いわゆる空飛ぶクルマの実現に力を入れる商社大手の丸紅株式会社(東京)は3月15日、米LIFT社(LIFT AIRCRAFT INC.)の1人乗り乗りエアモビリティ、HEXA(ヘクサ)の操縦者が乗って飛行する実証実験を、大阪市の大阪城公園で実施した。都市部での空クルの有人飛行は国内で初めてだ。HEXAは公園内の決められたエリア内で、垂直に離陸し、上空で旋回し、許可されたエリアを周回して、空の移動の手軽さを関係者、報道陣などに印象付けた。同型機の飛行トレーングを受け、操縦資格を取ったGMOインターネットグループ株式会社(東京)の熊谷正寿代表も操縦士の1人として参加した。熊谷氏は飛行中に操縦席から手を振るなど空の移動の楽しさをアピールし、2025年の大阪・関西万博での商用運航を目指すエアモビリティの社会受容性向上に一役買った。
日本初のパイロット搭乗飛行は、GMOインターネットの熊谷正寿代表が飾った。LIFT社の創業者でCEOのMatthew Chasen氏も現地で見届けた。
この日の実証実験は、大阪城公園内の野球場に飛行エリアを設定して行われた。国土交通省航空局などとあらかじめ念入りに調整し、電子的な網であるジオフェンスをはって、機体の暴走を防止するなどの対策をとった。
飛行した機体、HEXAは米LIFT社が開発した1人乗りの機体で、米連邦航空局(FAA)が「ウルトラライト級」に位置づけている。飛ばすために国が定める免許証を取得する必要はなく、LIFT社の提供するトレーニングを受ければ乗れる。座学、シミュレーター体験、実技など1時間ほどのトレーニングで、ビギナーとしての操縦士証明を受けられる。FAA Part103に該当する機体で、全長4.5m、高さ2.4m。小型のプロペラ18基を備える。113㎏の積載量で飛行速度は最高で時速101㎞、飛行時間は約15分だ。
機体には飛行直前にバッテリーが取り付けられた。GMOインターネットの熊谷代表が乗り込むと、まもなくプロペラがまわり始めふわりと浮かび上がった。モーター音はするものの、エンジンの爆音はなく、見守っていた関係者や報道陣から「威圧的には聞こえない音。周囲の人を怖がらせることはないのではないか」、「大型トラックのほうがずっと耳障り」などの感想が聞かれた。機体は上空8メートルほどの高さまで上昇すると、エリア内をすいすいと移動した。
飛行中の熊谷代表は、自動車の運転席に座っているような姿勢だ。正面はガラスに覆われているものの、両サイドにドアはなく、足も外気に当たりっぱなしになる。足の置き場はあるが、スキー場のリフトに似た印象だ。操縦席には中央にタブレット、右手に操縦桿がわりの3軸ジョイスティックがあり、これらを使い分ける。機体の傾きなどの制御は自動で調整されるため、移動する方向や速度を指示すればよい。熊谷代表は飛行中、操縦席で両手を広げたり、手を振ったりと、簡単で楽しく手軽な乗り物であることをアピールした。3分ほど空中で移動、旋回したあと、無事、着陸した。
この日は無人での飛行や、LIFT社のテストパイロットによる飛行も行われた。実験としては、騒音のほか、18枚のプロペラが起こす風の影響も確認した。
この実験には、丸紅、LIFT社のほか、株式会社長大(東京)がイベント管理、学校法人ヒラタ学園(大阪府)が申請支援、損害保険ジャパン株式会社(東京)がリスクアセスメントで関わった。また大阪府、大阪市、大阪商工会議所で構成する「実証事業推進チーム大阪」も協力した。
実験の冒頭には関係者があいさつをした。
大阪商工会議所の松本敬介産業部長は「この実験は万博機運醸成と未来社会のイノベーション創出に向けて実施した。大阪が日本を代表する実験都市であることをPRしつつ、空飛ぶクルマの実現の第一歩を刻みたい」とあいさつした。
丸紅の執行役員で航空・船舶本部長の岡﨑徹氏は「この実証飛行は大阪府などの公募事業に採択を受けて実現した。パイロットが搭乗して上下、旋回など複数のパターンで実施する。国交省航空局の策定している空飛ぶクルマの試験飛行ガイドラインにのっとって申請し、承認を頂いた。飛行を通じて、空を飛ぶクルマがすでにあること、静粛性があることを発信し社会受容性向上に結び付け、空の移動をより身近にしたい。万博では空飛ぶクルマの運航事業者にも選ばれており、日本の空飛ぶクルマのフロントランナーとして活動したい。航空業界で幅広いネットワークもあり、多角的事業のノウハウももち、空飛ぶクルマのエコシステムを形成していく。『できないことはみんなでやろう』を合言葉に、手軽でグリーンな空の移動を日本で実現する」と抱負を述べた。
LIFTのMatt ChasenCEOは「われわれの提供する未来の空のフライトのヴィジョンを共有できることを光栄に思っている。われわれは長い歴史の中ではじめて、ほんの短い時間で安全に空を移動する技術を身につけることのできる空飛ぶクルマHEXAを開発した。米国ではウルトラライト級と位置付けられ、既存の操縦資格を持たずにLIFT社独自のトレーニングを受ければ飛ばせることになっている。5年の開発で2023年の後半には有償飛行体験をローンチする計画だ」と話した。
長大の事業戦略担当施行役員で事業戦略推進統括部の菊地英一氏は「もともとは瀬戸大橋のプロジェクトをたちあげるときにできた会社。インフラ整備に注力してきた歴史がある。今後空の移動のインフラ整備にも取り組みたい。飛ばす基準などで関わりたい。風や騒音の基準づくりも担い、今後の検証にいかしたい。離着陸場も重要になろう。その設計、運航にも取り組む。建設コンサルタントとして地方に貢献したい」と説明した。
