DJIと、ビジュアルデータソリューションをリードする仏Delairが9月12日、企業向けのデータ収集や分析を強化した統合ソリューションの開発で協力するパートナーシップを締結したと発表した。パートナーシップには、Delairが世界中の販売チャネルを通じてDJI製品を販売すること、プラットフォーム間の互換性構築に合意したことなどが含まれる。
DJIとDELAIRの統合ソリューションは、2019年9月17〜19日、ドイツのシュトゥットガルトで開催されたINTERGEOカンファレンスのDJIブースで公開された。
DJIの戦略的パートナーシップディレクターであるJan Gasparic氏は、「DJIは、Delairチームとより緊密に連携することに非常に興奮している。DJIは、信頼性が高くスケーラブルなドローン製品の提供を目指しており、Delairなどさまざまな分野の企業がドローンデータを活用してソフトウェアソリューションを構築できるように提供しています。このパートナーシップは、エンタープライズドローン業界の成熟度の向上を示す重要な合意です」と合意の意義深さを強調。
Jan Gasparic氏は、「このパートナーシップは、エンタープライズ市場での2社の成功を踏まえています。Delairをエンド・ツー・エンドのビジュアルインテリジェンスソリューションでは、リーディングプロバイダーとしての地域を確固たるものにします。DJIドローンは現在、企業向けに最も多く提供されているドローンハードウェアです。両者のパートナーシップにより、DJIドローン製品とDelairのデータ管理プラットフォームの両方を組み込むためのアクセシビリティが促進され、エンタープライズドローンプログラムに手間のかからないオプションが提供されます」と期待できる利便性の大きさを付け加えた。
一方、Delairの共同創業者で副社長のBenjamin Benharrosh氏は、「企業向けのドローンは単なるハードウェアソリューションではありません。本当のカギは、収集したデータを活用することです。DJIとDelairは、信頼できるパートナーからエンタープライズレベルのソリューションを提供し、お客様による真のデジタルトランスフォーメーションを可能にすることの重要性を認識しています。このパートナーシップにより、産業界はドローンを使った業務効率の向上を加速するでしょう」と語る。
建設、輸送、インフラ、公益事業、鉱業、農業などの主要産業では、ビジュアルデータの重要性がますます高まることになり、それに伴いDelairは能力をますます発揮することになる。delair.aiプラットフォームでDJIシステムをサポートすることで、顧客はクラウドベースのシステムの幅広いツールを活用して、業界固有の分析ツールを含むドローンデータから洞察を導き出すことに役立つワンストップショップと選択の自由を手に入れることができる。
空の利活用を推進する兼松株式会社(東京)は3月15日、オーストラリアのドローンメーカーSwoop Aero(スウゥープエアロ、メルボルン)の固定翼と回転翼を併用したVTOLドローン、Kookaburra MKⅢ(クッカバラ・マークスリー)を使った実証実験を公開した。兼松が包括連携協定を結んでいる加賀市(石川県)とともに実施した輸送実験の一環で、運用は兼松が資本業務提携を交わしている英Skyportsが担った。日本国内でSwoop機の飛行が公開されたのは初めてだ。機体はときおり強い風が吹く中で安定した飛行を見せ、立ち会った関係者からは「緊急時の医療用に使えそう」などの声が聞かれた。
JR加賀温泉駅に近い加賀市医療センター6階のルーフバルコニーで公開された。直線距離で3キロ、陸路で6キロ離れた加賀温泉ケアセンターを離陸したドローンが医療センターのルーフバルコニーまで血液を運び、待機していた加賀市の宮元陸市長が受け取るというシナリオだ。この日は保冷バッグなどを血液のかわりに運ぶことにし、会場に用意されたパネルにも「Advanced Air Mobirityプロジェクト VTOLドローンによる血液輸送実証実験」と掲げられた。
実験には加賀市の宮元陸市長、兼松航空事業部長の津山幹規氏、NTTコミュニケーションズ株式会社北陸支社ソリューション営為業部門・部門長の川上浩生氏、Skyportsの日本法人、Skyports株式会社(東京)の代表取締役、岡田惇史氏と、それぞれの担当者が参加したほか、加賀市医療センターなど医療関係者、自治体関係者、報道陣らが見守った。
実験では宮元市長が出発地に離陸の合図を出すと、Kookaburra MKⅢが垂直に離陸した。離陸の様子は設置されたモニターで映し出された。上昇した機体は上空で水平飛行に切り替わり、その後はグライダーのように空中を自動航行した。医療センターで待機する関係者たちは、機体が離陸から2分を過ぎたところで上空に機影を確認し、口々に「もう来た」、「早い」と、声をあげた。医療関係者からは「災害時や緊急時によいのではないか」と期待の声があがった。飛んできた機体は医療センターの上空で着陸態勢に入り、バルコニーにあらかじめ設置してあったマーカーのはいったランディングパッドの上に垂直に着陸した。所要時間は約4分だった。機体が着陸すると、見守っていた関係者からいっせいに拍手があがった。
