JapanDrone2023では事業者や研究者が取り組みや研究の成果をポスターにまとめて張り出して紹介する「JUIDAテクニカルジャーナルポスターセッション」が目を引いた。執筆者自身が研究成果を説明する時間もあり、専門性の高い研究者や高い関心を持つ事業者などが訪れ聞き入った。2日目の6月27日には展示の中から審査員が選ぶ表彰が行われ、最高賞の「JUIDA理事長賞」には、「壁面吸着ドローンの開発と活用方法の提案」を発表した菱田技研工業株式会社(大阪府堺市)が選ばれた。このほかの各賞も発表された。
ポスターセッションは大学などの研究機関や産業界、一般応募に20点が展示された。一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)の技術論文集「Technical Journal of Advanced Mobility」の編集責任者などが審査し、3点の「ベストポスター賞」と最高賞となる「JUIDA理事長賞」を選出し表彰した。
ベストポスター賞には、「Global Drone Regulations and Research Survey with the Examination of its Application」を発表した国立研究開発法人建築研究所(茨城県つくば市)「鏡像配置XY 分離クランク機構を用いた極低振動ガソリンエンジンの開発」を発表したZメカニズム技研株式会社(山形県米沢市)、「日本国内の無人航空機事故(2015-2021)の要因分析とCRMスキルによる予防策の検討~ヒューマンエラーによる事故の防止に向けて~」を発表した株式会社 Five Star Group(東京)がぞれぞれ選ばれ表彰を受けた。
また「Japan Drone & AAM Awards 2023」では、ハードウェア部門の最優秀賞には、新製品超小型ドローンIBIS2をJapanDroneにあわせて発表した株式会社Liberaware、ソフトウェア・アプリケーション部門の最優秀賞には、先端空間情報技術評価支援センター×千葉大環境リモートセンシング研究センター×御殿場市、審査員特別賞にはGMOインターネットグループ株式会社、オーディエンスアワードの最優秀賞には東洋製罐株式会社が選ばれた。
さらに「Drone Movie Contest 2023」では、グランプリにLOVE.PHANTOM宮川和之氏の「湿原の見る夢-cradle of life-」、審査員特別賞(佐々木賞)に佐野章太氏の「アイラブ 日本」、審査員特別賞(ドローンエモーション賞)にPast Keeper氏の「あなたの風景」が選ばれた。このほか吉田琴耶氏の「なぜ登山をするのか」、平野はじめ氏の「自然が作りだす美の形」、宮川隆氏の「石狩白老滝」が最終選考に残った。
6月26日に開幕したJapanDrone2023 が盛況だ。開会式には関係各省の担当者らが顔をそろえ、会場には視察陣が続々と訪れ、試乗できる機体を展示しているブースには行列ができた、遠隔地とのリアルタイムの中継をみせたり、操縦体験ができたり来場者の好奇心を満たす工夫も随所にみられる。JapanDroneは6月28日まで、千葉・幕張メッセで開催される。
展示ブースを構えたのは国内200団体、海外39団体の239団体。幕張メッセ第5、第6の2ホールに色とりどりの個性豊かなブースが並び、目的を持つ来場者も初心者もそれぞれの関心に合わせて会場内をまわり、足を止め、展示に見入り、担当者と交流をしている。
初日の開会式には関係各省らが顔をそろえた。主催者である一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)の鈴木真二理事長は出展数を紹介したうえで「過去最大規模の出展となっており、新たなビジネスチャンスを築く場になればうれしい」とあいさつした。来賓として登壇した田中和徳元復興相(ドローン議連会長代理)は「課題解決と付加価値創造のできる夢のある技術。毎回、利活用の進歩に驚嘆していて、これからより多くの人々が利便性を享受できるよう期待したい。その環境整備については政治の面からしっかりサポートする」とあいさつした。
このほか、経産省製造産業局審議官・恒藤晃氏、国交省航空局安全部長・平井一彦氏、国交省総合政策局技術政策課長・川村竜児氏、復興庁原子力災害復興班企画官・黒田俊久氏、農林水産省農林水産技術会議事務局研究総務官・山田広明氏らがあいさつし、テープカットに臨んだ。
