株式会社自律制御システム研究所(東京)が8月14日に発表した2020年4~6月期(2021年度第1四半期)決算は、新型コロナウイルス感染拡大の影響が直撃し、売上高として前年同期比40.6%減の3619万円を、純損益として2億1462万円の損失を計上した。2021年3月期の通期では、売上高が14億~17億円(前年3月期の売上高は12億7000万円)の増収を、純損益が2億3000万円の赤字~5000万円の黒字をそれぞれ見込む。同時に中期経営方針「ACSL Accelerate 2020」を発表し、2023年3月期(2022年度)の売上高を55億円と明記した。10年後の2031年3月期(2030年度)の売上高を1000億円と展望する「マスタープラン」も公表した。
ACSLの2020年4~6月期決算は、新型コロナウイルス感染拡大が「売上計上の遅れ」「案件の後ろ倒し」となって直撃し、売上高を構成する「実証実験」が前年同期の2715万円から150万円に、「プラットフォーム機体販売」が前年同期の2445万円から400万円にそれぞれ激減した。一方で保守手数料、消耗品販売、補助金事業のうち既存技術関連事業などを含めた「その他」が前年同期の930万から3069万円に増えて売上高の減少を下支えした。
損益では、コロナの影響を受けていても販管費を2億3032万円と前年同期より増やし、営業損益は2億3723万円の損失(前年同期は1億9717万円の損失)を計上した。営業外収益として6375万円の助成金収入があった一方、事務所移転のための営業外費用もあり、経常損益は1億8013万円の損失(前年同期は8035万円の損失)となった。この結果、税引き後の凖損益が2億1462万円の損失となった。
2021年3月の通期では、4~6月期に間に合わなかった取引の回収を見込みながら、感染状況の推移に影響を受けることを考慮し、「2020年9月頃までに感染拡大が収束し企業活動が直ちに回復基調となった場合の予想」を上限、「新規投資等の抑制など企業活動の停滞が2020年12月頃まで続いた場合」を下限に設定。売上高は上限17億円、下限14億円(前年3月期の売上高は12億7000万円)の増収を見込み、純損益は上限5000万円の黒字、下限2億3000万円の赤字と見通した。
感染の直撃を受けながらも、研究開発を中心に投資姿勢は維持。4月には中堅ゼネコン西松建設株式会社(東京)と共同でコンクリート床のひび割れを自動計測するシステムを開発したことや、株式会社センシンロボティクス(東京)とドローンソリューション構築の連携を開始したことを相次いで公表。5月にはVAIO株式会社(長野県安曇野市)のドローン子会社、VFR株式会社(東京)と用途別産業用ドローンの共同開発に向けた協業を開始した。7月以降も東光鉄工株式会社(秋田県大館市)と防災・減災ドローンの開発・販売の踞尾協業、8月に入ってからも関西電力株式会社(大阪市)との連携で煙突点検ドローンの開発を公表している。
ACSLはこの日、「マスタープラン」と、中期経営方針「ACSL Accelerate 2020」を同時に発表した。マスタープランでは10年後に目指すべき姿を定め、それを実現させるための2020年度から2022年度までの方針を、中期経営方針で示した。
マスタープランによるとACSLは、有人・無人地帯の目視外飛行を中核事業領域として育て、10年後(2031年3月期)に売上高1000億円、利益100億円を目指す。また中期経営方針によると、手始めに今後3年間で用途特化型機体の製品化、サブスクリプションの導入、ASEAN進出を本格化、技術調達向けCVC設立を進め、年間1600台の機体出荷を目指す。研究開発費も年間8億円にまで拡大させる。2023年3月期(2022年度)時点で、売上高55億円、売上総利益率50%、営業利益7.5億円の確保を目標に掲げた。
2023年3月期で目指す売上高55億円の内訳は、「用途特化型機体販売」で20億円、「用途特化型機体のつくりこみ」で30億円、「その他」で5億円。用途特化型機体としては、小型空撮機体、中型物流機体、煙突点検機体、閉鎖環境点検機体の4つを念頭に置いている。
同社は今後3年間に、主に3つの環境変化が起きると想定している。第一が都市部を含む有人地帯での目視外飛行の制度が整備されること、第二が、データセキュリティー強化の必要性が官民で高まること、第三が感染拡大を背景に非接触需要が高まりドローンの有効性が再認識されること。ACSLはこうした変化を「巨大な潜在市場が開放される」と受け止め、機体販売、サブスク導入、CVC設立、ASEAN進出を進める方針だ。