風況観測技術の開発を手掛けるメトロウェザー株式会社(京都府宇治市、古本淳一代表取締役)は4月11日、海運、鉄道、物流、金融など12社から約7億円を調達したと発表した。調達先は既存株主のリアルテックファンド、DRONE FUNDのほかヤマトホールディングス系やJR東日本系のコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)などが名を連ねる。調達した資金を体制の構築や開発にあてるほか、事業の現場も抱える出資企業と連携を深め、海外も含めた事業展開の加速化を図る。
調達は12社を引受先とした第三者割当増資等でシリーズAラウンドとして実施し。メトロウェザーは京都大学発スタートアップで、風向きや風速を三次元でとらえリアルタイムで可視化する小型・高性能ドップラー・ライダー・システムを持つ。風況観測はドローンや空飛ぶクルマの自律飛行の実装に欠かせない技術で、出資企業と連携し実証実験を重ねる。
発表は以下の通り(以下、引用)
風を3次元に可視化する小型・高性能ドップラー・ライダー・システムを擁するメトロウェザー株式会社(本社:京都府宇治市、代表取締役 古本淳一、以下「メトロウェザー」)は、このたび 既存株主であるリアルテックファンド、DRONE FUND 及び新たにグローバル・ブレインが運営するCVCファンドをはじめとした、VC及び事業会社計12社を引受先とした第三者割当増資等により、シリーズAラウンドにおいて総額約7億円の資金調達を実施したことをお知らせします。
メトロウェザーは、小型高性能ドップラー・ライダーにより空の風況を立体的に把握し、可視化することで「風」の課題を解決し、「エアモビリティー社会」と「安全安心な都市生活」の実現に貢献することを目指しております。シリーズAラウンドの資金調達により、各株主企業様との連携をより一層深め、国内のみならず海外展開を視野に入れた組織体制の構築と、さらなる事業展開を加速させてまいります。
メトロウェザーは、ドップラー・ライダーの活用により、ドローンの運行に必要不可欠となるリアルタイムでの高精細風況情報の提供を実現します。これによりレベル4飛行の大きなハードルとなっている「高度な安全性の確保」を達成し、ドローン前提社会における必須のインフラとなることを目指します。
さらに、独自の気象予測シミュレーションを組み合わせることで、都市防災・風力発電・航空・海運・鉄道領域等、ドローン関連のみならず弊社技術に関連する幅広い分野の市場への参入を進めてまいります。
■ シリーズA資金調達先 計12社
(既存先)
・リアルテックファンド
・DRONE FUND
・株式会社日本政策金融公庫(資本性ローン等)
(新規先)
・JGC MIRAI Innovation Fund(運営:グローバル・ブレイン株式会社)
・KURONEKO Innovation Fund(運営:グローバル・ブレイン株式会社)
・株式会社MOL PLUS(株式会社商船三井100%出資CVC)
・JR東日本スタートアップ株式会社
・ACSL1号有限責任事業組合
・鐘通株式会社
・三菱UFJキャピタル株式会社
・SMBCベンチャーキャピタル株式会社
・京銀リース・キャピタル株式会社
<各社のコメント>
■リアルテックホールディングス株式会社 永田暁彦代表取締役
言語の壁を超えて全世界70億人にイノベーションを提供する、これを実現できるのがリアルテックの価値です。メトロウェザーはこの実現に大きく近づきました。同社のドップラーライダーを活用したユースケースの拡大、そして空のインフラ構築を、今回参画頂いた事業会社等の力強い仲間と共に、今後もリード投資家として全力で支援して参ります。
■DRONE FUND 大前創希共同代表パートナー
ドローン・エアモビリティの社会実装の機運を受け、メトロウェザーの存在感が高まっており、大変頼もしく感じます。人々の頭の上をドローンやエアモビリティが飛び交うレベル4の実現には、メトロウェザーの技術は不可欠なものになっていくと確信しています。本ラウンドでは新たに参画頂いた日本を代表する事業会社の方々と事業を一層加速できるよう、 DRONE FUNDとして全力で支援していきます!