Kookaburra MKⅢの機体中央は、バッテリーと荷物室がパッケージになっている。運航を担ったSkyportsのスタッフが着陸した機体中央の天井部を開いて荷物を取り出し、宮元市長に手渡し、関係者への公開は終了した。
公開終了後、機体中央のバッテリーはとりはずされ、バルコニー側で充電していた別のバッテリーが装着された。充電済みのバッテリーを装着した機体は、再び離陸地の加賀温泉ケアセンターに向けて飛んで行った。
Kookaburra MKⅢはオセアニア、アフリカなどで、数多くのフライトをこなしていて、Skyports社も運用実績を持つ。最高速度は124㎞/hでペイロードは3㎏、航続距離は90㎞だ。2023年度に導入予定の新モデルは航続距離が最大175㎞とさらに延びる。
公開終了後に報道陣の取材に応じた宮元陸市長は「スピードと迫力に感動した。生産性、効率性を高めるためには自動化、機械化が必須だ。積み残している課題は残るが、ドローンには期待している。我々は空の産業集積を進め、移動革命の先駆けとして名乗りを上げていく」と述べた。
加賀市はドローンやいわゆる空飛ぶクルマを含むエアモビリティの普及、利活用にIoT普及とともに力を入れていて、市内全域の3Dマッピングに取り組むなど、ドローンの飛行環境を先進的に整備している自治体として知られている。
いわゆる「空飛ぶクルマ」の社会受容性向上活動を進める有志団体 Dream On(ドリームオン、東京)の疑似搭乗体験マシンが3月18日、大阪府吹田市の万博記念公園にお目見えし、多くの来場者の好奇心を刺激している。体験は3月19日(日)も行う。18日には体験を終えた参加者が一様に笑顔を見せ、「おもしろかった」、「早く実現してほしい」、「期待を超えた」と好評コメントを寄せた。Dream Onの中村翼代表は「体験会で頂くリアルなフィードバックはとても価値が高いと思っています。疑似ではありますが、ぜひ五感で味わって頂きたいです」と話している。体験料は無料(会場の万博記念公園・自然文化園・日本庭園共通入場料は一般で大人260円、小中学生80円)。体験の予約はほぼ埋まっているが、スタッフによると「実は、隙間時間があれば、ひょっとすると体験チャンスがあるかもしれません」と話している。
空クル搭乗体験マシンがにぎわいをつくっているのは、万博記念公園内の「EXPO’70パビリオン」の「空飛ぶクルマPRコーナー」だ。2025年の大阪・関西万博で空飛ぶクルマの実現に向けて環境整備に取り組む大阪府が主催する空飛ぶクルマの社会受容性向上事業の一環で、体験を通じて空飛ぶクルマへの理解を深め、親しみを高めてもらう企画だ。クルマ型のマシンのシートにすわり、VRゴーグルを装着すると、目の前に空飛ぶクルマに乗った風景が広がる。VR映像中で空クルが進むのにあわせて、マシンが進むため、実際に動いている感覚も味わえ、没入感を満喫できる。
会場では事前予約の来場者がゴーグルを装着してマシンに搭乗。ゴーグル内ではビル屋上で空クルに乗る前からのシーンが流れる。映像内で空クルが発信すると、それにあわせて搭乗マシンも前進する。映像内では飛行中の日差しも忠実に再現されていて、これも没入案を演出する。体験者は、左右、上下に首をまわすので、風景を楽しんでいる様子がうかがえる。数分で空クル体験は終了するが、ゴーグルをはずすと一様に笑顔がはじける。
終了後には付箋に感想を書いて、ボードにはってもらう。ボードには「実用化を祈念」「もう1かいのりたい」、「こんな未来が早く来て欲しい」、「高い所、苦手ですが楽しめました」などの感想が並んだ。また「がんばってください」とDreamOnの活動にエールを送るコメントもあった。
立ち会ったDreamOnの中村代表は「未来について具体的なコミュニケーションをすることに少しでもお役に立ちたいと思いこの活動を続けています。このマシンだけでこれまでに2000人以上の方に体験して頂きました。みなさまから多くの感想をいただき、そのひとつひとつが、これからを築くために貴重なデータになっています。とくに思ったことをストレートに口にだす子供たちの感想は刺激になります。この体験を通じて未来を仕掛ける側になっていただける方が増えればいいとも思っています。今後もこうした活動を続けていきます」と話している。DroneTribuneも、「ドローンやエアモビリティー前提社会の実現を通じて価値ある未来をたぐりよせる」ことを掲げて活動しており、中村代表の活動に通じる。
PRコーナーには、搭乗体験のほかに、VRゴーグルを使用した空飛ぶクルマVR体験ができるコーナーもある。ここでは大阪を飛ぶ体験ができる。また空飛ぶクルマの理解に役立つパネル展示もあり、スタッフが来場者に説明をしたり、問い合わせに応じたりしている。この日は空飛ぶクルマに詳しく多くのイベントで登壇実績を持つ中央復建コンサルタンツ株式会社(大阪市)の松島敏和氏が、来場者の「どのぐらい飛べるんですか?」、「いつ実現するんですか」などの質問にていねいに応じていた。