実は進行役を務めた丸紅航空宇宙・防衛事業部の吉川祐一氏も、LIFT社のライセンスを取得した日本人の一人として、2月23日に大阪・梅田で開催された空の移動革命シンポジウムに登壇していた。この日は進行のほか、会場から寄せられた質問にも答えた。会場からは万博での運航としてLIFTは現時点であがっていないことに関する質問があがり、吉川氏は「現時点ではその通り。ただし今後、遊覧や近距離の2地点間移動などの事業者の募集があれば挑戦したい」とLIFT社の機体の活用に意欲を見せた。
また飛行をおえたあとGMOの熊谷氏は報道陣に囲まれる中、「機体は安定していて自動車を運転しているような感覚だった。会社としてはハッキング対応などの事業を進め、こうした技術で空飛ぶクルマの社会受容性向上に貢献したい」などと述べた。
なお、この日(3月14日)に丸紅が発表したプレスリリースは以下の通りだ。
(編集部注:原文のサイトはこちら)
丸紅は、米国LIFT AIRCRAFT社(以下、「LIFT社」)が開発・製造する一人乗り電動垂直離着陸機(以下、「eVTOL」)“HEXA”を用いて、上下飛行や旋回飛行等の複数の飛行パターンを有人にて行う実証飛行(以下、「本実証飛行」)を大阪城公園内野球場にて実施しました。屋外スペース(*1)において、パイロット(*2)が搭乗し操縦する空飛ぶクルマを飛行させるのは、日本で初めての取り組みとなります。
本実証飛行は、大阪府が公募した「令和4年度 空飛ぶクルマ都市型ビジネス創造都市推進事業補助金」(*3)、および公益社団法人2025年日本国際博覧会協会と大阪商工会議所が公募した「2025年日本国際博覧会に向けた実証実験の実施候補者」に採択されたものです。空飛ぶクルマの有用性や利便性、新たなビジネスの創出・拡大への期待を多くの人々へ発信することで、社会受容性の向上に貢献することを目的として実施し、大阪府、大阪市、および大阪商工会議所で構成する「実証事業推進チーム大阪」の支援を受け、計画された飛行パターンを全て成功させました。
丸紅は、eVTOLの日本市場への展開を目指し、日本国内における社会受容性の醸成やエコシステムの形成を図るべく、2021年度よりLIFT社と連携を深めてきました。LIFT社は、2017年に米・テキサス州で創業された1名乗りのeVTOLメーカーで、米空軍と提携し特別プログラムを実施しているほか、2023年より全米25都市で一般向け有償体験飛行の実施を予定しています。
今後、丸紅とLIFT社は、電動で気候変動対策に大きく寄与する空飛ぶクルマの実装に向けた取組を加速させ、空の移動がより安全で身近な社会を創造すると同時に、低炭素化・脱炭素化を含む気候変動対策に貢献します。
(*1)大阪城公園内野球場にて、航空局の許可を得て実施。
(*2)本実証飛行における操縦については、航空機一般の特性を理解し、航空法規や気象・運航に関する一定の知識を有していることに加え、独自の訓練・試験に合格したLIFT社発行の操縦資格を有している操縦者を採用。
(*3) 共同事業者の株式会社長大(人・夢・技術グループ)と共に採択。
GMOインターネットグループも以下の発表をしている。
(編集部注:元サイトはこちら)
GMOインターネットグループ(グループ代表:熊谷 正寿)は、2023年3月14日(火)に、大阪市の大阪城公園内野球場にて、大阪府、大阪市、大阪商工会議所で構成する「実証事業推進チーム大阪(以下、「チーム大阪」)」が支援し、丸紅株式会社(以下、丸紅)が実施する、国の許可が必要な屋外スペースにおいては日本で初めてとなる「空飛ぶクルマ」の有人実証飛行に参加しました。
実証飛行では、グループ代表の熊谷正寿が「空飛ぶクルマ」のパイロットを務め、およそ10分間、上下飛行、直進及び緩旋回飛行などを行いました。
今回の実証飛行は、公益社団法人2025年日本国際博覧会協会と大阪商工会議所が、万博開催の機運醸成と未来社会を見据えたイノベーション創出に向けて実施した、2025年大阪・関西万博の会場である夢洲における実証実験の公募で採択されたもので、チーム大阪が実施を支援しています。
【「空飛ぶクルマ」実証飛行 参画の背景】
グループ代表の熊谷は、かねてより空に大きな夢を抱き、ヘリコプターと飛行機の操縦免許を有する(※1)など、「日本で最も空に精通する経営者」を目指してまいりました。2023年1月には、アメリカ・テキサス州で、米国LIFT AIRCRAFT社製の電動垂直離着陸機(eVTOL)「HEXA」の操縦訓練プログラムを受講し、基準をクリアしたことで、日本人初となる初級・操縦士証の交付を受け、今回の搭乗に至りました。(※2)
新たなテクノロジーの開発には高度な技術力と専門知識が必要です。熊谷は、自らがパイロットとして「空飛ぶクルマ」を操縦することで知見を蓄積し、安全性を実証いたしました。
(※1)【ヘリコプター】自家用操縦士・回転翼航空機・陸上多発タービン免許
【飛行機】自家用操縦士・飛行機・陸上多発タービン免許
(※2)「HEXA」は米国航空法(FAA)におけるPART103(軽量飛行機)基準で飛行するため、米国内で飛行する場合は航空法上の免許は不要ですが、操縦にはLIFT AIRCRAFT社が提供する特定の飛行訓練プログラムを受講し、基準をクリアする必要があります。
【「空のセキュリティ」確立へ 技術で貢献】
GMOインターネットグループは、人々の生活をより良くする「空飛ぶクルマ」の普及に向けて、情報セキュリティとサイバーセキュリティ技術による「空のセキュリティ」確立に向けた取り組みを進めています。
「空飛ぶクルマ」の普及において、最大のリスクはサイバー攻撃による墜落事故です。機体を制御する通信が攻撃された場合、乗客や地域住民の命に関わる墜落事故が起きることが懸念されます。また、通信を乗っ取られた「空飛ぶクルマ」が重要な施設への攻撃に使われる可能性も指摘されています。
