大阪・関西万博で2地点間デモフライトを計画している株式会社SkyDrive(豊田市<愛知県>)は、デモフライトに使う機体「SKYDRIVE」(SD-05型)のフルスケールのモックアップを3月28日、初公開した。快適な飛行を実現させるための上質なシートや、客席から景色を楽しめるように工夫した窓、お皿を逆さまにしたようにドーム状のローターのアームなどが目を引いていた。
「SKYDRIVE」(SD-05型)のフルスケールモックアップが公開されたのは、3月28日に大阪市内でOsaka Metro(株式会社大阪市高速電気軌道株式会社)と大阪市が開催した「大阪港バーティポート」の竣工セレモニーだ。式典会場が設置された格納庫の中に機体が置かれ参加者を出迎えた。これまで図面で見たことがある関係者も、「実物大でみるとさらにかっこいい」「さっそく乗りたくなる」などと声を掛け合っていた。
「SKYDRIVE」(SD-05型)はキャビン上から同心円に広がるアームに12のローターを備える。アームは中央を頂上にするようにやや山なりの、お皿をさかさまにしたようなドーム状で「推進力や安定性を追求した結果としてたどりついた」(SkyDrive広報)という。
シートは前に1席、後ろに2席の3人乗りで、前の1席は操縦席だ。SkyDriveは将来的にパイロットの搭乗が不要な機体を開発して実装することを目指していて、実現すると操縦席は不要になる。
展示機の前面ガラスは広い。操縦席に操縦用のモニターなどが設置されているが、操縦席からの視界をさえるものはほかにない。前面パネルの下にも窓が備えられ、着陸時に路面の確認を助けそうだ。
後部座席の客席から正面展望は前席の背もたれや操縦者で制約は受けるが、両サイドの窓スペースは広くとられている。特に機体前面に近づくほど足元あたりまで深くえぐられていて、視界確保に役立つとみられる。また飛行時は前傾姿勢になると想定されるため、地上の様子が見やすくなりそうだ。
シートも白地で上質さを前面に出していた。旅客運航が想定されていないため、現時点ではシートベルトはないが、実運用されるときにはシートベルトがつく。実運用時には軽量化や機体の強化のため仕様がかわる可能性もある。
エアコンは装備されていない。エアコンを搭載するさいには、重量、スペースなどとのバランスをとる工夫が必要になるとみられる。
3月28日に開催された竣工セレモニーでは、Osaka Metroの河井英明社長があいさつの中で「SkyDriveのこの機体は、技術、性能も素晴らしいがデザインも大変すぐれていると思います。この機体が空を飛ぶ姿を想像するとわくわくします」と絶賛した。
機体を開発したSkyDriveの福澤知浩代表取締役CEOは「SD-05は今回が初公開です」と紹介した。そのうえで「われわれは毎日飛行試験をしていますが、電動なのでヘリコプターに比べて騒音が三分の一かそれ以下とかなり静かです。エンジンでなくモーターなので環境にもやさしい。将来的には新大阪駅からここ(大阪港バーティポート)まで、電車や自動車で40分から60分程度のところを10数分で来られるような形のものを実現したいと思っています(中略)。空飛ぶクルマの会社は世界に多くありますが、我々はコンパクトカテゴリーで一番多くの方に、快適に、安く飛んで頂けるプロダクトになっているかな、と思っていまして、大阪を起点に世界のこの機体を実装したいと思っています」と機体を紹介した。
福澤CEOはさらに「やはりゼロからイチを作るのは難しいもので、想定外や見立て違いが起こりますし、こんなチャンスもあるのか、ということも多くあります。これからも山あり谷ありだと思いますが、大阪、日本、世界にみなさまに『この機体に乗って楽しい』と思って頂くべく取り組んで参ります。この展示しているモックアップにも乗れますので、セレモニー参加のみなさまにもぜひ乗って頂きたいと思います」と開発ストーリーを披露しながら、搭乗体験を促した。
東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本、東京)は2月4日、米ASKA社が開発中のAAM「ASKA A5」の導入を検討していると明らかにした。JR高輪ゲートシティ駅一体型の大型開発「TAKANAWA GATEWAY CITY」で、将来的にここを発着する「プレミアム国内観光」を担う機体となることを想定している。3月27日に迎えるまちびらきでは、関連催事の一環として、実機の三分の一サイズのモックアップを展示する。あわせて、「サービス提供の姿を披露する」としている。
ASKA A5は米ASKA社が開発中のAAM(いわゆる「空飛ぶクルマ」)で、走行と飛行の両方ができることが特徴だ。パイロット1人を含め4人まで乗ることができる。飛行は電動だが、バッテリーのほかに電力を供給するためのガソリンシステムも持つハイブリッド機だ。走行時はSUV車ほどの大きさで技術的には公道が走れる。飛行時には格納している翼を展開して離陸する。仕様上の航続飛行は250マイル(約400㎞)で、計算上は高輪ゲートウェイから仙台市、佐渡、能登半島、奈良などが収まる計算だ。ASKAのHPでは動いている様子を動画で確認できる。
JR東日本はJR高輪ゲートウェイ駅直結の「TAKANAWA GATEWAY CITY」を開発中で、3月27日正午に先行施設の開業などとともにまちびらきをする。JR東日本は「100年先の心豊かなくらしのための実験場」と位置付けていて、まちびらきから数か月間にわたり、サービスやイベントを展開する計画だ。ASKA A5のモックは、イベントの一環としてTAKANAWA GATE CITYの一角にモックを展示し、「サービス提供の姿」を披露する。
TAKANAWA GATE CITYは、AAMのほかのモビリティ関連技術も導入する方針だ。自動走行モビリティ5台が運行し無料で街の回遊に乗車できる。一部は水素由来の電気で動き、水素由来の充電場面を見ることもできる。警備ロボットや清掃ロボット、アプリで注文した商品をオフィスなどに配達するデリバリーロボットも走る構想だ。
ASKAのHP:https://www.askafly.com/