空飛ぶクルマPRコーナーが万博会場に設置されるのは3月19日(日)、10:30〜16:00まで。期間中、PRコーナーに近い万博記念公園の「お祭り広場」で、「第2回 魚ジャパンフェス in 万博記念公園」も開かれている(21日まで)。会場には「天然!アラスカ産紅鮭のこぼれいくら丼」(こぼれいくら海越)、「贅沢まぐろ3種丼」(黒潮市場)、「北海宝舟9種盛り海鮮丼」(北の海 どさんこ海鮮市場)など、海の幸の店が全国から集まるので、空クル体験と味覚を同時に味わえる。魚ジャパンフェスには別途入場料300円が必要だ。
ドローンや関連製品の製造、開発、関連事業を手掛けるVFR株式会社(東京)が経営体制を刷新した。代表取締役社長に蓬田和平氏、取締役に糸岡健氏が就任し、社外取締役の大前創希氏は引き続き社外取締役を務める。VFRは新たな体制のもとで高品質な製造技術や製品に対する深い知識など、同社の強みや持ち味を生かす体制の強化に舵を切る。
VFRは2月中に取締役会、株主総会を相次いで開き、体制刷新を準備してきた。2月10日に取締役会、20日に株主総会を開き、蓬田氏、糸岡氏、大前氏の取締役就任を決めた。また株主総会では、取締役会で代表の職を解かれていた湯浅浩一郎氏の任を解くことを決めた。一時的に代表取締役に就いていた留目真伸氏も辞任した。川口伸氏は引き続き監査役を務める。
新代表の蓬田氏はVFRに出資するDRONE FUNDに2020年から参画し、財務のスペシャリストとして3号ファンドで新規投資先の開拓、出資の実行などの先頭に立ってきており、出資先企業の強みを熟知している。蓬田氏は三井住友銀行、マッキャンエリクソン、リクルートでキャリアを積み、IoTデバイス開発メーカーでCOOを務めた。これらの経験を体制強化にいかす。今後も成長プロセスに応じ、体制を改めていくとみられる。
取締役に就任した糸岡氏は、 ソニー株式会社(現ソニーグループ株式会社)を経て2014年からVAIO株式会社で取締役執行役員常務CFOに就任し、2020年3月VFRの社外取締役を兼務してきた。
DRONE FUNDの大前創希共同代表パートナーは引き続き社外取締役として経営に参画する。大前氏は2002年に株式会社クリエイティブホープを創業し戦略面を重視したWebコンサルティングを展開し2013年に同社会長に就任。2014年からはドローンを使った動画撮影などクリエイティブ活動を展開するドローンフラファとして活動し、2016年3月には「ドローンムービーコンテスト2016」で 準グランプリ受賞した。2017年5月にDRONE FUNDアドバイザリーボードを経て、2018年9月DRONE FUND共同創業者/代表パートナーに就任している。ビジネス・ブレークスルー大学/大学院教授も務める。
いわゆる空飛ぶクルマの実現に力を入れる商社大手の丸紅株式会社(東京)は3月15日、米LIFT社(LIFT AIRCRAFT INC.)の1人乗り乗りエアモビリティ、HEXA(ヘクサ)の操縦者が乗って飛行する実証実験を、大阪市の大阪城公園で実施した。都市部での空クルの有人飛行は国内で初めてだ。HEXAは公園内の決められたエリア内で、垂直に離陸し、上空で旋回し、許可されたエリアを周回して、空の移動の手軽さを関係者、報道陣などに印象付けた。同型機の飛行トレーングを受け、操縦資格を取ったGMOインターネットグループ株式会社(東京)の熊谷正寿代表も操縦士の1人として参加した。熊谷氏は飛行中に操縦席から手を振るなど空の移動の楽しさをアピールし、2025年の大阪・関西万博での商用運航を目指すエアモビリティの社会受容性向上に一役買った。
日本初のパイロット搭乗飛行は、GMOインターネットの熊谷正寿代表が飾った。LIFT社の創業者でCEOのMatthew Chasen氏も現地で見届けた。
この日の実証実験は、大阪城公園内の野球場に飛行エリアを設定して行われた。国土交通省航空局などとあらかじめ念入りに調整し、電子的な網であるジオフェンスをはって、機体の暴走を防止するなどの対策をとった。
飛行した機体、HEXAは米LIFT社が開発した1人乗りの機体で、米連邦航空局(FAA)が「ウルトラライト級」に位置づけている。飛ばすために国が定める免許証を取得する必要はなく、LIFT社の提供するトレーニングを受ければ乗れる。座学、シミュレーター体験、実技など1時間ほどのトレーニングで、ビギナーとしての操縦士証明を受けられる。FAA Part103に該当する機体で、全長4.5m、高さ2.4m。小型のプロペラ18基を備える。113㎏の積載量で飛行速度は最高で時速101㎞、飛行時間は約15分だ。