こうした中、GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社(代表取締役社長:青山 満 以下、GMOグローバルサイン・HD)および同社の連結企業群であるGMOグローバルサイン株式会社(代表取締役社長:中條 一郎 以下、GMOグローバルサイン)を中心として、ドローンや「空飛ぶクルマ」の通信の暗号化をはじめとする通信セキュリティ技術や電子認証技術を提供しています。
また、国内最大規模のホワイトハッカーを組織するGMOサイバーセキュリティ byイエラエ株式会社(代表取締役CEO:牧田 誠)では、「GMOサイバーセキュリティ for Drone/eVTOL」を提供し、セキュリティの専門家がデバイス、通信、クラウドの脆弱性診断を行うなど、サイバー攻撃から「空飛ぶクルマ」とその管制施設を守る取り組みを進めています。
こうした技術は「HEXA」の飛行にも活用され、GMOインターネットグループが提供する高度なセキュリティ技術が安全性の確保に役立っています。
(参考:GMOインターネットグループ セキュリティ対策サイト https://www.gmo.jp/security/)
【GMOインターネットグループ・各代表者のコメント】
■GMOインターネットグループ 代表取締役グループ代表 熊谷 正寿
私はヘリコプターや飛行機を操縦しますが、この「空飛ぶクルマ」は非常に簡単に飛ばすことができました。「空飛ぶクルマ」の一番のリスクはハッキングです。GMOインターネットグループは「空飛ぶクルマ」のセキュリティを担い、情報セキュリティとサイバーセキュリティの観点から「空飛ぶクルマ」の安全を守り、産業の発展を応援します。2025 年の大阪万博で実用化され、その後多くの方々の移動手段として、また、時間節約の手段として活用されることを願っています。
■GMOグローバルサイン 代表取締役社長 中條 一郎
GMOインターネットグループが空の安全の一端を担えるよう、電子証明書の側面から支援してまいります。
■GMOサイバーセキュリティ byイエラエ 代表取締役CEO 牧田 誠
空飛ぶクルマのセキュリティリスクは通常の自動車やIoT機器よりも大きく、人命にまで及びます。誰もが安心して利用できるセキュアな空飛ぶクルマを作るために技術力で貢献していきます。
【安心・安全な「空の移動革命」への取り組み】
GMOインターネットグループでは、空を産業の「最後のフロンティア」と捉え、経済産業省・国土交通省が運営する「空の移動革命に向けた官民協議会」に参画するなど「空の移動革命」の実現に向けて各種セキュリティ技術の開発・提供を行ってまいりました。
さらに、2021年には大阪・関西万博でのeVTOLの実用化に向けて協議会内で発足した、「大阪・関西万博×空飛ぶクルマ実装タスクフォース」にも参画し、産官学構成員とともにeVTOL活用のコンセプトや運用計画策定等の具現化を図るべく検討を進めてまいりました。
これらの取り組みを通じて、安心・安全な「空の移動革命」を実現するためのさらなるセキュリティ対策技術の開発に取り組み、次世代モビリティ産業の成長に貢献していきます。
(参考)
■GMOインターネットグループ グループ代表・熊谷正寿が「空飛ぶクルマ」のパイロットに~日本人で初めて初級・操縦士証を取得~(https://www.gmo.jp/news/article/8204/)
■GMOインターネットグループ、「大阪・関西万博×空飛ぶクルマ実装タスクフォース」へ参画~2025年開催の「大阪・関西万博」における空飛ぶクルマの運用開始に向けセキュリティ技術で貢献~(https://www.gmo.jp/news/article/7285/)
■GMOインターネットグループ、「空の移動革命に向けた官民協議会」へ参画が決定~セキュリティ技術で空の安全を守り、次世代モビリティ産業の成長に貢献します~(https://www.gmo.jp/news/article/7228/)
大阪市も実験前に以下を発表している。
(編集部注:原文のサイトはこちら)
大阪市、大阪府、大阪商工会議所で構成する「実証事業推進チーム大阪(以下、「チーム大阪」という。)」は、丸紅株式会社が大阪城公園で実施する「空飛ぶクルマ」の実証実験を支援します。
今回の実証実験は、米国のLIFT AIRCRAFT社製の一人乗り電動垂直離着陸機(eVTOL)“HEXA”を使用し、上下飛行、旋回飛行等、幾つかの飛行パターンによる、日本で初めての操縦者(パイロット)が乗り組む「空飛ぶクルマ」の飛行を、国の許可が必要な屋外で実施するもので、本実証実験を通じて、「空飛ぶクルマ」を活用したサービスの認知度を高め、社会受容性の向上に貢献するとともに、得られた調査結果を今後の事業性評価に活用します。
大阪市では、これまで国や大阪府等とも連携し、「空飛ぶクルマ」の2025年大阪・関西万博(以下、「万博」という。)での実現をめざし取組を進めてきました。万博の開幕まで2年余りという時点での、日本で初めてとなる本実証実験は、「空飛ぶクルマ」の万博での実現に向けた社会受容性の向上や万博後の大阪での社会実装に向け、非常に重要なものであり、「空飛ぶクルマ」の実現によるイノベーションの創出や大阪経済の活性化にも大きく貢献することが期待されます。
チーム大阪では、今後も先端技術を活用した実証実験の実施を支援することにより、「未来社会の実験場」をコンセプトとする万博に向けて、大阪で新たなビジネスを創出する機運を更に高め、「実証事業都市・大阪」の実現をめざします。