多くの時間帯で行列を作っているのはインターネット関連会社GMOインターネットグループ(東京)だ。同社のブースには3月に同社の熊谷正寿代表が大阪城公園(大阪市)で搭乗して飛行した米LIFT社(LIFT Aircraft INC.)製の1人乗り機体「HEXA」の実機が展示され、来場者は乗り込んで写真を撮ることができる。ブースには「HEXA」の操縦トレーニングに使われるVRマシンも置いてありこちらも体験可能だ。初日の26日にはLIFT社のマット・チェイスン(Matt Chasen)CEOがブース内のステージに登壇した。
見所豊富なこのブースには視察も多い。初日の26日には鈴木英敬内閣府大臣政務官(前三重県知事)、27日には猪口邦子元少子化・男女共同参画担当大臣が訪れ、機体をのぞきこんだり、LIFT社のチェイスンCEO、機体のセキュリティーを担うGMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社(東京)の浅野昌和CTO室室長、GMOサイバーセキュリティ byイエラエ株式会社(東京)代表取締役の牧田誠CEOらと話し込んだりしていた。
GMOブースはこのほかドローンのハッキングを実演し、セキュリティの重要性を伝えるデモンストレーションも行っており人の波が絶えない。
各ブースもデモンストレーション、研究成果報告、新製品の発表など来場者の好奇心を満たす工夫を凝らし個性を競演している。
KDDIスマートドローン株式会社(東京)は、JapanDroneの会場である千葉市・幕張メッセのブースと、千葉県君津市にある同社が運営するドローンスクールが入居する廃校を利用した地域再生拠店「コードベースキミツ」をつなぎ、コードベースキミツに設置しているドローンを、幕張メッセから操縦し、その様子を幕張に設置したディスプレイで確認するデモンストレーションを実施している。
東洋製罐株式会社(東京)はスプレー缶をドローンに搭載して、塗装、防錆、鳥よけなどのソリューションを提案している。同社のブースではドローンメーカーDJIの最新産業用機、Matrice350RTKにスプレー缶を搭載したデモ機を用意し、来場者がまとに水を噴射する体験ができる。株式会社ジャパン・インフラ・ウェイマークは次世代アバターロボット開発のugo(ユーゴー)株式会社(東京)の開発した身長180㎝のアバターロボットugoとドローンを連携させたインフラ点検ソリューション「ugo +drone」を実演している。
株式会社Liberaware(千葉市)は軒下、天井裏、水道管など狭小空間の点検に活用できるドローンIBISの機能を刷新した「IBIS2(アイビスツー)」を発表、26日にリリースした。20cm、243gの軽量小型機体で直径50cm の配管内の飛行ができる。JapanDroneのブースで実機の飛行をデモンストレーションしている。
このほかJUIDAが発行している技術論文集などの研究成果をポスターにまとめて公開するポスターセッションも、会場の中央に配置。日替わりで筆者が論文の内容を発表し、来場者が聞き入っている。
公開されている技術の活用でドローンを活用したソリューションの高度化を目指すコミュニティー、DOP Project(ドッププロジェクト)もブースを構え、連日多くの来場者が足を止めている、
JapanDrone2023は28日まで開かれている。
凸版印刷株式会社(東京都文京区)は、ドローン活用した屋内点検サービスを展開する株式会社Liberaware(千葉県千葉市)と2021年8月に資本業務提携契約を締結したと発表した。屋内でのドローン活用型ソリューションを開発し、2023年度までの事業化を目指すという。
Liberawareの屋内型ドローンを利用したソリューションの共同研究や共同開発を進め、凸版印刷のセンサー、空間計測技術、サービスオペレーションノウハウなどを生かした新事業の創出を目指す。
Liberawareは、屋内の施設点検や自動巡回などに強みを持つ。凸版印刷も部材供給や災害対応などでドローンを活用した実証実験やサービス開発に取り組んでいる。提携により、ますます高まる省人化、省力化需要に対応する。
