海外勢のシェアが高いドローンについて、国産化の議論が再び活発化するかもしれない。防衛省は11月18日の衆院安全保障委員会で、自衛隊が保有するドローンの国産化率が9月末時点で約3割だと明らかにした。日本維新の会の阿部司氏の質問に答えた。小泉進次郎防衛相は「日本が自前で国産ドローンをどこまで強化できるかは大事なところでしっかり防衛省としても取り組む」などと述べた。国産とは何か、国内で確立すべき技術は何か。
ドローンの国産化率として示された「3割」という数字は、大量のドローンを戦場に投入しているウクライナとは大きな開きがある。ウクライナのデニス・シュミハル首相はほぼ1年前の2024年12月、地元メディアのインタビューに対し「ドローン分野では国内生産が96%以上を占める」と述べている。
「3割」の数字が飛び出したのは、衆院安全保障委員会での政府答弁だった。質問した日本維新の会の阿部司氏は、防衛装備品として使用するドローンが他国の技術に過度に依存すれば、有事での継続的な運用やサイバーセキュリティーの上で大きなリスクを抱えることを指摘した。これに対し小泉進次郎防衛相が「日本が自前で国産ドローンをどこまで強化できるかは大事なところだ。しっかり防衛省としても取り組んでいく」と応じた。
防衛省は実際、ドローンを防衛力強化の柱のひとつとして位置付けていて、無人航空機(UAV)、無人水上艇(USV)、無人潜水艇(UUV)、無人地上車両(UGV)など「無人アセット防衛能力」に予算を重点配分する方針を掲げている。
一方委員会では「国産」の意味や定義には言及していない。
一般に工業製品については、産地を表示する食品などとは異なり「国産」に明確なルールがない。衣類などで、生地が外国製で縫製が日本国内の場合に「日本製」と表示できるのは、景品表示法で「実質的な変更」が加えられた国を「原産国」として表示することになっているためだ。「実質的な変更」は製品の特性や機能を決定づける重要な工程のことをさす。このルールは消費者保護の観点から設けられた。
一方、数多くの部品を組み合わせてできあがる製品については公的なルールはない。このため海外製の部品を使って日本で組み立てた製品も「日本製」と言える反面、ユーザーが持つ日本製のイメージと乖離していて、「あれは日本製とは言わない」などと論争になることがしばしばおこる。
民間企業は「日本製」と打ち出すことが競争上優位であれば、最終組み立てが日本国内で行われれば「国産」と打ち出す傾向がある。中には部品、モジュールなどできるだけ日本製でそろえ、より国産色を極める努力を重ねる企業もある。一方で、素材、部品、組み立てすべてを日本で完結することは難しい現実もある。現行の装備にも海外製の基幹部品やソフトウェアが組み込まれていることもあり「完成品としては国産でも、中身は国外技術に依存する」構造は残る。
日本でドローンの国産化率が伸びない背景には、複数の構造的な要因がある。
最大の要因は、ドローンの心臓部に相当するフライトコントローラや通信方式などで海外メーカーが圧倒的な優位を持っている点があげられる。自衛隊が採用する多くの機体も国際市場で実績のある海外製コンポーネントを取り込み、性能要求を満たしていることが多いとみられる。
また、国内企業が国防向けに投資を判断するには、量産規模の小ささや調達サイクルの長さが障壁になりやすい。さらに、暗号・認証といった安全性の基準を満たすには、ハードウェア開発にとどまらない継続的なソフトウェア対応が必要になる。実質的に海外技術への依存度が高止まりしている背景には、これらの条件が重なりあっている事情もある。
安全保障上「国内で確立すべき」分野を考えるといくつか思い当たる。
まず、GNSS妨害や通信妨害を検知し、回避行動を取るアルゴリズムを備えたフライトコントローラが挙げられる。自衛隊が運用するエリアはたいてい電波環境が厳しく、国外依存では対応が制限される懸念がある。
次に指摘できるのは、暗号化・署名・鍵管理といったセキュア通信基盤だ。操縦信号や機体側ログを防護する仕組みが国外由来の場合、海外企業の設計思想や法制度の影響を受ける可能性があり、国防運用としての透明性を確保しにくい。
さらに、飛行ログ解析や操縦AIなどソフトウェアの高度化がある。軍事運用のノウハウと直結するため、海外製をそのまま使うことには機能面でも情報面でも限界がある。これら中核領域の技術を国内で整備できれば、装備の自律性、運用上の独自性が高まると期待が寄せられている。
こうした技術を国内で確立させるためには、政府による開発領域の明確化と調達計画の共有が重要だと考えられる。
理由は民間企業が軍用市場に参入する際、最大の障壁になるのは「投資の回収可能性」だからだ。量産規模が小さい場合でも事業が成立するよう研究開発支援や共同開発の枠組みを整備すれば企業の参入ハードルが下がる。また、防衛省が採用する安全基準や暗号仕様を国内仕様として確立し、民生向け開発とも連動させることができれば、技術の汎用性を高められる。