実証実験概要
実施日
令和5年3月14日(火曜日)、15日(水曜日)
実施場所
大阪城公園内野球場(大阪市中央区大阪城3番 大阪城公園内)
実施主体
丸紅株式会社、LIFT AIRCRAFT INC.(共同事業者:株式会社長大)
実施内容
上下飛行(有人/無人)
直進及び緩旋回飛行(有人/無人)
四角い経路飛行(有人/無人)
<大阪商工会議所画像:LIFT AIRCRAFT社製“HEXA”(写真提供:丸紅株式会社)
参考
本実証実験は、公益社団法人2025年日本国際博覧会協会及び大阪商工会議所による「万博開催の機運醸成と未来社会を見据えたイノベーション創出に向けた『夢洲における実証実験の公募』」に採択されたもので、チーム大阪として大阪市が中心となり、実証実験場所の選定に係る調整や施設管理者との調整等の支援を実施しています。
なお、本実証実験場所は、夢洲での実施に向け協議・調整していましたが、当初想定していたスケジュールに変更が生じたことなどから、大阪城公園内野球場での実施となりました。
また、本実証実験は、大阪府の「令和4年度 空飛ぶクルマ都市型ビジネス創造都市推進事業補助金」事業としても採択されています。
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自律飛行技術を備えたAIドローンを開発の米 Skydio(スカイディオ、米国カリフォルニア州)は9月20日、照明がない環境でも自律飛行する新製品「Skydio X10(エックステン)の発売を発表した。日本法人であるSkydio 合同会社(東京)も9月21日に発表した。日本国内では2023年中に予約の受け付けを始め、2024年前半の出荷する見込みだ。「X10」は産業利用を前提としていて、照明がない環境でも自律飛行が可能になる新機能「Night Sense」(ナイト・センス)や、200mを超える高さからクルマのナンバープレートを読みとれる高解像度の三眼カメラを装備する。コンピュータの処理能力や、ナビゲーションカメラの精度が前モデルより10倍向上させたという。折りたたみができ、可搬性も高めた。
Skydio 合同会社の発表文は以下の通り。製品仕様は紹介サイトに掲載してある。
(以下リリース引用)
Skydio、エンタープライズ向けの新ドローン「Skydio X10」を発売
~センサー機能とインテリジェンスを改良し、用途をさらに拡大~
自律飛行技術におけるグローバルリーダーである、米国のドローンメーカーの Skydio(スカイディオ、本社:米国カリフォルニア州、日本代表:柿島英和)は、米国時間2023年9月20 日に、エンタープライズ向けの新ドローン製品「Skydio X10」(スカイディオ・エックステン)の販売を開始したことをお知らせいたします。Skydio X10 は、最新のデータキャプチャ用カメラを搭載しているほか、これまでにない高い自律性を兼ね備えています。さらに、汎用性の高い機体となっているため、エネルギー、公共、輸送、建設、通信などさまざまな業界に活用できます。
Skydio X10 は、従来単独としての製品にはなかった、幅広い機能や特長を備えています。
Skydio X10 の機体は自律飛行技術の搭載はもちろん、ユーザーが求めるデータを柔軟に取得できるように、センサーを必要な場所やタイミングに応じて自由に機体と組み合わせることが可能です。また、Skydio X10 は、従来の主要なマニュアル操作ドローンに要求されるすべてのことをこなすことができるに加え、搭載されている自律飛行技術により、これまでドローン業界では実現が困難とされてきた規模や範囲での飛行ミッションを遂行し、今までにないインパクトをもたらすことができます。Skydio X10 単独で提供される特長と機能には、以下が含まれます:
Skydio Inc.の CEO 兼共同創業者の Adam Bry(アダム・ブライ)は、次のように述べています。
「SkydioX10は、過去3年間でお客様から学んだことや10年に亘る研究開発の技術基盤、さらにはSkydioで驚くべき才能と献身的姿勢をもったチームの努力を反映しています。Skydioとして抱く最終的な目標は、ドローンを作ることではなく、優れたドローンのプログラムを作ることです。その目標への道は、まだ始まったばかりです」
市場背景にある、重要なトレンド
SkydioX10の発表は、ドローン業界にとって非常に重要な時期と重なっています。今日においてドローンは、文明社会を支える中核産業において重要なツールとなりつつあり、現在では、偵察から包括的なインフラ点検まで多岐に渡って活用されています。さらに、人工知能が変革の時代を迎え、さまざまな作業をシームレスに行うことができるようにドローンを高知能化させています。また、特に米国においては、安全保障上の懸念から、中国製ドローンからの転換が高まっており、あらゆる業界でドローン技術のセキュリティと主権を確保できる代替案を積極的に模索しています。このような背景から、SkydioはAIと米国製造にこだわるというビジョンとコミットメントを抱き続け、SkydioX10という画期的な製品開発につながりました。SkydioX10はこのような業界の状況に対応し、高度かつ安全で、自律的なツールである未来のドローンの道を切り開き、進化し続ける現代産業の要求に応え続けていきます。
多様な活用事例
SkydioX10は、さまざまな業界であらゆる活用方法が期待されてます:
SkydioX10は、これまで比類のない精度で故障や欠陥を検出できるため、同製品に搭載されているAI機能は今後、自動点検への道をさらに切り開いていくことが期待されています。