■グローバル・ブレイン株式会社(JGC MIRAI Innovation Fund・KURONEKO Innovation Fundを運営) 百合本安彦代表取締役社長
メトロウェザー社のドップラーライダーは、海外含めた競合他社と比較して高スペックであり、また圧倒的な小型サイズと低製造コストを実現しています。風力発電量予測等いくつかの用途での活用が期待されておりますが、特にドローン自動運行への風況予測データ提供において高いポテンシャルを見ています。ドローン自動運行で不可欠となる高い時空間解像度のデータを提供する上で、メトロウェザー社の技術が唯一無二のソリューションとなりうると考えています。グローバル市場を取れるポテンシャルを持つ当社の今後の事業成長に貢献すべく、弊社としてもしっかり支援してまいります。
■日揮株式会社 未来戦略室 / JGC MIRAI Innovation Fund CVCフロントチームリーダー 坂本惇氏
日揮グループは安全・安心で持続可能な社会システムの実現に向けて、革新的な技術やビジネスモデルを有するスタートアップ企業への投資を行っています。今回の出資に際して、メトロウェザーが目指すビジョンに強く共感し、また、下支えとなる優れた信号処理、風況観測・予測シミュレーション技術を高く評価致しました。今後、日揮グループが培ってきたエンジニアリング技術や各領域の知見を融合させる事で、産業プラント、風力発電領域に加え、新たな社会インフラ構築に向けたイノベーションを起こす事を期待しています。
■ヤマトホールディングス株式会社イノベーション推進機能/KURONEKO Innovation Fundシニアマネージャー足立崇彰氏
風況計測は、 安全なドローン運行にとって重要な要素です。メトロウェザー社のドップラー・ライダーは、観測技術の高さとコスト面で高い優位性を持っています。ヤマトグループは、ドローンを活用した「新たな空の輸送モード」を現在構築しており、そのなかでドップラー・ライダーは、必要不可欠なテクノロジーです。今後、協業を通じて、両社がより事業成長できるよう取り組んでまいります。
■株式会社MOL PLUS 阪本拓也代表
メトロウェザー社の事業ビジョンに共感し、また直近1年間で多様な産業へのソリューション展開をスピーディーに推進されていることに可能性を感じ、この度他の多くの出資者の皆様とともに、ご一緒させていただくことになりました。MOL PLUS はメトロウェザー社が実現を目指す風況予測ソリューションの各産業への社会実装に貢献します。とりわけ海運や海洋事業領域での社会実装について推進させていただきます。具体事例として、今回の出資に際し商船三井の『ウインドハンタープロジェクト』においてドップラー・ライダーを用いた風況予測の実証実験を共同で取り組みます。今後の取り組みを楽しみにしております。
■JR東日本スタートアップ株式会社 柴田裕代表取締役社長
ドップラーライダーのテクノロジーを応用して、鉄道工事の課題を解決する…。 そんな無謀…否、果敢なチャレンジをいま、メトロウェザー社と一緒に進めています。場所はリアルの鉄道路線(休止線)。そこにドップラー・ライダーを持ち込んで支障物を検知する実証実験は、なんともダイナミックで斬新なものでした。まだ課題は山積ですが、この技術は未来の鉄道現場に広く活用できると思っています。共創パートナーのメトロウェザー社を、私たちはこれからも応援していきます。
■株式会社ACSL 早川研介取締役CFO
株式会社ACSLはドローンメーカーとして、ドローンを活用した社会課題の解決に向けた取り組みを進めております。レベル4の法規制整備やデジタル田園都市国家構想の推進、脱炭素化に向けた動きの加速などによりドローンが活用される場面が増えていくことが想定されるなかで、空の風況を適時かつ正確に把握することは、ドローンが安全に飛行するうえで無くてはならないものであると考えております。今後もメトロウェザー社と連携し、ドローンの社会実装に向けた取り組みを進めてまいります。
■鐘通株式会社 松井宏記代表取締役社長
