大阪万博での飛行など2拠点間移動サービスを行うための機体をリリースしていきたいと考えています。
また、当社は資本関係を前提とした共同開発に向け、事業会社の方々をはじめ出資を募っています。他にもスポンサーシップをいただきながら航空関連の教育等のセミナーも行うことが可能ですのでご相談ください。
空飛ぶクルマなどパーソナルeVTOLの開発ベンチャー、テトラ・アビエーション(東京)は9月22日、埼玉県内にある同社工場で学生向けの見学会、説明会を開催した。会場には2020年2月に米国で開催された航空機開発コンペ「GoFly」のファイナルで、世界の頂点に立った機体が置かれ、中井佑代表やメンバーが機体を前に、開発の背景や経緯、設計思想、苦労話などについて披露した。見学会には小中学生、高校生、大学生の8人が参加し、話に聞き入り、開発者に質問をしたり、実機をのぞきこんだり、写真に収めたりと好奇心を全開にしていた。
見学会は大きく、テトラのメンバーによる説明と、機体に触れ合う時間とで構成された。前半の説明の中で、中井代表が開発の背景やテトラの取り組みを概観。最初に「日本の都市部では自動車が1時間に15㎞しか進めない」「クルマに1時間乗ると、22分は信号で止まっている」など身近な例をあげながら、都市交通の問題点を指摘して参加者の問題意識を刺激した。都市化の加速は交通問題の増加も引き起こし、結果として経済的損失をもたらし、そこで生活する人々の精神的問題や、健康的問題にもつながる実情を訴え、解決すべき緊急な課題であることを説明した。
この問題には、交通の担い手である自動車メーカーなど業界各社も対策を講じており、中井代表がそのいくつかを紹介。そのうえで、それだけでは十分といえないことを説明し、「別な方法」の対応することの有効性に言及。「空中で対応できるのではないか」と空飛ぶクルマが社会に果たす役割に触れた。
また中井代表は、空飛ぶクルマなどを通じた空中の活用には、技術開発のほかに、社会で広く受け入れられ、使われるための環境が不可欠であることを説明。そのために空飛ぶクルマの活用を段階に分けて設定する方法に取り組んでいることをあげ、各段階に適した開発を進めながら社会に広める方針を示した。
さらに世界的なコンペティション「GoFly」に参加したさいの開発のプロセスや、開発期間のメンバーの過ごし方、表情なども紹介。テラスでのんびりすごしている様子がスライドで映し出されると、参加者の表情に笑みが浮かんだ。そのほか、コンテスト出場機の性能、設計思想、開発の中で苦労した点や、手間のかかる修正を乗り越えた経緯、安全確保の重要性についても触れた。現在は、2021年7月下旬から米国ウィスコンシン州オシュコシュで開催される大規模航空展示会、EAAエアベンチャー2021への参加に照準を合わせ、出品機の開発を進めていることも明らかにした。
企画をスポンサードした東京海上日動火災保険株式会社から、保険会社が取り組む、新たな価値創造についてのプレゼンテーションもあった。
説明後には「GoFly」に出場した機体と参加者との触れ合いタイム。機体を取り囲んだ参加者は、のぞき込んだり、写真を撮ったり、触れたりと好奇心を満たしていた。「バッテリーはどこに取り付けるのですか?」「翼で得られる揚力は?」「プロペラを囲むダクトの意味は?」など次々と質問も飛び出し、機体の説明や、時間の使い方、新しい発想の生み出し方などライフハックに関する質問など、参加者とスタッフが幅広い話題で対話を繰り広げた。
この日の企画について、中井代表は「参加されたみなさんが、きちんと目を合わせて話を聞いてくださったことが印象的で嬉しかったです。これが興味関心を深めたり、新しい学びにつながったりすることを期待しています。試しに学んでみるとそれがきっかけとなって、新しい知識を獲得したり、理解を深めたりすることにつながることがあります。今回もいろいろな角度から話をさせて頂きましたが、そういったお役にたてればいいと思います。また、われわれにとっても社会から見られていることを実感すると気が引き締まったり、新たな発見があったりして、学びになります。本日もそうでした。こうした機会を通じて、みなさまに空飛ぶクルマに触れて親しんで頂きたいし、そのためにこれからもこうした機会を設けていきたいと考えています」と話した。