Skydioは引き続き、自律飛行型のドローン技術の限界を押し広げ、業界全体において空中知能のインパクトをもたらすことを目指してまいります。また、あらゆる業界における現場において、ドローンを貴重なアセットとして確立できるように取り組んでいきます。 Skydio の自律飛行技術は依然として唯一無二のものとなっています。SkydioX10を採用することにより、自律飛行型の製品と重要なハードウェアとして求められる機能が始めて両立できるようになり、よりスマートで安全かつ高い能力を備えた製品を提供することができるようになりました。Skydioは今後も、あらゆるインフラの運用組織が従業員や一般人の安全を確保し、インフラを中断せずに業務のインパクトや規模を最大化できるようなソリューションを提供できるよう目指してまいります。
紹介サイト:https://www.skydio.com/blog/introducing-X10
自動制御技術を手掛けるブルーイノベーション株式会社(東京都文京区)と、レンタルスペース予約プラットフォームを運営する株式会社Rebase(東京都渋谷区)は9月12日、コワーキングスペースや貸会議室、音楽スタジオなどのレンタルスペース運営事業者向けに、清掃ロボットによる空き時間の自動清掃サービスの提供を始めた。両社が同日、発表した。対象はRebaseの予約サイト、instabaseに登録しているレンタルスペース事業者。スペース利用者が退出したタイミングでロボット掃除機が自動で清掃する。対応する清掃ロボットは現時点で2機種ある。両社は9月27日、10月6日に東京都内のレンタススペースで説明会を開き、稼働のデモンストレーションを行う予定だ。
サービスはRebaseが提供しているレンタルスペース予約プラットフォーム、instabase(インスタベース)と、ブルーイノベーションのロボット自動清掃サービス「BEP クリーン」のシステムを連携させて実現した。予約システムと清掃ロボットの各システムを連携させることで、レンタルスペースに設置した清掃ロボットがスペース利用者の退出と同時に自動で清掃を始め、次の利用者が入室するまでに終える。自動清掃を通じ、レンタルスペース運営の効率化を支援する。
レンタルスペース市場は新型コロナウィルス感染拡大をきっかけに拡大し、利用者数は3年間で約4倍以上に伸びている。用途も多様化していて、これに伴い清掃需要も高まっている。
■説明体験会
・開催日時
9/27(水) 10:30-12:00|14:00-15:30
10/6(金) 10:30-12:00|14:00-15:30
・開催場所:東京・神保町のレンタルスペース(申込後に案内)
・参加方法 :現地参加、オンライン参加から選択(要事前予約)
・申し込み :https://blue-i.co.jp/contact/instabase.html
※詳細・問い合わせ
instabaseのスペース掲載者はこちら
https://www.instabase.jp/marketplace/supporters/734
上記以外
https://www.blue-i.co.jp/contact/project/
「第2回ドローンサミット」は9月8日、五島列島の福江島(長崎県五島市)から長崎市の工業団地まで約100㎞の海上航路を固定翼のドローンで空送する実験を公開した。荷物を下ろす地点では飛来したドローンがパラシュートで荷物を切り離し、目標地に正確に届けた。ドローンはそのまま引き返し、出発地まで往復で200㎞をトラブルなく飛行した。この様子は投下地点である神ノ島工業団地(長崎市)でメディアや長崎県の馬場裕子副知事らが見守ったほか、サミット会場である出島メッセ長崎に用意されたモニターで中継され来場者が見入った。投下地点では馬場副知事がドローンで届けられた福江島の「鬼鯖鮨」を味わい、うなずきながら「ニーズはあり、支援したい」などと話した。
ドローンが出発したのはこの日の午前9時20分ごろ。海を隔てた長崎市に向け海洋の上空100mの高さを時速100㎞で飛行し、午前10時20分ごろに投下地点の上空に姿を見せた。投下目標地点に近づくと上空30mまで高度を下げて、目標地点真上で容器を切り離した。荷物は備えられたパラシュートを開いてゆっくりと降下し、目標地点に正確に着いた。
ドローンは荷物を切り離したあと旋回して出発地に引き返した。福江島から長崎市まで片道約100㎞。東京なら熱海までの距離に相当する。この日は往復で約200㎞の飛行を達成した。
スタッフがドローンに運ばれた容器に傷みがないことを確認し、中から福江で作られた「鬼鯖鮨」を取り出すと、投下地点で見守っていた長崎県の馬場副知事が試食した。馬場副知事は「おいしいです。ドローンを使うことで高付加価値の県産品を広く食べてもらえる可能性があります。今後に期待が持てます。(離島に限らず、長崎)県内にも離島や斜面地が多いので、日用品を配送できるドローンはニーズがあります。県としても(利用促進を)支援したいと思います」などと話した。
そらいいなは2022年4月に発着拠点を福江島に整備して離島への医薬品配送をスタート。その後、スーパーと協力して日用品や食品などの配送もはじめた。配送エリアは80㎞圏内だ。ただし今回は片道100㎞に及び、そらいいなで運航責任者であるHead of Operationを務める土屋浩伸氏は「われわれにとってもチャレンジングな飛行でした。実験ではうまくいっていましたが、気象条件など環境要因も関係することでもあるので、今回、無事にミッションを遂行でき、ほっとしています」と話した。
