一般社団法人日本 UAS 産業振興協議会(JUIDA)の新資格が10月、登場する。新資格は、合成樹脂などを生産する石油化学工場設備をドローンで点検するさいに必要となる高度な技量、専門的な知識を持つことを証明する民間資格で、9月末時点で「プラント点検上級操縦技能証明証」と呼ばれている。新資格取得には講習を受け、所定のテストを受験する必要がある。講習と資格の発行は10月スタートする予定だ。現時点では講習期間は4日間程度、福島県にある大規模実験研究施設、福島ロボットテストフィールド(南相馬市)を会場に行われる。受講費用などの詳細も10月に改めて公表される予定だ。
「プラント点検上級操縦技能証明証」は、石油化学プラントのドローン点検技能を証明する新資格。「新設するよりも難しい」と言われる石油化学生産設備の修理のうち、点検部分を肉眼からドローンによる作業に置き換えることで、作業員の重労働からの解放や人手不足問題の軽減・解消、点検成果の向上などを目指す。資格創設にあたり、ブルーイノベーション株式会社、公益財団法人福島イノベーション・コースト構想推進機構と連携した。また名称は「プラント点検」だが、工場全般を対象にしたものではなく、石油化学プラントが対象であるため、10月の発行開始に向けて、名称を変更する可能性がある。
新資格は民間資格で、取得者だけができる業務が保証される国家資格の「業務独占資格」とは異なる。しかし、石油化学プラントへのドローン点検を普及させるには、作業に必要なドローンの技量などの明確化と、その技能を持っていることを証明することが不可欠だ。プラント側も点検作業を担わせる操縦士の採否基準を模索せざるをえず、新資格がひとつの目安になる。
作業に必要な技量や知識については今年4月、JUIDAが公益財団法人福島イノベーション・コースト構想推進機構・福島ロボットテストフィールドから委託を受けて「プラント点検分野におけるドローンの安全な運用方法に関する実務マニュアル」、 「プラント点検分野におけるドローンの安全な運用方法に関するチェックリスト」 、「ドローンを用いたプラント点検事業者教育カリキュラム」としてまとめ、公表している新資格はこれらに準拠し、テキスト化け、講習カリキュラム化した。
講習は当面、株式会社ブルーイノベーションが担当し、講習で使う機体はブルーイノベーションが点検実務で使っている球体ガードに覆われたELIOSシリーズになるとみられる。ただし資格は、ELIOSに限定しているわけではなく、基準を満たせば他の機体を使う他のスクールでも講習が可能だ。JUIDAも今後、新資格の講習を提供するスクールを募る方針だ。また受講には、JUIDA小型無人機操縦技能証明証、安全運航管理者証明証を取得している必要がある。
石油化学業界は鉄鋼業などと並び日本の製造業の根幹である素材産業の柱だが、設備の老朽化が進み、修理、点検、補修、更新などが不可欠だ。主力設備のひとつ、エチレン製造装置は、操業開始から50年を超える装置が、2022年に日本全体で半数を超える。
設備の維持管理は、高圧ガス保安法、消防法、労働安全衛生法、石油コンビナート等災害防止法の「保安4法」で厳格に管理されていて、たとえば定期修理は特別な許可を得ている場合をのぞき、毎年行わなければならない。定期修理には、年産60万トン級の設備の場合で、工事期間は約2カ月を要し、工事費用も80~100 億円程度に達する(2017年度、石油化学工業協会調べ)。設備の老朽化が進めばさらにコスト高、高頻度になる恐れが指摘されており、保安の確保、経済性の確保が「業界全体の喫緊の課題」(石油化学工業協会)になっている。
総務省消防庁、厚生労働省、経済産業省で構成する「石油コンビナート等災害防止3省連絡会議」は3月27日、ガイドラインを改訂し、カメラを搭載したドローンによる点検作業を「目視点検」の一部を代替できると明示した。今後、ドローンの導入を阻害する要素を洗い出し、必要であれば保安4法の改正も視野に、精度の見直しを進めている。