機体には飛行直前にバッテリーが取り付けられた。GMOインターネットの熊谷代表が乗り込むと、まもなくプロペラがまわり始めふわりと浮かび上がった。モーター音はするものの、エンジンの爆音はなく、見守っていた関係者や報道陣から「威圧的には聞こえない音。周囲の人を怖がらせることはないのではないか」、「大型トラックのほうがずっと耳障り」などの感想が聞かれた。機体は上空8メートルほどの高さまで上昇すると、エリア内をすいすいと移動した。
飛行中の熊谷代表は、自動車の運転席に座っているような姿勢だ。正面はガラスに覆われているものの、両サイドにドアはなく、足も外気に当たりっぱなしになる。足の置き場はあるが、スキー場のリフトに似た印象だ。操縦席には中央にタブレット、右手に操縦桿がわりの3軸ジョイスティックがあり、これらを使い分ける。機体の傾きなどの制御は自動で調整されるため、移動する方向や速度を指示すればよい。熊谷代表は飛行中、操縦席で両手を広げたり、手を振ったりと、簡単で楽しく手軽な乗り物であることをアピールした。3分ほど空中で移動、旋回したあと、無事、着陸した。
この日は無人での飛行や、LIFT社のテストパイロットによる飛行も行われた。実験としては、騒音のほか、18枚のプロペラが起こす風の影響も確認した。
この実験には、丸紅、LIFT社のほか、株式会社長大(東京)がイベント管理、学校法人ヒラタ学園(大阪府)が申請支援、損害保険ジャパン株式会社(東京)がリスクアセスメントで関わった。また大阪府、大阪市、大阪商工会議所で構成する「実証事業推進チーム大阪」も協力した。
実験の冒頭には関係者があいさつをした。
大阪商工会議所の松本敬介産業部長は「この実験は万博機運醸成と未来社会のイノベーション創出に向けて実施した。大阪が日本を代表する実験都市であることをPRしつつ、空飛ぶクルマの実現の第一歩を刻みたい」とあいさつした。
丸紅の執行役員で航空・船舶本部長の岡﨑徹氏は「この実証飛行は大阪府などの公募事業に採択を受けて実現した。パイロットが搭乗して上下、旋回など複数のパターンで実施する。国交省航空局の策定している空飛ぶクルマの試験飛行ガイドラインにのっとって申請し、承認を頂いた。飛行を通じて、空を飛ぶクルマがすでにあること、静粛性があることを発信し社会受容性向上に結び付け、空の移動をより身近にしたい。万博では空飛ぶクルマの運航事業者にも選ばれており、日本の空飛ぶクルマのフロントランナーとして活動したい。航空業界で幅広いネットワークもあり、多角的事業のノウハウももち、空飛ぶクルマのエコシステムを形成していく。『できないことはみんなでやろう』を合言葉に、手軽でグリーンな空の移動を日本で実現する」と抱負を述べた。
LIFTのMatt ChasenCEOは「われわれの提供する未来の空のフライトのヴィジョンを共有できることを光栄に思っている。われわれは長い歴史の中ではじめて、ほんの短い時間で安全に空を移動する技術を身につけることのできる空飛ぶクルマHEXAを開発した。米国ではウルトラライト級と位置付けられ、既存の操縦資格を持たずにLIFT社独自のトレーニングを受ければ飛ばせることになっている。5年の開発で2023年の後半には有償飛行体験をローンチする計画だ」と話した。
長大の事業戦略担当施行役員で事業戦略推進統括部の菊地英一氏は「もともとは瀬戸大橋のプロジェクトをたちあげるときにできた会社。インフラ整備に注力してきた歴史がある。今後空の移動のインフラ整備にも取り組みたい。飛ばす基準などで関わりたい。風や騒音の基準づくりも担い、今後の検証にいかしたい。離着陸場も重要になろう。その設計、運航にも取り組む。建設コンサルタントとして地方に貢献したい」と説明した。
実は進行役を務めた丸紅航空宇宙・防衛事業部の吉川祐一氏も、LIFT社のライセンスを取得した日本人の一人として、2月23日に大阪・梅田で開催された空の移動革命シンポジウムに登壇していた。この日は進行のほか、会場から寄せられた質問にも答えた。会場からは万博での運航としてLIFTは現時点であがっていないことに関する質問があがり、吉川氏は「現時点ではその通り。ただし今後、遊覧や近距離の2地点間移動などの事業者の募集があれば挑戦したい」とLIFT社の機体の活用に意欲を見せた。
また飛行をおえたあとGMOの熊谷氏は報道陣に囲まれる中、「機体は安定していて自動車を運転しているような感覚だった。会社としてはハッキング対応などの事業を進め、こうした技術で空飛ぶクルマの社会受容性向上に貢献したい」などと述べた。
なお、この日(3月14日)に丸紅が発表したプレスリリースは以下の通りだ。
(編集部注:原文のサイトはこちら)
丸紅は、米国LIFT AIRCRAFT社(以下、「LIFT社」)が開発・製造する一人乗り電動垂直離着陸機(以下、「eVTOL」)“HEXA”を用いて、上下飛行や旋回飛行等の複数の飛行パターンを有人にて行う実証飛行(以下、「本実証飛行」)を大阪城公園内野球場にて実施しました。屋外スペース(*1)において、パイロット(*2)が搭乗し操縦する空飛ぶクルマを飛行させるのは、日本で初めての取り組みとなります。