今後も対象品目の拡大や収益力向上のための配送頻度増加に取り組む。
「第2回ドローンサミット」では長崎県が主催、パーソルプロセス&テクノロジー株式会社が特別協賛した「若者ドローンアイデアコンテスト」の受賞者が発表された。予め事務局が選出した一次選出作品を会場に展示し、サミット来場者の投票によって、部門ごとにグランプリ、準グランプリ、特別賞(知事賞)が決定した。
高専・大学生・大学院生部門では、防災利用を『飛んで被災地!~道なき道で人の安心を使う』としてまとめた慶應義塾大学の宮下空唯さんが知事賞に、路面電車とAAMとを組み合わせた移動改革『路面電車×eVTOL』を発表した長崎大学大学院工学研究科の大篠泰志さんがグランプリに選ばれた。
長崎県サミットは2日間で3858人(長崎県発表)が来場した。
「第2回ドローンサミット」が9月7日、長崎県長崎市の大規模展示場、出島メッセ長崎で開幕した。共同出展を含め約85の展示ブースでは、来場者が出展者に説明を求めたり、機体を撮影したりと交流がはかられ、3つの講演会場では企業や研究危難などの講演やパネルディスカッションが繰り広げられている。初日の7日には、長崎県五島市を主な舞台としたドラマ『舞い上がれ!』をイメージしたいわゆる空飛ぶクルマに関連したトークセッションが行われ、モデルになった企業2社が登壇した。会場近隣の公園では株式会社ACSL(東京)が災害対策を想定した飛行デモンストレーションを実施した。サミットは9月8日まで行われる。
会場は初日から多くの来場者でにぎわった。長崎での開催をふまえた地域色も特徴のひとつだ。
ドラマ『舞い上がれ!』のモデルとなった空飛ぶクルマ開発の企業のひとつ、テトラ・アビエーション株式会社(東京)の実機が展示され、多くの来場者が足を止めて写真を撮影していた。五島列島で医薬品配送などを手掛ける豊田通商株式会社(愛知県名古屋市)とそらいいな株式会社(長崎県五島市)は、配送に使っている米国のドローン配送スタートアップのジップライン(Zipline、カリフォルニア州サンフランシスコ)の機体などのシステムを展示し、来場者が関係者の説明を求めていた。
一方、体験型のブースも多い。パーソルプロセス&テクノロジー株式会社(東京)、株式会社Dron é motion(ドローンエモーション)などが共同出展するブースには、株式会社ORSO(東京)が開発した屋内用小型ドローン「DRONE STAR PARTY」の操縦体験コーナーが設置されている。DRONE STAR PARTYはプログラミングモードに対応させたばかりで、来場者は操縦とともに、プログラミングの体験もできる。DRONE STAR PARTYは株式会社オーイーシー(大分県)も、同社が共同出展する大分ドローン協議会のブース内で展示している。
ブルーイノベーション株式会社のブースでは、配管内の点検など人が立ち入れない場所の点検で活躍するスイスFlyability 社の球体ガードに覆われたELIOS3の操縦体験ができる。ブースにネットを設置し、飛行ルートに仕立てたたて、よこのコースを、来場者が直感的に操作する。初日も来場者が操縦に挑戦し「初めて操作したけど思ったより難しくなかった」などと話しながら飛ばしていた。一般社団法人日本水中ドローン協会(東京)は、ブースに水槽をおき、水中ドローンの操作体験ができるようにした。
ステージでは講演会、パネルディスカッションなどが繰り広げられた。展示会場内のステージでは、開幕にあわせて長崎県の大石賢吾知事があいさつをしたあと、展示機関がそれぞれの取り組みを説明した。JUIDAの熊田知之事務局長はドローンを飛行させるための国家資格創設に尽力した経緯や、JUIDA認定スクールでも国家資格対応のスクールが増えている現状を紹介した。あわせて従来のJUIDAの独自民間資格である「無人航空機操縦技能証明証」などの需要も旺盛であることから今後も継続することや、産業活用を想定した資格を充実させていく方針を説明した。
展示会場とは別にふたつのホールが準備され、それぞれドローン関連のセッション、いわゆる空飛ぶクルマ関連のセッションが繰り広げられている。この中ではドラマ『舞い上がれ!』のモデルとなった株式会社SkyDrive(スカイドライブ、愛知県豊田市)エアモビリティ事業部事業開発チームリーダー金子岳史氏、teTra aviation(テトラ・アビエーション)株式会社の新井秀美取締役が、ドラマの裏話や今後の可能性について話した。
SkyDriveの金子氏はドラマで描かれた出資決定場面を引き合いに「われわれでも投資家に来ていただいて出資が決まった思い出があります。ドラマをそれと重ね合わせて見ていて、ドラマの中で出資が決まるかどうかドキドキしていました」と振り返った。テトラの新井氏はドラマの女性主人公の活躍と自身を重ねてみていたことを振り返りながら「ドラマの主人公も執行役員として活躍します。これからは女性もいろんな人種の方も活躍する社会です。この会場にも女性がいらっしゃいます。どの産業であるかにかかわらずキャリアを目指して役職に取り組んで頂きたいと思っています」と呼びかけた。長崎県五島市総務企画部未来創造課⾧の村井靖孝氏がモデレーターとして進行した。
慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科空飛ぶクルマラボの中本亜紀特任助教は、長崎県での空飛ぶクルマの導入メリットや課題解決の展望について実施した調査結果を報告。その後、⾧崎県企画部デジタル戦略課⾧の井手潤也氏、双日五島開発株式会社代表取締役社⾧の池田尚真氏、オリエンタルエアブリッジ株式会社防災ヘリ運航部飛行課課⾧の酒井翼氏と意見交換した。