地球温暖化等による様々な自然災害に対し、現在の技術力をもってしても人類は無力です。そのような得体の知れない巨大な敵に対し立ち向かうメトロウェザー株式会社。様々な視点から自然の可視化に挑む産まれたての企業に無限の可能性を感じ出資させて頂きました。同じ京都の企業という事もありますので弊社としても部材調達や最新の製品情報提供等のサポートを全力でさせて頂きます。共に京都から世界へ、これまでに無かった新たな価値を提供して参りましょう。
■三菱UFJキャピタル株式会社 矢野潤大阪投資部次長
「風を制し空の安全を守る」を企業Visionとして2015年に設立された京都大学発スタートアップ企業です。これまで培ってきた独自のリモートセンシング技術と信号処理技術に気象情報を組み合せ、高精度の風況観測を実現する小型ドップラー・ライダーを開発しました。ドローン運行のための風況情報提供に加え、都市防災、風力発電など、幅広い分野への展開を目指します。当社の技術が、未来社会における大事なインフラになっていく事を期待して、全力で支援してまいります。
■SMBCベンチャーキャピタル株式会社 池田一生関西投資営業部副部長
空を見上げれば物を運んだり測量をしたりしているドローンが当たり前に見える未来、メトロウェザー社の風況計測技術はそのような未来を実現する基礎インフラになり得る技術と感じ今回初めて出資をさせて頂きました。新しい未来の実現の一助になればと思い全力で今後も支援させて頂きたいと思います。
■京銀リース・キャピタル株式会社 村田義樹氏
「エアモビリティ―社会」と「安心安全な都市生活」の実現に対し、京都大学発ベンチャーとして非常に高い技術力をもって貢献される当社の取組や姿勢に共感し、今回投資を行いました。京都銀行グループとして、今後の当社の成長と発展を支援してまいります。
■メトロウェザー株式会社 古本淳一代表取締役
この度は既存投資家様をはじめ多くの事業会社様を中心にシリーズAラウンドの資金調達が完了できましたこと皆様に心より御礼申し上げます。弊社のドップラー・ライダーは商用ベースでドローンが安全・安心に飛行するために必要不可欠である3次元の風情報をリアルタイムに提供し、高度なオペレーションが要求されるレベル4運航実現の切り札になるものと考えております。このラウンドを機に事業会社様との連携をさらに深め、 幅広い市場への参入を図るとともに国内はもとより海外展開の礎を構築し、 次のラウンドで本格的な海外展開を果たすことを目指してまいります。
■ メトロウェザー概要 設立 : 2015年5月 代表者 : 代表取締役 古本 淳一 URL : https://www.metroweather.jp 所在地 : 京都府宇治市大久保町西ノ端1-25宇治ベンチャー企業育成工場6号 事業内容 : 弊社は、赤外線を用いて風に舞った大気中の塵や微粒子を散乱体として反射光を受信し、ドップラー効果を利用した解析を実行することで、 風況をリアルタイム・3次元に把握・可視化するドップラー・ライダーの開発・販売及びデータ提供を行っております。京都大学で長年培った大気リモートセンシング技術の開発・解析技術をベースに弊社が開発した小型高性能ドップラー・ライダーは、従来の大型ドップラー・ライダーと同等の性能を維持しつつ、低価格を実現しております。弊社ドップラー・ライダーを活用した社会課題の解決に向け、弊社は国内外で複数の企業様・研究機関様との共同研究や実証を進めており、2021年からはNASAの研究開発プロジェクトにも参画しております。
風のデータを細かく分析するメトロウェザー株式会社(京都府宇治市)と、局所気象データ解析のTruWeather Solutions, Inc. (TWS)は、アメリカ航空宇宙局(NASA)がTWSと進めている研究プロジェクトSBIR(Small Business Innovation Research)をサポートする協働契約を締結したと発表した。これによりメトロウェザーがNASAの研究事業に参画することになる。メトロウェザーは独自に開発した小型ドップラー・ライダーを持ち寄り事業に貢献する。