本実証飛行は、大阪府が公募した「令和4年度 空飛ぶクルマ都市型ビジネス創造都市推進事業補助金」(*3)、および公益社団法人2025年日本国際博覧会協会と大阪商工会議所が公募した「2025年日本国際博覧会に向けた実証実験の実施候補者」に採択されたものです。空飛ぶクルマの有用性や利便性、新たなビジネスの創出・拡大への期待を多くの人々へ発信することで、社会受容性の向上に貢献することを目的として実施し、大阪府、大阪市、および大阪商工会議所で構成する「実証事業推進チーム大阪」の支援を受け、計画された飛行パターンを全て成功させました。
丸紅は、eVTOLの日本市場への展開を目指し、日本国内における社会受容性の醸成やエコシステムの形成を図るべく、2021年度よりLIFT社と連携を深めてきました。LIFT社は、2017年に米・テキサス州で創業された1名乗りのeVTOLメーカーで、米空軍と提携し特別プログラムを実施しているほか、2023年より全米25都市で一般向け有償体験飛行の実施を予定しています。
今後、丸紅とLIFT社は、電動で気候変動対策に大きく寄与する空飛ぶクルマの実装に向けた取組を加速させ、空の移動がより安全で身近な社会を創造すると同時に、低炭素化・脱炭素化を含む気候変動対策に貢献します。
(*1)大阪城公園内野球場にて、航空局の許可を得て実施。
(*2)本実証飛行における操縦については、航空機一般の特性を理解し、航空法規や気象・運航に関する一定の知識を有していることに加え、独自の訓練・試験に合格したLIFT社発行の操縦資格を有している操縦者を採用。
(*3) 共同事業者の株式会社長大(人・夢・技術グループ)と共に採択。
GMOインターネットグループも以下の発表をしている。
(編集部注:元サイトはこちら)
GMOインターネットグループ(グループ代表:熊谷 正寿)は、2023年3月14日(火)に、大阪市の大阪城公園内野球場にて、大阪府、大阪市、大阪商工会議所で構成する「実証事業推進チーム大阪(以下、「チーム大阪」)」が支援し、丸紅株式会社(以下、丸紅)が実施する、国の許可が必要な屋外スペースにおいては日本で初めてとなる「空飛ぶクルマ」の有人実証飛行に参加しました。
実証飛行では、グループ代表の熊谷正寿が「空飛ぶクルマ」のパイロットを務め、およそ10分間、上下飛行、直進及び緩旋回飛行などを行いました。
今回の実証飛行は、公益社団法人2025年日本国際博覧会協会と大阪商工会議所が、万博開催の機運醸成と未来社会を見据えたイノベーション創出に向けて実施した、2025年大阪・関西万博の会場である夢洲における実証実験の公募で採択されたもので、チーム大阪が実施を支援しています。
【「空飛ぶクルマ」実証飛行 参画の背景】
グループ代表の熊谷は、かねてより空に大きな夢を抱き、ヘリコプターと飛行機の操縦免許を有する(※1)など、「日本で最も空に精通する経営者」を目指してまいりました。2023年1月には、アメリカ・テキサス州で、米国LIFT AIRCRAFT社製の電動垂直離着陸機(eVTOL)「HEXA」の操縦訓練プログラムを受講し、基準をクリアしたことで、日本人初となる初級・操縦士証の交付を受け、今回の搭乗に至りました。(※2)
新たなテクノロジーの開発には高度な技術力と専門知識が必要です。熊谷は、自らがパイロットとして「空飛ぶクルマ」を操縦することで知見を蓄積し、安全性を実証いたしました。
(※1)【ヘリコプター】自家用操縦士・回転翼航空機・陸上多発タービン免許
【飛行機】自家用操縦士・飛行機・陸上多発タービン免許
(※2)「HEXA」は米国航空法(FAA)におけるPART103(軽量飛行機)基準で飛行するため、米国内で飛行する場合は航空法上の免許は不要ですが、操縦にはLIFT AIRCRAFT社が提供する特定の飛行訓練プログラムを受講し、基準をクリアする必要があります。
【「空のセキュリティ」確立へ 技術で貢献】
GMOインターネットグループは、人々の生活をより良くする「空飛ぶクルマ」の普及に向けて、情報セキュリティとサイバーセキュリティ技術による「空のセキュリティ」確立に向けた取り組みを進めています。
「空飛ぶクルマ」の普及において、最大のリスクはサイバー攻撃による墜落事故です。機体を制御する通信が攻撃された場合、乗客や地域住民の命に関わる墜落事故が起きることが懸念されます。また、通信を乗っ取られた「空飛ぶクルマ」が重要な施設への攻撃に使われる可能性も指摘されています。
こうした中、GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社(代表取締役社長:青山 満 以下、GMOグローバルサイン・HD)および同社の連結企業群であるGMOグローバルサイン株式会社(代表取締役社長:中條 一郎 以下、GMOグローバルサイン)を中心として、ドローンや「空飛ぶクルマ」の通信の暗号化をはじめとする通信セキュリティ技術や電子認証技術を提供しています。
また、国内最大規模のホワイトハッカーを組織するGMOサイバーセキュリティ byイエラエ株式会社(代表取締役CEO:牧田 誠)では、「GMOサイバーセキュリティ for Drone/eVTOL」を提供し、セキュリティの専門家がデバイス、通信、クラウドの脆弱性診断を行うなど、サイバー攻撃から「空飛ぶクルマ」とその管制施設を守る取り組みを進めています。