「空飛ぶクルマ自治体連携最前線!~広域ベネフィットを見据えた実装に向けて~」では、自治体の幹部ではなく、担当セクションの担当職員が登壇し機関決定をしていない担当者の個人的な考えや“妄想”を披露する意欲的なセッションだった。経済産業省次世代空モビリティ政策室の山本健一氏がモデレーターをつとめ。三重県デジタル社会推進局デジタル事業推進課、兵庫県産業労働部新産業課新産業創造班、大分県商工観光労働部先端技術挑戦課先端技術挑戦班、四国経済産業局地域経済部製造産業・情報政策課からの登壇者が次々と見解を披露。DRONE FUND株式会社最高公共政策責任者の高橋伸太郎氏がコメントした。
屋外でのデモンストレーションも行われた。会場近隣の防災緑地では、ACSLが災害の発生を想定してドローンを飛ばした。撮影用の機体SOTENに装着した赤外線カメラで救難者を発見し、物流用のPF-2で救援物資を届けるミッションを公開した。この様子は自民党参院議員鶴保庸介氏(無人航空機普及・利用促進議員連盟幹事長)氏らが視察。視察した鶴保氏は「ドローンの普及を急ぐべきであることは改めて確認できました」と話しながら「ただ性能のいいものは、高いな」と問題意識も提示した。
サミットは8日も、展示、講演、デモンストレーションが行われる。
ロボット体感型展示会「ロボテスフェスタ2023」が9月1日、福島県南相馬市の研究開発拠点、福島ロボットテストフィールドで開幕した。前年までの実演展示会「ロボテスEXPO」を衣替えし、展示、実演、講演に加え体験が増え演奏などのパフォーマンス、キッチンカーや屋台などにぎやかさの演出を強化した。初日の開会式には相馬野馬追太鼓の演奏が披露され、中庭にはカレー、焼きそば、たこやきなどの屋台が並んだ。展示では草刈りロボット6台が実演展示された。ミートアップイベントでは堀江貴文氏がオンライン登壇した。前回から取り入れた敷地内の主だった会場をめぐるバスツアーは今回も行われた。期間は9月2日までで、2日にはVRアーティスト、せきぐちあいみさんのパフォーマンスやロボット操縦体験会が会場を盛り上げる。
ロボテスフェスタ2023は、公益財団法人福島イノベーション・コースト構想推進機構、南相馬市の共催イベントで、一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)、日本人無人機運行管理コンソーシアム(JUTM)、一般財団法人宇宙システム開発利用推進機構、準天頂衛星システムサービス株式会社、高精度衛星測位サービス利用促進協議会が後援している。公式サイトはこちら。
9月1日に行われた開会式では会場である福島ロボットテストフィールドの鈴木真二所長(JUIDA理事長)がオンラインであいさつに登壇し「試乗体験などロボットに触れ合えるコンテンツを用意しているので日本の未来を感じて頂けたらと思っています」と期待を寄せた。開会式には相馬野馬追太鼓の演奏が披露されたほか、2025年開催予定の日本国際博覧会(大阪・関西万博)の公式キャラクターミャクミャクも応援にかけつけた。
敷地内のデモ会場をピックアップしてめぐるバスツアーは、2日間に12コース設定。初日の午前10時にスタートするツアーでは、3m×3mの吹き出し口を持つ風洞棟で、ドローンの性能を飛行させずに計測、解析することがきるciRobotics株式会社 (大分県)が開発した分析マシン「ドローンアナライザー」の実演を、担当者の解説をまじえて見学した。バスツアーの参加者からは、計測可能なドローンの機体の種類などについて質問が出た。
ドローンが飛ばせる高さ15メートルにネットをはった「緩衝ネット付飛行場」では株式会社ロボデックス(横浜市)が、水素燃料電池専用ドローン「Aigis One(アイギス・ワン)」を飛ばす前に行う飛行準備の様子を貝應大介代表取締役社長が機体を見せながら解説した。参加者は燃料タンクのバルブの開閉など水素燃料電池特有の作業に関心を寄せた。
「滑走路附属格納庫」では東北大学タフ・サイバーフィジカルAI研究センターが、マルチコプターに垂直着陸させずに、格納できるEAGLE Portの仕組みを解説した。垂直着陸は着陸直前に機体が不安定になるデメリットがあるため、水平飛行の姿勢を保ったままの姿勢で格納あせることを提案したポート。機体を受け止めるポートの開口部にドローンがたどりつけば、ドローンをつりさげて回収できる。また、連続して格納できるため、複数機を着陸させる空中で順番待ちの待機時間が生じにくいという。
バスツアーでは次のデモへの移動のさいに、テストフィールドの設備が窓越しに見られるコースをたどり、参加者からは「住宅地で災害の実証ができそう」などと構想を語り合う様子が見られた。
展示会場では、株式会社人機一体(滋賀県草津市)が、腕や指を持つ作業ロボットが操縦者の動きの通りに動いて遠隔作業をこなす「零式人機(れいしきじんき)」シリーズ(今回は「零式人機ver.1.2」)の実演が見学者の山をつくったほか、8月9日に連続50㎞の航続飛行を果たした株式会社石川エナジーリサーチ(群馬県太田市)のハイブリッド式ヘキサコプター型ドローン「ハイブリッドフライヤー」の試作機を展示し、来場者がの足を止めていた。
Zip Infrastructure株式会社(神奈川県秦野市)は、次世代交通システム、電動自走型ロープウェイ「Zippar」を映像で紹介(映像はこちら)していて、斬新なビジュアルで多くの来場者が映像に見入って担当者に話を聞いていた。釣り下がったゴンドラ式の乗り物で、ロープとレールをタイヤで自走する。既存技術を組み合わせたプロジェクトで、現在、福島ロボットテストフィールドでも実験運航させるための準備を進めている。