2020年2月に米国で開催された航空機開発コンペ「GoFly」のファイナルで、世界各国の参加チームから唯一、受賞チームとなった日本の空飛ぶクルマ開発ベンチャー、テトラ・アビエーション株式会社(東京)が、高校生以上の学生向けに、空飛ぶクルマの見学会を企画した。中井佑代表やメンバーが開発経緯を説明したり、質問に直接、答えたりする。空を飛ぶうえで重要な保険について、表に出ない話も含めこの企画のスポンサー、東京海上日動が説明し、質問を受ける。定員は10人。希望者は9月17日までに申し込みを。急げ。(申し込みはこちら)
テトラ・アビエーションは2018年に創業した、空飛ぶクルマなどeVTOLの開発を手掛けるベンチャー企業。GoFlyでの受賞以降、次期機体を開発中だ。
見学会を企画したのは、テトラが新型コロナウイルスの影響で学生向けのワークショップ、インターンシップが軒並みなくなってしまったと耳にしたことがきっかけ。
テトラは「ささやかながらわたくしたちができることとして、2030年に空飛ぶクルマを活用する世代である学生さんに、空飛ぶクルマといわれるeVTOLに触れられる機会として見学イベントを開催します。当日はコンペで飛行した実機も見られます。科学技術に興味ある学生さんの質問に答えたり、進学も踏まえ興味関心に答えたりします。東京海上日動火災保険さんからも飛行機にまつわる保険についてもお話しいただきます」と話している。
当日は中井佑代表やテトラのエンジニア、学生インターンが参加。進学や就職を含めてさまざまな質問にも答える。
主催者からの情報 【イベント内容】 ・代表の中井や弊社メンバーから空飛ぶクルマの開発経緯・機材説明 ・スポンサーの東京海上日動火災保険さんから、表にはあまり出てこない航空機の保険について、 我々がどのように支えていただいているのかを解説してもらいます。技術者ではなくとも、技術を支えるお仕事は多々あることを知っていただけたら幸いです。 ・空飛ぶクルマに興味がある方 ・科学技術に興味がある方 ・ベンチャー企業に興味がある方 であれば楽しんでただける内容にしたいと考えています。 性別・国籍を問いません。 抽選で10人の方に限られますが、ご応募お待ちしております。 ■日時:2020年9月22日(月曜・祝日) 13-15時 ■場所:埼玉県戸田市(武蔵野線・埼京線 武蔵浦和駅からバスで15分) ■募集定員:10名(高校生・高専生・専門学校生・大学生限定) ※当選された方にのみ詳しい場所をお伝えします。 <注意事項> 本人のみ参加。保護者の同行は不可。 マスクの着用必須。(距離を保てる場合にはマスクを外してもらって構いません) メディア取材の写真に写る可能性があります。 現地集合現地解散、交通費は各自ご負担ください。 連絡はメールで行います。 当日学生証を確認するので持参してください。 お申し込みはこちらから。 https://sites.google.com/tetra-aviation.com/factorytour/ 締め切り:2020年9月17日 参加できる方のみに9月18日までにご連絡します。
エアモビリティによる地域内移動サービス開発を手掛けるドイツのリリウム(LILIUM、ミュンヘン)は9月8日、デュッセルドルフ空港、ケルン/ボン空港のそれぞれと、各空港がノルトライン=ヴェストファーレン州エリアの移動ネットワーク内でハブ空港化するための方法を模索する提携に合意したと発表した。リリウムは2025年までに、5人乗りeVTOLで、地域エアモビリティの確立を目指している。日本でも2023年のローンチを目指す株式会社SkyDriveが、2025年に大阪・関西万博の来場者向けサービスを視野に入れており、2025年に向けたエアモビリティの動きが活発化しそうだ。
発表は9月8日、ノルトライン=ヴェストファーレン州のヘンドリック・ヴュスト運輸大臣も立ち合い、デュッセルドルフで行われた。ノルトライン=ヴェストファーレン州はドイツで最も人口密度が高い州で、40以上の大学が集積し、4つの国際見本市の開催地を抱えることから、エアモビリティの離着陸拠点となることを目指しており、リリウムの着陸地点として理想的な場所と考えられている。
デュッセルドルフ空港、ケルン・ボン空港は、ともにノルトライン・ヴェストファーレン州の重要空港で、デュッセルドルフ空港は州最大の空港、ケルン・ボン空港は、ドイツで最も重要な商業空港だ。