新資格は、石油化学プラントを持つ業界にとって、業務を任せるドローン操縦者の見極めを助けることになる。技量の高いドローン操縦者にとっては、石油化学プラントの点検に活用する機会が拡大するきっかけになる。これらを通じて、新資格がドローン点検の普及を通じて、作業員の安全確保、設備の生産性維持・向上、企業の収益性確保による業界の健全な発展に貢献することを目指している
株式会社SkyDrive(豊田市<愛知県>)は、山口県山口市で重ねてきたリハーサル飛行を収めた動画を公開した。
リハーサル飛行は、山口県山口市の「山口きらら博記念公園」内に設けた飛行試験場で春から行われていて、動画には大阪・関西万博のデモフライトに使われるSD-05が離陸し、移動し、向きを変えて飛行するなどの様子が納められている。
大阪・関西万博では7月31日から8月24日まで、火、水曜以外の原則週5日の予定で、来場者の前で飛行する様子を公開する。
建設設備大手の三機工業株式会社(東京)は7月11日、グループ会社、有限会社キャド・ケンドロ(仙台市)と共同で狭小空間ドローン開発の株式会社リベラウェア(Liberaware、千葉市)のドローンとレーザースキャナを併用した既存設備の3Dモデル化するデジタル化手法を確立したと発表した。Liberawareも同日、三機工業に「IBIS2」を「導入した」と発表した。
三機工業は設備更新や模様替えなどのさいに、現場を3Dモデリングし、現状を把握してから取り組む。完成後の更新や追加工事で現状が図面通りになっていないことが多く、作業の妨げになるおそれがあるためだ。しかし天井裏などでダクトや配管が込み入っている場合に、すべての設備にはレーザーが届き切らずに十分な3Dモデルができあがらない場合がある。こうした課題を乗り越える手法の開発を進めているところ、今回、ドローンとレーザースキャナを併用してデジタル化する手法を開発した。
同社が実施した実用化検証では、IBIS2とレーザースキャナを併用した場合、従来の3Dスキャン手法と比べ、機械室などの天井の無い空間の場合、認識できた建築部材が約135%、天井の一部が解体された天井裏空間で約400%向上したという。
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丸紅株式会社(東京)は7月8日、大阪・関西万博でデモフライトを披露する計画を公表している英ヴァーティカルエアロスペース社(Vertical Aerospace Group Ltd.)開発の5人乗りAAM「VX4」について実施を「見送る」と発表した。英国で行われているVX4試験機での有人飛行試験で判断したという。
丸紅は発表の中で「現在英国で行われているVertical社製VX4試験機による有人飛行試験の進捗状況から、大阪・関西万博でのデモフライトへの対応を見送ることとなりました」と伝えた。VX4のキャビンを再現したモデル空間は予定通り万博会場に出展し、8月から搭乗体験を実施する予定という。
また丸紅が万博で飛ばすもうひとつの機体、米LIFT AIRCRAFT社(以下、「LIFT社」)製の1人乗り機「HEXA」については、デモフライトを近く再開させる方向で調整中だ。HEXAは4月26日のデモフライト中に部品が落下したためデモフライトを中断して原因究明を続けている。
その結果「モーター搭載箇所の部品について、サプライヤーが仕様と異なる素材の部品を誤って供給していたことが判明」したと説明し、「当該部品の交換およびその他重要部品の再点検を完了した上で、再発防止策として、LIFT社において部品の受領・品質管理について包括的な監査を実施し、必要な工程について改善したことを確認しました。関係機関の許可を以て、今後大阪・関西万博でテストフライトを実施し、十分に最終確認を行った後、安全を最優先として関係機関および関係各社と協議・判断し、デモフライトの再開に関しては改めてお知らせいたします」と伝えている。
丸紅は大阪・関西万博でのAAM運航事業者4グループのひとつだ。
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英ロックバンド、オアシスの再結成後初のコンサート会場となるウェールズの首都カーディフのプリンシパリティ・スタジアムで現地時間7月2日、ドローンで形作られた「OASIS」のロゴが浮かび上がった。ツアーは7月4日に始まり、11月まで世界各国をまわる。ツアー初日を翌々日に控えたドローンの演出はオアシスの公式アカウントで公開されている。