このほかJUIDA、JUTM、インターステラテクノロジズ株式会社(北海道広尾郡大樹町)、会津大学、株式会社スペースエンターテインメントラボラトリー(川崎市)、JapanDrone運営事務局、日鉄テックスエンジ株式会社(東京)、テトラ・アビエーション株式会社(東京)など多くの企業、研究機関、団体がブースで参加者の問い合わせなどに応じた。
屋外ではスウェーデンの造園機器メーカー、Husqvarna(ハスクバーナ)社のロボット芝刈り機Automowe(オートモア)シリーズをはじめ、株式会社アテックス(愛媛県松山市)のハイブリッドラジコン草刈り機、株式会社オーレック(福岡県八女郡広川町)のラジコン型斜面狩り用自走式草刈り機など、6社の芝刈り・草刈りロボットが実演された。ハクスバーナ機はいわゆる清掃ロボットのように、芝が張られた庭などを、あらかじめ決められた範囲で芝の伸びた部分を切り落とす芝刈り機で、「本体価格14万8500円の割安モデルであるAspireR4が発売されてから引き合いが増えています。これから庭の手入れの自動化が進むのではないかと思っています」と話した。
この日は、マッチングイベントとして「南相馬市ベンチャー×地域産業ミートアップ2023」が開催され、堀江貴文氏がインターステラテクノロジズ株式会社のファウンダーとしてオンライン登壇。ロケット開発について「ありとあらゆる高度な技術が必要となる総合格闘技と形容。日本国内での開発について「主要部品の調達が日本国内で完結するんです。これは安全保障上の観点から海外製部品を使わずに完結できるというのは大きなアドバンテージ」と述べた。
9月2日のロボテスフェスタ20232日目は、サイバー空間にアートを生み出すパフォーマンスで知られるVRアーティスト、せきぐちあいみさんのパフォーマンスが彩を添え、ヘラクレスカブトムシ型のロボット「ヘラクレスA-1」の試乗体験や、ロボットの操縦会が来場者お好奇心を刺激することになっている。
政府主導でドローンや空飛ぶクルマの社会受容性向上を目指す「第2回ドローンサミット」が9月7、8日、JR長崎駅西口直結の大型展示会場、出島メッセ長崎で開かれる。併催イベントとあわせ80の出展ブースが並び、講演、シンポジウム、デモンストレーションが行われる計画だ。9月8日には、五島市で島々の物流に使われているドローンが長崎市内に荷物を運ぶデモンストレーションを予定している。入場は無料で、現在公式サイトで入場申し込みを受け付けている。
第2回ドローンサミットは経済産業省、国土交通省、長崎県が主催する催事で、昨年(2022年)9月、内閣官房が主導し神戸市で開かれた第1回ドローンサミットに続く開催だ。会場の出島メッセ長崎は2021年のオープン時にこけらおとしイベントの一環としてドローンの体験会を開催するなどドローンと接点を持つ会場として知られる。
今回の開催は「ながさきデジタルDEJI-MA産業メッセ2023」、「ながさき半導体産学コネクト」が併催される。大分県ドローン協議会、京セラ株式会社、一般社団法人日本UAS産業振興協議会、豊田通商株式会社とそらいいな株式会社、株式会社シーエーシーがゴールドスポンサーとして開催を支えるほか、ヤマハ発動機株式会社、ブルーイノベーション株式会社など10機関がシルバースポンサーとして名を連ねる。
併催展を含め80のブースが準備される予定で、大分県ドローン協議会のブースには、協議会を構成する株式会社オーイーシー、ciRobotics株式会社、株式会社ノーベル、柳井電機工業株式会社、おおいたドローンプラットフォームXROSS、大分県がそれぞれの成果を展示する。テトラ・アビエーション株式会社が空飛ぶクルマの実寸モデルを展示するほか、そらいいなと豊田通商が五島列島で運用している医療用医薬品配送サービスに活用している米ジップライン社の機体を展示する。
そらいいなは2日目の9月8日、五島市の発着拠点から長崎市内まで海上航路を約100km飛行し、品物を届けるデモンストレーションも実施する予定だ。株式会社ACSLによるSOTENのデモフライトや、自律型洋上中継機の無人会場航走も計画されている。
ステージ関連では、九州各県がドローンの取り組みを披露するパネルディスカッション「九州・沖縄自治体最前線」や、空飛ぶクルマ開発のテトラ・アビエーション、株式会社SkyDriveの担当者が登壇するシンポジウム「空飛ぶクルマへのチャレンジ~如何にして“舞い上がる”か~」を、五島市の担当者がモデレーターを務め2022年度のNHKのドラマ『舞い上がれ』を連想させる仕立てが話題を呼びそうだ。ほかにもエアロネクスト、そらいいな、日本郵便株式会社と空の物流に取り組む事業者が登壇するセッション、長崎県の空クルにテーマをしぼったセッション、九州以外の自治体が登壇し社会課題解決を語るセッションなども展開される。
小学生から大学院生までを3部門に分け、牛肉など長崎県の特産品の獲得を目指すアイディアコンテストは2日目の9月8日に表彰式が行われる。
■ながさきデジタルDEJI-MA産業メッセ2023/第2回ドローンサミット/ながさき半導体産学コネクト(参加登録はこちら)
https://www.pref.nagasaki.jp/bunrui/shigoto-sangyo/johoka-it/digital-dejima/
■「第2回ドローンサミット」
https://www.pref.nagasaki.jp/object/event-koza/event/624389.html
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