福島イノベーション・コースト構想推進機構・福島ロボットテストフィールド(福島県)は5月15日、ドローンの活用が期待される分野での事業者認定や安全運用のためのガイドライン、教育カリキュラムを策定し、機体認定事業を実施したと発表した。今回策定したのは4分野で、4月に公表したプラント点検のガイドラインなどとあわせて、5分野が策定されたことになる。その一部は公開された。それぞれ運用事業者認定のさいの標準化を視野に入れており、今後テキストや育成コースの開発、認定スキームの策定を検討する。
新たに策定したのは①警備関連(福島浜通り地域における無人航空機による警備)②催事での空撮とAED搬送関国際イベント等の催し物等における小型無人機による空撮やAED 搬送)③催事保安関連(国際イベント等の催し物等におけるパブリックセーフティ確保)④機体認定(RTFにおけるJUAV機体認定事業第1号)の4分野。それぞれガイドライン、チェックリストなどで構成されている。すでにプラント点検関連(小型無人機を用いたプラント点検分野)については4月にマニュアル、ガイドライン、チェックリストを4月に公表済みだ。
策定されたガイドラインは関連業務でドローンを運用する事業者を認定するさいの指針となることを見込んでいる。公益財団法人福島イノベーション・コースト構想推進機構・福島ロボットテストフィールドが、一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)、日本無人機運行管理コンソーシアム(JUTM)、一般社団法人日本産業用無人航空機工業会(JUAV)と協力して策定した。
警備分野については、「警備分野における無人航空機の安全な運用方法に関するガイドライン」が策定された。策定の目的はドローンの導入による警備事業の省人化、効率化が期待される中で、「警備サービスにおける無人航空機活用を健全に推進すること」で、「無人航空機運用にあたり留意すべき事項を整理し」てある。
その中の「概要」では、航空法、小型無人機等飛行禁止法、電波法などのほか、警備業法の適用範囲の適用範囲について言及していて、ドローンの活用に関わる規定がないことや、警備業が扱う施設警備、雑踏警備、警備輸送、身辺警護の4業務のうち、ドローンの活用が可能と考えられる範囲はその一部であることなどを説明している。またそれをふまえ、ガイドラインでは施設警備だけを扱っていることを断っている。そのうえで「第43条では機械警備業務における即応体制の整備について規定されているが、『現場における警備員による事実の確認』を無人航空機単独で代替することはできない」などと注意が記されている。ドローンを活用するさいのフローも図解されている。
また活用方法として「常駐警備業務」と「機械警備業務」に分けて説明がつけられている。ここでは常駐警備での飛行前、飛行時、飛行後の作業を列挙してあるほか、警備業務に活用する機体に求められる要件や、ドローン、関連機材の選定についての記述もある。「無人航空機、搭載カメラ等の機材選定にあたっては、RTF を活用し性能試験および運用テストを行うことが望ましい」などの表現もみられる。「機械警備業務」については「基本的な考え方は常駐警備業務での無人航空機活用と同じ」としたうえで、「人的リソースが制限される」など常駐警備との違いを指摘するにとどめている。
警備分野については、ドローン警備事業者育成カリキュラムも公表された。座学は19項目あり、「警備運用におけるリスク」「対策方法」「緊急時対処方針の策定」などリスクに関連する3項目などが含まれている。実技も警備の現場に基づき7項目が設定されている。あわせて、「警備分野における無人航空機の安全な運用方法に関するチェックリスト」も策定、公表された。
国際イベントなどを想定した催事空撮やAED搬送については、「国際イベント等の催し物における空撮・救急医療分野での無人航空機の安全な運用方法に関するガイドライン」、「国際イベント等の催し物における空撮・救急医療分野での無人航空機の安全な運用方法に関するチェックリスト」「国際イベント等の催し物における空撮・AED搬送事業者教育カリキュラム」が公表された。
このほか、「国際イベント等の施設周辺に飛来する無人航空機の識別を含めたパブリックセーフティの確保のための無人航空機の安全な運用ガイドラインとチェックリスト」と「無人航空機の安全性に係る機体認定試験のあり方を検討するための、RTFの施設・設備を用いた飛行審査の実証実験」が策定、実施され、「ガイドライン」が公開された。「チェックリスト」と、機体認定試験関連の資料は非公開扱いとなっている。
RTFのサイト
福島県、公益財団法人福島イノベーション・コースト構想推進機構福島ロボットテストフィールド(RTF)、一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)は4月6日、合成樹脂や合成繊維など石油化学製品を生産する石油化学プラントの点検にドローンを活用するさいの、現場作業の要領をまとめた実務マニュアル、要点をまとめたチェックリスト、点検に従事する人材の育成に向けた教育カリキュラムを作成し公表した。
公表したのは「プラント点検分野におけるドローンの安全な運用方法に関する実務マニュアル」、 「プラント点検分野におけるドローンの安全な運用方法に関するチェックリスト」 、「ドローンを用いたプラント点検事業者教育カリキュラム」の3点。プラント点検でドローン利活用を加速させることが目的で、RTFが「福島ロボットテストフィールドを活用した無人航空機利活用事業者認定とパブリックセーフティのあり方に関する調査事業」をJUIDAに委託していた。
「実務マニュアル」は、点検のためにドローンを飛行させるさいに共通する全般的な留意点と、「屋外俯瞰飛行」「屋内外近接飛行」「屋内暗所飛行」「屋内外目視外飛行」のそれぞれの飛行を行う場合の留意点を整理した作業現場での手引き。ドローン導入促進を後押しするとともに、事業者認定の基準となることも見込まれている。「チェックリスト」は留意事項を一覧にまとめた表で、運用時にもれなく確認するさいの活用を想定した。「教育カリキュラム」は点検を安全に遂行するために必要な技能と知識の体系で、RTFを利用した実技訓練方法が盛り込まれている。
石油化学業界は、事故防止、品質の維持・工場、生産効率の維持・向上のため、設備の点検は業務上不可欠で、多くの設備は点検を関連法で定めている。一方で人手不足、高い技能を持つ経験者の引退など保安力の低下懸念が指摘されている。点検の保安力を維持するため、新技術の活用が期待されていて、ドローンで安全にプラント点検が行うようにするための基準や運用方法が求められている背景がある。
このため総務省消防庁、厚生労働省、経済産業省で構成する「石油コンビナート等災害防止3省連絡会議」は3月27日、カメラを搭載したドローンによる点検作業の指針となる「ガイドライン」を改訂して「ver2」を公表。ドローンの適用範囲を屋内にも拡大し、ドローンの点検が目視点検の一部を代替できることを明示した。
一方で、現場の状況に応じて飛行方法を使い分ける必要があり、今回飛行方法ごとの留意事項を整理した。
マニュアルには策定にあたってRTFで実施した実験の概要もまとめてある。
RTFの紹介ページ、
JUIDAの紹介ページ