ノルトライン=ヴェストファーレン州のヘンドリック・ヴュスト運輸大臣は「現在SFのように聞こえることが、すぐに現実になるかもしれません。=ヴェストファーレン州は、未来のモビリティのモデル地域です。デジタルネットワーク化されたモビリティを研究・開発するだけでなく、できるだけ早く人々に体験してもらいたいと考えています。そのために州は、多くの未来志向のプロジェクトや研究プロジェクトを支援し推進しています。ケルン/ボン空港とデュッセルドルフ空港は航空、鉄道、道路の交通接続に優れた国際交通のハブであり、エアタクシーも含めたネットワーク型モビリティの開発に理想的な出発点です」とあいさつした。
リリウムのCOO、レモ・ゲルバー博士は、「ノルトライン=ヴェストファーレンに革新的なサービスを提供できることに興奮しています。アーヘン、ビーレフェルト、ミュンスター、シーゲンなどの都市から地域最大の国際空港へ、直接、30分以内に、しかも排出ガスのない高速接続を、手頃な価格で提供します。ノルトライン=ヴェストファーレン州とその空港は、将来のこの野心的なプロジェクトを実施する上で理想的なパートナーです」と話した。
■リリウム(LILIUM) ダニエル・ウィーガンド氏、セバスチャン・ボルン氏、マティアス・マイナー氏、パトリック・ナテン氏の4人のエンジニアが2015年に共同設立した、排出ガスのない空の移動サービスを開発している航空会社。鉄道、道路より高速で価格競争力の移動を可能にする航空機「Lilium Jet」を設計、試作機を製作している。デモ機は5人乗りのeVTOLで2019年に初飛行した。環境配慮の高速移動を実現させることで、グローバル市場での需要の開拓とサービス提供を目指している。
大型物流ドローンの開発を手掛ける米Sabrewing Aircraft(セイバーウィング・エアクラフト社、カリフォルニア州)の大型eVTOL「レイガル」が、飛行の実現に向けてカウントダウンに入った。レイガルは2,500kgの貨物を積載して垂直離陸をする。飛行が実現すれば航空貨物が現在直面している課題の多くを解決し、空の物流に大きな発展をもたらすことが期待される。「レイガル」は空の物流をどう変えるのか。DRONE FUNDの投資先でもあり、セイバーウィング・エアクラフト社CEOのエド・デ・レイエス氏の寄稿を掲載する。原文は英語で、翻訳は株式会社アイ・ロボティクス取締役でセイバーウィング・エアクラフト社取締役の齋藤和紀氏が担当した。
米国の貨物ドローン企業「セイバーウィング・エアクラフト社」が
物流の諸問題を解決する
by Ed de Reyes
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とある年末の午前4時、霧に覆われるカリフォルニア州サンバーナーディーノの物流基地にMD-11貨物機が着陸した。本来はもっと早く到着するはずだったが、濃霧の影響でだいぶおくれての到着だ。ロサンゼルス近郊は一様に霧に覆われている。そのため、サンバーナーディーノの航空機の多くは離陸できていない。
地上クルーはMD-11からトラックや小型航空機に大急ぎで荷物を乗せ換えていく。クリスマス配達の大渋滞が始まる前に、できるだけ早く多くの荷物を捌かなければいけない。ロサンゼルス続く大動脈であるI-10はここ数日工事が行われており、大渋滞を巻き起こしている。迂回路であるI-15も濃霧の中ではスムーズに通れる期待はできない。
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実はこれ、世界中の物流拠点では「よくある問題」だ。しかし今、着陸したMD-11を、パイロットや天候に左右されない複数の小型航空機が待ち受けていたと仮定しよう。
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クルーは、総重量2,400キログラムになるLD-2サイズの標準コンテナ4つを、大きく開いた機首部分からスライドさせて小型機に積載すると、濃霧にもかかわらず速やかに離陸の準備を整える。小型航空機は次々と離陸し、30分後には近隣の空港に続々と到着。そこで待ち受けるクルー達は速やかに貨物を機体から下ろし、仕分けていく。そして、次の貨物が積み込みまれた小型航空機達は、今度はビバリーヒルズの集荷拠点へと向かう。
航空管制から離陸許可を得ると、航空機はヘリコプターのようにフワリと浮上する。地上クルーは2名程度、翼が折りたたまれた風変わりな機体は、近くの枝や送電線を問題にすることはなく駐車場から飛び立つ。たとえ、車両が着陸予定場所に停まっていても、障害物を認識し、地上クルーが障害物を除くまでの間、上空に浮かび待機する。そして、安全を確認したのち、着陸し、貨物を下ろし、新たな貨物を受け入れ、再び離陸許可を得て次の目的地へ飛び立つ。