国防向け開発は市場規模が限られるが、要求性能が高いため民生技術へのフィードバックが大きい。飛行制御、セキュリティ、電波処理などの分野で高い技術が日本国内で育てば、物流・点検・災害対応やそのほかの民生分野の競争力向上につながり、結果として国内経済に波及効果をもたらす展望もある。
「国産化率3割」をきっかけに、国産とは何か、取り組むべきことは何か、といった議論が活性化することを期待したい。

株式会社ACSL(東京)の株価が引き続き堅調だ。3月25日午前の東京証券市場では株価は1100円から1200円圏で推移した。一時、年明けからの高値となる1290円を付け、2月15日の安値585円から2.2倍の水準で取引された。同社は3月21日、同日の取引終了後に同社製ドローンの航空自衛隊による空撮機としての採用を発表したあとに買いが集まりやすくなっており、市場では引き続き材料視されている。また3月25日は、3月14日に発表した株式会社りそな銀行を相手先とする相対型コミットメントラインの契約締結予定日となっていて、市場がACSLの財務基盤の改善と経営の機動性が高まる期待も好感したとみられる。同社は日本郵便株式会社(東京)と共同開発した物流ドローン「JP2」を3月4日から22日にかけて兵庫県豊岡市で飛行施行を実施しており、今後への期待が高まっている。
ACSL株3月12日に防衛装備庁による同社製品の3億7000万円の受注を発表すると、発表翌日の3月13日には買いが殺到しストップ高となった。3月21日には取引終了後に航空自衛隊による同社製ドローンの採用を発表し、再びストップ高となった。それまで市場環境や販売不振などから株価は低下傾向だったが、市場の見方に変化の兆しが表れた。
ACSLはこれまでも同社の市場へのアプローチについて情報を発信してきたが、市場は今回の情報を、大規模な取引の成立と、今後の取引の展望期待を含むと受け止め、買いが入りやすい状況となっている。
加えてりそな銀行との間で、期間を設定したうえ、限度額の範囲で自由に融資を受けられるコミットメントラインを締結する方針を3月14日に発表しており、3月25日がその契約締結日であることから、経営体制の自由度への期待を集めやすくなっている。なおACSLのコミットメトライン契約の限度額は10億円で、期間は3月25日から7か月間だ。
ACSL株は昨年(2023年)1月3日に最近の高値1811円をつけている。厳しい市場環境などもあり漸減傾向だったが、今回の政府調達と一連のその具体的な採用情報が、同社製品への見直しを強く促しそうだ。
また一連の政府調達とは別に、日本郵便と開発した物流ドローンを3月4日から22日にかけて、兵庫県豊岡市で飛行させた。今後、生活圏上空での飛行が可能になる型式の取得も視野に入れていて同社への期待をけん引することになりそうだ。


株式会社ACSL(東京)の株価が800円台に戻して推移している。東京証券市場グロース市場の同社株は3月14日の午前の取引は、前日3月13日の取引でストップ高のまま終えた857円から7円下げた850円で初値をつけた。その後も800円近辺での取引が続いている。背景には前々日の3月12日の取引終了後に発表した、防衛装備庁からの3億7000万円の受注発表がある。発表翌日の3月13日には買いが集中し、値幅制限いっぱいの150円高でも取引が成立しなかった。14日午前もその勢いを維持した展開だ。受注は2月に発表した2024年12月通期業績予想に織り込み済みだが、市場関係者からは今回の大型受注に対し政府調達の呼び水期待が寄せられている。
同社が受注したのは高セキュリティ型の空撮用ドローン「SOTEN」(蒼天)」で、今年(2024年)12月の納入予定2月を予定している。ドローンで収集した情報の漏洩を防ぐ工夫が凝らされた機体で、秘匿性の高いインフラの点検などへの活用が期待されている。
2月14日の決算発表では、前期業績の悪化要因にSOTENの販売減を挙げていたが、今回の大型受注で不振からの脱出に期待が集まる。同社は今回の受注はすでに通期業績に織り込み済みとしている。同社が発表している2024年12月の通期業績予想は、売上高が33億4千万円、営業損益、経常損益はそれぞれ赤字を見込んでいる。
大型受注の発表は3月12日の取引終了後に行われた。これを受けて翌3月13日の東京株式市場では、午前9時の取引開始直後から買いが殺到して。値幅制限いっぱいの857円のストップ高となって推移し、結局同日は取引が成立しないままとなった。3月14日も800円台を維持した取引で始まっており、2月16日つけた上場来安値の585円からの底割れを回避した水準の取引が続いている。。
ACSLが2月14日に発表した23年12月期連結決算では、売上高が前期比45.2%減の8億円9600万円と大幅に減少した。業績のけん引役と期待された高セキュリティ型の小型空撮ドローン「SOTEN」の販売台数が伸び悩んだことが響いたと分析するととともに、20.7億円の受注残があることも明らかにしていた。