こうした技術は「HEXA」の飛行にも活用され、GMOインターネットグループが提供する高度なセキュリティ技術が安全性の確保に役立っています。
(参考:GMOインターネットグループ セキュリティ対策サイト https://www.gmo.jp/security/)
【GMOインターネットグループ・各代表者のコメント】
■GMOインターネットグループ 代表取締役グループ代表 熊谷 正寿
私はヘリコプターや飛行機を操縦しますが、この「空飛ぶクルマ」は非常に簡単に飛ばすことができました。「空飛ぶクルマ」の一番のリスクはハッキングです。GMOインターネットグループは「空飛ぶクルマ」のセキュリティを担い、情報セキュリティとサイバーセキュリティの観点から「空飛ぶクルマ」の安全を守り、産業の発展を応援します。2025 年の大阪万博で実用化され、その後多くの方々の移動手段として、また、時間節約の手段として活用されることを願っています。
■GMOグローバルサイン 代表取締役社長 中條 一郎
GMOインターネットグループが空の安全の一端を担えるよう、電子証明書の側面から支援してまいります。
■GMOサイバーセキュリティ byイエラエ 代表取締役CEO 牧田 誠
空飛ぶクルマのセキュリティリスクは通常の自動車やIoT機器よりも大きく、人命にまで及びます。誰もが安心して利用できるセキュアな空飛ぶクルマを作るために技術力で貢献していきます。
【安心・安全な「空の移動革命」への取り組み】
GMOインターネットグループでは、空を産業の「最後のフロンティア」と捉え、経済産業省・国土交通省が運営する「空の移動革命に向けた官民協議会」に参画するなど「空の移動革命」の実現に向けて各種セキュリティ技術の開発・提供を行ってまいりました。
さらに、2021年には大阪・関西万博でのeVTOLの実用化に向けて協議会内で発足した、「大阪・関西万博×空飛ぶクルマ実装タスクフォース」にも参画し、産官学構成員とともにeVTOL活用のコンセプトや運用計画策定等の具現化を図るべく検討を進めてまいりました。
これらの取り組みを通じて、安心・安全な「空の移動革命」を実現するためのさらなるセキュリティ対策技術の開発に取り組み、次世代モビリティ産業の成長に貢献していきます。
(参考)
■GMOインターネットグループ グループ代表・熊谷正寿が「空飛ぶクルマ」のパイロットに~日本人で初めて初級・操縦士証を取得~(https://www.gmo.jp/news/article/8204/)
■GMOインターネットグループ、「大阪・関西万博×空飛ぶクルマ実装タスクフォース」へ参画~2025年開催の「大阪・関西万博」における空飛ぶクルマの運用開始に向けセキュリティ技術で貢献~(https://www.gmo.jp/news/article/7285/)
■GMOインターネットグループ、「空の移動革命に向けた官民協議会」へ参画が決定~セキュリティ技術で空の安全を守り、次世代モビリティ産業の成長に貢献します~(https://www.gmo.jp/news/article/7228/)
大阪市も実験前に以下を発表している。
(編集部注:原文のサイトはこちら)
大阪市、大阪府、大阪商工会議所で構成する「実証事業推進チーム大阪(以下、「チーム大阪」という。)」は、丸紅株式会社が大阪城公園で実施する「空飛ぶクルマ」の実証実験を支援します。
今回の実証実験は、米国のLIFT AIRCRAFT社製の一人乗り電動垂直離着陸機(eVTOL)“HEXA”を使用し、上下飛行、旋回飛行等、幾つかの飛行パターンによる、日本で初めての操縦者(パイロット)が乗り組む「空飛ぶクルマ」の飛行を、国の許可が必要な屋外で実施するもので、本実証実験を通じて、「空飛ぶクルマ」を活用したサービスの認知度を高め、社会受容性の向上に貢献するとともに、得られた調査結果を今後の事業性評価に活用します。
大阪市では、これまで国や大阪府等とも連携し、「空飛ぶクルマ」の2025年大阪・関西万博(以下、「万博」という。)での実現をめざし取組を進めてきました。万博の開幕まで2年余りという時点での、日本で初めてとなる本実証実験は、「空飛ぶクルマ」の万博での実現に向けた社会受容性の向上や万博後の大阪での社会実装に向け、非常に重要なものであり、「空飛ぶクルマ」の実現によるイノベーションの創出や大阪経済の活性化にも大きく貢献することが期待されます。
チーム大阪では、今後も先端技術を活用した実証実験の実施を支援することにより、「未来社会の実験場」をコンセプトとする万博に向けて、大阪で新たなビジネスを創出する機運を更に高め、「実証事業都市・大阪」の実現をめざします。
実証実験概要
実施日
令和5年3月14日(火曜日)、15日(水曜日)
実施場所
大阪城公園内野球場(大阪市中央区大阪城3番 大阪城公園内)
実施主体
