JUIDAが新資格 石油化学プラントをドローンで点検する技能を証明

2020.09.26

 一般社団法人日本 UAS 産業振興協議会(JUIDA)の新資格が10月、登場する。新資格は、合成樹脂などを生産する石油化学工場設備をドローンで点検するさいに必要となる高度な技量、専門的な知識を持つことを証明する民間資格で、9月末時点で「プラント点検上級操縦技能証明証」と呼ばれている。新資格取得には講習を受け、所定のテストを受験する必要がある。講習と資格の発行は10月スタートする予定だ。現時点では講習期間は4日間程度、福島県にある大規模実験研究施設、福島ロボットテストフィールド(南相馬市)を会場に行われる。受講費用などの詳細も10月に改めて公表される予定だ。

「プラント点検上級操縦技能証明証」 ブルーイノベーション、イノベ機構と連携

 「プラント点検上級操縦技能証明証」は、石油化学プラントのドローン点検技能を証明する新資格。「新設するよりも難しい」と言われる石油化学生産設備の修理のうち、点検部分を肉眼からドローンによる作業に置き換えることで、作業員の重労働からの解放や人手不足問題の軽減・解消、点検成果の向上などを目指す。資格創設にあたり、ブルーイノベーション株式会社、公益財団法人福島イノベーション・コースト構想推進機構と連携した。また名称は「プラント点検」だが、工場全般を対象にしたものではなく、石油化学プラントが対象であるため、10月の発行開始に向けて、名称を変更する可能性がある。

 新資格は民間資格で、取得者だけができる業務が保証される国家資格の「業務独占資格」とは異なる。しかし、石油化学プラントへのドローン点検を普及させるには、作業に必要なドローンの技量などの明確化と、その技能を持っていることを証明することが不可欠だ。プラント側も点検作業を担わせる操縦士の採否基準を模索せざるをえず、新資格がひとつの目安になる。

 作業に必要な技量や知識については今年4月、JUIDAが公益財団法人福島イノベーション・コースト構想推進機構・福島ロボットテストフィールドから委託を受けて「プラント点検分野におけるドローンの安全な運用方法に関する実務マニュアル」、 「プラント点検分野におけるドローンの安全な運用方法に関するチェックリスト」 、「ドローンを用いたプラント点検事業者教育カリキュラム」としてまとめ、公表している新資格はこれらに準拠し、テキスト化け、講習カリキュラム化した。

 講習は当面、株式会社ブルーイノベーションが担当し、講習で使う機体はブルーイノベーションが点検実務で使っている球体ガードに覆われたELIOSシリーズになるとみられる。ただし資格は、ELIOSに限定しているわけではなく、基準を満たせば他の機体を使う他のスクールでも講習が可能だ。JUIDAも今後、新資格の講習を提供するスクールを募る方針だ。また受講には、JUIDA小型無人機操縦技能証明証、安全運航管理者証明証を取得している必要がある。

 石油化学業界は鉄鋼業などと並び日本の製造業の根幹である素材産業の柱だが、設備の老朽化が進み、修理、点検、補修、更新などが不可欠だ。主力設備のひとつ、エチレン製造装置は、操業開始から50年を超える装置が、2022年に日本全体で半数を超える。

 設備の維持管理は、高圧ガス保安法、消防法、労働安全衛生法、石油コンビナート等災害防止法の「保安4法」で厳格に管理されていて、たとえば定期修理は特別な許可を得ている場合をのぞき、毎年行わなければならない。定期修理には、年産60万トン級の設備の場合で、工事期間は約2カ月を要し、工事費用も80~100 億円程度に達する(2017年度、石油化学工業協会調べ)。設備の老朽化が進めばさらにコスト高、高頻度になる恐れが指摘されており、保安の確保、経済性の確保が「業界全体の喫緊の課題」(石油化学工業協会)になっている。

 総務省消防庁、厚生労働省、経済産業省で構成する「石油コンビナート等災害防止3省連絡会議」は3月27日、ガイドラインを改訂し、カメラを搭載したドローンによる点検作業を「目視点検」の一部を代替できると明示した。今後、ドローンの導入を阻害する要素を洗い出し、必要であれば保安4法の改正も視野に、精度の見直しを進めている。

新資格は、石油化学プラントを持つ業界にとって、業務を任せるドローン操縦者の見極めを助けることになる。技量の高いドローン操縦者にとっては、石油化学プラントの点検に活用する機会が拡大するきっかけになる。これらを通じて、新資格がドローン点検の普及を通じて、作業員の安全確保、設備の生産性維持・向上、企業の収益性確保による業界の健全な発展に貢献することを目指している

 

いいね!と思ったらシェア!
関連する記事