具体的にはLiberawareの屋内向けドローンIBISを、凸版印刷が実験として手掛けている屋内空間データのアーカイブやリッチ化など設備保守、データ活用の生かすための研究を進め、サービスを開発する。また、凸版印刷の高セキュリテイ環境下でのデータ管理ノウハウを、Liberawareのサービスと連携させて、屋内点検のオペレーション構築を目指す。2023年度までにドローン分野における事業創出を目指すという。
凸版印刷は、新事業、新市場の創出を中期的な経営課題に掲げ、2016年7月から現在までに国内外50社強のベンチャー企業に出資している。
※【DF】LiberawareはDRONE FUNDの投資先企業です
株式会社Liberaware(千葉市)は同社の狭小空間専用ドローンIBISが撮影した動画から3D点群データを生成する事業について、事例紹介動画を制作、公開した。
Liberawareは狭小空間専用小型ドローンIBISが撮影した動画をもとに3D点群データを生成する画像処理技術(SfM:Structure from Motion)に力を入れている。特に建物や構造物の天井裏、地下ピット、工場のボイラ内部など、これまでレーザースキャナを持ち込めずに点群化を諦めてきた場所で力を発揮する。その様子を動画で公開した。
IBISで設備内を動画撮影し、点群化できることがわかる。3D点群化で経年変化も確認しやすくなり、将来予測の精度向上につながる期待も高まるという。(※【DF】LiberawareはDRONE FUNDの投資先企業です)
重工大手の株式会社IHI(東京都江東区)は、4月1日に発電プラント設備点検サービスを開始すると発表した。設備点検サービスには、株式会社Liberaware (リベラウェア、千葉市)が開発した小型ドローン「IBIS」などを活用する。IHIが公表し、LiberawareもIHIが発表したことをHPで報告した。点検に伴うプラントの運転停止期間の短縮と補修箇所の早期発見を実現する。
IHIの点検サービスは、LiberawareのIBISをはじめとする小型ドローンを使う。発電プラント設備内の狭く入り組んだ箇所を無人で点検する。ドローンに搭載したカメラで内部を撮影し、設備の外に待機している設計者や設備の専門家が撮影した映像を確認できる。
IHIはこのサービスが、①複数個所の効率的な点検で検査期間を短縮化できる②プラントが緊急停止した時に損傷部位を短時間で発見し早期の再稼働ができる③点検の無人化で作業の安全性を向上できるーなどの効果をもたらすと説明。その結果、維持費の圧縮が実現できる。
IHIはこれまで約2年間、複数の発電プラント設備内部で粉塵が舞い視界不良な環境下でドローン飛行試験を実施し、点検手段としての有効性の検証を進めてきた。その結果、ボイラ、ダクト、脱塵設備、脱硫設備などの設備で損傷部位を的確に発見することが可能で、復旧工事期間の短縮にもつながり、目視点検の代替手段として適用可能と判断。サービスの提供を始めることにした。
IHIは各種発電プラントの建設や、維持管理で豊富な実績、経験、知見を持つ。設備の保守サービス、IoTによる運転支援など、設備ライフサイクル事業を通じ、環境への負荷の低減とエネルギーの安定供給の両立に取り組んでいる。「今後もお客さま価値の最大化のための、新技術を駆使したライフサイクル全体の包括的なサービス提供、発電所の安定運転・高稼働率での運転に寄与することで,カーボンニュートラル社会の実現に向けて貢献していきます」と話している。
小型ドローン開発の株式会社Liberaware(リベラウェア、千葉市)が新型IBISのデモフライト動画を公開した。充電設備を備えるステーションのゲートが開してIBISが離陸してから作業を終えて戻るまでの様子が確認できる。
新型IBISは屋内での自律飛行が特徴。リベラウェアは2021年1月に大型展示会場「東京ビッグサイト」で開催された展示会「第5回ロボデックス」に出展したブースで、自動巡回型IBISが自動巡回をする様子を披露した。今回はそのときの様子を動画にまとめ公開した。
デモではブースに設けられた高さ2メートルの小さいデモフライトエリア内で、ステーション(自動充電装置)から出発し、必要な情報を収集して帰還する様子が披露された。動画でも①管制モニタから巡回開始指令②ステーションオープン③ドローン自動離陸④メーター撮影、自動巡回⑤折り返し地点到着後、自動帰還⑥ドローン自動着陸⑦ステーションクローズ、自動充電開始―の一連の流れが確認できる。
同社は「遠隔での自動警備や、計器メーター確認業務等での活用を想定している。