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これらは小型の航空物流ドローンによるサプライチェーンのイメージだ。
航空機は濃い霧や雨という気象条件が苦手だ。また、今日では地上車両の故障ですら物流を麻痺させる原因となりえる。しかし、これらは全てドローン物流では問題ではなくなるかもしれない。たとえ荷下ろしのフォークリフトがぬかるんだ原っぱを横切れなかったとしても問題はない。地上作業員の一人が機体の機首を傾けてフックを外すだけで、貨物コンテナはウインチで安全に運び出すことができる。仕分け、積み込み、離陸というプロセスを南カリフォルニアの各空港で日に15回繰り返し、最終的に4,500kgの集荷積み荷を航空機に積み込んでサンバーナーディーノに戻る。給油は1日の終わりに1回行われるだけだ。
このようなアーバンエアモビリティは決してSFでは無い。電動化と自律航行のテクノロジーの進歩に裏付けされた、実用的なプロジェクトとして進めているのだ。例えば、エアバス社は、彼らがヴァハナと呼ぶ機体のテスト完了を公表した。ヴァハナは、都市や町の中や町の間を低空飛行することを目的とした電動垂直離着陸機(eVTOL)だ。また、グーグル社の野心家たちはコーラという機体を生み出したが、こちらも近距離や低空飛行のみを目的としている。ところで、これらの2つの航空機はどちらもまだ人が操縦することを想定している。つまり、特に悪天候の場合には飛べず、多くの貨物を運ぶことはできないのが難点だ。
仮に、人が操縦せずに貨物を移動させる方法があれば、どれほど楽になるか考えてみてほしい。乗客を乗せなければ、安全を確保するための重くてかさばる機材は要らない。パイロットが搭乗しなければ、目視用の計器や、機内防音や窓、床梁、隔壁、そしてそれらを支える部材も不要になる。場合にもよるが、航空機の重量は人が乗ることを想定するだけで25%も重くなる。
滑走路の確保ができない?ノープロブレム! カリフォルニア州カマリロにあるセイバーウィング・エアクラフト社は、無人貨物機の利点をフル活用するために設立された。最初から貨物のみを運ぶコンセプトで、ゼロから機体を設計している。そのため飛行中の「生命の危険」を考慮する必要はないし、だからこそ今まで行けなかった場所に安全に到達できるようになる。
セイバーウィングの開発中の機体の名称は「レイガル」だ。
2,500kgの貨物を積んであたかもヘリコプターのように垂直に飛び上がることができ、もし短い滑走路があれば、4,500kgもの貨物を積んで離陸することができる。これは、現在メジャーなセスナ社製408スカイクーリエが扱える以上の重量であり、より速く、より高く飛ぶことができるのだ。フォークリフトやパレットジャッキ、その他の専用機器の助けを借りずに積み下ろしができるよう貨物運用を考慮した設計も特徴だ。
レイガルは、駐機場でも砂丘でも、地面すれすれに機種を下げて開口することでコンテナ貨物やバルク貨物を素早く積み込むことができる。高浮力タイヤと4本柱のランディングギアを効率的に配置し、泥、雪、砂、湿地、深い水たまりにも着陸することができる。
レイガルは、米国連邦航空局(FAA)の規則「パート23」という、最大総重量600kg(1,320ポンド)を超えるカテゴリーに該当し、遠隔からであっても常時監視・制御と、航空管制とのコンタクトを維持することが義務付けられている。そのため、数百マイルから数千マイル離れた地上にいるオペレーターは、衛星通信を介して航空機を制御することになる。航空管制官は、あたかもコックピットに座っているパイロットと会話するのと同じように、航空機を通して地上にいるオペレーターに話しかけることができる。
また、航空管制から提供された正確な飛行計画を離陸前にコンピュータに読み込んでいるので、仮にオペレーターや航空管制官との通信が途絶えても機体が自ら帰路を確保することができる。
