ドローン配送と陸上輸送を融合させた「新スマート物流Skyhub」と呼ばれる物流サービスの運用が千葉県勝浦市でも始まった。1月18日、JR外房線上総興津(かずさおきつ)駅前に、SkyHub(スカイハブ)の拠点となる「ドローンデポ勝浦市興津」がオープンし、地元商店関係者、事業者らがかけつけた。当面はカタログに載せた商品の注文を受け、環境配慮型のEVバンで配送するサービスを周辺住民に提供する。準備中のECサイトや、ドローン配送の寛容が整えば、早ければ2月にもSkyHubの融合サービスがはじまる。勝浦でのSkyhubには地元商店街組織が積極的に関わった経緯があり、地元商店街のにぎわいの創出に期待が寄せられる。Skyhubの運用は、山梨・小菅村、北海道・上士幌町、福井・敦賀市に続き4例目となる。
Skyhubは、株式会社エアロネクスト(東京)、セイノーホールディングス株式会社(岐阜県大垣市)が中心となって構築し、実装を進めてきた、ドローン配送と陸上輸送を融合させ、物流の諸課題の解決を図る取り組みだ。導入地域の特性や事情にあわせて地域に役立つよう調整されている特徴がある。勝浦市での取り組みは、勝浦市商店街活性化推進協議会の「新たな配送サービス構築による商店街等にぎわい創出事業」から、エアロネクストの子会社、NEXT DELIVERY(山梨県)が受託して進められた経緯があり、勝浦市商店街活性化推進協議会の目指す「商店街等ECモールサイト構築・運営」がベースになっている。ECサイトは現在構築中で、サービス開始は印刷したカタログの商品を選ぶ形でスタートした。
取り扱い商品は初日時点500品目。コンビニ、文具店、飲食店など地元商店街に参加する7店が参加し、Skyhubを通じた商品提供に賛同した。商品の一覧を掲載したカタログが対象エリアに配布されていて、注文が入ると加盟店に連絡をするとともに、待機していたEVバンでピックアップし、注文主に届ける。構築中のサイトが完成すると、参加店舗や掲載商品の拡大が期待される。利用者にはタブレット経由での注文が期待されるが、当面は電話、LINEなどの注文も併用する。タブレット利用促進のため、地域住民に使い方を教える教室を開く構想もある。
またドローンの発着場「ドローンスタンド」も整備中だ。現在、域内の「大沢地区」に届け先となるドローンスタンドを1か所確保している。離発着上の拡大で航路を整備できれば、小菅村のようなドローンの配送の組み合わせも可能になる。
1月18日には、集会所でサービス開始の記念式典とドローンの離陸場面のお披露目が行われた。商店街の活性化に取り組み、今回のSkyhub実装の旗を振った勝浦市商店街活性化推進協議会の小髙伸太会長(勝浦市商工会会長)や、照川由美子勝浦市長、セイノーHD執行役員、NEXT DELIVERY取締役の河合秀治氏、エアロネクスト執行役員でNEXT DELIVERY取締役の伊東奈津子氏、ドローンの運航管理システムなどを提供するKDDIスマートドローン株式会社代表取締役社長の博野雅文氏、EVバンや住友商事航空事業開発部長の多々良一郎氏ら関係者が謝辞、祝辞、抱負を述べた。概要説明ではオンデマンド配送、買物代行、フードデリバリーなどのサービスを展開、拡大しつつ、健康、防犯・防災などへの転用を見据え、商店街のにぎわい創出、域内物流の効率化・最適化、地域のカーボンユートラル推進などを図る展望が披露された。
勝浦市では昨年(2022年)2月11日、ご当地グルメ「勝浦タンタンメン」を集会所から1.7㎞離れた市内の別荘地「ミレーニア勝浦」まで運ぶ実証実験を行って以降、関係者と地元で実装に向けた課題の洗い出しや検証を進めてきた。
地元商店関係者は「できるテクノロジーがあり、それを使える機会がある。デジタルが苦手だといった声もあるし、不安や課題もあるが、やってみて経験を積むことに価値があると思うし、地元ではそういう声が高まっている。せっかく取り組む以上、より多くの賛同を得て、取り組みの輪を広げたい」と話している。
昨年(2022年)の勝浦でのタンタンメン配送の様子はこちら