丸紅株式会社、LIFT AIRCRAFT INC.(共同事業者:株式会社長大)
実施内容
上下飛行(有人/無人)
直進及び緩旋回飛行(有人/無人)
四角い経路飛行(有人/無人)
<大阪商工会議所画像:LIFT AIRCRAFT社製“HEXA”(写真提供:丸紅株式会社)
参考
本実証実験は、公益社団法人2025年日本国際博覧会協会及び大阪商工会議所による「万博開催の機運醸成と未来社会を見据えたイノベーション創出に向けた『夢洲における実証実験の公募』」に採択されたもので、チーム大阪として大阪市が中心となり、実証実験場所の選定に係る調整や施設管理者との調整等の支援を実施しています。
なお、本実証実験場所は、夢洲での実施に向け協議・調整していましたが、当初想定していたスケジュールに変更が生じたことなどから、大阪城公園内野球場での実施となりました。
また、本実証実験は、大阪府の「令和4年度 空飛ぶクルマ都市型ビジネス創造都市推進事業補助金」事業としても採択されています。
■GMO熊谷代表が米LIFT社の操縦資格を日本人初取得の記事はこちら
■大阪・関西万博での空クル運航事業者決定の記事はこちら
■VolocopterのVoloCity大阪で初お披露目、の記事はこちら
国土交通省は3月13日、ACSLの「PF2-CAT3」に対し、「わが国初となる第一種型式認証を行った」と発表した。ACSLも同日、「第一種型式認証書を日本で初めて取得した」と発表した。3月中に第一種機体認証も取得し、レベル4飛行を実現させる方針だ。さらに、日本郵便株式会社(東京)、日本郵政キャピタル株式会社(東京)と開発する物流ドローンの第一種型式取得も目指す。
「PF2-CAT3」はACSLがレベル4飛行を見据えて開発した機体だ。同社の主力機「PF2」の派生機だが、レベル4飛行で求められる安全性能を求めるため冗長性を高めたり、非GPS環境下でも自動航行のできる機能を誇る機体にGPSアンテナが2つ搭載されていたりと、安全性能を最優先した。日本化薬株式会社製のパラシュートも備わる。サイズは外周はPF2とほぼ同じだ。ペイロードは1㎏だ。
レベル4飛行は、日常生活が営まれるなど生活者がいることが想定される有人地帯の上空を、操縦者が機体を肉眼で確認することも、補助者を配置することもなく飛ばす方法で、国は昨年12月5日の航空法改正施行で、実現に道筋をつけた。そのうち、操縦士が備えているべき技能を持つことを証明する「一等無人航空機操縦士技能証明書」は、2月14日以降、取得者が誕生している。一等操縦士が、一種機体認証を取得した機体を、許可・承認を得た場合などに、レベル4飛行が可能になる。
ACSLが機体認証の取得に近づく第一種型式認証を取得したことで、レベル4飛行が一気に現実味を帯びたことになる。一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)の鈴木真二理事長は、1月に開催した新春パーティーで、2023年のスロ-ガンを「レベル4実現元年」を掲げているが、順調にいけば2023年が3カ月もたたないうちに、実現することになる。
ACSLの発表は以下の通りだ。
■ 航空法等の一部を改正する法律が昨年12月5日より施行され、無人航空機(ドローン)の型式認証制度が開始
■ ACSLは、レベル4(有人地帯での目視外飛行)に対応したドローンの開発を行い、3月13日に国土交通省より日本で初めて第一種型式認証を取得
■ 2023年3月末までに日本初のレベル4飛行を実施予定
株式会社ACSL (本社:東京都江戸川区、代表取締役社長:鷲谷聡之、以下、ACSL)は、昨年12月5日より開始された無人航空機(ドローン)の型式認証制度※1において、本日、第一種型式認証書を日本で初めて取得しました。ACSLは今後、2023年3月末までに日本初のレベル4飛行(有人地帯での目視外飛行)を実施すべく、型式認証を取得したACSL式PF2-CAT3型(以下「PF2-CAT3」)の第一種機体認証申請※2を進めてまいります。
代表取締役社長 鷲谷 聡之 コメント
本日、日本で初めて、第一種型式認証書を国土交通省様から交付いただきました。
昨年12月5日に制度が開始して以来、国土交通省様やあらゆる関係者の皆様にサポートいただきながら、レベル4対応機体の安全性や均一性を証明するための検査や試験を社員一丸となって進めてきた成果といえます。
レベル4飛行においては、生活者の上空を飛行することを想定した機体開発が必要となり、今まで以上に安全な機体であることが求められます。PF2-CAT3は、あらゆる環境や条件での試験を実施し、航空法に基づく安全基準及び均一性基準に適合したと判定いただきました。
ACSLは、新たな市場を創っていくこと、そしてドローン業界をリードしていくことが使命であると考えています。日本初の第一種型式認証書を取得したことにより、今後ドローンがますます生活者に身近なものとして社会実装されていくことを、推進していきたいと考えています。