FAAは、航空機パイロットに対して航路上の他の航空機を目視して回避しなければならないと定めている。レイガルはこの作業をオペレーターではなく自ら行わなければならない。衝突回避(DAA:Detect and Avoid)システムとして知られるこのシステムは、衝突予防レーダー(ガーミン社製)と航空機を検知して自動で回避指令を出すカメラ・システム(アイリス・オートメーション社製)、ライダー(レーザー照射システム)を組み合わせた複合的なものだ。また、DAAシステムは、ADS-B(Automatic dependent surveillance-broadcast)と呼ばれる衛星航法システムも使用している。ADS-Bは、現在ではFAA管理空域内のあらゆる規模の航空機に搭載が義務付けてられており、空域内のすべてのフライトを追跡しているため、従来の地上レーダーよりもはるかに柔軟な航路設定を可能にする。
とはいえ、問題がすべて空中にあるわけではなく、時には地上にある事もある。例えば、駐車場に離着陸する場合、指定された場所に車両が停まっていたりすることもある。レイガルは、人工知能による着陸システムを使用して、車両、人、岩、凹凸のある路面などの障害物を上空から発見する。この人工知能による着陸システムは、船上のランディングパッドやあらゆる障害物を認識することができる。
センサーから送られた全てのデータは、インターフェース・コンピュータによって統合され、近隣を航行する他の航空機との安全な距離を保つ。その際に、コンピュータは地上に状況を報告し、オペレーターは飛行経路を変更するかどうか決定する。たとえオペレーターが何もしなくても、コンピュータは必要な処置を自ら行う。また、航空機がどこへ行こうとも、コンピュータは前方の天候を検知し、そのデータをオペレーターに提供し続ける。オペレーターは管制官とコミュニケーションをとりながら暴風雨等の障害を適宜回避することができる。
さらに、レイガルは半自律型であるため、たとえ操縦士や航空管制官との通信が途絶えても問題は少ない。あらかじめ計画された飛行ルートをたどって、途中でトラフィックを検知して回避し、離れた場所に着陸するだけだ。
レイガルの複合素材による機体は、現場で簡単に修理・交換が可能なセクションに分割して作られている。このモジュール式設計により、これまでは数週間、あるいは数ヶ月かけて航空機を着陸させて行っていた検査工程が、わずか数時間で可能になった。
レイガルは防衛や災害救助用途にも適している。地上からの火災を避けて高く高速で飛行したり、レーダーを避けて低く飛行したりすることができるため、孤立した部隊に重要な物資を運ぶことができるだろう。負傷発生後の「ゴールデンアワー」内に最大4人の負傷者と2人の衛生兵を移動式病院に急行させるのに十分な汎用性があり、負傷者の生存の可能性を大幅に高める。さらに、レイガルは独自のシステムにより仮に推進システムが損傷しても安全に着陸できるよう冗長化されている。ホバリング中にユニット全体の推力を失っても安全な地点まで滑空して着陸することができるのだ。
レイガルは、基本的にはジェットエンジンで推力を発生させるのではなく、特別に設計されたターボシャフトエンジンから電気モーターに電力を送ってローターの羽根を回転させる。これはプロペラのようなものだが、オープンローターよりも推力を出すことができる。またダクト型のカバーは、茂みや木の近くに着陸する際に地面にいる人やブレード自体を保護する目的もある。このドライブトレインは、巡航飛行では高効率を実現し、離陸・着陸時には高出力を実現することできるよう設計されている。この効率の向上により、セスナ製408スカイクーリエと比較して推定70%の二酸化炭素排出量を削減しながら、2倍の荷重で4倍の距離を運ぶことが可能になった。また、バイオ燃料を使用することで、さらに「環境に優しい」機体にすることができると考えている。
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数値で見るレイガル 翼幅:18m 全長:18m 全高:3.7m 航行スピード:180ノット 航行レンジ:1,850km(1,000海里) 最高高度:6,700m 垂直離陸時ペイロード:2,450kg 滑走路離陸時ペイロード:4,540 kg
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初代レイガルの機体は2020年3月に完成しており、この記事が掲載される頃には飛行テストが始まっているだろう。セイバーウィング・エアクラフト社は2017年からFAAと協議を続けており、新しい航空機の安全性を保証する「型式認証を開始する許可」が間もなく下りる可能性が高い。