メトロウェザーはTWSと空飛ぶクルマなど商業用エアモビリティの大規模展開に不可欠な、都市の気象観測インフラの構築を目指す。協業の中でメトロウェザーのドップラー・ライダーとTWSの都市風況シミュレーションシステムを組み合わせる。特に密集した都市部で、配送ドローンや空飛ぶクルマなど先進的な航空輸送サービスを安全、安価での提供を実現するためには次世代気象サービスの開発が必要と言われ、両者の取り組みはその促進に寄与する。
NASAのSBIRプロジェクトで、両社は都市環境におけるUrban Wind Experiment (UWEX) を構築する設計を完成させる役割を担う。当面は現在のPhase1に取り組み、次のPhase2契約獲得を目指す。来年度のPhase2では実際の都市でUWEXを行う計画だ。
この中でメトロウェザーは、対象となる都市部のライダー観測を行うための最適なセンシングアルゴリズムとデータ収集戦略を提供する。メトロウェザーのコンパクトで高性能なドップラー・ライダーを使い、複数のライダデータフュージョンのモデルを開発も担う。いずれも中心的な役割を果たすことになる。あわせて観測データの配信システムやAPIの設計も行う。
メトロウェザーの古本淳一CEOは、自社技術の貢献について、「小型かつ高性能なドップラー・ライダーを安価に実現できたことで、ドローンポート(バーティポート)やドローン航路上に多数のドップラー・ライダーを展開することが現実のものとなり、ドローンの離発着や飛行に影響を与える局所的な突風やウインドシアをリアルタイムに可視化することが可能になります。また、ドローンポートに限らず地方空港などへの展開も見込まれます。その結果、ドローンの安全運航が確保される世界が実現し、空の安全・安心に貢献できるものと考えています」とコメントしている。また、NASA SBIRプロジェクトへの参画について「TWSというパートナーを得て、NASAのプロジェクトに関われることでこうした世界の実現に一層近づくことができると思いますし、大変誇りに思います」と述べている。
TWSは、複数のドップラー・ライダーから得たリアルタイムの風測定データを同社が運用する都市の風況シミュレーションシステム「TWS’s urban wind model」に統合し、UASやAAMの気象ニーズに対して効率的に最適な予測を行うシステムの設計を行う。
TWSのCEO、Don Berchoff氏は、メトロウェザーとの協力について、「TWSは、都市部の危険な風況を把握することに焦点をあてたテストベッドを設計するNASAとの研究で、メトロウェザーと協力できることを光栄に思います。都市部の風環境に対するメトロウェザーの科学的知見に対する評価と都市環境でのライダー・テクノロジーは、安全で信頼性の高い先進的エアモビリティの運用に影響を与え得る風災害の検出機能を実証するテストベッドの重要な要素です」とコメントを寄せた。
2015年に設立したメトロウェザーは測定距離15キロメートル以上の性能を備えながら、65cm四方のサイズのドップラー・ライダーを開発した京都大学発のスタートアップだ。大学での長年の研究をベースに、ノイズの多いデータセットから小さなシグナルを検知することができる革新的技術を持つ。2016年から3年間、米国海軍研究所の基礎研究予算を獲得し、空母搭載用のドップラー・ライダーの基礎開発も行なってきた。高性能であれば高コスト、高スペック、大サイズのコンポーネントが必要との常識を覆したことで知られる。今後もドップラー・ライダーを今後の広範な商業エアモビリティ展開に不可欠なインフラとして位置付け、製品開発と事業開発に積極的に推進する方針だ。
(※【DF】メトロウェザーはDRONE FUNDの投資先企業です)
■会社概要 メトロウェザー株式会社 設立年月:2015年5月13日 所在地 :京都府宇治市大久保町西ノ端1-25 宇治ベンチャー企業育成工場6号 代表者 :代表取締役 古本淳一 事業内容:リモートセンシング技術を応用した大気計測装置の開発・製作・販売 https://www.metroweather.jp