そして、社会インフラに革命を起こし、重労働で危険な業務を無人化していくという目標を実現するため、これからも安全、安心なドローンを開発し提供してまいります。
■参考
※1無人航空機の型式認証制度
型式認証制度とは、国土交通省が航空法に基づき、特定飛行に資することを目的とする型式の無人航空機の強度、構造及び性能について、設計及び製造過程が安全基準及び均一性基準に適合するか検査し、安全性と均一性を確保するための認証制度です。昨年12月5日より開始されました。
※2第一種機体認証申請
特定飛行を行うことを目的とする無人航空機の強度、構造及び性能について、設計、製造過程及び現状が安全基準に適合するか検査し、安全性を確保するための認証制度です。型式認証を受けた型式の無人航空機は、機体認証の検査の全部または一部が省略されます。
近畿⼤学経営学部(⼤阪府東⼤阪市)は3月の春休み期間中、ドローンの体験会とビジネス創出のワーショップを組み合わせた「ドローン講習会」をキャンパス内で開催した。近畿大学経営学部経営学科の鞆(とも)⼤輔教授との共同研究で交流があるTDCソフト株式会社(東京)が講習を担当した。参加した近畿大学の学生、大学院生の大半がドローンを扱うのは初めてで、講習ではドローンの概要、歴史、操作法、資格などの概要について説明を受けたうえで、手動とプログラムとで飛行する体験し、ドローンを活用するビジネス創出のワークショップに臨んだ。参加者からは質問やアイディアが次々と寄せられるなど、会場は活気にあふれた。
講習会は3月3日、近畿大学東大阪キャンパスで行われた。講師は一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)が発行する「無人航空機操縦技能証明証」、「無人航空機安全運航管理者証明証」を持つTDCソフトの大澤諒氏が務め、ドローンの基礎知識、操縦体験会、ビジネス創出ワークショップの三部構成で進めた。
講習ではドローンの種類、飛ぶ原理や特徴、開発の歴史、ドローンの語源、関連する法律などの基礎知識を身に着けたのち、中国Ryze Technology社のトイドローンTelloを手動、プログラミングのそれぞれの方法で操作する体験を積んだ。学生からはこの間、「バッテリーの性能向上の可能性はあるのか」、「操縦する資格を取得するための費用や時間はどの程度か」などの質問や、「充電を目的とした補給ドローンがあれば航続時間、距離を実質的にのばせるのでは」などの意見が寄せられた。
また講師の大澤氏が、プログラミング操作をする学生が手元の画面を見ながら飛ばしている様子について、「操縦者は機体ではなく画面を見ています。これが目視外飛行です」などと解説をすると、学生が「遠くまで飛ばして視界から消えることだけを言うわけじゃないんですね」と感想が寄せられた。
ビジネス創出のワークショップでは、学生たちが新しいビジネスのアイディアを出し合うことに挑んだ。大澤氏は「最初にどんどん意見を書き出してください。それを実現する制約に思い当たることがあっても、それはあとで考えることにして、思いついたアイディアをどんどん出してください。生み出し続けることが大事です」、「書き出したアイディアがビジネスになるかどうかを考えるときには、誰の、どんな課題を解決するのか、どんな喜びを生み出すのか、そのビジネスのどこが新しいのかを考えてみてください」と助言した。学生は、2つの班に分かれて班内で意見を付箋に書いて張り出したり、班内で似た意見が出たときにまとめたりして、ビジネスになりそうかどうかを検証した。検証の間には、「ドローンを飛ばせるなら、そもそも家そのものを飛ばせれば便利ではないか」など未来志向の意見が続出。それを聞いた学生が「それならエグいところにも家をつくれる」と盛り上がった。
アイディアの発表では、ディスプレイを取り付けたドローンによる広告表示、種蒔きから収穫までの自動農業ドローン、ドローン同士のサバイバルゲーム、ドローン傘、などが示された。学生たちからは「そのビジネスではお金は誰がはらうのか」といった質問や「ドローン傘にはカバンを持たせられる機能も持たせたい」といった意見が上がった。講師の大澤氏が「実はすでに検討されているものもあります。どこまで進んでいて、どこで壁にぶつかっているのかなどを調べると、そのアイディアを実現させることにつながるかもしれません」と解説を加えた。
すべての意見が出そろったあと鞆教授は「いろいろな意見が出て頼もしかった。ドローン傘のアイディアは雨天時のクルマの乗り降りするときのわずらわしさを解決することに役立ちそう。サバイバルゲームのアイディアは、操作技術の競い合いに加えて、プログラムで自動航行させるドローン同士の競い合いもおもしろそう。磨けばうまくいきそうなアイディアもあり、大変おもしろかった」などと講評した。
この日の講習は、近畿大学の「スマートウエルネス・プログラム・東⼤阪キャンパスにおける社会実証実験を通した学⽣教育」のプロジェクトの⼀環として行われた。近畿大学とTDCソフトは今回の取り組みの成果や課題を洗い出し、今後の展開を検討する方針だ。