航空機開発にとって認証はとてつもなく大きなウェートを占める。小型の自家用飛行機であっても型式認証には簡単に5000万ドルから1億ドルの費用がかかるが、(人の搭乗を前提としない)貨物用ドローンは認証にかかる費用は相対的に小さくなると考える。そして、レイガルは、他の他社のeVTOL輸送機に先行して認証プロセスを進めることができている事を申し添えておきたい。
「近い将来、世界中の子供たちへのクリスマスギフトは空から届けられるようになるでしょう!皆さん、頭上に浮いているレイガルを見ても驚かないでくださいね。」
“Originally published in English by IEEE Spectrum Magazine, June 1, 2020”(英文原文記事)
著者:エド・デ・レイエス セイバーウィング・エアクラフト社最高経営責任者 元米空軍テストパイロット
翻訳:齋藤和紀 株式会社アイ・ロボティクス取締役 セイバーウィング・エアクラフト社取締役
アーバンエアモビリティの開発、製造を手掛ける独Volocopter(本社・ブルッフザール)は8月21日、最新のエアタクシーモデル「VoloCity」の設計の全体像を発表した。VoloCityはドイツの都市航空モビリティ開発者がによる第4世代の電動垂直離着陸機(eVTOL)だ。
VoloCityは、欧州航空安全機関(EASA、SC-VTOLカテゴリの拡張仕様)が定めている安全基準を満たしたうえ、それまでのVolocopterが積み重ねてきた1000を超えるテストフライトのすべてのデータ、数百人の潜在顧客から寄せられたフィードバックを反映。18のローター、すべての重要システムの冗長性確保、低ノイズなど都心ミッションへの厳格なコミットメントなど、Volocopterの技術力、安全性に沿った、目に見える改善が施された機体となった。35 kmの飛行範囲と、110 km / hの速度で飛行する性能を備え、都市部でオンデマンドに機能するエアタクシーとして設計されている。
■開発の特徴
・EASAのSC-VTOLカテゴリ拡張仕様に従って設計
・過去のVolocopter世代の1,000を超えるテストフライトの経験を反映
・ロータービームの革新的な空力揚力設計
・プレシリーズ2Xモデルは、Urban Air Mobilityエコシステムのテストおよび開発プラットフォームとして引き続き機能
■VoloCityの主な機能
手荷物を含め2人を乗せることができるペイロード
● 空力的に成形されたロータービームと、飛行中の安定性向上、揚力増強のために新たに導入されたスタビライザーによる、飛行効率の向上
● 流動的なラインを備えた象徴的なデザインが、技術的成果とユーザーの快適さを実現
VolocopterのCEOのFlorian Reuter氏は「VoloCityは、これまでで最も強力なVolocopterです。Urban Air Mobilityの要求を満たすように厳密に設計されており、2019年7月にEASAによって確立されたSC-VTOL認定基準のすべての要件が組み込まれています。これは、過去数年間にわたる広範なテストプログラムから収集したすべての洞察の結果です。VoloCityを使用して、最初の商用ルートを開き、Urban Air Mobilityに命を吹き込みます」と話している。
Volocopterは、2011年に電動垂直離着陸機として世界で初めての有人飛行を行い航空史にその名を刻んだ。それ以来3世代の航空機を開発し、公共飛行を繰り返してきた。2017年にはドバイで、2018年にはラスベガスのCESで公開飛行を行った。 現在、オンデマンドサービスを実現するために、航空機周辺の必要なエコシステムの確立に注力している。その実現には、物理的な離着陸インフラストラクチャなどの運用環境を構築し、都市の航空交通管理システムに統合する必要がある。Volocopterは、フランクフルト国際空港(FRA)のオペレーターであるFraportのような世界的なプレーヤーと協力して、乗客と地上の手続きを最適化し、規制を関連当局と調整している。
なお同社は、総額3,500万ユーロを調達しており、投資家の中には自動車メーカーのダイムラーや半導体大手のインテルなども出資している。
VoloCityの試運転まで、Volocopterは現在の2Xプレシリーズモデルを使用して試験、改善、実証を続ける。2019年第4四半期にシンガポールで公開テスト飛行が予定されており、Volocopterはパートナーの英Skyportsとともに、最初のVoloPort Urban Air Mobilityインフラストラクチャのプロトタイプも公開する予定だ。