産業ガス大手、エア・ウォーター株式会社(大阪市)は、グループ会社でドローン関連サービスを展開する事業を展開するセブントゥーファイブ株式会社(東京都新宿区)が、狭小空間の点検用小型ドローンと物流や防災向けの多用途産業用ドローン「AIR HOPE」の2種の新型国産ドローンを開発したと発表した。セブントゥーファイブは6月21日に千葉市・幕張メッセで開幕したJapanDrone2022に展示場を設けていて、新型機をここで初公開した。小型ドローンは給電ケーブルにつないで飛ばせるうえ、バッテリーの搭載も可能で、ケーブルを飛ばす飛行も可対な二刀流だ。産業用「AIR HOPE」は有事の防災対応機能を充実させながら、平時での活用ができる。発売は今秋を予定している。
セブントゥーファイブの新開発機はJapanDrone2022での展示が初公開となる。
セブントゥーファイブはエア・ウォーターのグループ会社で、産業ガス向けのプラントをはじめとするインフラ点検で国内外のドローンを運用している。このほか物流、防災関連の実証実験でも実績を重ね、機体、システムの製造・販売、サービス、運用支援を展開している。
今回の開発は、同社がこれまでドローンを運用してきた経験をもとに、使いやすく利便性を実感できるように開発した。石井克幸代表取締役社長は「機体を購入されたユーザーにとっては、購入した後に役に立つかどうかが決まります。ドローンを販売したりサービスを提供する事業者は、利用者がドローンを導入したあとに利便性を実感して頂けているかどうかに目配りをすることが大切であると感じています。われわれは機体を販売したあとも、ユーザーにとって本当の意味で利便性を感じていただけるよう、総合的にサポートをしてまいりたいと思っています」と話している。
発表は以下の通り
当社グループでドローン関連サービスを展開するセブントゥーファイブ株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役社長:石井 克幸、以下「セブントゥーファイブ」)は、狭小空間の点検業務に活用できる小型ドローンと物流や防災など多様な用途に活用できる産業用ドローン「AIR HOPE」の2種の新型国産ドローンを開発し、今秋より販売を開始しますので、お知らせいたします。
なお、セブントゥーファイブは2022年6月21日~23日に開催される「Japan Drone 2022」に出展し、2種の実機を初めて公開します。ドローンを活用したインフラ点検や物流、防災関連の実証実験の実績を活かし、機体・システムの製造・販売からサービス、運用支援までをワンストップで行う総合的なドローンソリューション事業を展開していきます。
記
1.狭小空間点検用小型ドローン
これまで数多くの現場でドローンによる工場やインフラ点検を行ってきたセブントゥーファイブの経験と知見をもとに開発。当社グループ各社の様々なプラントにて煙突やダクト、ボイラなどの施設内点検を行ってきた実績を活かし、実際に点検現場で操縦したパイロットの目線から形状やスペックなどを検討しました。直径38cmに満たない本機体は、狭い空間に入り込み様々な点検業務を支援します。給電ケーブルにより電力を送り続けることで長時間飛行を実現し、点検作業をスムーズに行うことが可能です(給電ケーブルが無い「バッテリーモデル」もございます)。
一般的に、小型ドローンは大型ドローンに比べてペイロード(最大積載量)が小さいため、給電ケーブルを積載することは困難とされてきました。セブントゥーファイブでは、モーターやケーブル仕様などを最適化することで、国産ドローンとして初めて有線給電対応の小型ドローンを実現しました。
<機体性能>
外形寸法 | 374×374×195(mm) | |
飛行姿勢 | 374×374×195(mm) | |
重量 | 有線給電モデル | 1,560g |
バッテリーモデル | 1,870g | |
最大飛行時間 | 有線給電モデル | 検証中 |
バッテリーモデル | 約8分 | |
最高到達高度 | 有線給電モデル | 30m |
バッテリーモデル | 100m |
2.産業用ドローン「AIR HOPE」
特定用途に限らず複数の用途に活用できる汎用性の高い機体として開発。機体下部にカメラや搬送用ボックスを付け替えることが可能で、活用の柔軟性に優れていることが特徴です。取り付けるカメラは市販されている一眼レフカメラ等でも対応可能なため、別途、専用のカメラを用意する必要がありません。防災対策や物流分野など、それぞれの用途ごとにパッケージ化することも可能で、ドローンを現場に導入しやすい体制を整えています。また、本機体は独自の品質保証の考え方に基づき、十分な耐久テストを行って開発されており、国内製造のドローンとして、安心してご利用いただけます。
<機体性能>
外形寸法 | 930×930×680(mm) |
飛行姿勢 | 930×1280×200(mm) |
最大離陸重量 | 16.6kg(バッテリー、ジンバル、カメラ搭載時の重量:約15kg) |
最大飛行時間 | 45分 (離陸重量11.6kg、 90%放電時) |
最大飛行速度 | 65km/h |
外形寸法 374×374×195(mm) 飛行姿勢 374×374×195(mm) 重量 有線給電モデル 1,560g バッテリーモデル 1,870g 最大飛行時間 有線給電モデル 検証中 バッテリーモデル 約8分 最高到達高度 有線給電モデル 30m バッテリーモデル 100m
重工大手の株式会社IHI(東京都江東区)は、4月1日に発電プラント設備点検サービスを開始すると発表した。設備点検サービスには、株式会社Liberaware (リベラウェア、千葉市)が開発した小型ドローン「IBIS」などを活用する。IHIが公表し、LiberawareもIHIが発表したことをHPで報告した。点検に伴うプラントの運転停止期間の短縮と補修箇所の早期発見を実現する。
IHIの点検サービスは、LiberawareのIBISをはじめとする小型ドローンを使う。発電プラント設備内の狭く入り組んだ箇所を無人で点検する。ドローンに搭載したカメラで内部を撮影し、設備の外に待機している設計者や設備の専門家が撮影した映像を確認できる。
IHIはこのサービスが、①複数個所の効率的な点検で検査期間を短縮化できる②プラントが緊急停止した時に損傷部位を短時間で発見し早期の再稼働ができる③点検の無人化で作業の安全性を向上できるーなどの効果をもたらすと説明。その結果、維持費の圧縮が実現できる。
IHIはこれまで約2年間、複数の発電プラント設備内部で粉塵が舞い視界不良な環境下でドローン飛行試験を実施し、点検手段としての有効性の検証を進めてきた。その結果、ボイラ、ダクト、脱塵設備、脱硫設備などの設備で損傷部位を的確に発見することが可能で、復旧工事期間の短縮にもつながり、目視点検の代替手段として適用可能と判断。サービスの提供を始めることにした。
IHIは各種発電プラントの建設や、維持管理で豊富な実績、経験、知見を持つ。設備の保守サービス、IoTによる運転支援など、設備ライフサイクル事業を通じ、環境への負荷の低減とエネルギーの安定供給の両立に取り組んでいる。「今後もお客さま価値の最大化のための、新技術を駆使したライフサイクル全体の包括的なサービス提供、発電所の安定運転・高稼働率での運転に寄与することで,カーボンニュートラル社会の実現に向けて貢献していきます」と話している。