ドローンのロゴは公演開始前に上空に描かれ、オアシスの再結成ツアー開催を祝福し、喜ぶファンの気分の高揚に貢献した。
オアシスは1991年にマンチェスターで結成され、7000万枚以上のアルバムを売ったロックバンドだ。2009年に解散したが昨年2024年に再結成した。再結成後初のコンサートツアーが7月4日にはじまり、北米、南米、オーストラリア、韓国など各地をまわる。2025年は11月23日のサンパウロ公演で幕を閉じる予定だ。日本公演も10月に予定されている。チケットはいったん予定枚数の販売を完了したが、機材席の解放による追加販売が決定し、7月12日正午に抽選の受付を開始する予定だという。
音楽シーンとドローンとは、MV撮影、ライブ映像撮影、演出としての屋内ドローンショーなどの例があるなど縁があり、今後も活用の幅が広がる可能性がある。
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AAM開発の米ジョビー・アビエーションは6月30日、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイでパイロットが搭乗し、垂直離着陸の固定翼飛行を実施した。ジョビーは「2026年に最初の乗客を運ぶ」と2026年のサービス開始を目指している。ジョビーは開催中の大阪関西万博で「運航事業者」にもなっている。
ジョビーによるドバイでの飛行は、「piloted, vertical-takeoff-and-landing wingborne flights」で、パイロットが乗り、垂直離着陸をしたうえで、機体の固定翼で移動した飛行で、「eVTOL分野では初めての取り組み」としている。ジョビーはこの飛行を通じて、ドバイ地域での商用市場準備の取り組みを開始したことも明らかにした。ジョビーは直接運航、航空機販売、地域パートナーシップを商業化戦略の3本柱と位置付けていて、今回の試験飛行が「重要な一歩」と話している。
試験飛行はドバイ道路交通局、ドバイ民間航空局、UAE民間航空総局と連携して実施された。またドバイ道路交通局長官兼理事会会長のマタール・アル・タイヤー会長が立ち会った。
ジョビーは、ドバイ国際空港(DXB)、ペルシア湾の人工島であるパーム・ジュメイラ、現在建設が進められている世界第2の面積の人工のマリーナであるドバイ・マリーナ、超高層ビルブルジュハリファで知られるドバイ・ダウンタウンでの商業サービス導入を目指している。バーティポートはすでに建設が進められている。
ジョビーはDXBからパーム・ジュメイラまでをエアタクシーサービスで移動した場合、移動時間は12分で、45分かかる車での移動時間が大幅に短縮されると見込んでいる。
ジョビーがエアタクシーサービスで使う機体は電動で、パイロット1人と最大4人の乗客を乗せ、最高時速200マイル(約320km)で輸送できる設計と説明していて、ジョビーは「短時間の通勤、小旅行、地域間のシームレスな移動のために、より速く、より静かで、より便利な空の旅を提供します」と話している。
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東京株式市場グロース市場で7月2日、ACSL株がストップ安となった。午前9時29分にいったん1187円で寄り付いたがその後も売りが殺到し、再び取引の成立したない売り気配で推移した。ACSLは前日の7月1日、前CEOによる不適切取引判明を発表していて嫌気を誘ったとみられる。
ACSL株は取引き開始前から売り注文を集めていて、取引開始がはじまったしばらく値が付かないまま推移した。午前9時29分に値幅制限いっぱいいの、前日終値比300円安のストップ安となる1187円で取引が成立したが、その後も売りは止まらず、再び取引が成立しない展開が続いた。
ACSLが7月1日に発表した「お知らせ」はこちら